小児がんのうち最も多いのが白血病で
その次が脳腫瘍、リンパ腫となっています。
子供のがんは多種多様であり、
希少性のがんも多いことから
それに合わせた治療が必要であり
課題も多いとされていますが、
上述した白血病、脳腫瘍、リンパ腫の
主に血液と脳に関わるがんは
全体の6割を占めます。
血液性のがんは
腸などにできる粘膜に複数の癌細胞が覆われた腺腫ではなく
各細胞の独立性が高いと考えられています(2)。
固形の癌は微小環境と共に
組織化、塊を作るという特徴がありますが、
血液性の癌は流動性があります。
また、薬剤を全身投与する場合には
血流などを通した循環器が
薬剤送達ルートとなるため、
適切に標的化すれば、効果が現れやすいかもしれない
ということがあります。
従って、特定のタンパク質を標的とした
CAR免疫細胞治療の初めの癌の対象は
血液性のがんです。
同じように特定のタンパク質を標的とする
抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate)も
血液性の癌細胞に対して、
特異的な標的性があれば、
その効果を期待することができます。
ホジキンリンパ腫はB細胞やT細胞などのリンパ球が
癌化するがん疾患ですが、
リードシュテインベルク細胞のCD30を標的とする
ブレンツキシマブ ベドチンという
抗体薬物複合体が治療の為の対象薬剤となっています。
この
ホジキンリンパ腫は小児の治療の場合には
抗がん剤による化学療法に加えて
PETやCTなどの画像診断の結果に従い
リンパ節に対して放射線治療を行うなど
大人の癌に比べて
その状況に合わせて多様であるとされています(1)。
元来の治療によっての生存率が比較的高い
小児がんではありますが、
その後の後遺症などを考えると
初期的な病気のコントロールの改善が
必要であるとされています(3-5)。
上述したCD30の抗体薬物複合体である
ブレンツキシマブ ベドチンの
18歳以上のリスク低減の効果が確認されています(6)。
また、
18歳以下のホジキンリンパ腫罹患の患児に対して
ブレンツキシマブ ベドチン投与の安全性評価で
許容範囲である(tolerable)という
結果が示されています(7)。
S.M. Castellino(敬称略)らは
非盲検のフェーズ3治験として
従来の化学療法に対する
ブレンツキシマブ ベドチンの効果の比較を
行っています(1)。
--
人数は両グループで600人程度。
年齢は中央値15.4歳
12歳以下 17.4%
12-21歳 82.6%
女性は46.3%
ステージ
IIB 20.8% ⅢB 19.8% ⅣA 28.2% ⅣB 31.2%
組織学的特徴
結節性硬化症 75.2%
--
抗体薬物複合体+化学療法グループと
標準的治療グループの比較
追跡調査中央値42.1カ月
3年イベントフリー生存 92.1% (vs 82.5%)
再発累積発現率 7.5% (vs 17.1%)
ステージがⅡB、ⅢBでは効果が顕著に高い。
骨髄病変があるとほとんど効果がない。
女性の方が効果が高い。
大きな縦隔の肥大があると効果が高い。
--
抗体薬物複合体治療群のほうが高い副作用
粘膜、口腔の有害事象(10.4% vs 7.3%)
腸炎、盲腸炎の有害事象(4.4% vs 1.7%)
血栓の有害事象(3.7% vs 1.7%)。
-
頻度の高い副作用
発熱性好中球減少(30.9% vs 32.5%)。
末梢神経障害(18.8% vs 19.4%)。
//考察//ーー
いくつか考えるポイントがあります。
抗体薬物複合体は化学療法と合わせて治療が行われる
ということです。
この抗体薬物複合体は
モノメチルアウリスタチンEと呼ばれる
毒性の強い有糸分裂阻害薬が用いられますが、
これだけでは治療としては不十分であるということです。
標的性を上げて
その薬剤だけで治療が行えるという形式に持っていくためには
付加的な機能としてどういったことが必要か?
という事は
今後、ナノ粒子などを含めた
標的治療において重要となってくる部分です。
今回の治療では
イベントフリー生存率が高くと再発率が低くなっており
治療効果はあると考えられますが、
一方で
副作用に関しては
グレード3以上のものに関しては
やや多くなっています。
このような副作用の影響が一時的なのか?
それとも後遺症に関わる事なのか?という視点があります。
一方で、治療効果が上げられたことが
後遺症の程度を下げる可能性もあるという視点もあります。
今回、グレードⅢ以下のステージの癌では
イベントフリーに対する効果が顕著に高かったことと
冒頭で述べたように初期的な病変のコントロールが
その予後に関わるということを合わせて考えると
お子さんの5年後、10年後の状態においては
急性期の副反応よりも
治療効果によって良化する可能性があります。
再発率が低いことも関係します。
--
女性の方が効果が高いということは
顕著に統計的有意性が認められます。
これをどのように解釈するか?
という事が重要になります。
性ホルモンが関係しているのか
今回示された結果の中で
1つ重要な位置づけであると考えられます。
年齢も
12歳以下のほうが
リンパ腫全体的にがんイベント発生率が低いことや
その中で抗体薬物複合体群が顕著に低くなっている事も
着目点です。
--
骨髄病変がある場合には
ほとんど効果がみられないという事も
重要なデータです。
(参考文献)
(1)
Sharon M. Castellino, M.D., Qinglin Pei, Ph.D., Susan K. Parsons, M.D., David Hodgson, M.D., Kathleen McCarten, M.D., Terzah Horton, M.D., Ph.D., Steve Cho, M.D., Yue Wu, M.S., Angela Punnett, M.D., Hema Dave, M.D., Tara O. Henderson, M.D., Bradford S. Hoppe, M.D., Anne-Marie Charpentier, M.D., Frank G. Keller, M.D., and Kara M. Kelly, M.D
Brentuximab Vedotin with Chemotherapy in Pediatric High-Risk Hodgkin’s Lymphoma
The New England Journal of Medicine 2022; 387:1649-1660
(2)
Robert Noble, Dominik Burri, Cécile Le Sueur, Jeanne Lemant, Yannick Viossat, Jakob Nikolas Kather & Niko Beerenwinkel
Spatial structure governs the mode of tumour evolution
Nature Ecology & Evolution (2021)
(3)
National Cancer Institute. Cancer stat
facts: Hodgkin lymphoma. 2019 (https://
seer . cancer . gov/ statfacts/ html/ hodg . html).
(4)
Castellino SM, Geiger AM, Mertens
AC, et al. Morbidity and mortality in long-
term survivors of Hodgkin lymphoma:
a report from the Childhood Cancer Sur-
vivor Study. Blood 2011; 117: 1806-16.
(5)
Oeffinger KC, Stratton KL, Hudson
MM, et al. Impact of risk-adapted therapy
for pediatric Hodgkin lymphoma on risk
of long-term morbidity: a report from the
Childhood Cancer Survivor Study. J Clin
Oncol 2021; 39: 2266-75.
(6)
Connors JM, Jurczak W, Straus DJ,
et al. Brentuximab vedotin with chemo-
therapy for stage III or IV Hodgkin’s lym-
phoma. N Engl J Med 2018; 378: 331-44.
(7)
Cole PD, McCarten KM, Pei Q, et al.
Brentuximab vedotin with gemcitabine
for paediatric and young adult patients
with relapsed or refractory Hodgkin’s
lymphoma (AHOD1221): a Children’s
Oncology Group, multicentre single-arm,
phase 1-2 trial. Lancet Oncol 2018; 19:
1229-38.
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