2022年11月13日日曜日

新生児集中治療室における未熟児に対する酸素濃度管理

日本では様々な統計を比較的に見ると
低出生体重児はOECDの中で多いものの
新生児、乳児の死亡率が
その割合の傾向を基準とすると有意に低いため
NICUによる早産児の健康管理においては
現場には様々なノウハウがあるものである
と想定されます。
その早産児は、肺を風船のように膨らませるために
必要な肺サーファクタントという物質が
まだ十分に作られていないため
呼吸によって空気を十分に取り込めず
呼吸が速くなったり
酸素不足でチアノーゼを起こしたりします。
従って、
酸素濃度の24時間体制の管理は
少なくとも重要になります。
実際に管理が不十分で間欠的に酸素濃度が下がると
気管支異形成症や運動機能障害のリスクが高まります。
あるいは命の危険にさらされることもあります(3,4)。
従って、
目標酸素濃度を設定して
それをできるだけ長い時間維持できるように
言い換えれば、
好ましい酸素濃度から逸脱する時間を最小化できるように
酸素濃度を管理するシステムを組むことが重要です。
しかしながら、
目標酸素濃度の設定には難しい問題があると
認識しています。
オーストラリアの
The Royal Children's Hospital Melbourneが
発表している目標酸素濃度は
早産児、満期産児に関わらず
酸素補充が必要な場合には
91-95%に設定する必要があるとされています。
一方、アメリカを中心とした
SUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Network
の調査によれば、
命を落としたお子さんの割合は
91-95%の高酸素濃度グループが低かったものの
重度の網膜症は
低酸素濃度グループ85-89%のほうが
半分程度で有意に低かったことが示されています(2)。
但し、この研究は重度の未熟児で
出生体重の中央値は836gです。
従って、場合によるかもしれないですが、
命を落とすリスクを考えると
酸素濃度の目標値は上述したように
91-95%程度である可能性があります。
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早産のお子さんの健康を維持するための
継続的な酸素の管理方法の一つとして
コンピューター制御された
酸素送達システムが挙げられています(1)。
この自動システムを持つ
いくつかの呼吸サポート機器は
現在、NICUで利用可能であり、
非侵襲、侵襲によるサポートを行うことができます。
この自動化されたシステムでは
マニュアルでの酸素濃度の調整の必要性を下げ、
低酸素状態の平均時間を下げる事に
貢献したことが研究で示されています(5)。
しかしながら、
研究による評価期間は最大でも48時間と短期であり
酸素の安定化の早産児の健康への影響についての
研究は十分ではありません。
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もう1つは酸素飽和度のデータ管理に関するものです。
コンピューターがデータを取りこんで、
新生児がどれくらいの時間、どの酸素飽和度を経験したか
わかるヒストグラムを現場の医療スタッフに
提供するシステムです。
このシステムにより
標的の酸素飽和濃度の時間が向上した
という研究もあります(6)。
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酸素飽和度を測定するデバイスである
パルスオキシメーターは身体の動きによって
測定信頼度が低下してしまいます。
新生児は大人のように行動を自律的に制御することが
できないので、無作為な動作に対する
酸素飽和濃度の測定信頼性を継続的に
確保する必要性があります。
それを実現するために
四肢の2か所にパルスオキシメーターを付け
両方の値を比較する事で
真のデータを抽出するというものです。
これにより身体の動きがあったとしても
酸素飽和度の真の値を評価する事ができます。
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もう1つは経皮的な測定方法です。
この方法では
皮膚を暖めて毛細血管床を動脈化する事で
皮膚の外側の酸素拡散を高めます。
皮膚表面の酸素分圧と
真の動脈酸素分圧の一致は
酸素解離曲線と酸素の消費の因子に依存します。
この方法は
正確性、技術的困難性、やけどなどに対する安全性確保。
これらにおいて課題がありましたが、
近年、より低温で正確に測定することが
できるようになったとされています(7)。
この方法のメリットは
パルスオキシメーターのように
身体の動きによって影響を受けない事です。
しかしながら、
反応時間が遅く、校正時間が必要なので
新生児の蘇生の間に使う事は
少なくともできないとされています。
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未熟児が生まれてから最初の数週間の
動脈酸素濃度の不安定性は
そのお子さんの短期間、長期間の健康に
関わることかもしれないとされています。
新生児集中治療室(NICU)では
酸素の状態のモニタリングの改善、
健康リスクのある酸素不安定性の閾値の定義、
酸素安定性を改善するシステム、機器が
必要とされています。

(参考文献)
(1)
Liron Borenstein-Levin & Amir Kugelman 
Oxygenation in the NICU: there is more to it than meets the eye
Pediatric Research (2022)
(2)
SUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Network*
Target Ranges of Oxygen Saturation in Extremely Preterm Infants
The New England Journal of Medicine 2010;362:1959-69.
(3)
Poets, C. F. et al. Association between intermittent hypoxemia or bradycardia and
late death or disability in extremely preterm infants. JAMA 314, 595 – 603 (2015).
(4)
Jensen, E. A. et al. Association between intermittent hypoxemia and severe
bronchopulmonary dysplasia in preterm infants. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 204,
1192 – 1199 (2021).
(5)
Nair, V., Loganathan, P., Lal, M. K. & Bachman, T. Automated oxygen delivery in
neonatal intensive care. Front. Pediatr. 10, 915312 (2022).
(6)
Gentle, S., El-Ferzli, G., Winter, L., Salas, A. A. & Philips, J. B. III Oxygen saturation
histogram monitoring to reduce death or retinopathy of prematurity: a quality
improvement initiative. J. Perinatol. 40, 163 – 169 (2020).
(7)
Jakubowicz, J. F. et al. Effect of transcutaneous electrode temperature on accu-
racy and precision of carbon dioxide and oxygen measurements in the preterm
infants. Respir. Care 63, 900 – 906 (2018).


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