細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)においては
合成ナノ粒子、ジェル、細胞外小胞などの
送達媒体に
細胞種特異的な結合部位を持つ表面リガンドを
装飾することを提案してきました。
その時に、
全身投与すると血液中に存在する
タンパク質、脂質、核酸などのデブリが
ナノ粒子の周辺に付着することが指摘されています(4)。
そうすると
細胞外で精緻に作製した結合部位が
周辺に付着する物質(コロナ)に覆われて
結合性を失ってしまう事が懸念されます。
実際に
ナノ粒子による特異的送達が臨床でなかなか
成功しない理由の一つであると考えられます。
一方で
Qiang Cheng, Sean A. Dilliard, Xu Wang(敬称略)らは
その血中のコロナ形成を積極的に
標的化のために利用する構造、
プロトコルを考案しました(1-3)。
脂質ナノ粒子にSORTと呼ばれる物質を付加させ
その電気的特性と酸性度を制御する事によって
脂質ナノ粒子に付着する
コロナの種類を変更させました。
一般的に
脂質ナノ粒子をそのままにしておくと
肝臓に蓄積されるといわれています。
ApoEという脂質タンパク質が
血中に多く含まれ、
それがコロナとして付着します。
それと高い親和性で結合する特異的な受容体が
肝臓に多く含まれているからであるとされています。
従って、
このApoEとの結合を避けながら、
標的組織特異的かつ豊富に含む受容体と
結合性を持つ血中のタンパク質を
引き付けるような装飾を
脂質ナノ粒子にすることが
肝臓を避けた他の組織の送達効率向上のため
考えられます。
それによって
Qiang Cheng, Sean A. Dilliard, Xu Wang(敬称略)らは
肝臓の他に、脾臓、肺への特異的送達を可能にする
脂質ナノ粒子装飾物質を特定し、
実際にそれぞれの臓器の受容体に高い親和性で結合する
タンパク質との結合性を確認しました(1-3)。
--
細胞種特異的輸送系統のコンセプトが
本当に細胞種、組織特異的な輸送を実現するかどうか
というのはある程度の疑いはありました。
しかし、マウスのケースで
想像している以上に
送達の特異性において、
表面の条件と受容体との関係が重要である
という事が明らかになっています(1-3)。
マウスという小さな動物種や
肺や脾臓というのは
比較的、薬剤送達しやすいというのは
あるかもしれないですが、
Qiang Cheng, Sean A. Dilliard, Xu Wang(敬称略)らも
含めて、今後、癌などの病変部位を含めた
他の組織への特異的送達が可能かどうかについては
検証されていくものだと推測します。
もっと人に近い動物でどうか?
といったことも重要です。
--
Qiang Cheng, Sean A. Dilliard, Xu Wang(敬称略)らの
研究結果から、
そのコンセプトを他の輸送媒体も含めて
発展、応用していく際には
マウス、人の血液中に含まれる
コロナとなり得る物質の包括解析が重要になる
と考えました。
その物質群と
各細胞種のSurfeceome(例えば、癌(5))を関連付けて、
その結合親和性を明かにすることで
血液中でコロナ形成させたい
標的物質が明らかになります。
また、その時に
血液中に存在する脂質タンパク質などの
物質の構造安定性がどのような
物理的特性、化学的特性によって決まっているか?
というのも考える必要があります。
結局、どういう経路をたどったにしろ
最終的には結合部位を守る必要があります。
例えば、
結合活性の低い糖で多くは形成されていて
所々に活性な結合部位があるといった構造も考えられます。
それをすることで
今度は逆にコロナ形成しにくい
装飾因子の開発にも貢献する可能性があります。
これは体の中からヒントを得る考え方です。
--
また、生体内で受動的にタンパク質を引き付ける場合と
初めからそのたんぱく質で覆うように設計する場合で
どのように結果が異なるか?
このような事も検証の余地があります。
例えば、
免疫的なクリアランスや免疫原性などが
どう違うのか?といったことも視点となります。
これは薬剤の副作用、安全性に関わることです。
(参考文献)
(1)
Xu Wang, Shuai Liu, Yehui Sun, Xueliang Yu, Sang M. Lee, Qiang Cheng, Tuo Wei, Junyu Gong, Joshua Robinson, Di Zhang, Xizhen Lian, Pratima Basak & Daniel J. Siegwart
Preparation of selective organ-targeting (SORT) lipid nanoparticles (LNPs) using multiple technical methods for tissue-specific mRNA delivery
Nature Protocols (2022)
(2)
Qiang Cheng, Tuo Wei, Lukas Farbiak, Lindsay T. Johnson, Sean A. Dilliard & Daniel J. Siegwart
Selective organ targeting (SORT) nanoparticles for tissue-specific mRNA delivery and CRISPR–Cas gene editing
Nature Nanotechnology volume 15, pages313–320 (2020)
(3)
Sean A. Dilliard, Qiang Cheng, Daniel J. Siegwart
On the mechanism of tissue-specific mRNA delivery by selective organ targeting nanoparticles
PNAS 118 (52) e2109256118 (2021)
(4)
Edit I. Buzas
Opportunities and challenges in studying the extracellular vesicle corona
Nature Cell Biology (2022)
(5)
Zhongyi Hu, Jiao Yuan, Meixiao Long, Junjie Jiang, Youyou Zhang, Tianli Zhang, Mu Xu, Yi Fan, Janos L. Tanyi, Kathleen T. Montone, Omid Tavana, Ho Man Chan, Xiaowen Hu, Robert H. Vonderheide & Lin Zhang
The Cancer Surfaceome Atlas integrates genomic, functional and drug response data to identify actionable targets
Nature Cancer volume 2, pages1406–1422 (2021)
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿