2024年10月1日火曜日

分子構造分解能を持つ高度な細胞外小胞分離の具体的技術

分子構造分解能を持つ
超高解像度の細胞外小胞分離技術は
その分離を細胞外小胞に限らず、物質迄含めると
応用範囲は非常に広いですが、
私個人としては、生物学、薬学、医学、医療。
その中でも特に医療。
もっといえば、小児医療。
さらにしぼれば、小児脳腫瘍。
これの顕著な改善のために、この超高精度な分離技術を適用します。

この総括ではそうした目的に応じて
内容をある程度絞って、書き記します。

私の目的の最も下位、具象、核にあるのが小児脳腫瘍です。
従って、脳神経内にある
癌細胞から出る物質を「分ける」事を目指します。

それを実現するために考えているより具体的な手段は
癌細胞から放出される細胞外小胞を
採血を通して、1ppmの精度で検出し、分離精製する事を目指します。

1ppmとは1 part per millionですから
全細胞外小胞10^6個から1個の精度で分離精製する事を示します。
そのためには
分離するためのS/N比。
ここにおける
S(シグナル)は、癌細胞由来の細胞外小胞を検出する精度
N(ノイズ)は、癌細胞由来ではない細胞外小胞を検出してしまうレベル
このように定義すると
分離精製の精度である10^6のS/N比では足りません。
その精度では1ppmしか含まない癌細胞の細胞外小胞環境にある時、
半分以上の無視できないレベルで
癌細胞由来ではない細胞外小胞を検出してしまいます。
それくらいの数しかない癌細胞を99%含むような
分離精製を実現するためには
少なくとも1ppmよりも2桁程度高いS/N比を実現する必要があります。
すなわち、S/N比:10^8ということです。

この精度は、細胞外小胞を実際に薬物キャリアとして利用する
あるいは液体生検のバイオマーカーとして利用するために
実務経験として扱ったことのある人にとっては
明かに度を越えた難しさであるという事は自明です。

では、具体的にどういった技術で
特定の細胞種、上の例では脳神経系の癌細胞の細胞外小胞を
非常に高精度に識別して、分離精製する事ができるでしょうか?

まずは、それについての概要を説明します。

癌細胞由来の細胞外小胞の生物発生機序は一つではないですが、
非常に小さなExomereなど、発生機序が未だはっきりしない
ものを除けば、おおよそ共通なことがあります。
細胞質にある物質を内腔に含み
その内腔を囲む膜は細胞膜から生成されます。
また、細胞膜上の膜タンパク質は
そのまま細胞外小胞の膜タンパク質として引き継がれます。
こういった
細胞外小胞の物質は癌細胞の情報そのものですから
その物質情報だけではなく、
幾何学的、電気的に現れる特徴も含めて
癌細胞由来の細胞外小胞を分離精製する事を試みます。

そのための方法を一つの限定する事はしませんし、
それが可能なあらゆる方法が技術開発の対象となりますが、
今、1次評価の現時点で想定している事は
モノクローナル抗体による免疫沈降のコンセプトに倣い、
結合性、重さ、沈降速度による分離です。
より具体的には
癌細胞由来の細胞外小胞に特徴的に発現される、
あるいは統計的に多く発現される膜タンパク質に
特異的な結合親和性を持つ膜タンパク質を装飾した
分離精製媒体である細胞外小胞を
エンジニアリングによって別途用意し、
それらの結合によって、重さによって差別化し、
その重さの違いによる沈降速度を精度よく利用して
溶液内で分離する事を試みます。

こうした方法は極めて先進的ですが、
それでも上述した1ppmしか含まれない
癌細胞由来の細胞外小胞を精度よく分離精製するために
求められる仕様には
一つの分離メカニズムでは到底、到達しません。

例えば、脳腫瘍の表面タンパク質に着目したプロテオーム解析、
すなわちSurfacomeのデータを見ると、
Receptor-type tyrosine-protein phosphatase eta
これであるDEP-1と呼ばれる表面タンパク質。
(参考文献(2) Figure 8)
これは癌細胞で約48倍(log2:5.61)発現されています(1)。
このThe protein tyrosine phosphatase (Ptp) familyと
一般的な癌との関連は指摘されています(3)。
しかし、
最も通常細胞と差が現れたこのタンパク質でさえも50倍の差です。

従って、もし、特異的な結合でもって
細胞外小胞で分離する事を試みても、
せいぜい1/100程度の精度、すなわちS/N比10^2くらいが限界です。
もし、S/N比を7桁、8桁高めるためには
これと合わせたタンデム(直列)な対策が必要になります。

言い換えると、複数の乗算される高次の対策が必要です。
基本的に、今、1次評価の時点で
私の頭の中にある素案は下の5つです。

(1D)タンパク質特異性:発現量の多い対タンパク質の装飾
(2D)結合力特異性
(3D)組み合わせ「AND」;タンパク質構造/結合力
(4D)重さ特異性:沈降速度
(5D)細胞外マトリックス-インテグリン仲介沈降
(6D)膜の硬さ

(6D)の硬さ、柔らかさは蛍光発光の寿命で定量化できる可能性があります。
この硬さ、柔らかさは
反発係数として物理的に現れてきますから
柔らかい物質は、衝突によって速度減衰率が高くなります。
こうした衝突回数を任意に調整して
その回数が揃うような幾何構造を構築し
それで硬さによる速度差が出やすくなるようなシステムを考えます。


これに加えて、
バックグラウンド、参照データを集め、
癌細胞由来の細胞外小胞の幾何学的、電気的データが
下記に示す、様々な特徴量に対して
特異的に明示されると
その結果から想起される
別の次元の分離プロトコルが生じる可能性はあります。

(特徴量)
サイズ:粒子の直径や長さ(例えば、ナノ粒子追跡法で得られるサイズ分布)。
形状の均一性:球形か楕円形か、などの形状的な偏りを示す指標(例えばアスペクト比)。
表面テクスチャ:表面の滑らかさや粗さを反映した特徴。
凸性:粒子が凸形かどうかを示す指標。
輪郭の複雑さ:フラクタル次元などを用いて輪郭の複雑さを計算。
膜の厚みや密度
上述した特徴量の細胞外小胞の統計的なバラツキ
上述した特徴量のサイズ依存性
付着物質

例えば、形のアスペクト比に差がある場合には
長軸の長さが大きくなりますから、
一定の円形の大きさの穴を形成し、
「長軸だけ」ひっかかるようにするなどの方法も考えられます。
この時、事前に重さに応じて
おおよそのサイズをあわせて分離精製する事を想定します。
そうして調整した条件でフィルターを掛ける事で
アスペクト比に応じた分離が可能になるからです。

表面テクスチャーは、摩擦に差がでるかもしれません。
この摩擦は物質との接触による
減速度に影響があるので
その摩擦力に依存する減速度に応じて
沈降速度に差をつける事で分離の可能性が出てきます。


実験する前なので、わからないことだらけですが、
エクソソームは30nm-150nmであり
光学顕微鏡でも見えにくいレベルなので、
基本的に非常に取り扱い、評価が難しいということもありますし、
溶液中で
単体として沈降させる事は難しく、
密度の小さいエタノールでも
その沈降速度は思っているよりも遅いかもしれません。


今のイメージとしては
気体(気層)、液体(液層)、固体(固相(フィルター様)。
これらと反発力、浮力、重力
これらをうまく組み合わせれば、
なんとなくエクソソームの精製分離において
落下速度の違いをうまく生かせる気がしますが、
それもはっきりはわかりません。


(参考文献)
(1)
Valeria Governa 1, Hugo Talbot 1, Kelin Gonçalves de Oliveira 1, Myriam Cerezo-Magaña 1, Anna Bång-Rudenstam 1, Maria C Johansson 1, Ann-Sofie Månsson 1, Karin Forsberg-Nilsson 2, György Marko-Varga 3 4 5, Julio Enríquez Pérez 6, Anna Darabi 6, Johan Malmström 7, Johan Bengzon 6 8, Charlotte Welinder 1, Mattias Belting 9 2
Landscape of surfaceome and endocytome in human glioma is divergent and depends on cellular spatial organization
Proc Natl Acad Sci U S A. 2022 Mar 1;119(9):e2114456119.
(2)
Janine Krüger 1, Sebastian Brachs 2, Manuela Trappiel 1, Ulrich Kintscher 3, Heike Meyborg 4, Ernst Wellnhofer 4, Christa Thöne-Reineke 5, Philipp Stawowy 4, Arne Östman 6, Andreas L Birkenfeld 2, Frank D Böhmer 7, Kai Kappert 
Enhanced insulin signaling in density-enhanced phosphatase-1 (DEP-1) knockout mice
Mol Metab. 2015 Feb 12;4(4):325-36.
(3)
Sofi G. Julien, Nadia Dubé, Serge Hardy & Michel L. Tremblay 
Inside the human cancer tyrosine phosphatome
Nature Reviews Cancer volume 11, pages35–49 (2011)

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