先日、19歳の男性の学生さんの後遺症の状態が
日本のメディアで報道されていました。
軽傷でしたが、若干後遺症がある状態で
散歩したところ、症状が一気に悪くなりました。
今は、母親の看病の元、ベットで寝て過ごし、
トイレに行くときには壁に寄り掛からないといけないくらい
症状が悪いとされています。
大学受験を控えていますが、
今は受験勉強はできる状態ではないということです。
もちろん快方に向かう可能性はありますが、
より良い治療というのは求められていると思います。
間違った治療をすれば、逆効果
ということもあるので慎重になる必要がありますが、
特に私が脳神経学の科学論文を読むときは
一見遠い内容だと思われても、関連性を見つける努力をします。
おそらく新型コロナウィルスの後遺症は
神経系以外の体細胞組織の特定の場所に炎症がみられる
ということがない可能性が高く、
神経系の異常によって生じている事を
現時点では疑っているからです。
従って、脳神経学の様々な研究は
新型コロナウィルスの後遺症の理解、治療につながる
と考えています。
//概要//---
日本では「頭痛持ち」という言葉が使われる事があります。
このような片頭痛は15歳~49歳の女性において
統計的に最も多い疾患となっています。
おおよそ17%の女性が程度の差はあれ片頭痛を経験し、
性別構成比ではおおよそ全体の75%が女性である
とされています(7-9)。
--
片頭痛の痛みの種類は
〇片側/〇拍動(ズキズキ)であり、
男性によりも吐き気、光、音声過敏などが
生じやすいとされています(8,10)。
1度の片頭痛は4時間から72時間まで継続すると言われています。
--
Diana N. Krause, Karin Warfvinge, Kristian Agmund Haanes & Lars Edvinsson
(敬称略)からなる医療研究グループは
片頭痛の女性ホルモンの関わりについて
痛みに関わるCGRPや痛みの神経経路なども含めて
総括されています(1)。
本日は、その一部を参照して
独自の調査、視点を加えながら
読者の方と情報共有したいと思います。
より重要な現在の治療についても紹介いたします。
//片頭痛の原因と時期//---
Ref.(1)のFig.1からわかるように
エストロゲン、オキシトシン、プロゲステロンなどの
女性ホルモンが3つとも最小となる時期に
片頭痛が起こりやすいと考えられています。
月経周期ののなかの月経期(1-4日)となります。
従って、このような時期に頭の片側がズキズキ痛む
傾向にある場合は片頭痛に罹患していることを疑う
必要性があります。
片頭痛は前兆がなく突然生じることが多いとされています(1)。
--
経口避妊薬(低用量ピル)はプロエストロゲンとエストロゲンの
2種類の女性ホルモンからなりますが、
これを止めたときに頭痛が生じる場合には
これらのホルモンが下がったことによって生じている
可能性があり片頭痛を疑う必要があります。
「Oestrogen withdrawal theory」と呼ばれています(1)。
--
男性の前立腺癌や女性の乳がんの治療の中で
ホルモン療法があります。
それによって上述したようなホルモンに変化が出ると
治療後に副作用として片頭痛が生じる事があります(3)。
//新型コロナウィルス後遺症との関連//---
新型コロナウィルスの感染によって
片頭痛に似た頭痛が多くの患者さんで生じたとされています(4)。
吐き気、光や音に過敏になっていることは
自己免疫的な異常の他に
片頭痛の原因として挙げられているホルモンバランスが
崩れていることによって生じている可能性も考えられます。
従って、後遺症など症状が長引いている人に対しては
オキシトシン、プロエストロゲン、エストロゲン、
テステステロンなどの性ホルモンの量を調べる事に
一定の価値がある可能性があります。
後遺症は女性のほうが多いとされているので
上述した性ホルモンの変化を疑う事も重要です。
その時には女性に問診を行う際、月経周期の中で
症状の変化があるか?という事を問うことが重要です。
実際に月経周期との関連が指摘されているニュースもあります(5)。
このような原因から治療につながる可能性があります。
//痛みの機序//---
治療の所で述べているようにCGRPと呼ばれるペプチドが
過剰放出することによって起こるとされています。
女性ホルモンとどのように関わっているか?
という議論もありますが、
光、音、匂いといった外部からの刺激によっても
CGRPが三叉神経と呼ばれる頭蓋内の中央部(脳幹)の中にある
脳神経から放出され、CGRP受容体に結合し
血管が拡張して片頭痛が起こるとされています。
この三叉神経は解剖図をみればわかりますが、
目、鼻、舌、耳(?)と多く神経細胞が繋がっています。
従って、光、音、匂い、味などによって
痛みが惹起されることがあると考えられます。
--
また上述した痛みの周期でも述べた通り
三叉神経における
エストロゲンとオキシトシンとCGRPのバランスによっても
変わります。エストロゲンとオキシトシンが少なくなると
三叉神経におけるCGRP信号が亢進され、
それによって片頭痛が生じやすくなります。
(Ref.(1) Fig.5より)
--
痛みに関わる神経回路は脊髄を通じて双方向性を持ちますが、
オキシトシンはその痛みに関わる神経回路の
神経細胞の受容体に結合することが示されています。
男性の片頭痛においても
オキシトシンの量によって片頭痛の確率が変わる可能性も
考えられます。
(Ref.(1) Fig.4より)
--
三叉神経においてCGRPの生成、受容体結合は
隣り合う神経細胞で行われます。
Small C線維神経細胞で生成され、
Medium Aδ線維神経細胞の受容体で認識されます。
その間にグリア細胞があり、
そこにもCGRP受容体は存在します。
(Ref.(1) Fig.3より)
//治療//---
片頭痛の治療は症状が軽い場合は鎮痛作用がある
アセトアミノフェンや非ステロイド抗炎症薬が用いられ、
治療の中心はトリプタンです。
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が過剰放出
されることが片頭痛の病理の一つであるとされています(11,12)。
上述したトリプタンはこのCGRPを抑制する作用があり
服用すると約30分で効果が現れます。
吐き気が強く、内服できない場合は
点鼻薬や自己注射薬が用いられます。
トリプタンは使われ始めて20年以上が経過しましたが
重篤な副作用はほとんどなく安全性が高い薬である
とされています(2)。
従って、科学的な裏付けに基づいて薬が選択されている
ということが言えます。
---
経口避妊薬などのエストロゲン製剤は
心臓血管疾患(血栓閉塞症、脳卒中)、乳がんのリスク
が向上するという報告もあります(13-16)。
一方、片頭痛がある人は
乳癌のリスクが26%少ないという報告もあります(6)。
従って、ある程度の女性ホルモンが変動する事は
女性の健康において重要な意味がある可能性があります。
従って、そのホルモンを長期的、慢性的に
補正するような処置は好ましくない可能性があります。
このことから頭痛がない人において
経口避妊薬を頻繁に使用する事に対しては
一考の余地があると考えられます。
(Reference)
(1)
Diana N. Krause, Karin Warfvinge, Kristian Agmund Haanes & Lars Edvinsson
Hormonal influences in migraine — interactions of oestrogen, oxytocin and CGRP
Nature Reviews Neurology volume 17, pages621–633 (2021)
---
Author information
Affiliations
Department of Medicine, Institute of Clinical Sciences Lund, Lund University, Lund, Sweden
Diana N. Krause, Karin Warfvinge & Lars Edvinsson
Department of Pharmaceutical Sciences, School of Pharmacy & Pharmaceutical Sciences, University of California at Irvine, Irvine, CA, USA
Diana N. Krause
Department of Clinical Experimental Research, Glostrup Research Institute, Rigshospitalet, Glostrup, Denmark
Karin Warfvinge, Kristian Agmund Haanes & Lars Edvinsson
(2)
トリプタンの副作用と問題点(こばやし小児科・脳神経外科クリニック)
(3)
BY SARAH ZIZINIA
Migraine headaches in cancer patients: How to prevent and treat them
The University of Texas MD Anderson Cancer Center
(4)
Fedele Dono et al.
New daily persistent headache after SARS-CoV-2 infection: a report of two cases
Neurol Sci. 2021 Jul 15 : 1–4.
(5)
Long COVID and periods: The unspoken impact on female well-being
Medical News Today
(6)
Christopher I. Li et al.
Relationship between Migraine History and Breast Cancer Risk among Premenopausal and Postmenopausal Women
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2009 Jul; 18(7): 2030–2034.
(7)
GBD. 2015 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators. Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 310 diseases and injuries, 1990–2015: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015.
Lancet 388, 1545–1602 (2016).
(8)
Vetvik, K. G. & MacGregor, E. A.
Sex differences in the epidemiology, clinical features, and pathophysiology of migraine.
Lancet Neurol. 16, 76–87 (2017).
(9)
Lipton, R. B. et al.
Migraine prevalence, disease burden, and the need for preventive therapy.
Neurology 68, 343–349 (2007).
(10)
Bolay, H. et al.
Gender influences headache characteristics with increasing age in migraine patients.
Cephalalgia 35, 792–800 (2015).
(11)
Edvinsson, L., Haanes, K. A., Warfvinge, K. & Krause, D. N.
CGRP as the target of new migraine therapies — successful translation from bench to clinic.
Nat. Rev. Neurol. 14, 338–350 (2018).
(12)
Haanes, K. A. & Edvinsson, L.
Pathophysiological mechanisms in migraine and the identification of new therapeutic targets.
CNS Drugs 33, 525–537 (2019).
(13)
Gartlehner, G. et al.
Hormone therapy for the primary prevention of chronic conditions in postmenopausal women: evidence report and systematic review for the US Preventive services task force.
JAMA 318, 2234–2249 (2017).
(14)
Middeldorp, S.
Oral contraceptives and the risk of venous thromboembolism.
Gend. Med. 2 (Suppl. A), S3–9 (2005).
(15)
Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer.
Type and timing of menopausal hormone therapy and breast cancer risk: individual participant meta- analysis of the worldwide epidemiological evidence.
Lancet 394, 1159–1168 (2019).
(16)
Beaber, E. F. et al.
Recent oral contraceptive use by formulation and breast cancer risk among women 20 to 49 years of age.
Cancer Res. 74, 4078–4089 (2014).
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