薬物送達において
実際に薬物が目的の細胞種まで届いているか?
それを分析する方法は
少なくとも
画像診断か、液体生検か
どちらかが考えられます。
しかし、薬物自身の大きさが小さいですから
画像診断で有効に分析するためには
凝集させて大きさを稼ぐか、
細胞のような大きい媒体に複合体化させて
その細胞を代理マーカー(プロキシ)として利用するか
これらが考えられます。
エクソソームなどの薬物キャリアを
血管内を通じて薬物送達させるときの
その送達の実態を画像ベースで分析できる一つの可能性は
エクソソームが血管内を通るので
そこに自然に存在する赤血球、白血球、血小板などを
代理マーカーとして選択して、
それにエクソソームを複合体化させる方式です。
その時にS/N比を上げるために
仮に赤血球を選択したら、
その赤血球には最大で70%程度水を含みますから
それを重水に変えて、
信号のS/N比を顕著にあげるという方式が考えられます。
この方式は細胞膜の水素を重水素化するよりも
体積比率が大きい事と
固体よりも液体成分を入れ替えるほうが
おそらく技術的に容易なため、
現時点で有望と考えられます。
しかし、一方で、
こうした液体成分は赤血球の圧力差(浸透圧)に基づく
水の交換、恒常性機能があるため、
一定の回転率で中の重水が
固体よりも容易に抜けていく事になります。
一般的に示されるこの交換速度は速いです。
赤血球内の水を重水に置き換えたとしても
一般的な赤血球の交換時間は11~21.7msであり(1)、
おおよそ20msで入れ替わる水の割合は0.1%と見積もられています(Open AI).
そうすると100%の水が入れ替わるのは
単純計算で概算すると20s(20秒)ということになります。
一方
実際に薬物が全身投与されてから薬物が標的に届くまでは
血流の速度が0.3m/s、血管の長さが1.2mとすると
だいたい4秒ということになります。
これは最短距離での計算なので、
実際に一般的に薬効を示す時間は
静脈注射の場合は数秒から数分と言われています。
これが筋肉注射や経口投与の場合は顕著に遅くなります。
従って、赤血球を重水に置き換えて
薬物の送達を確認する場合は
すぐに水が抜けるので、時間に猶予がありません。
重水を入れてから血管内に注射するまでの
プロセス時間も含めると
それなりの工夫が必要になります。
例えば、薬物を投与するときの
赤血球-エクソソーム複合体を入れる溶液圧、
あるいはイオン濃度を調整して
外側から圧力が強くかかるような状態にして置き
中から重水が抜けないようにしておく必要があります。
赤血球の水の交換は
主にカリウムイオンとナトリウムイオンの交換によって
浸透圧が生じて、水のチャンネルを通じて生じるので
こうしたイオンの交換量を減らす介入、
さらには水のチャンネルを閉じるような介入が
おそらく必要になります。
実際、
こうしたイオンチャンネルが正常に働かなくなる場合、
細胞膜が破壊されたりする懸念があります。
こうした介入は容易ではありません。
Patrick G. Gallagher(敬称略)らがFigure 1に示すように(2)
ナトリウムイオンやカリウムイオンの交換は
直接細胞膜を通じて浸透するものも含めて
非常に多様な経路で行われるため、
厳密にそれを1つ1つ制御していく事は難しいです。
それよりおAOPという水のチャンネルを
不活性化させるほうが現実的かもしれません。
あるいは赤血球の寿命を上げるために
ヒドロゲルなどのジェルで覆う事で
水の交換を顕著に抑制できるかもしれません。
しかも、このヒドロゲルの水も重水にします。
そうする事で、寿命を上げられる事と
絶対的な重水の体積が増える事で
磁気共鳴分析の課題となる信号強度を上げられる可能性があります。
重水ヒドロゲルはこの評価システムでは
ひょっとすると必須になるかもしれません。
エンジニアリングさせた場合
白血球である免疫細胞の方が顕著ですが、
エンジニアリングによる特異的組織向性が得られやすい
という事があります。
確かにヒドロゲルでも
重水と複合体化させた構造を露出して
エンジニアリングする事で標的性を得る事が可能です。
どちらがいいかはわかりません。
ただ、細胞をプロキシにする場合には
上述したような重水の滲出レートを下げたい
このようなことがあります。
その時に、ヒドロゲルで重水の交換を蓋して防ぐ
という事も考えられます。
そうした場合、ヒドロゲルは
AOPがあるところだけに形成したいという事があります。
少なくとも、それをするための
必要十分なプロセスを提案できる段階にありませんが、
現時点で考え得ることは
そのAOPに結合性を持つたんぱく質を
重水ヒドロゲルの骨格の一部として形成する事が考えられます。
あるいはエクソソームを覆う媒体そのものを
赤血球ではなく、重水のヒドロゲルにする。
この方法が考えられますし、
水のチャンネルの周りだけ、
ヒドロゲルで覆うという選択的な方式も考えられます。
これのメリットは
赤血球も特異的な送達の為のエンジニアリングが
場合によれば必要なため、
部分的な被覆は、
こうした膜タンパク質の露出を可能にし、
それによって標的性を維持する事ができます。
こうした機能が元々の赤血球にあると
溶血、高カリウム血症、低ナトリウム血症などが懸念されますが、
利用する赤血球は薬物送達媒体としてのそれなので
赤血球の機能に異常があっても
それが他に悪影響を与えない限り、気にする必要がありません。
赤血球の重水の寿命、回転率は20秒くらいであり
このタイムスケールでも
薬物送達効率が高い状態では分析できないことはないですが、
できれば、2倍、4倍、10倍と
回転率を下げる機能化を
事前に体外で行いたいという需要があります。
ただ、現時点で
赤血球の水を重水に置き換えて、
その重水に依存した形で磁気共鳴によって分析する場合、
即時的に水分量がどんどん抜けていくため、
少なくともこうした解析は
薬物送達において時間がかかる
筋肉注射、経口投与、鼻腔投与などは向かない。
このことがいえそうです。
(参考文献)
(1)
Eliana Gianolio 1, Giuseppe Ferrauto 1, Enza Di Gregorio, Silvio Aime
Re-evaluation of the water exchange lifetime value across red blood cell membrane
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranes Volume 1858, Issue 4 , April 2016, Pages 627-631
(2)
Patrick G Gallagher 1
Disorders of erythrocyte hydration
Blood. 2017 Dec 21;130(25):2699-2708.
2024年10月1日火曜日
Cell-type-specific delivery system,
細胞外小胞,
磁気共鳴,
分析手法
磁気共鳴による薬物送達評価の為のエクソソーム代理媒体の重水置換における重水保持技術
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿