2021年10月10日日曜日

Ⅰ型糖尿病経口投与薬実現のためのナノ粒子特異的輸送

現在、Ⅰ型糖尿病ではインスリン皮下注射によって
インスリン、血糖値をコントロールしています。
1日1回~2回の頻度と言われており、
慣れると言っても、毎日注射する事は
様々な意味で負担になります。
もし、経口の投与薬でインスリンの量を制御出来たら
Ⅰ型糖尿病の管理は特に患者さんにおいては
楽になると考えられます。
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しかし、Ⅰ型糖尿病の経口投与薬の実現には
下記のような難しさがあると考えられています。
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〇胃腸などの環境による薬の分解、劣化(2)
〇腸の上皮障壁を超える必要性(3)
〇日常生活の中での細かい調整の困難性(4)
〇長期服用の安全性(代謝機能、免疫機能)
などが挙げられています(1)。
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Jung Seok Lee, Patrick Han(敬称略)ら医療研究グループは
膵臓と親和性の高いポリマー化した胆汁酸を
ナノ粒子の周りに装飾し、ナノ粒子の中にインスリンを入れる事で
上述した課題を解決し、Ⅰ型糖尿病のインスリン
血糖値の制御を「マウスのケース」で実現しています(1)。
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胆汁酸が適している理由は
そのpHの特徴から胃のダメージを減らし、
膵臓で発現されているTGR5との結合親和性があるからです。
インスリンは膵臓のβ細胞で分泌されることから
その機能が欠落しているⅠ型糖尿病の人に対しては
膵臓に代替としてインスリンを運ぶ必要性があります。
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またこのTGR5に結合する事によって
抗炎症性免疫機能や脂肪細胞の代謝機能を高めることが
知られています(5)。
従って、この受容体に結合する事は
インスリンの直接的な調整以外にも生理的な意義があります。
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Jung Seok Lee氏らが
モノマーではなくポリマーの胆汁酸を選んだ理由は
ポリマーのほうが安定で、多価であるため
膵臓迄届きやすく、TGR5との結合親和性が高いからです。
Polymeric Ursodeoxycholic acid (pUDCA) を選択しています。
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ナノ粒子と装飾形成は
Water-in-oil-in-water double emulsion
の乳化プロセスを使ってナノ粒子形成させています
(Ref,(1) Fig.1bより)。
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ナノ粒子装飾することで
他の臓器(肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓)に対して
膵臓へ3倍以上の薬剤走化性を実現しています。
(Ref,(1) Fig.2aより)
装飾しなければ、輸送される量も5倍以下と少なく
膵臓への走化性も他の臓器と比較して少なくなっています。
従って、ポリマー胆汁酸で装飾する事は
膵臓へのナノ粒子薬剤輸送効率を高めるだけではなく
特異的輸送も実現しています。
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また、インスリンの投与で重要な
インスリン量、血糖値の制御性は
薬剤の投与量依存的に変わっている事から、
最適な量を設定できる可能性を示しています。
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輸送の経路のメカニズムとしては
腸から吸収されて血中を流れる際には
免疫細胞(単球、マクロファージ)
と結合した形で運ばれるモデルと
単独で運ばれるモデルが考えられています。

//Cell-type-specific delivery system//ーー
細胞特異的輸送系統で考えているモデルは
生細胞を含むナノ粒子の周りに標的組織(病変部位など)の
細胞種に特異的に発現している受容体をアンカーとするため
ナノ粒子の表面に多くタンパク質を発現させる事です。
生細胞の場合は遺伝回路を使って、
細胞膜表面に任意のタンパク質を合成生物学のアプローチで
形成できる可能性があります。
一方、ナノ粒子の場合は、異なる形成プロセスを考える必要があります。
今回Jung Seok Lee氏らが採用されている乳化プロセスは
自発的なナノ粒子合成ができるプロセスなので、
安価にできる可能性があります。
それで形成したTLR5アゴニストであるポリマー胆汁酸を
ナノ粒子の周りに形成して、
膵臓に対する高い輸送効率と特異性両方を達成したことは
細胞特異的輸送系統のコンセプトが成功する例がある
という事が示されたことを意味します。
なぜなら、今回のJung Seok Lee氏らの研究は
細胞得的輸送系統のコンセプトの中の1つの具体例であるからです。
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(Reference)
(1)
Jung Seok Lee, Patrick Han, Rabib Chaudhury, Shihan Khan, Sean Bickerton, Michael D. McHugh, Hyun Bong Park, Alyssa L. Siefert, Gerald Rea, José M. Carballido, David A. Horwitz, Jason Criscione, Karlo Perica, Robert Samstein, Ragy Rageb, Dongin Kim & Tarek M. Fahmy 
Metabolic and immunomodulatory control of type 1 diabetes via orally delivered bile-acid-polymer nanocarriers of insulin or rapamycin
Nature Biomedical Engineering volume 5, pages983–997 (2021)
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Author information
Affiliations
Department of Biomedical Engineering, Yale University, New Haven, CT, USA
Jung Seok Lee, Shihan Khan, Sean Bickerton, Michael D. McHugh, Alyssa L. Siefert, Jason Criscione, Karlo Perica, Robert Samstein, Ragy Rageb, Dongin Kim & Tarek M. Fahmy
Chemical and Environmental Engineering, School of Engineering and Applied Sciences, Yale University, New Haven, CT, USA
Patrick Han, Rabib Chaudhury & Tarek M. Fahmy
Department of Chemistry, School of Engineering and Applied Sciences, Yale University, New Haven, CT, USA
Hyun Bong Park
Toralgen Inc., Indianapolis, IN, USA
Gerald Rea
Novartis Institutes for BioMedical Research, Basel, Switzerland
José M. Carballido
Medicine and Molecular Immunology, Keck School of Medicine, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA
David A. Horwitz
Department of Pharmaceutical Sciences, College of Pharmacy, University of Oklahoma Health Sciences Center, Oklahoma City, OK, USA
Dongin Kim
Department of Immunobiology, School of Medicine, Yale University, New Haven, CT, USA
Tarek M. Fahmy
(2)
Lowman, A. M., Morishita, M., Kajita, M., Nagai, T. & Peppas, N. A. 
Oral delivery of insulin using pH-responsive complexation gels. 
J. Pharm. Sci. 88, 933–937 (1999).
(3)
Miron, N. & Cristea, V. 
Enterocytes: active cells in tolerance to  food and microbial antigens in the gut. 
Clin. Exp. Immunol. 167,  405–412 (2012).
(4)
Riddle, M. C. 
Evening insulin strategy. 
Diabetes Care 13, 676–686 (1990).
(5)
Katsuma, S., Hirasawa, A. & Tsujimoto, G. 
Bile acids promote glucagon-like peptide-1 secretion through TGR5 in a murine enteroendocrine cell line STC-1. 
Biochem. Biophys. Res. Commun. 329, 386–390 (2005).


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