2022年11月14日月曜日 0 コメント

組織、細胞種標的のための様々なアプローチ

mRNA治療の潜在性を十分に得るためには
生体内での技術的に進んだ送達システムを
確立する必要があります。
心臓、腎臓、脳、肺などの
固形の臓器に対しては特にあてはまります。
肝臓は標的化しやすい臓器です。
窓構造がある脈管構造は
大きな粒子の効率的かつ均一な輸送を促進します。
単純な血管内の投与は
mRNA積載物の肝臓での効率的は発現を可能にします。
しかしながら、
肝臓以外の他の臓器に関しては
カテーテルを通して直接的に投与するか
任意の臓器に対して走化性を持つように
パッケージシステムをエンジニアリングするか
によって送達システムを改善する必要があります。
それぞれの臓器は
適した送達システムがあるとされています。
--
Eduarde Rohner(敬称略)らは
腎臓、肺、脳への注入投与、
カテーテル投与について総括しています。
細胞種特異的な送達システムに関連する内容も
総括しています(1)。
独自の観点を入れながら内容を参照しました。
その内容を読者の方と情報共有したいと思います。

//腎臓への薬剤注入投与//ーー
腎臓は肝臓とは異なり、
大きな分子はろ過して取り除き
小さな分子のみ通過することができます。
糸球体は50kDa以上のタンパク質は活発に除去します。
有足細胞は10nmの系を持つスリットを作り
循環器から腎臓へ輸送する際の障害になります(2)。
腎臓の髄質、皮質への直接的な被膜下の注入は
ニードルやカテーテルの差し込み深さを変える
ことによって達成することができます。
腎臓への異なる区画への効率的な局所的輸送は
いくつかのルートの投与によって可能です(3)。
①腎動脈、糸球体、尿細管上皮標的
②逆行性腎静脈、尿細管標的
局所的な脈管の圧力の上昇は
一時的な細孔を細胞被膜に作り出し
核酸の滲出を促します(4)。
③逆行性尿管、尿細管上皮標的
④実質内
いくつかの報告では遺伝子治療による
腎疾患の治療の為のルートとして
適していることが示されています(5,6)。
それぞれの疾患に対応する特異的な病理は
異なる腎臓区画、細胞種に関連するので
薬剤送達を考える際には
その特異性に整合した細胞種を標的とするように
システムを組む必要があります。
--
腎臓疾患に対するmRNA治療は
まだ臨床応用には達していません。
しかし、臨床研究においては2つが検討されています。
Alport腎症のために
miR21を標的とした薬剤の一つが
現在フェーズ2の臨床試験に進んでいます。
(NCT02855268).
常染色体優性多発性嚢胞腎症に対しては
Antagomir-inhibiting miR17を使ったmiRNA治療において
現在フェーズ1の臨床試験が実施されています
(NCT04536688)。

//肺への薬剤吸入投与//ーー
肺は吸入を通してすぐに到達し、
少ない薬剤用量で済むと考えられています。
従って、全身性の副作用のリスクを下げる事ができます。
肺輸送の魅力的なシステムは
直接的、急速、非侵襲での
肺胞、肺柔組織へのアクセスです。
肺ルートにおける空気層は
核酸活性が血液中に比べて低いために
RNAの安定性が向上し、
送達の為の環境が優れているとされています(7)。
しかしながら、
吸入による薬剤送達は特有の課題があるとされています。
mRNAはエアロゾル化の間に生じる強いせん断応力
に対して耐える堅牢性が必要になります(8)。
肺上皮表面の表面積、粘膜構造は
効率的なmRNA輸送の障害となります。
嚢胞性線維症に関するフェーズ1/2の臨床試験では
嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)を
エンコードしたmRNA治療が
吸入投与によって試みられました。
安全性は高かったものの、
肺機能の顕著な改善は見られなかった
とされています(9-11)。

//脳への薬剤投与//ーー
脳は身体の中で最も遺伝子的に複雑な臓器で
治療が最も難しいとされています。
髄膜や頭蓋骨の中に閉じ込められ、
輸送の際には血液脳関門によってフィルターされます(12)。
この血液脳関門は薬剤輸送において
1つの障害となります。
その障害を乗り越えるための方略は
脳の柔組織に対する直接的な投与や
脳脊髄液への直接的な投与です。
用量は投与方法によって最適値が異なります。
また、脳脊髄液への投与では
脳室と大脳皮質の間のサイズや距離によって
均一的な標的化が難しいとされています(13)。
一方で
直接的な脳サイトへのアクセスの場合は
注入サイトの近くの領域への輸送に限られます。
この方式は当然、侵襲的なので
外科的なスキルも必要でリスクがあります。
従って、広範な適用性においては制限的です。
--
一方で、代替となるルートとしては
鼻腔の粘膜と脳の神経経路が繋がっているので
その経路を使うことができます。
これは中枢神経系に対する非侵襲的なルート
投与方法となります(14,15)。
このルートでは迅速な送達が可能で
数分で中枢神経系に薬剤を届ける事が可能です。
薬剤は低分子量(<1kDa)で高い親油性が
好ましいとされています。
しかし、異なる領域に対する
薬剤の濃度管理は難しいとされています(16,17)。
透過促進剤を使えば、鼻腔の高分子量薬剤の生体利用効率は
高まります。それなしでは
低分子量(<1kDa)以上の鼻腔の吸収は
顕著に減少します(18,19)。
ラットによる臨床前試験では
鼻腔内投与による中枢神経系への
VEGF(38.2 kDa)の直接的輸送において
30分以内で直接的な輸送を示しました(20)。
もう一つのマウスによる臨床前試験では
陽イオン性のリポソームに封止されたmRNAの
鼻腔内投与において
線条体、皮質、中脳などの特定の脳領域への
効果的な輸送が確認されました(21)。
--
脳への薬剤送達は難しいとされているため
特定の細胞種に対して走化性を持つ
メカニズムを組み込むことが求められます(22)。
ASOsやRNA治療に関しては
脊髄性筋萎縮症の治療において
初めてFDAに承認されました(23)。
しかし、
筋萎縮性側索硬化症においては
ASO治療においてはフェーズ3治験で
近年、中止されています。
(NCT02623699).

//カテーテル輸送//ーー
Werner Fossmann(敬称略)により
1929年に心臓へのカテーテル挿入が成功して以来
心臓カテーテルベース療法は
現代の心臓病の不可欠な部分となっています。
カテーテル療法が一般化した事により
冠動脈疾患、弁膜症、構造的奇形の
効果的な治療が可能になりました。
加えて
心臓のカテーテルベース送達法は
遺伝子ベース、細胞ベースの治療応用に対して
詳しくその可能性が探索されています(24,25)。
心臓は心臓血管の中枢となる臓器なので、
血管内からアプローチする方法はいくつかあります。
ここ数十年でこの技術は
顕著な改善がみられています。
Trans-vessel-wall microcathetersは
細胞や他の治療仲介物質を直接的に
組織に注入することができます。
効率的に、かつ副作用のリスクも減らすことができます(26)。
血管内のデバイスを使用した臨床前試験では
心臓、腎臓、膵臓のような臓器に
穿刺部位のシールの必要性なしに
直接的にアクセスする事が可能でした(27)。
再循環デバイスは
対象となる部位に複数回
治療媒体を通過させることができ
大きな動物モデルで導入効率が向上しています(28)。
Selective pressure-regulated retroinfusion
with blockage of the antegrade flow 
は安全にアプローチすることができ
cDNA, miRNA抑制剤、遺伝子治療媒体などを
効率的に輸送することができます(29)。
--
侵襲性を最小化するために
チューブ径を減らす事を通じて
さらなるカテーテル設計の改善が考えられています。
また分布量を最大化させるための
注入パラメータの最適化
逆流を防ぐためのシステムなども
改善の余地として挙げられています(30-32)。
また、マイクロ電子デバイスによって
ポジショニングやナビゲーションシステムを
導入する事によって(33)、
人の熟練度に依存しないカテーテル導入システムを
構築できル可能性があります。
これらのシステムは
細胞種特異的な送達システムのための
細胞向性をプログラムしたパッケージと合わせて
適用することができます。
つまり、大きなスケールでの局在性は
カテーテルシステムに依存して、
そこからより細かい分布に関しては
細胞種特異的な送達システムに任せる
ということです。

//細胞種特異的輸送系統(*)//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
細胞種特異的な送達システムのための
パッケージシステムの医療工学、エンジニアリングについて
考えられています。
RNAパッケージ応用については
高い輸送効率、低い免疫原性、細胞毒性について
今まで詳しく考えられ、設計されてきましたが、
細胞種まで特異性を絞った設計については
今まであまり焦点が当てられませんでした。
細胞種特異的輸送系統では
各細胞種が発現している特有の表面受容体、リガンドに
着目して、それと特異的結合性を持つ表面装飾を
パッケージに施すという構想です。
実際にApoEという物質は
循環器でコロナとしてパッケージに結合する事が知られ
このApoEが肝臓の細胞と結合親和性が高いことから
肝臓に取り込まれやすいという事があります。
実際にPEGコートすれば、
ApoEと肝臓の結合親和性を下げる事が出来
それに伴って、肝臓への向性を下げる事ができます。
Eduarde Rohner(敬称略)らが示すように
パッケージの電荷の状態によって
どの臓器に走化性を持つかというのは変わってくる
ということもありますが、
パッケージの表面装飾によって
それと結合性の高い表面受容体、リガンドがあれば
それに対して走化性を持つという事が
今までの研究でもわかっています。
例えば、anti-Ly6c抗体でコートした
脂質ナノ粒子はLy6c発現白血球に
RNA積載物を特異的に輸送する事が知られています(34)。
このように抗体を複合体として形成した
脂質ナノ粒子は今まで活発に研究されています(35-38)。
細胞ベースのパッケージでは
標的としたい受容体に結合親和性のある表面装飾を
遺伝子導入などを行う事によって
過剰発現させ走化性を高める事も提案されます(39)。
細胞外小胞でも同様のエンジニアリングを行う
ことができます(40)。
マクロファージなどでコートした
脂質ナノ粒子はマクロファージが持つ受容体を利用して
癌細胞を標的とすることができます(41)。

//まとめ//ーー
薬剤送達においては
1つの技術ですべてに対応しようとせず、
複数の技術の組み合わせの中で
よりより選択肢を見つけていく事が賢明かもしれません。
カテーテル技術が使えるのであれば、
患部近くまでアクセスした状態で
細胞種特異的な送達プログラムを持つ
パッケージシステムを注入するということです。
あるいはカテーテルではなく
直接的な注入もあてはまりますし、
輸送方式、ルートを変えるという事も考えられます。

(参考文献)
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2022年11月13日日曜日 0 コメント

mRNA治療の為の輸送媒体パッケージ技術

mRNAは不安定で分解されやすいので
分解酵素から構造を守るための
パッケージ、送達システムを必要とします。
また、そのことは
効率的な細胞取り込み、
効率的な細胞内での放出、
効率的なタンパク質への転写を可能にします。
そのパッケージ技術のほとんどは現状では
脂質ナノ粒子であり、
それが最初に発表されたのは60年前です(2)。
脂質ナノ粒子は今まで
様々な改変や発展を経験し、
その軌跡の中で
small interfering RNA(siRNA)の送達における
最初の臨床的使用を可能にしました(3,4)。
一方で、
細胞、細胞外小胞、生体模倣小胞(biomimetic vesicles)に
基づくパッケージ技術は現在進行形で発展しており、
脂質ナノ粒子の代替のアプローチとして
臨床前の研究で効果が確かめられています(1)。
--
Eduarde Rohner(敬称略)らは
mRNA治療実現の一つの鍵である
送達媒体パッケージについて総括しています(1)。
その内容と意見について
読者の方と情報共有したいと思います。

//脂質ベースパッケージ//
RNAが積載されている脂質ナノ粒子の現在の型は
1960年代に生まれたリン脂質ベースリポソームの
派生型です(2)。
脂質ナノ粒子は4つの鍵となる要素からなります。
構造的脂質(Structural lipids)、コレステロール、
陽イオン性脂質、ステルス脂質です。
構造的脂質は脂質ナノ粒子の
基礎的な足場(scaffold)で
主に中性のリン脂質です。
任意の比率でコレステロールを加える事は
脂質ナノ粒子を安定化させます。
それによって
被膜の流動性、弾性、浸透性のような
物理的な特性を変化させることができます(5-7)。
陽イオン性の脂質は
脂質ナノ粒子内に静電引力によって
陰イオン性を持つRNAなどの核酸を積載する際に
必要とされます(8,9)。
しかしながら、
陽イオン性の脂質を加える事は欠点があります。
陽イオン性の脂質は
細胞毒性、細胞膜タンパク質のオプソニン化
低いトランスフェクション効率を誘発します。
それにより、
副作用に繋がる受け細胞へのダメージや
食細胞による取り込み、
脾臓、肝臓などによるクリアランスなどが生じます(10-13)。
それゆえに
集中的な努力が生理化学的性質を修正するために
行われてきました。
その結果として
脂質ナノ粒子の免疫原性を顕著に減らす事ができる
pH感受性のある陽イオン脂質。
(pH-sensitive ionizable cationic lipids)
これが発見されました。
つまり、pHによってイオン性が変わる
脂質のことです。
Ionizable陽イオン性脂質は
循環器の中で電荷中性なので、
細胞や分子の認識から逃れることができます。
エンドソーム経路によって細胞内に取り込まれた後
それらはイオン化され、
エンドソーム被膜と融合します。
そして、内容物である
mRNAが細胞質中へ放出され、
その後、タンパク質に翻訳されます(14,15)。
様々なionizable脂質が今まで開発されました。
2012年に報告されたものは
DLin-MC3-DMA(MC3)脂質です(16-19)。
MC3からなる脂質ナノ粒子の
Median effective dose(ED50)は
マウスや猿で
従来の王道として使われていたionizable脂質KC2に対して
20倍低いとされていました。
つまり、効果が確認されるために必要な
注入ナノ粒子は20倍少なくともよく、
それによって
免疫原性も含め様々な副作用のリスクを
潜在的に下げる事ができることを意味します。
実際にこの顕著な改善は
2018年のsiRNA Onpattroの
最初の臨床の送達システムの実現、
それの承認に貢献しました(3,4)。
現在、普及しているCOVID-19 mRNAワクチンの
脂質ナノ粒子は上述したMC3類似物を使用しています。
これは脂質の毒性や生物分解性において
改善がみられたものです(19,20)。
--
ステルス脂質はPEGポリマー複合体脂質であり、
免疫原性を減らすために脂質ナノ粒子の
構成要素として加えられました。
PEGsは液体内のナノ粒子のコロイド安定性を
高めるために使われます(21-24)。
これは生理学的に不活性で
様々な受容体の結合部位を避けることができます。
凝集やオプソニン化を減らすこれらの特性は
免疫原性を減らし、生体内での保持時間を向上させます。
それにより安全で効果的な投与が可能になります(21,25,26)。
さらに興味深いことに
PEGylated脂質ナノ粒子は
小さく、かつ均一な脂質ナノ粒子の製造を促進します。
その直径は50~100nmです。
この大きさのナノ粒子は
免疫システムの活性化から逃れられる可能性があります(25,26)。
他方で、
PEG過感受性に関する問題が
治療の為の慢性的な投与に対する
PEGylated脂質ナノ粒子の利用性を制限します(21,27,28)。
現在の研究では
PEGylated脂質ナノ粒子の最適化
異なるステルス脂質の発展に焦点が当てられています。
例えば、
Polysarcosine複合体脂質です(29)。

//細胞ベースパッケージ//ーー
脂質ナノ粒子の代替として
細胞のような生物送達小胞の利用があります。
標的細胞へmRNA積載物を送達させるよりも
このアプローチは
生体外で細胞内でRNAから生産された
タンパク質を細胞が持つ傍分泌の機序を
利用するものです。
合成脂質ナノ粒子と比較した時の利点としては
生物互換性が高い、
循環器での寿命が長い
内的な細胞内、細胞外信号を利用できる
ということが挙げられています(30,31)。
細胞は酵素、薬剤、脂質ナノ粒子の送達媒体として
使用する事ができます。
カスタマイズ化は
mRNAを様々な細胞種の中に入れることによって
広範な範囲で出来る可能性があります。
例えば、免疫細胞、血液細胞、間葉系細胞です。
また、それらの細胞を
遺伝子的にエンジニアリングする事も可能です(30-34)。
このアプローチは
望ましい治療、薬理効果を際立たせるための
細胞治療と組み合わせることができます。
しかしながら、
mRNA治療の細胞ベース輸送は
一般的な細胞治療適用と同様の注意点によって
制限されます。
ドナーハロタイプ互換性
均一的な生産
質の制御
細胞内への輸送効率。
これらの4つの課題によって制限されるかもしれません(35)。
また、細胞自身が癌化する可能性もあります。
--
2019年、Eduarde Rohner(敬称略)らは
修正されたmRNAコーディングVEGFを生体外で積載した
皮膚線維芽細胞を注入する事で
筋肉内のVEGFの輸送に成功したことを
マウスのケースで報告しています(36)。
虚血肢の血管密度が上昇することで
組織の壊死を顕著に減らす事に成功しています。
そのフォローアップ研究として同じように、
今度は間葉系幹細胞で
VEGFやBMP-2を輸送する研究をしています(34)。
治療を受けたマウスは
骨形成や血管形成が改善したことが
示されています(34)。
間葉系幹細胞、好中球、単球、赤血球を使った
mRNAやタンパク質積載物の輸送についても
他の研究で示されています(30-33,35)。

//細胞外小胞ベースパッケージ//ーー
もう一つの新手のアプローチとしては
輸送媒体として細胞外小胞を使う事です。
細胞外小胞はいくつかの亜型を含みますが、
ほぼすべての細胞種から放出されます(37)。
今述べた様に
細胞外小胞は亜型を含み
そのサイズ、細胞内の生成過程によって分類されます。
エクソソームは、50-150nmの直径を典型的にもつ
細胞外小胞で、エンドソームから放出されます。
ドナー細胞から放出された
エクソソームは脂質ナノ粒子と同様に
エンドソームを通じて受け細胞で取り込まれますが
内容物の全てが細胞質に放出されるわけではなく
他の細胞へそのまま放出されることもあります(1)。
微小胞は50-500nmの大きさで
細胞膜からそのまま萌芽して放出されます。
アポトーシス小体は1μm以上で
細胞がアポトーシスした際に放出されます。
--
細胞外小胞は細胞間のコミュニケーションの役割を
果たしますが、その一部の機能として
様々な内容物の送達を行います。
細胞の代謝生成物、単鎖の核酸、
フル長さのmRNAやタンパク質などです(37-39)。
細胞外小胞を輸送媒体として利用する際には
高い生体互換性、低免疫原性などがあります(40)。
バイオマーカーとしての診断における応用も含めて
癌治療や心臓血管疾患治療に対して
細胞外小胞の免疫修正や
積載物輸送能力について詳しく調べられています(41.42)。
--
細胞外小胞はドナー細胞、親細胞の性質を引き継ぐ
という性質があります。
例えば、血液細胞由来の細胞外小胞は
全身性の投与をしたときには
血液脳関門を通過できる能力を有しています(43,44)。
間葉系幹細胞由来の細胞外小胞は
間葉系幹細胞が持つ機能と同様に
向炎症性作用や傍分泌特性を持っています(45,46)。
臨床前研究では
様々な細胞種からの細胞外小胞は
毒性を誘発せず、
繰り返しの投与に対する副作用も許容できる
とされています(47)。
細胞外小胞は特異的送達の為に
エンジニアリングできる潜在性を持っています(48,49)。
基本的な課題は
純度の高い性質の揃った細胞外小胞を得るための
分析、分離、純化プロセスにあります。
異なる分離方法が包括的に実験されています(50-52)。
また、付加的な課題としては
効率的な内容物の積載にあります。
積載方法としては
電気穿孔法、
超音波処理、
Extrusion、
統計融解サイクル
これらなどが挙げられています(1)。
近年、いくつかのアプローチが
前段階の積載の特異性を上げるために報告されています。
mRNAとタンパク質を認識するタンパク質
ARRDC1を使用する事に寄って
AARDC1仲介の微小胞の特異的かつ効果的な
積載を促進しています(53)。
ウィルス様の粒子のような非典型の細胞外小胞によって
特定のモチーフ含むmRNAの好意的な取り込みを
可能にする技術があるとされています(1)。

//生体模倣小胞パッケージ//ーー
生体模倣小胞とは合成ナノ粒子と生物学的なそれを
組み合わせたものです。
細胞膜でコートされ、
金、シリカ、脂質ナノ粒子、ポリマーなどの
ナノ粒子が内包されます(54)。
コートをすることで
合成ナノ粒子の免疫原性を緩和することができます。
そのコートは
赤血球、血小板、
免疫細胞、幹細胞、
癌細胞、間葉系幹細胞。
これらなどが挙げられています(55-62)。
この生体模倣小胞は
製造の制御性が高く、
脂質ナノ粒子の安定的な貯蔵能力を持っています。
一方で、生体互換性や標的特異性もあります(63,64)。
現状では有望な選択肢の一つですが、
また研究段階としては黎明期で、
詳細な物理、機械的な見識についてはまだわかっていません。
エクソソームとポリマーの配合は
循環器での安定性は高く
高い貯蔵能力と薬理特性を持っていた
という報告もあります(65)。
合成ナノ粒子や細胞外小胞が持つ欠点を
補う事ができる選択肢の一つになるかもしれません。

//意見//ーー
合成ナノ粒子は60年の歴史があり、
実際に臨床試験で認可された実績もあります。
現在、普及している新型コロナウィルスワクチンで
使われた脂質ナノ粒子も
今までの研究の成果が大きく貢献している
ということです。
安定性した製造性や
新型コロナウィルスの世界的流行による
急速な需要に対して製造ラインを大幅に増強したことで
コスト競争力が高くなっていると考えられます。
一方で
細胞はCAR免疫療法などの細胞医療などと
技術的なつながりはあると考えられますが、
価格が非常高いというデメリットもあります。
細胞外小胞は
本当に安定的な製造ができるか?
そもそもそれを評価する基準がまだ定まっていない
ということから
これから様々な実績が積み上げられていく中で
その利点が生かされるものであると考えられます。
生体模倣の小胞と合わせて、
合成ナノ粒子や細胞医療では
解決しきれない領域において、
あるいは改善の余地が残されている領域において
適用の可否が市場の原理も含めて
決まっていくと考えられます。

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KMT2A-r小児急性リンパ性白血病の5つの亜集団の決定

急性リンパ性白血病(ALL)は
小児がんのうち最も共通的であり、
子供の中でも年長にかかるそれと
年少(小児)のALLの特徴とは異なるとされています(2,3)。
小児ALLでは
高い頻度でKMT2Aの遺伝子再構成(KMT2A-r)によって
性質化され、CD10陰性の未成熟のB細胞前駆表現型と関連し、
非常に高い不良の予後と関係します(4-6)。
全国的な臨床試験(MLL-10)で
KMT2A-r ALLを持つ小児の生存率は大幅に向上したものの
イベントフリー生存は
まだ世界で40%を下回るとされています(4,6)。
--
この疾患の進行性が高い特徴は
子宮内でのKMT2A再構成の発生における
短い潜伏性に反映されます。
この短い潜伏性は
小児ALLの遺伝子安定性を高め、
ほとんど変化する事はありません(7)。
このKMT2Aは
分子的リスク因子であるため(4,5)、
この遺伝子再構成の分子的な特徴を詳しく調べ
その中で存在する遺伝子的な異種性を掴み
適切に分類する事が求められています。
--
Tomoya Isobe, Masatoshi Takagi, Aiko Sato-Otsubo
(敬称略)らはマルチオミックス分析により
KMT2A-r遺伝子再構成があるALLに罹患している
患児84人の診断サンプルを使って
この遺伝子再構成の中においての
効果的な分類を行っています(1)。
--
マスター転写因子IRXとHOXAの2分類のから
さらに細分化させ、
5つの強固なクラスターに分類する事に成功しています。
それらは
IRX-type differentiated (IC1), 
IRX-type undifferentiated (IC2), 
HOXA-type MLLT1 (IC3), 
HOXA-type MLLT3 (IC4), 
HOXA-type AFF1 (IC5).
これらとなっています。
融合パートナー、Bリンパ球生成ステージ
血液、内皮組織発展性。
これらの特徴を示します。
これらの分類のうち
特に予後不良となったのはIC2の分類で
一般的にがん疾患において予後不良として知られている
RTK/RAS経路(8)に関わる遺伝子の変異数が
顕著に高くなっている事が示されています。
但し、この変異量が必ずしも
イベントフリー生存と正の相関があるわけではありません。
IC1グループは他のIC3, IC4, IC5よりも
RTK/RAS経路に関わる変異量は高くなっていますが、
全生存は全てのグループのうち最も高くなっています。
IC1, IC2は
IRXサブタイプですが、
そのサブタイプから分化、未分化に分類されたのは
今回が初めてであるとされています(1)。
特にIC1とIC2の全生存に大きな開きがある事から
この分類の意義は大きいと考えられます。
--
このように遺伝子的な特徴の類似性のある
クラスターに分類する事は
KMT2A-r遺伝子再構成があるALLの
遺伝子分析の意義、診断、治療に貢献するものである
と考えられます。
小児がんは遺伝子異種性が高いので
精密医療が必要であるとされています。
例えば、今回抽出された予後が最も不良である
IC2グループはMEK抑制剤が治療薬剤として
利用できるかもしれないとされています(1)。
臨床試験を行う際においても
亜集団の分類が適性であれば、
その治療効果の評価の精度は上がってくると考えられます。
IC1とIC2が混合した状態であると
有効な評価ができないと考えられるからです。

(参考文献)
(1)
Tomoya Isobe, Masatoshi Takagi, Aiko Sato-Otsubo, Akira Nishimura, Genta Nagae, Chika Yamagishi, Moe Tamura, Yosuke Tanaka, Shuhei Asada, Reina Takeda, Akiho Tsuchiya, Xiaonan Wang, Kenichi Yoshida, Yasuhito Nannya, Hiroo Ueno, Ryo Akazawa, Itaru Kato, Takashi Mikami, Kentaro Watanabe, Masahiro Sekiguchi, Masafumi Seki, Shunsuke Kimura, Mitsuteru Hiwatari, Motohiro Kato, Shiro Fukuda, Kenji Tatsuno, Shuichi Tsutsumi, Akinori Kanai, Toshiya Inaba, Yusuke Shiozawa, Yuichi Shiraishi, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Rishi S. Kotecha, Mark N. Cruickshank, Fumihiko Ishikawa, Tomohiro Morio, Mariko Eguchi, Takao Deguchi, Nobutaka Kiyokawa, Yuki Arakawa, Katsuyoshi Koh, Yuki Aoki, Takashi Ishihara, Daisuke Tomizawa, Takako Miyamura, Eiichi Ishii, Shuki Mizutani, Nicola K. Wilson, Berthold Göttgens, Satoru Miyano, Toshio Kitamura, Susumu Goyama, Akihiko Yokoyama, Hiroyuki Aburatani, Seishi Ogawa & Junko Takita
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新生児集中治療室における未熟児に対する酸素濃度管理

日本では様々な統計を比較的に見ると
低出生体重児はOECDの中で多いものの
新生児、乳児の死亡率が
その割合の傾向を基準とすると有意に低いため
NICUによる早産児の健康管理においては
現場には様々なノウハウがあるものである
と想定されます。
その早産児は、肺を風船のように膨らませるために
必要な肺サーファクタントという物質が
まだ十分に作られていないため
呼吸によって空気を十分に取り込めず
呼吸が速くなったり
酸素不足でチアノーゼを起こしたりします。
従って、
酸素濃度の24時間体制の管理は
少なくとも重要になります。
実際に管理が不十分で間欠的に酸素濃度が下がると
気管支異形成症や運動機能障害のリスクが高まります。
あるいは命の危険にさらされることもあります(3,4)。
従って、
目標酸素濃度を設定して
それをできるだけ長い時間維持できるように
言い換えれば、
好ましい酸素濃度から逸脱する時間を最小化できるように
酸素濃度を管理するシステムを組むことが重要です。
しかしながら、
目標酸素濃度の設定には難しい問題があると
認識しています。
オーストラリアの
The Royal Children's Hospital Melbourneが
発表している目標酸素濃度は
早産児、満期産児に関わらず
酸素補充が必要な場合には
91-95%に設定する必要があるとされています。
一方、アメリカを中心とした
SUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Network
の調査によれば、
命を落としたお子さんの割合は
91-95%の高酸素濃度グループが低かったものの
重度の網膜症は
低酸素濃度グループ85-89%のほうが
半分程度で有意に低かったことが示されています(2)。
但し、この研究は重度の未熟児で
出生体重の中央値は836gです。
従って、場合によるかもしれないですが、
命を落とすリスクを考えると
酸素濃度の目標値は上述したように
91-95%程度である可能性があります。
--
早産のお子さんの健康を維持するための
継続的な酸素の管理方法の一つとして
コンピューター制御された
酸素送達システムが挙げられています(1)。
この自動システムを持つ
いくつかの呼吸サポート機器は
現在、NICUで利用可能であり、
非侵襲、侵襲によるサポートを行うことができます。
この自動化されたシステムでは
マニュアルでの酸素濃度の調整の必要性を下げ、
低酸素状態の平均時間を下げる事に
貢献したことが研究で示されています(5)。
しかしながら、
研究による評価期間は最大でも48時間と短期であり
酸素の安定化の早産児の健康への影響についての
研究は十分ではありません。
--
もう1つは酸素飽和度のデータ管理に関するものです。
コンピューターがデータを取りこんで、
新生児がどれくらいの時間、どの酸素飽和度を経験したか
わかるヒストグラムを現場の医療スタッフに
提供するシステムです。
このシステムにより
標的の酸素飽和濃度の時間が向上した
という研究もあります(6)。
--
酸素飽和度を測定するデバイスである
パルスオキシメーターは身体の動きによって
測定信頼度が低下してしまいます。
新生児は大人のように行動を自律的に制御することが
できないので、無作為な動作に対する
酸素飽和濃度の測定信頼性を継続的に
確保する必要性があります。
それを実現するために
四肢の2か所にパルスオキシメーターを付け
両方の値を比較する事で
真のデータを抽出するというものです。
これにより身体の動きがあったとしても
酸素飽和度の真の値を評価する事ができます。
--
もう1つは経皮的な測定方法です。
この方法では
皮膚を暖めて毛細血管床を動脈化する事で
皮膚の外側の酸素拡散を高めます。
皮膚表面の酸素分圧と
真の動脈酸素分圧の一致は
酸素解離曲線と酸素の消費の因子に依存します。
この方法は
正確性、技術的困難性、やけどなどに対する安全性確保。
これらにおいて課題がありましたが、
近年、より低温で正確に測定することが
できるようになったとされています(7)。
この方法のメリットは
パルスオキシメーターのように
身体の動きによって影響を受けない事です。
しかしながら、
反応時間が遅く、校正時間が必要なので
新生児の蘇生の間に使う事は
少なくともできないとされています。
--
未熟児が生まれてから最初の数週間の
動脈酸素濃度の不安定性は
そのお子さんの短期間、長期間の健康に
関わることかもしれないとされています。
新生児集中治療室(NICU)では
酸素の状態のモニタリングの改善、
健康リスクのある酸素不安定性の閾値の定義、
酸素安定性を改善するシステム、機器が
必要とされています。

(参考文献)
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2022年11月12日土曜日 0 コメント

mRNA治療を実現するためのmRNA構造最適化

mRNAワクチンの技術を使って
一般的な治療に応用する事を考えた場合の
一番のボトルネックは
必要なたんぱく質の量と維持時間が
異なるということです。
従って、
タンパク質を多く、長い時間
安定的に標的細胞で生み出す必要があるので
その為の要素技術を積み上げていく必要があります。
ナノ粒子の標的化だけではなく
mRNAの構造自身にもタンパク質を
効率的に生み出すための技術的介入余地は多くある
とされています。
Eduarde Rohner, Ran Yang, Kylie S. Foo, Alexander Goedel & Kenneth R. Chien
(敬称略)は
mRNAのタンパク質の生産効率を上げるための
要素技術について総括されています。
その内容に
上の背景、考察を加えて
読者の方と情報共有したいと思います。

mRNAの本来持つ免疫原性は
ワクチンとしての効果を増加させますが、
治療としてそれを利用する事を阻害します。
なぜなら
治療は高いタンパク質発現量を必要とするからです。
酵素補充などの応用に対するマウスのモデルでは
局所化した再生治療や癌治療においては
mRNAワクチンに対して
50倍から1000倍程度の高いmRNA用量が
典型的には必要であるとされています(2-24)。
高いレベルでのタンパク質発現の必要性は
自然免疫反応を最小化させるために
mRNA安定性をあげるために
転写効率を最大化させるために
mRNA輸送媒体を最適化するためのの
いくつかの戦略を誘導します。
mRNA輸送媒体の特性は
送達システムに関連して考えられなければなりません。
例えば、
投与方法は直接的なのか?全身性なのか?
対象物のタンパク質の生理の様式はどうか?
これらなどです。

//mRNA輸送媒体//ーー
mRNAの構成要素
〇The cap
〇5' and 3′untranslated regions (UTRs)
〇Open reading frame (ORF) 
〇Polyadenylated (poly(A)) tail
これらはタンパク質発現を強化するために
最適化する事ができます。
5′ cap analogs and 3′ poly(A)は
エクソヌクレアーゼ防御を通した
mRNAの安定性、転写効率
リボソーマル複合体への触媒効果を
最大化させるためにデザインされます(25-29)。
The poly(A) tail length (100–300 nucleotides)。
これの最適化は
与えられたmRNAの合成能力の均衡状態を整える上で
非常に重要です(27,29)。
向上した5'cap analogsは転写効率を向上させるだけではなく
Capping効果を向上させます。
試験管の中では70%から95%に向上しています(25,30)。
3′and 5′UTRの構成は
標的細胞のためカスタマイズすることができます。
それが転写の効率と組織特異性を向上させる事ができます(28,31,32)。
現在、ほとんどのmRNA生産は
α-globin、β-globinからの
合成UTRシーケンスを含んでいます(31-33)。
UTRの最適化はタンパク質発現を
数倍向上させる事ができます(34,35)。
標的に対する注意深いスクリーニングや
カスタマイズが広範な改善を導きます。
それは標的細胞や病変部位微小環境のために仕立てられた
mRNAがタンパク質生成のために転写される効率を
最大化させることを可能にします(34-37)。
--
mRNAワクチンや治療の最も重要な発展は
化学的修正されたヌクレオチドの導入が
試験管、生体内でトランスフェクションされた後
タンパク質発現を顕著に上昇させる
という発見にあります。
これえまでの
最も新しいRNA製法の化学的な修正は
その特性を決める上で中心的でした(38,39)。
130以上の自然発生的なRNA化学的修正が
これまで報告されています(40,41)。
methylpseudouridineの対象
他の修正されたヌクレオチドの対象は
自然免疫系のトール様受容体による検出を
顕著に減らすために中心的な事です。
結果として
修正されていないmRNAと比較して
生体内でのタンパク質発現を上昇させます(42-46)。
生体内送達、mRNA純度の
異なるタイプの化学的修正、キャリア、方法の組み合わせは
驚くべき多様な効果を導きます。
それは最適化のための付加的な余地があるかもしれません(47,48)。
他の多くのRNA化学的修正の特徴と効果は
まだ十分には明らかにされていません(41)。
ヌクレオチド全体から部分的な入れ替えにシフトすることで
さらなる改善が見込めるかもしれません。
自然発生的なmRNA修正は
そのように部分的かつ異種的に修正されているからです(45,47)。
--
mRNAウジリン内容物は自然免疫の活性化に
大きな影響を与えます。
この見識を使って、
臨床的に効果のある非修正のmRNAワクチンは
免疫を逃れ、転写効率を向上させるために
生みだされました。
これは修正されたmRNAワクチンと同様です(47)。
最適なコドン構成要素の分子的な理解は
近い将来において
臨床的に効果のある非修正のmRNAの治療の
生成を促すためのコドン最適化アルゴリズムを
捉える可能性があります(49-51)。
--
タンパク質発現の強化に加えて
慢性疾患のmRNA治療の主な制限要因は
タンパク質生成が比較的短い時間しか維持しない
というです。
従って、安定的にタンパク質生成を行うためには
繰り返しそれを送達させる必要があります。
上で述べた免疫刺激、タンパク質発現問題に対する
mRNA構造的最適化に加えて
タンパク質発現持続時間の向上のために
いくつかのアプローチがあります。
Self-amplifying mRNAs(saRNAs)は
RNAαウィルスの自己増殖を使います。
それは細胞質でRNA転写を増幅させます。
しかし、
対象となる遺伝子の
ウィルス構造的子ど遺伝子を入れ替えます(52-55)。 
saRNA転写複製は発現動力を延長させるので
輸送頻度を減少させることによって
酵素補充治療に対して適しています(53)。
このアプローチは
タンパク質発現を上昇させ
他のmRNAに対して10倍少ない量で
同じ量のタンパク質を発現させることができます。
従って、今生体内で試験され
ワクチン生産のための大量生産のための
生産技術の検討が行われています(53-55)。
またsaRNAはmRNAs全体のサイズを小さくすることにも
貢献します(56,57)。
--
従来のlinear mRNAのもう一つの代替は
circular mRNA (circRNA)です。
RNA’s loose endsの折り畳みは
circRNAを酵素の分解から守ります。
それによってトランスフェクトされたHEK293細胞で
RNA寿命が2倍拡張しました(58-60)。
長寿命化はタンパク質発現の強化なしに
トータルのタンパク質の発現量を
上昇させることができます(58-60)。
circRNAは
コスト的な5'キャップと
扱いにくい3′ poly(A) tailを
避ける事ができます(59,60)。
環状化は化学的な入れ替えなしに
RIG-1やトール様受容体認識を強く減らすことができます(58,59)。

//RNA純度化//ーー
mRNAの試験管内での合成は
望まない副生成物が生じます。
例えば
double-stranded RNA (dsRNA), uncapped mRNA or mRNA fragments.
これらなどです。
これらの副生成物は
強くmRNAトランスフェクションを干渉し、
自然免疫系を活性化させます。
またトータルのmRNA輸送媒体の過剰評価を導きます(61)。
液体クロマトグラフィがmRNA生産物の純化のために
使用されます。
セルロース純化、アニオン交換、水素結合などが
類似した目的の為、発展されてきました(61,62)。
化学的修正のある、ないmRNAに対して純化を行った場合
human EPOは400%, 30%それぞれ上昇しました(46,48)。
これは不純物を取り除くことの重要性を示唆する
データです。

//考察//ーー
タンパク質を効率的に生み出す介入余地は多く
現時点の量よりも桁で多くのタンパク質を
生みだす可能性が残されています。
mRNA自身で効率を劇的に上げる事は
ナノ粒子による標的化のハードル、技術的負荷を
下げる事にもつながります。

(参考文献)
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小児ホジキンリンパ腫に対するCD30標的抗体薬物複合体の治療効果

小児がんのうち最も多いのが白血病で
その次が脳腫瘍、リンパ腫となっています。
子供のがんは多種多様であり、
希少性のがんも多いことから
それに合わせた治療が必要であり
課題も多いとされていますが、
上述した白血病、脳腫瘍、リンパ腫の
主に血液と脳に関わるがんは
全体の6割を占めます。
血液性のがんは
腸などにできる粘膜に複数の癌細胞が覆われた腺腫ではなく
各細胞の独立性が高いと考えられています(2)。
固形の癌は微小環境と共に
組織化、塊を作るという特徴がありますが、
血液性の癌は流動性があります。
また、薬剤を全身投与する場合には
血流などを通した循環器が
薬剤送達ルートとなるため、
適切に標的化すれば、効果が現れやすいかもしれない
ということがあります。
従って、特定のタンパク質を標的とした
CAR免疫細胞治療の初めの癌の対象は
血液性のがんです。
同じように特定のタンパク質を標的とする
抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate)も
血液性の癌細胞に対して、
特異的な標的性があれば、
その効果を期待することができます。
ホジキンリンパ腫はB細胞やT細胞などのリンパ球が
癌化するがん疾患ですが、
リードシュテインベルク細胞のCD30を標的とする
ブレンツキシマブ ベドチンという
抗体薬物複合体が治療の為の対象薬剤となっています。
この
ホジキンリンパ腫は小児の治療の場合には
抗がん剤による化学療法に加えて
PETやCTなどの画像診断の結果に従い
リンパ節に対して放射線治療を行うなど
大人の癌に比べて
その状況に合わせて多様であるとされています(1)。
元来の治療によっての生存率が比較的高い
小児がんではありますが、
その後の後遺症などを考えると
初期的な病気のコントロールの改善が
必要であるとされています(3-5)。
上述したCD30の抗体薬物複合体である
ブレンツキシマブ ベドチンの
18歳以上のリスク低減の効果が確認されています(6)。
また、
18歳以下のホジキンリンパ腫罹患の患児に対して
ブレンツキシマブ ベドチン投与の安全性評価で
許容範囲である(tolerable)という
結果が示されています(7)。
S.M. Castellino(敬称略)らは
非盲検のフェーズ3治験として
従来の化学療法に対する
ブレンツキシマブ ベドチンの効果の比較を
行っています(1)。
--
人数は両グループで600人程度。
年齢は中央値15.4歳
12歳以下 17.4%
12-21歳 82.6%
女性は46.3%
ステージ
IIB 20.8% ⅢB 19.8% ⅣA 28.2% ⅣB 31.2%
組織学的特徴
結節性硬化症 75.2%
--
抗体薬物複合体+化学療法グループと
標準的治療グループの比較
追跡調査中央値42.1カ月
3年イベントフリー生存 92.1% (vs 82.5%)
再発累積発現率 7.5% (vs 17.1%)
ステージがⅡB、ⅢBでは効果が顕著に高い。
骨髄病変があるとほとんど効果がない。
女性の方が効果が高い。
大きな縦隔の肥大があると効果が高い。
--
抗体薬物複合体治療群のほうが高い副作用
粘膜、口腔の有害事象(10.4% vs 7.3%)
腸炎、盲腸炎の有害事象(4.4% vs 1.7%)
血栓の有害事象(3.7% vs 1.7%)。
-
頻度の高い副作用
発熱性好中球減少(30.9% vs 32.5%)。
末梢神経障害(18.8% vs 19.4%)。

//考察//ーー
いくつか考えるポイントがあります。
抗体薬物複合体は化学療法と合わせて治療が行われる
ということです。
この抗体薬物複合体は
モノメチルアウリスタチンEと呼ばれる
毒性の強い有糸分裂阻害薬が用いられますが、
これだけでは治療としては不十分であるということです。
標的性を上げて
その薬剤だけで治療が行えるという形式に持っていくためには
付加的な機能としてどういったことが必要か?
という事は
今後、ナノ粒子などを含めた
標的治療において重要となってくる部分です。
今回の治療では
イベントフリー生存率が高くと再発率が低くなっており
治療効果はあると考えられますが、
一方で
副作用に関しては
グレード3以上のものに関しては
やや多くなっています。
このような副作用の影響が一時的なのか?
それとも後遺症に関わる事なのか?という視点があります。
一方で、治療効果が上げられたことが
後遺症の程度を下げる可能性もあるという視点もあります。
今回、グレードⅢ以下のステージの癌では
イベントフリーに対する効果が顕著に高かったことと
冒頭で述べたように初期的な病変のコントロールが
その予後に関わるということを合わせて考えると
お子さんの5年後、10年後の状態においては
急性期の副反応よりも
治療効果によって良化する可能性があります。
再発率が低いことも関係します。
--
女性の方が効果が高いということは
顕著に統計的有意性が認められます。
これをどのように解釈するか?
という事が重要になります。
性ホルモンが関係しているのか
今回示された結果の中で
1つ重要な位置づけであると考えられます。
年齢も
12歳以下のほうが
リンパ腫全体的にがんイベント発生率が低いことや
その中で抗体薬物複合体群が顕著に低くなっている事も
着目点です。
--
骨髄病変がある場合には
ほとんど効果がみられないという事も
重要なデータです。

(参考文献)
(1)
Sharon M. Castellino, M.D., Qinglin Pei, Ph.D., Susan K. Parsons, M.D., David Hodgson, M.D., Kathleen McCarten, M.D., Terzah Horton, M.D., Ph.D., Steve Cho, M.D., Yue Wu, M.S., Angela Punnett, M.D., Hema Dave, M.D., Tara O. Henderson, M.D., Bradford S. Hoppe, M.D., Anne-Marie Charpentier, M.D., Frank G. Keller, M.D., and Kara M. Kelly, M.D
Brentuximab Vedotin with Chemotherapy in Pediatric High-Risk Hodgkin’s Lymphoma
The New England Journal of Medicine 2022; 387:1649-1660
(2)
Robert Noble, Dominik Burri, Cécile Le Sueur, Jeanne Lemant, Yannick Viossat, Jakob Nikolas Kather & Niko Beerenwinkel 
Spatial structure governs the mode of tumour evolution
Nature Ecology & Evolution (2021)
(3)
National Cancer Institute. Cancer stat 
facts: Hodgkin lymphoma. 2019 (https://
seer . cancer . gov/  statfacts/  html/  hodg . html).
(4)
Castellino  SM,  Geiger  AM,  Mertens 
AC, et al. Morbidity and mortality in long-
term survivors of Hodgkin lymphoma: 
a report from the Childhood Cancer Sur-
vivor Study. Blood 2011; 117: 1806-16.
(5)
Oeffinger  KC,  Stratton  KL,  Hudson 
MM, et al. Impact of risk-adapted therapy 
for pediatric Hodgkin lymphoma on risk 
of long-term morbidity: a report from the 
Childhood Cancer Survivor Study. J Clin 
Oncol 2021; 39: 2266-75.
(6)
Connors  JM,  Jurczak  W,  Straus  DJ,  
et al. Brentuximab vedotin with chemo-
therapy for stage III or IV Hodgkin’s lym-
phoma. N Engl J Med 2018; 378: 331-44.
(7)
Cole PD, McCarten KM, Pei Q, et al. 
Brentuximab  vedotin  with  gemcitabine 
for paediatric and young adult patients 
with  relapsed  or  refractory  Hodgkin’s 
lymphoma  (AHOD1221):  a  Children’s 
Oncology Group, multicentre single-arm, 
phase  1-2  trial.  Lancet  Oncol  2018; 19: 
1229-38.


2022年11月11日金曜日 0 コメント

mRNA治療の施錠を解くための背景と課題

新型コロナウィルス感染症に対する
脂質合成ナノ粒子によるmRNAワクチンの大きな成功は
今後、その形式を使ったmRNA治療(2)の発展性の余地を大きく与えます。
mRNA治療の初期の臨床試験は
心不全のためのVEGF mRNAや
先天性の肝臓疾患に対するCRISPR-Cas9などが含まれます。
しかしながら、
課題はまだまだ多く残されています。
この課題を乗り越えるために
mRNA積載物を最適化したり、
組織に対して走化性を持つ脂質ナノ粒子を設計したり
経皮的な送達システムを生体内で考案したりされています。
これらの課題解決案を懸命に取り込んでいくことは
生物学的な標的性を持ったmRNA治療の約束(promise)を
解き放つものです(1)。
その応用性はワクチンや他の免疫刺激性の媒体としての
利用を超える広範なものになる可能性を秘めています。
この記事では
Eduarde Rohner, Ran Yang, Kylie S. Foo, Alexander Goedel & Kenneth R. Chien
(敬称略)の総括の中の
mRNA治療をより広範な治療に応用する上での
課題を含めた背景について参照しました。
それに追記を加え、
読者の方と情報共有したいと思います。

COVD-19 mRNAワクチンの急速なデザインと発展は
SARS-CoV-2に対する免疫獲得のための
新しい生命工学プラットフォームを構築しました。
これらの方式は
微生物学的な病原体、癌などの治療に対しても
応用が可能です(3-6)。
新型コロナウィルス感染症のパンデミックは
公衆衛生において危機的な状況をもたらしたので
歴史上ない迅速な臨床試験承認を経て
世界中に普及しました。
結果として数十億人の免疫獲得を可能にしました。
--
mRNA治療を癌治療など他の治療に応用させようとした場合には
新型コロナウィルス感染症に対するmRNAワクチンと比べて
付加的な課題があるとされています。
mRNAによる免疫獲得は抗原を通じて
細胞性、抗体仲介の免疫により雪崩式に強化されていくので
比較的少ない量で済むと言われています。
それと比較して
mRNA治療は治療の閾値に達するために
1000倍レベルの高用量が必要であるとされています。
これは標的細胞に効率的に取り込まれる
重要性を示唆するものです。
新型コロナウィルスでも副反応があったことから
1000倍の濃度に仮にすると
もっと重篤なそれが生じてしまう可能性があります。
従って、
標的性を高める事は
従来の薬剤に対する優位性、差別化を図るために
必須の生命工学(Biotechnology)であるといっても
過言ではないかもしれません。
しかしながら、
各組織、臓器へ標的性を高める事は容易ではありません。
一般的にナノ粒子はアポリポタンパク質などを
コロナとして取り込み
それに結合親和性のある肝臓に蓄積される傾向があります。
従って、癌などの病変部位を含めた組織や
特定の臓器に向性を持たせる事には課題があります。
もう一つの主要な障壁は
反復的な投与が必要なことです。
新型コロナウィルスのワクチン接種は
少ない用量の上に少なくとも2週間以上の間隔が
開けられました。それも2回までです。
従って、反復投与による過剰な免疫惹起が懸念されます。
このような課題を乗り越えるために
技術開発が現在進行形で進んでいます(7-11)。

//考察//ーー
上述した情報から受け取った
想定される一番のボトルネックは
投与されるナノ粒子の量と頻度が
治療目的とする場合には
新型コロナワクチンよりも顕著に高い
ということです。
用量を基準にすると1000倍ともいわれています。
従って、
合成ナノ粒子を含めて
様々な輸送媒体がありますが、
新型コロナウィルスワクチンでも
免疫惹起がみられ、
その原因は脂質ナノ粒子であるということも
否定はできないので、
そうであった場合には
ナノ粒子の免疫原性を顕著に低くする
必要性が出てくるのではないか?
と考えられます。
あるいは上述したように
標的化技術を含めて
病変部位、特定の臓器に対しての
走化性を顕著に高めることです。
一方で、
ワクチンでは健康な人に投与されますが、
治療では疾患に罹患した人なので
そのメリットとデメリットの天秤の基準が
そもそも違うという事も認識する必要があります。
つまり
新型コロナウィルスワクチンを超える
副作用があったとしても
それで難しい疾患が改善するならば
メリットが顕著に上回るという考え方です。

(参考文献)
(1)
Eduarde Rohner, Ran Yang, Kylie S. Foo, Alexander Goedel & Kenneth R. Chien
Unlocking the promise of mRNA therapeutics
Nature Biotechnology volume 40, pages1586–1600 (2022)
(2)
Xiangang Huang, Na Kong, Xingcai Zhang, Yihai Cao, Robert Langer & Wei Tao 
The landscape of mRNA nanomedicine
Nature Medicine (2022)
(3)
Baden, L. R. et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 
SARS-CoV-2 caccine. N. Engl. J. Med. 384, 403–416 (2021).
(4)
Dong, Y. et al. Poly(glycoamidoamine) brushes formulated 
nanomaterials for systemic siRNA and mRNA delivery in vivo. 
Nano Lett. 16, 842–848 (2016).
(5)
Polack, F. P. et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA 
Covid-19 vaccine. N. Engl. J. Med. 383, 2603–2615 (2020).
(6)
Barbier, A. J., Jiang, A. Y., Zhang, P., Wooster, R. & Anderson, D. G. 
The clinical progress of mRNA vaccines and immunotherapies. 
Nat. Biotechnol. 40, 840–854 (2022).
(7)
Apgar, J. F. et al. Quantitative systems pharmacology model of 
hUGT1A1-modRNA encoding for the UGT1A1 enzyme to treat 
Crigler–Najjar syndrome type 1. CPT Pharmacometics Syst. 
Pharmacol. 7, 404–412 (2018).
(8)
Connolly, B., Isaacs, C., Cheng, L., Asrani, K. H. &  
Subramanian, R. R. SERPINA1 mRNA as a treatment for alpha-1 
antitrypsin deficiency. J. Nucleic Acids 2018, 8247935 (2018).
(9)
Rybakova, Y. et al. mRNA delivery for therapeutic anti-HER2 
antibody expression in vivo. Mol. Ther. 27, 1415–1423 (2019).
(10)
Krienke, C. et al. A noninflammatory mRNA vaccine for treatment 
of experimental autoimmune encephalomyelitis. Science 371, 
145–153 (2021).
(11)
Gillmore, J. D. et al. CRISPR–Cas9 in vivo gene editing for 
transthyretin amyloidosis. N. Engl. J. Med. 385, 493–502  
(2021).


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新型コロナウィルスの後遺症

新型コロナウィルス感染症で考慮する必要があるのが
急性期の症状だけではなく、
急性期を過ぎて続く身体の不調である
新型コロナウィルス後遺症(Long covid)です。
ウィルスやウィルスによって惹起された免疫の
影響は全身に広がる事もあり、
それも関係したと考えられる後遺症は
すべての組織、臓器に関連します。
倦怠感や神経認知機能に関わるブレインフォグや
心臓血管疾患などに加えて、
腎臓に対する影響もあります。
Ziyad Al-Aly(敬称略)らは
とりわけ腎臓に関する急性期、後遺症のコメントを
中心に上梓しています(1)。
新型コロナウィルスのパンデミックで
新しく発生した腎臓疾患は
少なくとも数百万人に及ぶとされています。
実際に糸球体ろ過量(GFR値)は
重症度に応じて非感染者と比べて
相対的に低下するものの
入院を必要としない人でも統計的に
コホート研究では低下していることが
示されています(2)。
一旦、腎臓の機能が低下すると
感染症から回復してもそれに応じて
その機能が回復するとは限らないので
腎臓だけに限らず
脳や心臓血管も含めて
新型コロナウィルス感染症に付随した疾患の影響は
パンデミックが収束しても長く続く
とコメントされています(1)。
その様な影響は
年齢、性別、地域、国、既往歴などによっても
異なると考えられるので、
より細かい分析が必要になると思います。
国が異なれば、その影響も異なる可能性があります。
治療もまだ確立しておらず、
隠れた症状も含めて
適切な治療を受けられていない人も
多くいるかもしれません。
その様な事も含めて長期的にモニターしていく
必要があると考えます。
また、効果的な治療が見つかれば
それを迅速にシェアすることの重要性もある
と思われます。

(参考文献)
(1)
Ziyad Al-Aly, Anupam Agarwal, Nisreen Alwan & Valerie A. Luyckx 
Long COVID: long-term health outcomes and implications for policy and research
Nature Reviews Nephrology (2022)
(2)
Gu, X. et al. Association of acute kidney injury with 1-year outcome of kidney function in 
hospital survivors with COVID-19: a cohort study. EBioMedicine 76, 103817 (2022).


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尿の細胞外小胞による小児腎臓疾患の検査

遺伝的な要素も含まれる子供の慢性腎疾患では
ネフロンの機能が低下しています。
それを悪化させないためには
早期のうちに発見して適切な治療に結びつける
事が大切です。
腎臓は血液を糸球体でろ過して
尿として排出するため
腎臓の情報が尿に現れる事が考えられます。
従って、
尿検査によって検出が試みられますが、
既存の尿検査では早期発見が困難な疾患も
多く存在する事が課題とされてきました。
従って、
腎臓の疾患に対して感度の高い検査が
求められています。
Keiichi Takizawa(敬称略)らは
尿中の細胞外小胞に着目して
粒子の形状やたんぱく質の発現パターンを調べました(1,2)。
それらの結果を解析することにより
小児の腎機能の低下を検出できることが示されました。
具体的には腎機能が低下している患児では
細胞外小胞の大きさが変化する事がわかっています。
また、先天的に腎臓のネフロンの数が減少している
低形成腎疾患では
タンパク質の発現のパターンに
特徴的な変化があることが示されました。
このような尿の細胞外小胞による検査方法は
従来のタンパク質の抗原抗体反応を見るELISAを
タンパク質分析のため利用する事が出来、
従来の尿検査や血液検査に加えた
新しい検査方法として期待されるとされています。

(参考文献)
(1)
東京大学、公益財団法人がん研究会
腎臓病の診断に応用できる新たな尿検査法を開発 
(2)
Keiichi Takizawa, 1 Koji Ueda, 2 Masahiro Sekiguchi, 1 Eiji Nakano, 1 Tatsuya Nishimura, 1 Yuko Kajiho, 1
Shoichiro Kanda, 1 Kenichiro Miura, 3 Motoshi Hattori, 3 Junya Hashimoto, 4 Yuko Hamasaki, 4 Masataka Hisano, 5
Tae Omori, 6 Takayuki Okamoto, 7 Hirotsugu Kitayama, 8 Naoya Fujita, 9 Hiromi Kuramochi, 10 Takanori Ichiki, 10
Akira Oka, 1 and Yutaka Harita 1
Urinary extracellular vesicles signature for diagnosis of kidney disease
iScience November 08, 2022

2022年11月8日火曜日 0 コメント

慢性腎疾患に対するエンパグリフロジン投与の効果

慢性腎疾患は度々進行性を示し、
糸球体ろ過量であるGFR値の低下や
尿タンパク質であるアルブミン量が増加し
それがさらに腎疾患を悪化させる
リスク因子となります(2)。
人工透析や腎臓移植
それによる生活の質の低下や
心臓血管疾患の罹患や死亡を考慮すると
慢性腎臓疾患の進行を抑え、
人工透析、腎臓移植を避けることは
高く望まれます(3)。
今まで
腎不全への進行リスクを下げるために
〇RAS抑制剤(4-6)
〇SGLT2抑制剤(7,8)
〇non-steroidal mineralocorticoid受容体アンタゴニスト(9,10)
これらの薬剤が実績がありました。
しかし、
糖尿病を発症していない人や
症状としては比較的軽い人などが
世界では多く占めます。
それらの軽症の腎疾患の患者さんを含めて
無作為比較試験を大規模に行う事は
公衆衛生においてとりわけ重要であるとされています(1)。
The EMPA-KIDNEY trialでは
広範囲の症状を持つ人を含めて
8544人(無作為対象:6609人)の大規模な
無作為比較試験を
上述したSGLT2抑制剤の一つである
エンパグリフロジン(Empagliflozin)を使って
2年間にわたって
フォローアップ研究を行っています(1)。
このSGLT抑制剤は
腎臓でのブドウ糖の再吸収を阻害し、
血糖値を下げる事であると考えられる
とされています。
従って、Ⅱ型糖尿病の治療に使用されます。
しかし、細胞レベルでの作用機序は
今のところよくわかっていないとされています
--
偽薬群と条件は揃える。
年齢中央値:63.9±13.9
女性の割合:33.2%
人種:白人:58.7%, アジア人:36.1%
糖尿病既往歴:いいえ(53.8%)
心臓血管疾患既往歴:いいえ(73.9%)
BMI:29.7±6.7%
GFR値
<0 ml/min/1.73m2 34.2%
≧30 to <45 ml/min/1.73m2 44.4%
≧45 ml/min/1.73m2 21.4%
Urinary albumin-to-creatinine ratio
<30          20.1%
≥30 to ≤300  28.1%
>300         51.8%
--
(エンパグリフロジン/偽薬)ハザード比
腎疾患の進行 0.71 
心臓血管原因による死亡 0.84
末期腎疾患もしくは心臓血管原因による死亡 0.73
--
エンパグリフロジンにおける偽薬に対する
目立った副作用はありません。
頻度は低いが
重度の脱水、下肢切断がやや高い。
SGLT2阻害薬で見られる有害事象のうち
尿路感染症があるが、
エンパグリフロジン投与における
このリスクは少なくとも高くありません。
--
エンパグリフロジンは血糖値を下げる効果が
あるためか?
糖尿病を持つ人における
腎疾患の進行もしくは心臓血管原因による死亡の
に対するエンパグリフロジン投与の効果が
より高くなっています。
尿蛋白である
Urinary albumin-to-creatinine ratioが
300以上の顕性アルブミン尿では
エンパグリフロジン投与による
上述したリスク因子に対する効果が
高くなっています。
--
GFR値の低下量(評価期間:36カ月)
エンパグリフロジン投与群 -1.37±0.08
偽薬群 -2.75±0.08

(参考文献)
(1)
The EMPA-KIDNEY Collaborative Group*  
Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease
The New England Journal of Medicine  November 4, 2022,
(2)
Fox CS, Matsushita K, Woodward M, 
et al. Associations of kidney disease mea-
sures with mortality and end-stage renal 
disease in individuals with and without 
diabetes:  a  meta-analysis.  Lancet  2012; 
380: 1662-73.
(3)
Webster  AC,  Nagler  EV,  Morton  RL, 
Masson P. Chronic kidney disease. Lancet 
2017; 389: 1238-52.
(4)
Brenner BM, Cooper ME, de Zeeuw D, 
et al. Effects of losartan on renal and car-
diovascular  outcomes  in  patients  with 
type 2 diabetes and nephropathy. N Engl J 
Med 2001; 345: 861-9.
(5)
Lewis EJ, Hunsicker LG, Clarke WR, 
et al. Renoprotective effect of the angio-
tensin-receptor  antagonist  irbesartan  in 
patients with nephropathy due to type 2 
diabetes. N Engl J Med 2001; 345: 851-60.
(6)
Lewis  EJ,  Hunsicker  LG,  Bain  RP, 
Rohde RD. The effect of angiotensin-con-
verting-enzyme  inhibition  on  diabetic 
nephropathy.  N  Engl  J  Med  1993; 329: 
1456-62.
(7)
Perkovic V, Jardine MJ, Neal B, et al. 
Canagliflozin and renal outcomes in type 
2 diabetes and nephropathy. N Engl J Med 
2019; 380: 2295-306.
(8)
Heerspink HJL, Stefánsson BV, Correa-
Rotter R, et al. Dapagliflozin in patients 
with chronic kidney disease. N Engl J Med 
2020; 383: 1436-46.
(9)
Bakris GL, Agarwal R, Anker SD, et al. 
Effect of finerenone on chronic kidney dis-
ease outcomes in type 2 diabetes. N Engl 
J Med 2020; 383: 2219-29.
(10)
Pitt B, Filippatos G, Agarwal R, et al. 
Cardiovascular events with finerenone in 
kidney disease and type 2 diabetes. N Engl 
J Med 2021; 385: 2252-63.

2022年11月7日月曜日 0 コメント

ペマフィブラート介入によるトリグリセライドの心臓、血管、腎臓、肝臓のリスク評価

トリグリセライド(Triglyceride)は
中性脂肪の事であり、
コレステロールと同様に食事から取り入れられるもの
だけではなく、肝臓でもつくられており、
その大部分は筋肉や心臓でのエネルギー源として
利用されています。
このトリグリセライドが高くなると
心臓血管に関する疾患のリスクが高まると懸念されていますが、
すでにトリグリセライドが高い人に対して
このトリグリセライドを下げる事が
本当に心臓血管系の疾患のリスクを下げるかどうか?
これについては明らかではありませんした(2)。
これまで
〇高用量オメガ3不飽和脂肪酸(3)
〇ナイアシン(4)
〇フェノフィブラート(5,6)
これらでは、トリグリセライドのレベルを
実際に20~29%下げたにもかかわらず、
心臓血管系の疾患のリスクが
下がらなかったとされています。
これらは人による
無作為化比較試験の結果によります。
この臨床結果に対してより強い証拠を与えるために
A. Das Pradhan(敬称略)らは、
ペマフィブラート(pemafibrate)による介入による
無作為化比較試験を行っています(1)。
このペマフィブラートは
上述した介入と同じように
トリグリセライドを下げる効果と
HDLコレステロールを上げる効果があり、
標的となるPPARαの
オフターゲット効果は少ないとされています(7-12)。
--
一万人規模の試験で
参加者の中央値は64歳となっています。
女性の割合は低く27.5%。
ほとんどの人種が白人85.4%で
アジア人は5.6%となっています。
日本からの参加は
両グループ(ペマフィブラート、偽薬)合わせて
300人程度となっています。
BMI平均は32で
高血圧は91.4%
10年以上糖尿病の人は46.4%
すでにコレステロールを下げる薬
スタチンを飲んでいる人は95.8%でした。
--
トリグリセライドのベースラインレベルは
両グループでおおよそ270mg/dlで
ペマフィブラート介入4か月の時点で比較すると
薬剤介入群では31.1%の減少し、
両グループの差は26.2%となっています。
LDLコレステロールも
ペマフィブラート投与群で25.8%低くなっています。
しかしながら、
〇心筋梗塞
〇虚血性脳卒中
〇冠動脈再灌流
〇心臓血管系による死亡
これらにおいて
両グループの比較において有意差はありませんでした。
これは今までの結果と一致します。
これらの評価期間は
ペマフィブラート投与を行ってから
中央値で3.4年です。
一方で、
ペマフィブラート投与群は
腎臓系の有害事象がやや高い結果となっています。
全体で12%程度。
静脈血栓塞栓症、肺塞栓においては
2倍程度ペマフィブラート投与群で高くなっています。
但し、発症率はそれぞれ0.43%, 0.24%と高くはありません。
一方で
非アルコール性脂肪肝を中心に
肝臓の有害事象は
ペマフィブラート投与群で
17%程度低くなっています。

//考察//ーー
一度、中性脂肪が高い状態になった人に対して
栄養や薬剤での介入によって
中性脂肪値を下げても、
心臓血管系の疾患の罹患のリスクは
有意には下がらない事が複数の
無作為比較試験によって示されています。
コレステロールや中性脂肪が高いと
動脈硬化が進行し、狭心症、心筋梗塞、
脳梗塞の原因となると
一般的には言われることがありますが
今度は
コレステロールや中性脂肪値が
元々高くない人と薬剤によって下げた人との
比較においてはどうか?
という視点もあります。
また、同様に
純粋な比較は難しいかもしれないですが、
重度の肥満(BMI:30以上)ではなく、
体重が適正にコントロールされた人との
心臓血管系の発症リスクはどうか?
という視点もあります。
一方で、
A. Das Pradhan(敬称略)らの結果から、
ペマフィブラート(薬剤)によって下げた場合、
脂肪肝のリスクは下がっていますが、
腎臓疾患や血栓のリスクが高まっている事なども
示されています。

(参考文献)
(1)
Aruna Das Pradhan, M.D., M.P.H., Robert J. Glynn, Sc.D., Jean-Charles Fruchart, Ph.D., Jean G. MacFadyen, B.A., Elaine S. Zaharris, B.A., Brendan M. Everett, M.D., M.P.H., Stuart E. Campbell, B.A., Ryu Oshima, M.S., R.Ph., Pierre Amarenco, M.D., Dirk J. Blom, M.D., Ph.D., Eliot A. Brinton, M.D., Robert H. Eckel, M.D., Marshall B. Elam, M.D., Ph.D., João S. Felicio, M.D., Ph.D., Henry N. Ginsberg, M.D., Assen Goudev, M.D., Shun Ishibashi, M.D., Ph.D., Jacob Joseph, M.D., Tatsuhiko Kodama, M.D., Ph.D., Wolfgang Koenig, M.D., Lawrence A. Leiter, M.D., Alberto J. Lorenzatti, M.D., Boris Mankovsky, M.D., Nikolaus Marx, M.D., Børge G. Nordestgaard, M.D., D.M.S.C., Dénes Páll, M.D., Kausik K. Ray, M.D., Raul D. Santos, M.D., Ph.D., Handrean Soran, M.D., Andrey Susekov, M.D., Ph.D., D.Sc., Michal Tendera, M.D., Koutaro Yokote, M.D., Ph.D., Nina P. Paynter, Ph.D., Julie E. Buring, Sc.D., Peter Libby, M.D., and Paul M Ridker, M.D., M.P.H. for the PROMINENT Investigators*
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(4)
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(5)
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(7)
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(8)
Ishibashi S, Yamashita S, Arai H, et al. 
Effects of K-877, a novel selective PPARα 
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Atherosclerosis 2016; 249: 36-43.
(9)
Arai H, Yamashita S, Yokote K, Araki 
E, Suganami H, Ishibashi S. Efficacy and 
safety of K-877, a novel selective peroxi-
some  proliferator-activated  receptor  α 
modulator  (SPPARMα),  in  combination 
with  statin  treatment:  two  randomised, 
double-blind,  placebo-controlled  clinical 
trials in patients with dyslipidaemia. Ath-
erosclerosis 2017; 261: 144-52.
(10)
Ishibashi S, Arai H, Yokote K, Araki E, 
Suganami H, Yamashita S. Efficacy and 
safety of pemafibrate (K-877), a selective 
peroxisome  proliferator-activated  recep-
tor α modulator, in patients with dyslipid-
emia: results from a 24-week, randomized, 
double  blind,  active-controlled,  phase  3 
trial. J Clin Lipidol 2018; 12: 173-84.
(11)
Araki E, Yamashita S, Arai H, et al. 
Effects of pemafibrate, a novel selective 
PPARα  modulator,  on  lipid  and  glucose 
metabolism in patients with type 2 diabe-
tes and hypertriglyceridemia: a random-
ized,  double-blind,  placebo-controlled, 
phase 3 trial. Diabetes Care 2018; 41: 538-46.
(12)
Ginsberg HN, Hounslow NJ, Senko Y, 
et al. Efficacy and safety of K-877 (pemafi-
brate),  a  selective  PPARα  modulator,  in 
European patients on statin therapy. Dia-
betes Care 2022; 45: 898-908.

2022年11月5日土曜日 0 コメント

インテグリン装飾の細胞外小胞による薬剤送達システム

トランスレーショナル医療は
基礎から臨床応用へつなぐ医療を考える事ですが、
基礎から臨床というベクトルだけではなく、
臨床から基礎という方向性で考えていく事も
重要であると考えられます。
Chikako Shibata(敬称略)らは
がん患者で多く診られる悪液質が
膵臓がん患者では、
まだ病変が局所に留まっているうちから
体重減少を呈する事を臨床現場から認知しています(2)。
日本癌治療学会学術集会による
コホート研究によると
悪液質(5%以上の体重減少)と診断された割合は
膵臓がんの患者さんにおいて
1次治療化学療法前で50%であり
そこから治療を始めて
最終的に70%まで上昇したと報告されています。
実際にこの報告でも
膵臓がん患者で高頻度に見られるとされています。
このような人による
臨床的な事実から
Chikako Shibata(敬称略)らは
癌細胞から多く放出される細胞外小胞に焦点を当て
それが全身の脂肪分解に関与しているのではないか?
と仮説を立てて検証しました(2)。
それによって
膵臓がんから特異的に放出される
細胞外小胞は脂肪分解物質を含み、
表面にインテグリンα6β1を装飾している事で
脂肪細胞との吸着性が高まっている
という事を示しました。
このインテグリンα6β1は
肺や脂肪組織特異的に発現されている
ラミニンα4, α5に
特異的な強い接着機能があることが
確認されたため、
膵臓がんに罹患している患者さんの
がん細胞から放出された細胞外小胞は
インテグリン依存的な機序で
脂肪分解が促されていると推測できます。
実際には悪液質はサイトカインなど
免疫的な作用もある(3)とされていますし、
点滴をするかもしれないですが、
癌の代謝のエネルギーの高さから
エネルギー不足に陥りやすいということも
挙げられるかもしれません。
その様な事は
悪液質を改善する上で逐次考えていく必要はある
と認識していますが、
このインテグリン依存的な
細胞外小胞の輸送機序を「逆用」することで
細胞種特異的な薬剤送達システムに
活かすことができないか?
という視点を強く持っています。
もし、
臨床現場で今回調べられた膵臓がんで
悪液質に罹った多くの患者さんの
脂肪の減少が全身に及んで起こるとするならば、
逆に考えると
そのような特異的送達が
全身の組織に対しても行える可能性があるのではないか?
と想定することができます。
それは人の臨床の結果から得たヒントなので
基礎から臨床応用を考える際において
非常に重要で、有効な事です。
科学技術一般的には
「自然からその機能について学ぶ」
という考え方がありますが、
人の身体も自然の一部ですから
人の身体で生じた結果からヒントを得る考え方は
いくつかの難しい壁を乗り越える
アイデアを与えてくれるものかもしれません。
従って、
脂肪の分解がどのように、どのような箇所で起こっているのか?
男性と比較して脂肪の多い女性の患者さんではどうか?
といった臨床現場の情報が非常に重要になります。
--
このインテグリンは
Eun Jeong Park(敬称略)らの総括(1)から
免疫細胞を含め、細胞の移動性を決める
非常に重要な因子であることが知られています。
インテグリンを活性化させれば
固着して移動性を失い、
それを不活性化させれば、移動性を獲得します。
従って、
移動性を決める「スイッチ」のような役割を
果たしていると考えられます。
細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)では
主に薬剤の「輸送」について考え、
ナノ小胞の一つとして
細胞外小胞を重要な選択肢としています。
インテグリンは細胞の移動性を決める
1つの重要な表面リガンドですから
細胞と似た形質を持つ細胞外小胞においても
特異的輸送の鍵となる表面リガンドである
と推定する事ができます。
実際にChikako Shibata(敬称略)らの研究においても
インテグリンが脂肪細胞への輸送において重要であり
それは人にも当てはまる可能性が強く示唆されました(2)。
しかしながら、
細胞外小胞を含む
ジェルやナノ小胞などの技術においては
肝臓の代謝、コロナの付着、免疫のクリアランス
免疫機能惹起(サイトカインストーム)など
輸送においての大きな壁があります。
コロナの付着においては
分析も難しいという困難な課題もあります(4)。
一つ一つ、ボトムアップで積み上げていくことも
大事ですが、特に細胞外小胞の場合は
その複雑性、異種性、難再現性に圧倒され、
研究開発の断念を検討する結果に陥る
可能性も否定できません。
そうした時に助け船を出してくれるのが
上述したように
「人の身体で起こっている事からヒントを得る。」
ということです。
細胞外小胞は人の身体の中に自然に備わった機能ですから
複雑性はありますが、
人の身体の現象から学ぶことができる事が
1つの大きな利点です。
それによって想定していない解決策が
生まれる可能性もあります。
従って、人を診る機関である
病院との連携は非常に重要になります。
--
Eun Jeong Park(敬称略)らの総括によると
インテグリンは非常に精巧な機序を持っています。
不活性状態と活性状態で
構造を大きく変えます。
「稲穂が垂れさがったような」不活性状態と
「稲穂が立ったような」活性状態があります。
この構造上の活性度を決めているのは
タリンと呼ばれる物質です。
この物質が細胞質側から
インテグリンのβ鎖の根の部分に結合することで
インテグリンは活性状態になります。
また、さらに
キンドリン(kindlin)という物質が
タリンと複合的に結合すれば、
インテグリンは束を形成します。
(integrin clustering)
それによってさらに活性度は上がります。
(参考文献(1) Fig.2)
このような
不活性な状態と活性な状態をうまく制御する事で
病変部位に行くまでの循環器の途中過程では
インテグリンは周辺の組織と結合しにくいけど
病変部位に行った時には
インテグリンを活性化させて
結合活性を場所特異的に向上させることが
できる可能性があります。
「吸着スイッチを体内で病変部位近くで入れる」
ということです。
こういう事は
すでに体内で自然に起こっているかもしれません。
(ここは大切なところなので検証が必要です。)
癌が転移するときなどは
癌細胞や癌由来の細胞外小胞では
インテグリンの活性度が変わって、
転移サイトの微小環境近くで
タリン、キンドリン依存的に高まっている
可能性も考えられます。
この時には
それらの物質を直接取り込んだり、
あるいは
癌微小環境からタリン発現の高めるmiRNAや
発現を抑制するmiRNAの抑制因子(5)を細胞外小胞を介して
受け取っているかもしれません。
タリンは前立腺がんなど癌環境では
発現が高まっている事が知られています(6)。
従って、
それに応じて細胞や細胞外小胞の
インテグリン依存的な接着性が高まっている
ことが推測されます
--
具体的な狙いとしては
自然にそうなっている
あるいはそうなる可能性がありますが、
全身に転移した腫瘍組織、
送達、外科的アクセスが難しい腫瘍組織、
癒着性の高い腫瘍組織、
悪性度、進行性が高い腫瘍組織など
治療の難しい腫瘍組織に対して
それに効果のある薬剤を
細胞外小胞に詰め込んで、
その腫瘍組織に多く発現している
インテグリン
あるいは多く発現している
インテグリンの相手方に結合するインテグリン
高密度で装飾させます。
その時に、
今までは他の組織にないインテグリンである
必要性を謳ってきましたが、
インテグリンにはダイナミックな構造変化があり
その活性度を変える事によって
大きく結合親和性、接着度が変わるので
その接着の為のスイッチを
腫瘍組織付近で入れる事を考えます。
おそらく、
腫瘍組織付近は癒着性、吸着性が高まっているため
インテグリンの活性度が上がりやすい環境になっている
と仮説を立てています。
(もちろん検証は必要です。)
タリンやキンドリン依存的に
インテグリンの活性度を選択的に高めます。
エクソソームなどの細胞外小胞は
周辺のタリン、キンドリンを取り込んで
細胞と同様にインテグリンの活性度を変える事ができる
機序があるかもしれません。
(ここは重要なところなので
慎重かつ詳しい検証が必要です(7)。)
また、細胞外小胞は融合することもあります(8)。
その時に細胞外小胞の表面リガンドの状態は変わり
腫瘍組織の周りにある
インテグリンの活性度が高い細胞外小胞の形質が
薬剤が詰め込まれた細胞外小胞に転写される
可能性があります。
細胞外小胞には人の体内で移動性を決めている事が
一般的に知られている(1)インテグリンを
固着の為の足として使用したいというのがあります。
その時の足場(scaffold)としては
もちろんインテグリンに結合性を持つ
ラミニン、フェブロネクチンなどの受容体で
あることが必須ですが、
癌細胞自身を調べた時にそれが必ずある必要はありません。
例えば、
治療が難しい膵臓がんには
α6β1のインテグリンが癌細胞にあるとします。
その膵臓がんに治療効果のある薬剤を詰めこんだ
細胞外小胞の表面リガンドを
同じインテグリンα6β1とすると
「鍵と鍵穴の関係が成り立たない」となります。
しかし、同じインテグリンがあるならば
必ず強く固着しているわけですから
その周辺の微小環境に
それに強い結合性を持つラミニンα4,α5などの
受容体があるはずです。
その受容体を標的として
細胞外小胞を固着させ、
そこで細胞外小胞が寿命を迎え
小胞内の薬剤を放出させるようなシステムを組みます。
そうすると微小環境内の薬剤の濃度を
特異的に上げられるので
癌微小環境全体の治療に貢献します。
--
ナノ小胞で問題となるコロナや
免疫クリアランス、肝臓での代謝はどうか?
といった課題はありますが、
それもボトムアップで詳しく調べていく必要は
もちろんありますが、
すでに繰り返し述べた様に
身体の中で輸送特異性があるのであれば、
こういった問題の影響を超えて
それを利用することもできます。
例えば、
コロナであれば、
インテグリンが不活性な時には
接着性が下がっているわけですから
コロナ形成しにくいというのはあるかもしれません。
もっと予想外な機序としては
コロナが構造上折れている時に付着していたものが
タリンによって立ち上がった時の
動力、機械的な力によって
コロナが剥がれるという事もあるかもしれません。
キンドリンによる
インテグリン多量体形成
(インテグリンクラスタリング)は
免疫シナプスのような強い接着性があって
表面の多少のデブリは大きな
影響はないかもしれません。
--
細胞外小胞による精密医療の実現は
合成ナノ粒子と共に難しい可能性がありますが、
ボトムアップとトップダウンの両輪を回すことで
その実現性に貢献する可能性があります。
ボトムアップとは
試験管や動物実験で基礎実験をしたり
その根拠となる構造を含む
物理的、化学的特性を解析により明らかにしていく
あるいは、マルチオミックス解析などを
していくことです。
トップダウンとは
ゴールである臨床現場の結果からヒントを得たり、
人の身体の中の自然な生理を分析したりすることから
薬剤開発のヒントを得る事です。
それをボトムアップとつなげて考えていきます。

//まとめ//ーー
今までインテグリンを介した特異的輸送は
インテグリンの各型の特異性が低いため
難しいと考えていました。
しかし、インテグリンの活性度を変えるための
構造がある事実から、特異的輸送に関しては
別次元の考え方があります。
もちろん特異的なインテグリンを探し、
輸送経路を考えて選択する事は大事だと思いますが、
インテグリンの結合活性が人の体内で
変わっている可能性を調べることも
特異的薬剤送達のため重要です。
インテグリンは細胞の移動性を決める重要な
リガンドであり、
同じような機能を持つリガンドを探すことの
重要性があります。
インテグリンの動的な事も含めた
特に移動性に関わる機能について調べていく事は
細胞や細胞外小胞を使った
送達システムに貢献する可能性があります。

(参考文献)
(1)
Eun Jeong Park, Yoshikazu Yuki, Hiroshi Kiyono & Motomu Shimaoka
Structural basis of blocking integrin activation and deactivation for anti-inflammation
Journal of Biomedical Science volume 22, Article number: 51 (2015)
(2)
Chikako Shibata, Motoyuki Otsuka, Takahiro Seimiya, Takahiro Kishikawa, Kazunaga Ishigaki, Mitsuhiro Fujishiro
Lipolysis by pancreatic cancer-derived extracellular vesicles in cancer-associated cachexia via specific integrins
Clinical and Translational Medicine Volume12, Issue11 November 2022 e1089
(3)
Hatoon Baazim, Laura Antonio-Herrera & Andreas Bergthaler
The interplay of immunology and cachexia in infection and cancer
Nature Reviews Immunology volume 22, pages309–321 (2022)
(4)
Ali Akbar Ashkarran, Hassan Gharibi, Elizabeth Voke, Markita P. Landry, Amir Ata Saei & Morteza Mahmoudi
Measurements of heterogeneity in proteomics analysis of the nanoparticle protein corona across core facilities
Nature Communications volume 13, Article number: 6610 (2022)
(5)
Gideon Obeng, Eun Jeong Park, Michael G. Appiah, Eiji Kawamoto, Arong Gaowa & Motomu Shimaoka
miRNA-200c-3p targets talin-1 to regulate integrin-mediated cell adhesion
Scientific Reports volume 11, Article number: 21597 (2021) 
(6)
Andreas Desiniotis* and Natasha Kyprianou
Significance of Talin in Cancer Progression and Metastasis
Int Rev Cell Mol Biol. 2011; 289: 117–147.
(7)
Zay Yar Soe 1, Onmanee Prajuabjinda 1, Phyoe Kyawe Myint 1, Arong Gaowa 1, Eiji Kawamoto 2, Eun Jeong Park 3, Motomu Shimaoka 
Talin-2 regulates integrin functions in exosomes
Biochem Biophys Res Commun. 2019 May 7;512(3):429-434
(8)
Ilaria Prada1 and Jacopo Meldolesi2
Binding and Fusion of Extracellular Vesicles to the Plasma Membrane of Their Cell Targets
Int J Mol Sci. 2016 Aug; 17(8): 1296.

2022年11月4日金曜日 0 コメント

ナノ小胞、ジェルを使った生命工学の再現性の問題

ナノ粒子、細胞外小胞、ジェルが
血液中で様々な物質を引き付け、
コロナ形成するとすると
その異種性は非常に高いものになるというのは
一定の合理性があります。
血液の状態
血糖値、血圧、血液型、白血球血液型、
脂質量など様々な血液の評価指標があり、
それは個人差があります。
また、もっと大きな分類では
性差も考えられます。
女性では初潮前、月経周期、閉経後によって
ホルモンの状態も異なります。
そのような血中での影響は
実際にナノ小胞以外の遊離薬剤でも同じですが、
線維性のジェルやナノ小胞が
よりそのような周囲の物質を
高い相互作用で取り込むということになると
どの患者さんに対しても
一定の効果(再現性)を得るという事が
従来の遊離薬剤よりも顕著に難しくなる
ということを示します。
精密医療のはずが、
バックグラウンドが異なり
その偏差が顕著に大きいことで
そのメリットが完全に隠れてしまう
という事も想定されます。
極端な話、
ホルモン変動が大きな女性においては
同じ人であっても、
服用するタイミングによって
薬効が異なるという事も考えられます。
そのような変動は好ましくなく
細胞外小胞、ナノ粒子、ジェルなどを使った
薬剤送達システムによる治療の
大きなボトルネックであるとも言えます。
それをゼロにするという事は無理かもしれません。
その影響よりも薬剤の特異性の方が
顕著に上回るという関係を
構築する必要があります。
--
このような異種性も考えられますが、
もっと単純化した試験管内で
同じ血漿内で混合させたナノ粒子を
17分類して条件を整えたうえで
アメリカの17か所の研究センターに送って
LC-MS/MSと呼ばれる方法で
プロテオーム解析を行った結果
それぞれの研究拠点から
4022の特異的なたんぱく質が抽出されましたが、
共通性のあったタンパク質は
そのうち73種類、全体の1.8%に留まった
とされています。
そのことを
Ali Akbar Ashkarran(敬称略)らは
示しています。
これは、ナノ粒子に結合するタンパク質の分析の
様々な要因の再現性に関わる事です。
これが示されたことは非常に重要なことであり、
研究の透明性に関わる事です。
少なくとも
共通性のあったタンパク質73種類は
17か所で再現性があったわけですから、
そのたんぱく質の特徴を洗い出す、考える
という事は
Ali Akbar Ashkarran(敬称略)らの
研究の価値(1)を一段上げるものであると考えられます。
(17か所ではなくても、
重複研究機関の数とタンパク質の種類なども
階層的な再現性分析の範疇となります。)
もう1つ重要な事は
今に始まった事ではないかもしれないですが、
ナノ粒子、細胞外小胞、ジェルに関わる
研究においては、再現が得られるか?
というのは今後、注意深くモニターする必要がある
ということです。
それによって判断を間違える可能性があるからです。
基本的に解析の信頼性が揺らぐというと
それは結果を示す根本的な事なので、
情報を広くシェアして
輸送、保存なども含めた解析の前の状態も含めて
解析の信頼性を上げていく必要性があります。

このような再現性の問題というのは
研究開発の分野において
医療だけではなく、
広く一般に言える事です。
それに問題があれば、
透明性のある形で示されるという事が重要です。
他の研究機関で示された再現性の確認というのは
論文になりにくい分野なので
研究分野においては敬遠される部分ですが、
産業分野においては
その信頼性、利益に関わる重要な事です。
従って、
上述した
ナノ小胞やジェルが
信頼性が得られにくいかもしれない
という事が示されたことは
1つの重要なマイルストーンであり、
一段上に行くためには
再現性がより重要な指標となる
産業界も含めた連携が大切になると考えました。
Ali Akbar Ashkarran(敬称略)らの
研究の結果から
考えられる事は上述した事以外に
いくつかあるはずです。
それを一つ一つ埋めていくという事は
地道な作業になるかもしれないですが、
実現させる上において必須の事です。
ナノ粒子を使った
mRNAワクチンは広く普及しました。
多数の臨床試験、コホート研究でその効果は
共通的に示されていますが、
それについてもより詳しく考え直す
機会が与えられたとも考える事ができます。

(参考文献)
(1)
Ali Akbar Ashkarran, Hassan Gharibi, Elizabeth Voke, Markita P. Landry, Amir Ata Saei & Morteza Mahmoudi
Measurements of heterogeneity in proteomics analysis of the nanoparticle protein corona across core facilities
Nature Communications volume 13, Article number: 6610 (2022)

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神経芽腫代謝セリン経路誘導による癌代謝療法

癌になると太るよりも痩せる人の方が多いですが、
それは複数の理由によるからかもしれません。
悪液質によって食欲がなくなり、
またさらに脂肪を分解させるなど
の働きが一つの原因であるとされています(2)。
もう1つは、癌細胞そのものが
効率の悪い「解糖系」に偏った
エネルギー代謝をしているからである
と考えられます。
それによって飲食物からのカロリーが余計に必要になりますが
食欲が下がっているうえに、
脂肪、筋肉などが分解されるとなると
痩せる要素は重複性を有します。
一方、
通常の細胞は
クエン酸回路による電子伝達系によって
好気性の代謝経路で
効率的に多くのエネルギーを得られる
代謝経路を主要に選択します。
その違いを利用して、
癌細胞のエネルギーを選択的に絶つ、
いわば「兵糧攻め」によって
癌細胞を死滅させるというのが
癌代謝療法であります。
しかしながら、
解糖を抑制する薬剤(2-deoxyglucose)が
臨床試験で確かめられましたが、
副作用は許容的ではなく、
臨床効果も高くはありませんでした(4)。
--
Kentaro Watanabe(敬称略)らは
神経芽腫の小児から遺伝子装飾(メチル化)の分析をすることで
PHGDHがハイパーメチル化によって
その発現の働きが高まっている群が
予後不良である事を確かめています(1)。
このPHGDHは
アミノ酸の一つであるセリンを
細胞内で産生する働きがあります。
この大元はグルコースであり、
3-PGを介して、この遺伝子が働き
セリンを合成します。
これが神経芽腫の癌細胞の増殖の強化い
関与していると考えられています(1)。
しかしながら、
癌の代謝経路は複雑で
一方でアルギニンというアミノ酸が
がん細胞を増やす栄養源となる事がわかっていて
アルギニンが不足すると
それを補完するようにセリンの経路に
癌細胞は頼るようになります。
従って、
Kentaro Watanabe(敬称略)らは
アルギニンを抑制する事で
神経芽腫の癌細胞の代謝経路をセリンに誘導した状態で
PHGDH阻害剤を投入する事で
アルギニン抑制やPHGDH抑制剤の単独よりも
顕著に高い抗癌性を示したことを
試験管、生体内で示しています(1)。
--
このような癌特有な代謝経路を標的とした治療は
副作用が生じにくいとされています。
実際に動物では体調面の副作用は観察
されませんでした。
しかしながら、
子供の成長に欠かせない必須アミノ酸として
アルギニンが挙げられています。
成長ホルモンの分泌を高めるアミノ酸であり
疲労回復や活力アップ、子供の身長を伸ばすのを
助けてくれたり、子供の成長を助けてくれる
とあります。
従って、代替できる栄養素の補充や
あるいは治療が長期間に及ぶ場合は
成長状況の管理は人の子供の場合は必要かもしれません。
但し、
メリットとデメリットのバランスから考えると
治療の難しい神経芽腫を治療する事が最優先で有り、
治療が何年も続くものではなければ
それが一時的に不足する事の
身体への影響は許容範囲内である
という風に考える事もできます。
また、上述した事と関連して
人の身体にはアルギニンを補う機能が
備わっているかもしれないし、
影響が出た際には
成長ホルモンを直接補充するという事も考えられます。

神経芽腫は
交感神経のもとになる細胞から発生する小児がんの一種であり
主に腎臓の上に位置する副腎や、背骨のそばにある
交感神経節にできるとされています。
小児では脳腫瘍に次ぎ多い固形のがんです。
一部の患児では自発的な退行がみられますが、
転移性の高いリスクの患者さんや
発症が18カ月以上であれば
長期的に再発のない生存率は
40-50%であるとされています(5-7)。
現在の治療の選択肢は
重い長期間にわたる化学療法や
自家移植
外科による癌の切除
放射線療法
これらが挙げられています(8)。
それによるお子さんの副作用は
短期的には
臓器の損傷、感染症の罹患
長期的には
不妊症、成長の遅れ、髪の毛の喪失
これらが挙げられています(9)。
従って、
予後不良の治癒が実現しづらい患者さんを早期に見極めて
上述した癌代謝療法という新しい治療の可能性を
今後の臨床試験などを実施していくことによって
それが仮に認可されれば、
お子さんや親御さんに示せることになります。
副作用や長期合併症が起こりにくいのであれば、
さらに生活の質を高める事が期待されると
研究者からはコメントされています。
実際に
文中(1)にも副作用の記載が複数あり、
それも含めて評価されていくものである
と認識しています。

//考察//ーー
今回の代謝療法の方略は
他の癌にも応用可能か?という視点があります(10)。
今回のKentaro Watanabe(敬称略)らの研究の
1つの注目点は
複数ある重要な癌代謝経路を
セリン経路に集中させた上で
そのセリンの生成を抑える薬を投与した点です。
代謝療法というのは難しさもあり、
精密医療が重要であるとされていますが(11)、
より特異性の強い代謝経路で
重要な経路を並列的に抑える事で
成功する可能性があります。
また、今回のような
人の臨床結果と代謝に関わる遺伝子検査(1)によって
代謝がどのように癌成長に影響を及ぼしているか
というのを明らかにしたうえで
治療戦略を考える事も重要である
と認識しました。
また、ジェル、細胞外小胞、合成ナノ粒子などの
ナノ技術による薬剤送達システムによって
特異的送達効率が向上すれば
介入できる代謝経路も増えてくると考えられます。
そうした場合、
他の癌に対する代謝療法の適用範囲も広がってくると
考えられます。

(参考文献)
(1)
Kentaro Watanabe, Shunsuke Kimura, Masafumi Seki, Tomoya Isobe, Yasuo Kubota, Masahiro Sekiguchi, Aiko Sato-Otsubo, Mitsuteru Hiwatari, Motohiro Kato, Akira Oka, Katsuyoshi Koh, Yusuke Sato, Hiroko Tanaka, Satoru Miyano, Tomoko Kawai, Kenichiro Hata, Hiroo Ueno, Yasuhito Nannya, Hiromichi Suzuki, Kenichi Yoshida, Yoichi Fujii, Genta Nagae, Hiroyuki Aburatani, Seishi Ogawa & Junko Takita
Identification of the ultrahigh-risk subgroup in neuroblastoma cases through DNA methylation analysis and its treatment exploiting cancer metabolism
Oncogene (2022)
(2)
Chikako Shibata, Motoyuki Otsuka, Takahiro Seimiya, Takahiro Kishikawa, Kazunaga Ishigaki, Mitsuhiro Fujishiro
Lipolysis by pancreatic cancer-derived extracellular vesicles in cancer-associated cachexia via specific integrins
Clinical and Translational Medicine Volume12, Issue11 November 2022 e1089
(3)
岐阜大学 赤尾幸博教授
がん細胞のエネルギーを制御し, 増殖を抑える方法を明らかに!
(4)
Landau, B. R., Laszlo, J., Stengle, J. & Burk, D.  
Certain metabolic and pharmacologic effects in cancer patients given infusions of 2-deoxy-d-glucose. 
J. Natl Cancer Inst. 21, 485–494 (1958).
(5)
Pinto NR, Applebaum MA, Volchenboum SL, Matthay KK, London WB, Ambros PF,
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(6)
Hishiki T, Matsumoto K, Ohira M, Kamijo T, Shichino H, Kuroda T, et al. Results of a
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(7)
Irwin MS, Naranjo A, Zhang FF, Cohn SL, London WB, Gastier-Foster JM, et al.
Revised neuroblastoma risk classi fi cation system: a report from the Children ’ s
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(9)
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(10)
Ming Yang & Karen H. Vousden
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Nature Reviews Cancer volume 16, pages650–662 (2016)
(11)
Zachary E. Stine, Zachary T. Schug, Joseph M. Salvino & Chi V. Dang 
Targeting cancer metabolism in the era of precision oncology
Nature Reviews Drug Discovery (2021)


 
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