がんサバイバーの方の心の問題で大きなものは
- うつ(Depression)
- 不安(Anxiety)
- 心的外傷後ストレス障害
(PTSD: Post traumatic stress disorder)
これらです。
小児がんサバイバーのでも同様で
がん罹患歴のない同年代に比べて、
うつの発症は57%も多く、
罹患率は40.8%と推計されています。
一方、
不安に関しても29%も多いとされています(1)。
がん罹患歴のない一般の人も含めた
うつの罹患率を年齢別に比較すると
18-29歳:男性 4.7% / 女性 6.8%
30-39歳:男性 4.6% / 女性 10.9%
40-49歳:男性 3.2% / 女性 12.4%
50-59歳:男性 2.7% / 女性 16.0%
60-69歳:男性 2.3% / 女性 9.7%
70歳以上:男性 4.8% / 女性 7.8%
このような統計となっています(2)。
うつに関しては女性のほうが2倍以上多いです。
上の調査は、メキシコのデータです。
日本では年齢別では
40代から60代までが多く
女性が10~30%程度多いです(3)。
スウェーデンでは20代から40代まで多く、
高齢者が少なく、女性が多いです(4)。
若い人の罹患率が高いです。
10代以下の子どもでは罹患率は
近年増加傾向にあるものの1%を下回っています(5)。
但し、数%程度というデータもあります。
うつ病(Clinical depression)
または大うつ病性障害(Major depressive disorder)
これとは、一般的な精神障害であり、
より厳密には精神障碍内の気分障害内の一つです。
主な症状として、
少なくとも2週間にわたり
- 抑うつ気分(悲しみ・苛立ち・虚しい感覚)
- 喜びの喪失〔アンヘドニア〕
- 活動的興味の喪失
これが続く状態とあります。
従って、数日で収まる抑うつ気分の場合は
うつ病とはこの基準からは診断されません。
他の症状としては
- 集中力低下
- 過剰な罪悪感
- 自尊心の低下
- 将来への絶望
- 死や自殺についての考え
- 不安定な睡眠
- 食欲や体重の変化
- 疲労感、エネルギー低下感
これらなどです。
2000~2010年代以降の神経精神医学では、
ヒトヘルペスウイルス6が
脳神経細胞を部分的に死滅させることで
うつ病が発症するという
仕組みが解析されつつあります。
日本ではHHV-6の感染率(Sero-positive rate)が
最大で83%程度と見積もられており、
おおよその人が感染している可能性があります。
うつ発症の素因として
どれくらいの影響力を持っているかわかりませんが、
うつは、社会心理を含むストレスも
大きくかかわっています。
そのストレスに非常に感受性の高い
海馬(Hippocampus)の縮小、
この神経細胞の死滅が
少なくとも一定、
うつ病と関連している可能性があります(6)。
これは神経損傷仮説として説明されます。
海馬の神経系細胞が破壊されるということは
その細胞内の情報が細胞外小胞も含めて
循環器にでるはずです。
また、海馬の血管は比較的脆弱なので
炎症が生じているときには、
その物質が血中にでる可能性があります。
うつをある種、得体のしれない「心」として
医学、医療の中で
不確定性の高い状態で評価するだけではなく
その心は人として当然あるものとはしますが、
精神疾患を脳神経の生物学的な病としてとらえ、
その物質的証拠を取得したいということがあります。
はっきりした病理がわかっていないためか
うつ病の正確な診断には課題があるとされています。
正確な診断のためには今述べたように
生物学的な機序をつかみ、
物質的情報を活用した診断が必要ではないか?
このように考えます。
川村則行先生は少なくともそのように言われています。
世界保健機関(WHO)は2004年に
うつ病の未治療率を56.3パーセントと推定しています。
2021年のWHO(世界保健機関)によれば
うつ病の原因とは、
- 生物学的
- 心理学的
- 社会的
これらさまざまな要因の相互作用です。
因果の関係は明らかではありませんが、
遺伝子的にうつに罹患しやすい場合もあるし、
感染症、がん、心血管疾患など
何か重い病気にかかることによって
うつ病につながることもあります。
心理的、社会的には
学業、仕事、異性関係、死別、孤独など
慢性、急性に大きなストレスを抱えることで
海馬など脳神経系に
炎症、細胞死などの悪影響を与え、
閾値を超えて発病する可能性もあります。
従って、
ここから推定されるうつ病の治療としては
脳神経病理としての生物学的な治療のほか、
その原因となっている
社会心理的な負な状況を
どう具体的に解決するか?
根本解決はできなくても
どう向き合っていくための
心を含めた体力をつけていくか?
- 社会的生活(就労、学業など)
- 生活習慣(運動、睡眠、栄養など)
これら基本的生活まで踏み込んだ対策が必要です。
ただ、現実問題として、
医療機関としてここまで個人的な事に
踏み込めないという事情もあるかもしれません。
ただし、そういった外因性の要因。
これが見当たらない場合もあります。
これは内因性うつ病といわれ、
抗うつ薬が比較的効果があるといわています。
上述したように
環境に原因がある場合には薬効を示しにくく
環境調整が必要であるとされています。
サブタイプとしては
- 不安性の苦痛を伴う
- 精神病性の特徴を伴う
- メランコリア (en:Melancholic depression)
- 非定型 (Atypical)
- 緊張病を伴う (Catatonia)
- 周産期 (peripartum, en:Postpartum depression)
- 季節型
これらがあります。
2014年に「日本心身医学会」で
東京慈恵会医科大学の近藤一博先生は、
うつ病や疲労の原因に
ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が影響していること、
およびこれを判定する
疲労測定法について論文を発表しました。
HHV-6はほとんどの人(日本では80%程度)の
体内に潜伏感染していますが、
1週間程度の疲労蓄積によって再活性化します。
特に脳神経細胞の中でHHV-6が再活性化すると、
このウイルス由来の
遺伝子タンパク「SITH-1」が産生されます。
SITH-1の発現は、
血中の抗SITH-1抗体を測定することで検証でき、
主にうつ病患者から
抗SITH-1抗体が多数検出されることが判明しました。
ここでヒトヘルペスウイルス6について
再度整理します。
ヒトヘルペスウイルス6 (Human herpesvirus 6; HHV-6)
これは、ヒトを主要な宿主とする
ヘルペスウイルス9種のうち、
Human betaherpesvirus 6A (HHV-6A)
および
Human betaherpesvirus 6B (HHV-6B)
これらの2種の総称です。
ウイルス学上はともに
ベータヘルペスウイルス亜科ロゼオロウイルス属
これに所属させます。
HHV-6は世界中に広く分布しています。
生後13ヶ月における感染率は、
アメリカ合衆国、イギリス、日本(8)、台湾
これらの国で64-83%と高率です。
また成人における血清陽性率は、
タンザニア、マレーシア、タイ、ブラジル
これらの多様な集団で39%から80%です。
HHV-6のウイルス粒子は直径およそ200 nmです。
外側からエンベロープ、テグメント、カプシド
という構造をしています。
それらにウィルスDNAは多層的に保護されています。
従って、神経系に潜伏感染できます。
最外層のエンベロープは、
ウイルス由来の糖タンパク質を含む
宿主由来の脂質二重膜である。
カプシドは正二十面体をしており、
その内部に直鎖状二本鎖DNAを含んでいます(7)。
ウィルスの活性化とは、
ウィルスが細胞内でSITH-1合成を含めて
ウィルスDNAコーディングに基づいて
細胞内の機序を使ってたんぱく質。
これを合成することであると考えると、
その合成機能を高めるためには
細胞が分裂周期に入っている必要がある
とはいいすぎかもしれないですが、
そのほうが物質合成に都合がいいです。
神経系細胞で活性化したときに細胞増殖するのが
成熟神経細胞ではなく、
- 星状膠細胞
- マイクログリア
- 乏突起膠細胞
これらグリア細胞種です。
実際にHHV-6は 星状膠細胞に感染する。
そのことは示されています(9)。
星状膠細胞や他のグリア細胞は
ストレス時に放出される
グルココルチコイド(コルチゾール)(10)
これによって活性化します(11)。
活性化するとは炎症性免疫細胞にように
これらグリア細胞が細胞分裂を開始します。
この細胞分裂を機に、潜伏していたHHV-6は
その物質合成能を優先的に奪い取って
ウィルス自身の複製のために
細胞内リボソームを利用してたんぱく質を合成します。
この時に問題となるSITH-1も合成されると推定しています。
このヒトヘルペスウィルス6(HHV-6)は
- 細胞融合
- 細胞死
- 細胞機能不全
感染細胞にこれらの影響を与え
自身の複製を優先させる働きがあります。
こうしたグリア細胞の機能障害により
傍分泌様作用として炎症性サイトカイン
- IL-6
- TNF-α
これらが過剰に産生され、
周辺の神経細胞や細胞外組織にダメージを与えます。
従って、
HHV-6感染があるとストレスを生じたときに
神経傷害を助長することになります。
これは「神経炎症(マイクログリア)仮説」
これを一部、説明するものになります。
従って、考慮すべきことは
ストレス反応に敏感な海馬のグリア細胞に
HHV-6が感染しているかどうか?
感染していたらウィルス量はどうか?
これはストレス起因のうつ耐性において
もっといえば、ストレス耐性において
重要な事実である可能性があります。
但し、
研究によれば、関与する脳の部位は海馬ではなく
嗅覚系の細胞である可能性があります(12)。
また、そうしたストレスイベントは
脳神経系内のHHV-6ウィルス量を増やす。
この可能性があります。
このウィルスが潜伏性を持っていることも
考慮されるべきです。
すなわち、このウィルス起因でのうつ病は、
一度発症すると、再発症するリスクを
ウィルス量依存で高まる可能性があります。
実際にうつ病は再発回数が多くなると
再発リスクが顕著に高くなることが示されています。
このウィルスは蔓延していて唾液で感染するので
特に脳の発達期にある年少の子どもに関しては、
神経細胞、グリア細胞もどんどん増えていくので
その時に感染していれば、ウィルス量も増えやすいです。
このHHV-6は乾燥に弱いと考えられており(Open AI)、
一般的には飛沫感染ではなく、
唾液による感染である可能性があります。
少なくとも唾液から
HHV-6のDNAが検出されます(13)。
このように感染ルートを仮定すると、
特に2歳までの
数年という短い時期において
脳の75%が組織基盤として完成する時期に
- 口同士のキス
- 口に入れる食器(スプーン、箸、フォーク)の共有
これらなどで
大人、兄姉の唾液をこの時期の子供にいれることは
極力さけたほうがいいです。
感染率の非常に高い潜伏性あるウィルスなので
完全には防げませんが、
その機会を減らすことはできます。
それによってウィルス量を減らすことができます。
日本では最大で83%くらいの人が感染しています(8)。
もちろん、その人に応じて
どれくらいの量を潜伏ウィルスを含めて
保持しているかは変わりますが、
基本的に自分自身がウィルス保持者である。
このように考えていたほうが安全です。
そうであるとするなら、
ちょうど、この冬の時期、鍋料理などで
食器を共有しやすい時期ですが、
特に、年少のお子さんをお持ちの過程は、
年末年始のせっかくの
お祝いムードに水を差すことになりますが、
年少のお子さんの
スプーン、箸、フォークなどの食器は
専用のものを用意してわける。
このことは重要です。
まだ、はっきりしたことはわかりませんが、
他のウィルス、細菌(例えば、ピロリ菌)
これらなどの感染症も含めて、
がん化のリスクがあったり、
脳神経の向性があるものは他にもあることと、
この時期は免疫機能が完全ではないため
少なくとも比較的特別な配慮が必要です。
もし、小児脳腫瘍の素因もHHV-6であり、
顕性感染が観られる場合には、
予後において、それに対する
今後の根本的な治療の研究開発も含めて、
より心の健康のためのケアは必要になる。
ということです。
モノアミン仮説とは、
大うつ病性障害などのうつ状態は、
モノアミン類である
- ノルアドレナリン
- セロトニン
これらなどの神経伝達物質の低下。
これによって起こるとした仮説です。
とりわけ、日本人は
セロトニン再取り込みタンパク質。
これであるセロトニントランスポーターが少なく、
別名『不安遺伝子』とも呼ばれる
「S(ショート)」の保有率は80.25%、
なかでもその重複型である「SS」型保有率は68.2%と
世界で最も多い。
そのため、日本人は遺伝的に神経終末における
セロトニン濃度が薄く、
不安になりやすいことが判明されています。
とくに、北日本の日本海側地域において、
その割合は高いです。
その理由として、天災による被害総額が
世界全体のおよそ2割を占める程
この厳しい国土のなかで、
不安を共有する民族同士が相互扶助し、
度重なる災禍をくぐり抜けてきた気質が
継承されてきたからではないか?
このように推測されています(14)。
不安を伴う抑うつ、うつ病になりやすい人は、
日光を浴びて、運動をして、空腹感を感じて
肥満を避けながら、
特に男性の場合は、
精巣での男性ホルモン(テストステロン)合成の
元となるコレステロール。
それを提供する
牛肉や豚肉などの脂肪分の多い肉を積極的に摂る。
それは同時にセロトニンの元ともなります。
コレステロールが低いと鬱になりやすい
ということもあります。
但し、飽和脂肪酸の過剰摂取、
不飽和脂肪酸の不足は
循環器の健康に悪影響を与える可能性があるので、
何事も完璧にはいかない部分もあります。
不安に感じやすい私の感覚からすると
- 運動(ジョギング、筋力トレーニング、ストレッチ)
- 晴れの日に外出すること
- 昼食を控えめにすること
これらは効果があるように思えます。
病前性格論として説明される
メランコリー親和型性格は、
- 几帳面
- 生真面目
- 小心な性格を示す
メランコリー親和型性格を持つ人が、
職場での昇進などをきっかけに
仕事の範囲が広がると、責任感から無理を重ね、
うつ病を発症するという仮説です。
性格の中で、
小心なというところは男性の場合は特に
テストステロンレベルと
一定、関連するかもしれません。
テストステロンレベルは
生活習慣、薬物治療などであげられます。
性格は変えられない部分もありますが、
弱気になりやすいという気質は
おそらく男性ホルモンも関係しているので
それを高めることで一定、変えられる可能性があります。
繰り返しの思考(反芻思考)
偏った思考
これらが気分と関連して
生じた場合には問題が生じるとあります。
ストレス耐性は、HHV-6などの感染など
生物学的に説明できる部分があるかもしれないですが、
これに関しては、こうした特定の素因だけではなく
性格的な事も含めてもっと一般的に評価されるかもしれません。
アルコール依存症または過度のアルコール消費は、
うつ病の発症リスクを大幅に増加させます。
アルコールによる神経病理そのものが
不安なども含めてうつ症状を助長させる。
この可能性がありますが、
付加的な因子として、
過剰なアルコールは睡眠の質を低下させます。
睡眠の質は心の健康と密接に関わります(15)。
- 貧困(16)
- 社会的孤立(17)
- 不登校(18)
- 無職(19)
- 児童虐待(身体的、感情的、性的、またはネグレクト)(20)
これらは一般的に精神的健康の問題のリスク増加と関連しています。
調べるまでもなく、これらが心の健康に影響を与える。
それは自明なことです。
川村総合診療院の川村 則行先生は2019年に
精神疾患は
“心”という目に見えないもので語るより、
体の病気と同じように物質で解き明かしたほうが理解しやすい。
精神疾患は“物質の病気”であり、“体の病気”である。
このように言われています。
私は精神科医ではないですが、
この記事を出発点とした
小児がんサバイバーのお子さんの心の健康。
これを考えるにあたり、
病理分析の中でも生物学的な仮説。
これは決して無視できないと考えています。
その理由は、信頼性があり
かつ因果関係の強い物質を見つければ、
薬物治療に限らず、
生活習慣介入やカウンセリングにをするにしろ
血液検査など評価項目が明らかになるため、
エビデンスに基づいた対策が打てる。
ということがあります。
もちろん、患者さん自身の状態を診ること。
これも大切だと思われますが、
それと合わせて生物学的な物質的証拠を取ること。
これは少なくとも無視できないことです。
例えば、
HHV-6感染が多くの場合、
精神疾患の素因の一つということであれば、
それに対して、私が提案したものも含めて
現在のテクノロジーでの対策指針が出るし、
「2歳までは唾液を極力移さない。」
このような具体的なガイドラインも出せます。
逆言うと
こういった物質的な素因があるかもしれない状況で
それが明らかにされないまま、
患者さん自身がメンタルヘルスの問題と
向き合っていかないといけない状況があるのであれば、
それは一定の改善の余地があるという意見です。
うつ病の中でも程度が
深刻な大うつ病のエピソードです。
抑うつ気分
患者は抑うつを訴えたり、周囲から見て抑うつ状態にある。
ほとんど1日中、ほとんど毎日である。
興味・喜びの喪失
最近のほぼすべての活動において、興味や喜びを喪失している
(患者本人や周囲の訴えによる)。
ほとんど1日中、ほとんど毎日の著しい減退である。
食事や体重の変化
食事制限を行っていないにもかかわらず体重が著しく増減する
(月に5パーセント以上程度)、
または最近の食欲が著しく増大または減衰している。
ほとんど毎日である。
睡眠
最近の睡眠が著しく過眠、もしくは不眠となる 。ほとんど毎日。
活動状態
周囲から見て、患者の最近の活動状態には
不安を感じたり、のろくなったように思われる。
ほとんど毎日。
疲労感
最近、著しく疲労感を感じる。ほとんど毎日。
罪悪感
最近、患者は根拠のない心配や不適切な罪悪感を感じており、
それらは単に抑うつであり、非現実的である。ほとんど毎日。
「どうせ自分なんか価値のない存在だ」
このように考えるようになるなど、自尊心が低下する。
集中力
患者本人や周囲の人によれば、
最近の日常活動において意思決定がおっくうであり、
集中力を欠いている。ほとんど毎日。
自殺念慮・希死念慮
患者は、希死念慮(死へのおそれとは異なる)、
自殺(もしくは自殺計画)、自殺未遂を訴えている。
もし、脳腫瘍の1次急性治療後に
こういった症状、あるいはこれに近い症状が出るなら
それは決して、幸せな人生ではないということは自明です。
最終的には生活習慣の改善は必要になりますが、
そこにたどり着くまでに、
しっかり物質的な証拠をつかんで、
それに基づいた生物学的な介入と評価。
これが必要になると思われます。
状況が整ってきたら社会福祉などと協力して
社会心理的な健全性のための環境づくり。
これをしっかり人情を持って構築すること。
これが必要になります。
よかれと思ってしたことが
患者さんにとっては負担になり、
逆効果になったとしても
そうやって失敗し、ドリフトしながらも
長期的に見たときに
ウェルビーイングのほうに向かっている。
家族なども含めた周りの人は長期的な視野でもって、
自分たちが支援していることが正解かどうか?
自問自答していくことは大切かもしれません。
大うつ病は、治療の有無に関わらず
時間が解決することが多い。
このようにも言われています。
この事実からも患者さんを支援するにあたり
長期的な評価が必要です。
薬物療法、心理療法などがありますが、
基本的にはメンタルヘルスに
問題を抱えた経験のある人は
自分自身の感覚によく耳を傾けて、
それを信じて、健康的な生活を心がける。
これがとても大切だと思います。
それが一つのマイルストーン。
回復に向けた重要な目標となると思います。
(あくまで例として)
朝からの生活について考えます。
- 朝、日光を浴びて15分程度散歩をする
- 栄養バランスのよい朝食をしっかりとる
- 通勤(時々、階段を使ってみる)
- 仕事(時々、椅子から立って、体操、ストレッチをする)
- 昼休み(職場できる運動。ランチは軽めに)
- 仕事(少し空腹を実感してみる)
- 退勤(食材の買い物を楽しむ)
- 筋トレ(軽く、良い睡眠のため)
- 夕食(好きなものを食べてみる)
- 就寝(入眠のための工夫)
たとえば、こういった生活があるかもしれません。
(時々は、ちょっとサボってみる。)
自分なりに感覚として受け入れられる
最も健康的だと思われる生活プランを立ててみます。
どういった時に状態がいいか?悪いか?
そのパターンが自分の中でわかってくれば、
状態を良くする習慣を大切にすればいいということにもなります。
再発率は、うつを繰り返すたびに高くなる傾向にあり、
初発の場合の次回再発率は50パーセント、
2回目の場合75パーセント、
3回目の場合は90パーセントにものぼる。
このように言われます。
この疫学統計を信じると、
少なくとも一定、HHV-6など
神経向性感染症が関連しているようにも思えます。
冒頭で述べたようにうつ病は性差があり、
女性が罹患しやすいのは世界的にある程度共通です。
女性は、
月経開始、月経中、妊娠、出産、子どもの自立、閉経。
これらなど生物学的な変化点が大きく、
それによりストレスを抱えやすい。
ということもあると思うし、
炎症性の免疫機能が高まりやすい(21)。
ということも関係しているかもしれません。
また、下述するようにストレス、感情処理に関わる
脳神経、内分泌系経路の器官の
性ホルモン受容体密度が高い傾向にあることも
おそらく複合的に関与していると思われます。
これはホルモンの変動の影響が大きく、
逆言うと男性でも
- 成長ホルモン
- 甲状腺ホルモン
- 性ホルモン
実際にうつの診断の時に、
これらに異常がないか検査される場合もありますが、
これらのホルモンのメンタルヘルスに対する影響は
無視できないかもしれないということを示唆します。
うつ病のよるリスクが高まる身体疾患
- 2型糖尿病
- 糖尿病患者の死亡率
- 動脈硬化
- 冠動脈虚血性疾患
- 心筋梗塞発症後1年間の心血管死,心筋梗塞再発など
- 脳梗塞
- 乳がん患者のがん死亡率
これは薬の影響も一定あると思われますが、
基本的に精神疾患罹患、罹患歴のある人は、
肥満も含めた循環器の健康に注意を払う必要があります。
決して高いエビデンスがあることではないですが、
1日3食、食べるのであれば、
昼食か夕食のどちらかの量を減らして
肥満や糖尿病のリスクを減らすことと、
こうした食事制限は低血糖の時間を経験すること。
それにもつながります。
「おなかが空く」というのは苦痛ではありますが、
血糖値75-85mg/dlくらいのマイルドな低血糖は
副交感神経が高める効果があります(22)。
一定の安心、リラックス効果があります。
マイルドな低血糖なので
血管拡張作用のある一酸化窒素も出て、
毛細血管も含めた血流もよくなるので
循環器の健康にも一定効果があるかもしれません。
もし、昼食後、うつ状態が強まるのであれば、
昼食を減らして、
自分の心の状態を評価してみるのもいいです。
夕食までどうしてもおなかが空いたら、
適宜、少しエネルギーをとればいいです。
子ども、若者のうつは大人で共通的にみられる
- 悲しみ
- 空虚
- 失望
これらのような抑制的な感情ではなく、
- 易刺激性
- 行動制御不能
これらのような興奮的な行動になる傾向にあります(23)。
これらのうつ症状は
- 感情障がい
- 不安症
- 行為障がい
これらなどと度々併存します。
子どもの場合も男性よりも女性に好発します。
青年のうつのリスク因子は
- トラウマ
- 家族トラブル
- 性トラブル
- 他の慢性的な心の病
- いじめ
- 虐待
- 家族罹患歴(親も若い年齢で罹患)
これらが挙げられます。
年長になればなるほど発症率は高まります(24)。
女性の場合は、初潮後、月経による
ホルモンの変動が関係しているかもしれません(25)。
男性の場合は、喫煙(ニコチン依存)は
うつ、不安、拒食症のリスク因子となります(26)。
ストレスは大人も含めて共通的なうつの素因ですが、
若い人にとっての社会的ストレス因子は
- 学業への強い圧力
- 家族間の困難
- 人間関係の困難
- 愛する人の死
- 疾患
- 関係性の喪失(交際相手など)
これらがあります(27)。
年長青年期の女性においてはうつ症状がある場合、
肥満に罹患するリスクは2倍程度高くなります。
但し、これはアメリカの調査で
日本で、これが該当するかどうかはわかりません。
女性がうつのリスクが高いのは
単に女性ホルモンが変動するからだけではなく、
ストレスに関連する
前頭葉-扁桃体-海馬
視床下部-下垂体-副腎
これらの回路において
女性は性ホルモンの受容体密度が高い(28)。
これが挙げられるかもしれません
うつの一つの生物学的な原因となる
海馬の血液脳関門は
他の脳組織に比べて脆弱といわれています(29)。
これは高いエネルギー需要が
関係しているかもしれません(30)。
言い換えれば、
毛細血管から多くのエネルギー源を取得する必要があるからです。
従って、
神経系細胞がある頭蓋内の実質が
循環器からのストレス物質の影響を受けやすいです。
さらに、
海馬は代謝活性の高い組織です。
ミトコンドリア活性が高いため
OXPHOS代謝産物である活性酸素ストレスが
通常の活動でも多い部位です。
従って、
神経細胞が酸化ストレスに脆弱であるといえます。
なぜ、代謝活性を上げる必要があるか?
海馬がある大脳皮質は、
神経細胞の80%が集まる小脳と比較して
細胞数が少ないにもかかわらず、
非常に複雑で多様な神経回路を形成し、
多くの「仕事量」をこなすからです。
小脳は主に「効率的な運動制御」に特化しているため、
規則的な構造の中で計算を行い、
予測的かつ自動的な動作をサポートします。
従って、
シナプス形成数は多いですが、
シナプス形成、刈込の作業が
回路として記憶されているため
都度、多く必要ではありません。
また、
生物学的に保持されてきた運動機能も多く含まれます。
基本的な運動は人以外の多くの動物が可能です。
しかし、
大脳皮質は特にヒトが
現代特異的に発達させてきた高度な知的作業も含めて
新しい状況や複雑な問題に対応する
「汎用的な作業」を担うため、より柔軟性が求められます。
このプロセスは進化的に保持されてきたものではなく
人のみが持つ機能として新しいため
脳神経系の情報処理プロトコルとしては
運動よりも非効率である可能性があります。
海馬がストレス、心の病において
一つの脳神経系の部位として重要であり、
かつ、海馬は大人になっても
神経細胞が増えるといわれています。
さらに近代的な学習によっても強化できます。
例えば、
マルチドメインの問題解決や創造的な活動。
このような能動的な学習は海馬の神経細胞を
より効果的に増やすかもしれません(Open AI)。
海馬の神経細胞が増えると
任意のコルチゾール量に対して
1神経細胞にかかるコルチゾール量を減らせること。
活発なエネルギー需要を分散させ
1神経細胞当たりの活性酸素を減らせること。
これらの可能性があるため、
完全に仕事を分担していなければ、
学習による海馬の強化が
ストレス対応にも水平展開され、
ストレス耐性を高めることができるかもしれません。
そういう意味では
新しいことを積極的にどんどん学んで
自分の中で問題を見つけて、
その問題を解決していく能動的なプロセスは
実は心の健康にも良い働きがある可能性があります。
他方で、
知識、知能がつくと、客観性も上がるため、
社会心理的なストレスを客観的に認知できるようになる。
そういった能力も備わる可能性があります。
不安障がいは世界で最も共通的な精神疾患の一つです。
推計で少なくとも3億人の人が悩まされています(35)。
疫学的な発症の性差では、うつ病と同様に
不安障がいは女性のほうが多いです(37)。
新型コロナウィルス流行時には
この患者数が少なくとも25%程度増えたとされています。
このように蔓延した疾患にも関わらず、
- 認識、診断
- 治療
- 予防
これらにおける正確な方法は確立されていません(36)。
特に生物学的な正常な応答としての不安(感)と
顕性の不安症の境界は明確ではありません。
6か月以上の慢性の不安症という一定の基準がありますが、
この期間そのものに明確な境界が示されるわけではありません。
あくまで指標であって、より重要な解釈は
顕性の不安症は不安消失機能が不全となった
慢性的な不安状態であり、程度がひどくなると
明確なストレッサー(ストレス因子)。
これがなくても不安状態になることがあります。
不安障がいがうつを伴うことは大人(特に女性(37))でも多い。
このように統計されています。
不安の元となるイベント、
慢性的な不安の後に発症する不安症は
うつ病の発症に先立つ傾向にあります(39)。
従って、
不安を慢性化させないことは、
多くのうつの発症を予防することにもつながります。
特に子供のうつでは不安(Anxiety)症状を伴うことが多いです。
実際に心の健康において不安(Anxiety)は
生まれてすぐから感じることができる
非常に原始的な感情であり、
メンタルヘルスの問題の中では、
低年齢の子どもに好発する疾患、心の状態です(31:Fig.1)。
ここでは基本的な概念も含めて
不安に関する内容を確認していきます。
不安(Anxiety)は、
内面的な混乱状態が特徴であり、
将来起こると予測される出来事に対する
- 恐怖感
- 心配
これらを含む感情です。
不安は恐怖(Fear)と類似しますが、
傾向として、
恐怖が現在の脅威に対する感情的反応であるのに対し、
不安は未来の脅威を予測することに基づいています。
しかしながら、この時間軸の定義は
ユニバーサルなものではありません。
実際に、年少の子どもの場合は
不安は現在の状況に基づくことが多いです。
これは、彼らが抽象的な未来を想像する能力や、
長期的な予測を行う認知能力が
まだ十分に発達していないためです。
この機能と関連する脳実質の外側の
大脳新皮質の発育が脳の中央部に対して遅れるからです。
例えば、
- 親の不在
- 環境の変化
- 身体的な不快感
これらを伴う場合、不安になります。
子どもが未来を想定して不安に感じる場合も、
「親が帰ってこないのではないか?」
このような具体的な事に対してです。
他方で、小児がん治療中、既往歴のある子どもは
当然、より不安を抱えやすい状況にあります。
以下が考えられる具体的な原因です。
1- 治療中の不安
治療の痛みや副作用:
- 手術
- 化学療法
- 放射線治療
これらに伴う痛みや不快感への恐れ。
病気の進行:
自分の病気が治るのかという心配。
親や家族との分離:
入院や治療のために
家族と離れることへの不安(特に幼い子ども)。
医療環境:
見知らぬ医療従事者や機械に囲まれることへの恐怖。
身体の痛み:
実際に体のどこかに痛みを抱えている可能性があります。
2. 治療後の不安(小児がんサバイバー)
再発への恐怖:
病気が再び戻るのではないかという心配。
身体的な後遺症:
治療による
- 成長障害
- 視覚・聴覚の問題
- 運動機能の低下
これらなどへの不安。
学校や友人関係:
治療による欠席や体力低下が
友人関係や学業に影響することへの心配。
後遺症としての痛み:
慢性的にどこかに痛みを抱えている可能性があります。
3. 社会的・心理的な不安
外見の変化:
- 脱毛
- 体重の変動
- 手術跡
これらなどによる容姿の変化への不安。
孤立感:
他の子どもと違う経験をしたことからくる孤独感や疎外感。
いじめ、差別、偏見の問題もあります。
将来への不安:
進学、就職、結婚といった人生の節目における
健康や生活への影響を心配する。
4. 家族に対する心配
家族への負担感:
治療のために家族が苦労しているのではないかという罪悪感。
親の不安の影響:
親が自分の健康を心配していることを敏感に感じ取り、
それに影響される。
不安はしばしば以下のような行動や症状を伴います。
神経質な行動(例: 部屋を行ったり来たりする)
身体的な訴え(例: 頭痛や胃の不調など)
反すう(同じ考えを繰り返し考えること)
不安は心理的な反応だけでなく、
身体的および行動的な側面も含む、複雑な状態です。
不安の身体的な症状としては
- 筋肉の緊張
- 落ち着きのなさ
- 疲労感
- 息苦しさを感じること
- 腹部の締め付け感
- 吐き気
- 集中力の低下
これらを伴うことがあります。
これらの不安が慢性化して、強くなると
(典型的には6か月以上、子どもはもっと短い)
- 不安症(Anxiety disorders)
- パニック障碍(Panic disordcer)
このように診断されることがあります。
不安は生物が共通にもつ保存されてきた感覚です。
生物が危険や脅威を感じたときに起こる
戦うや逃げるといった特定の行動は
この不安という感覚によって駆動されます。
従って、神経系としては
急速に体のエネルギーを上げる必要があるため、
交感神経が高まります(32)。
人が不安に感じたときの
落ち着かない、筋肉の緊張といった
行動的、身体的な症状は
生物学的にはこの視床下部での交感神経系の高まり。
これで少なくとも一部説明することができます。
今では、人においては特殊な状況を除いて
捕食者から襲われる心配はありませんが、
現代の大人、子供は具体的に
どういった状況を危険、脅威と感じ、不安を駆動するのか?
それについて考えてみます。
(大人が感じる危険や脅威、不安)
〇社会的要因
- 経済的不安:
失業や収入の不安定さ、物価上昇など。
- 仕事のプレッシャー:
業務量や職場の人間関係によるストレス。
- 人間関係の不安:
家族、友人、同僚との衝突や孤立感。
- 健康に関する不安:
自分や家族の病気、老化、予期せぬ健康問題。
〇環境的要因
- 自然災害:
地震、台風、大雨などの天災に対する恐怖。
- 社会的な混乱:
戦争、犯罪、テロのニュースなど。
- 環境問題:
気候変動や環境汚染への懸念。
〇心理的要因
- 将来への不確実性:
自分のキャリアや老後への漠然とした不安。
- 過去のトラウマ:
以前の経験がトリガーとなる恐怖や不安。
(子どもが感じる危険や脅威、不安)
〇社会的要因
学校での問題:
いじめ、友人関係のトラブル、成績のプレッシャー。
家族の問題:
親の喧嘩、離婚、家族の病気や死別。
新しい環境への不安:
引っ越しや転校、新しい人間関係への適応。
テストに対する不安:
学期末にあるテスト、受験に対する不安。
〇環境的要因
大きな音や暗闇:
幼少期に多い原始的な恐怖。
ニュースや情報:
自然災害や事件を知ることで起こる不安。
〇心理的要因
未知のものへの恐怖:
新しい経験や予測できない出来事。
失敗への恐怖:
親や教師からの期待を感じたとき。
(共通する不安の要因)
- 孤独感:
社会的なつながりが薄れることでの不安。
- 自己評価の低下:
自分の価値に対する疑念や自己否定感。
- 安全の欠如:
住環境や治安が悪い場合の不安。
- 競争に対する不安
学力、部活動、仕事(地位)、企業間などの競争(業績)への不安
- 大切な人を喪失することに不安
交際相手、配偶者、子ども、両親、友人など
哲学者ソーレン・キルケゴールは、
著書『不安の概念』(1844年)で、
不安や「自由のめまい」に関連する恐れ
これについて述べています。
彼は、人間が自由を持つことで選択肢が無限に広がる一方、
その自由の重みや責任が不安を引き起こすと指摘しました。
「自由のめまい」とは、
自分自身の選択が未来を形作るという意識から生じる、
決断の困難さや恐怖感を指しています。
しかし、キルケゴールは、
この不安が必ずしも否定的なものではないと考えました。
むしろ、自分自身の責任を自覚し、
意識的に選択する行動を通じて、
不安は前向きな解決へと導かれる可能性があると主張しました。
彼の考え方では、
不安は自己成長や自己実現の機会として捉えられ、
人間が自由と責任を受け入れることで、
より深い自己理解や存在の意義を見いだすことができるとされています。
例えば、
日本で大学受験を受ける学生は多くいます。
その中には親から東京大学を受けることを義務付けられ、
進学や塾選択などにも具体的に関与し、
学生さんは、一部でそれに従い、
目標に向けて、場合によれば小学校高学年から
10年近くかけて受験の準備する人もいます。
日々、日常でやるべきこと、進路は決まっているわけです。
そうした学生さんが晴れて東京大学に合格しました。
入学後、その学生はどのような感覚になるでしょうか?
一気に友人の輪は日本全国、世界にまで広がり、
授業の選択から、研究室選び、進路まで
全て、自分で選択することになります。
そういう状況は良いように思えますが、
一部の学生さんはそうではなく、
不安に感じるのではないでしょうか?
ずっと小学校の時から決められた生活をしてきたわけですから、
そういういわば、自由な状況に慣れておらずめまいを起こす。
このようなことが想定されます。
ただ、多くの場合、
入学後の時間経過が解決してくれるとは思います。
不安障がい(Anxiety disorder)にはいくつかの種類があります。
1. 全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder, GAD)
特徴:
長期間(少なくとも6か月)にわたり、
日常生活のさまざまな状況に対して
過度の不安を感じる状態です。
些細な出来事や問題でも過剰に心配し、
心配の内容が現実的でない場合もあります。
7割くらいの多くの人で生涯のどこかで
大うつ性障がいと併存します。
病理:
不安などの感情に関わる扁桃体において
GABA作動性の抑制系の神経細胞は
ストレス、不安、恐怖感を制御し、抑制する働きがあります。
GABA作動性神経細胞はしばしば小型の代わりに
エネルギー消費量も大きいため、
遺伝子に抱える負担や細胞全体へのストレスが大きいです。
度重なるストレスにより、交感神経が過剰に高まり、
環境中のカルシウム濃度が高まると、
そのイオンストレスによる影響を
GABA作動性の抑制系の神経細胞は受けやすいです。
こういった理由も一部あり、
抑制系神経細胞が傷害されやすいです。
元々、興奮系神経細胞は危険の際に
生物が命を守るために必要とされる神経細胞で
進化的に高度に保存されてきたということもあります。
抑制系神経細胞の神経伝達に関わるGABA
あるいはドーパミンも含めて神経伝達物質の産生は
腸内細菌叢とかかわりがあります。
善玉細菌であるビフィズス菌はGABA。
これの産生に関わる可能性が示唆されています(33)。
遺伝子的な形質、病理として
神経由来栄養因子(BDNF)の発現、
受容体認識(NTRK2)に異常があることと不安障がいの関連。
これが示唆されています(34)。
このことは不安障がいは扁桃体なども含めて
生物学的に神経病理として
神経系細胞の発達に異常が生じていること。
これが懸念されます。
心理学的には不安とは
現在の挑戦レベル > 対処レベル
すなわち、
難しい状況、脅威などが
自分が対処できるレベルを上回っているとき。
この時に生じるとされています。
自分の対処レベル高い時は
あらゆるチャレンジレベルに対して
Low- リラックス
Mediaum- コントロール
High- フロー
これら状態になります。
この対処レベルとは具体的には
- 冷静な判断、意思決定能力の維持
- 心身の制御能力
- 感情の制御能力
- 回復力
- 自己効力感と自身
- 柔軟性と適応力
- 長期的な視点と忍耐力
- 社会的支援の活用
これらなどが挙げられます。
症状:
不安、緊張感、集中力の欠如、疲れやすさ、筋肉の緊張
容易刺激性、多汗、震え、睡眠問題
これらなどが一般的です。
2. 特定の恐怖症(Specific Phobia)
特徴:
特定の物や状況、動物などに対して強い恐怖を感じ、
それを避けようとする状態です。
恐怖の対象が実際には危険でないことが多いのですが、
その恐怖が強く、現実的な影響を及ぼすことがあります。
例:
高所恐怖症(高い場所に対する恐怖)、
動物恐怖症(犬や蛇などに対する恐怖)、
閉所恐怖症(狭い場所に対する恐怖)など。
3. 社交不安障害(Social Anxiety Disorder, SAD)
特徴:
他人の評価や社会的な状況に対する強い恐怖や不安が伴う障害です。
特に他人と対面する状況(会話、会議、発表など)で、
恥をかいたり、拒絶されることを強く恐れます。
症状:
顔が赤くなる、手が震える、声が震える、吐き気や汗をかく。
これらなどの身体的な症状を伴います。
4. 分離不安障害(Separation Anxiety Disorder)
特徴:
特に子どもに見られる不安障害で、
親や重要な人物と離れることに対する強い恐怖や不安があります。
親から離れることや、親が危険にさらされることを強く恐れます。
症状:
学校への登校を避ける、夜間の分離時に眠れない。
これらなど、分離を回避する行動が見られます。
5. 広場恐怖症(Agoraphobia)
特徴:
公共の場や混雑した場所など、
人々が多い場所や閉じ込められるような場所に
出ることを強く避ける状態です。
外出することに対する恐怖が強く、
最悪の場合は家から一歩も出られないこともあります。
症状:
混雑した場所や交通機関、広場などにいると、
パニック発作を起こすことを恐れることが多いです。
6. パニック障害(Panic Disorder)
特徴:
予期しないパニック発作(突然の強い不安や恐怖)が
繰り返し起こる障害です。
発作は急激に起こり、
強い動悸、呼吸困難、胸の圧迫感、めまい。
これらなどの身体的症状が伴います。
症状:
発作が繰り返し起こることで、次の発作への恐怖から、
外出を避けるようになることがあります。
7. 選択的無言症(Selective Mutism)
特徴:
特定の状況や人々の前で話すことができない状態です。
特に学校や社交的な場面では話せないことが多いが、
家庭や安心できる環境では話せることが特徴です。
症状:
周囲の人々に話しかけることを極端に避け、
無言で過ごすことが多いです。
話さないことによる困難が学業や社会生活に支障をきたします。
脳神経系の不安を駆動する脅威の傾向として
急性、より反射的な脅威に関しては
生物学的に原始的な機能を含む
大脳皮質の扁桃体や海馬が関与しますが、
その脅威が続く場合は、
脳神経の処理としては前頭葉を含む
人で主に発達がみられる脳皮質の外側にある
大脳新皮質に比重が大きく映ります(36:Fig.2a)。
継続的な脅威では、特に制御機能が発達した大人では
客観的、冷静に判断する時間、機会が与えられます。
ストレスに対する適応反応も働きます。
急性の脅威に対する「単純な反応」から、
より戦略的で意図的な思考へとシフトするため
大脳新皮質が優先的に関与すると考えられます。
子どものころは小脳、脳幹、大脳皮質など
生命維持に欠かせない脳の中央部から
成熟していくことが一般的であると考えられるため、
大人になって機能が高まるような
ヒトとしての高次の機能である
大脳新皮質で行われるような
計画性、戦略性を持って冷静にイベントに対処する能力。
これが大人に比べて、一般的に低いと考えられます。
これはより持続的な慢性ストレスに対して
大人では一定の適応(Adaptation)が機能するものの、
子どもではそうした適応が生じにくい。
このことを示唆します。
また、このような時期に強いストレスを受けると
未発達な大脳新皮質の成長バランスに異常が出る。
この可能性もあります。
今、子どもの心の健康が問題となりやすい
社会的背景は少なくとも2つ考えられます。
- 子供の成長を身近で支える親族数の減少
- 子供の人間関係の複雑化、多様化、広大化
これらです。
昔は子育ては集団でされていましたが、
今は一人親も増えており、
場合によれば、共働きで
小さいころから親がいつもそばにいない環境があります。
さらに、小さいころから
学業、クラス活動、部活動など
多少のストレスがある競争にさらされ、
今ではインターネット、ソーシャルメディアで
学区外の人とも広く交流することが可能になっています。
明らかに子どもを取り巻く環境は
古代の比べて複雑化、多様化、広大化しています。
このことから
潜在的に子どもは大人と同様の
継続的なストレスにさらされやすい。
このような社会的状況にあると評価できます。
不安というのは程度の差はあれ、気分の波であり、
それが顕性となると気分障がいとも言えます。
何かストレス因子があると、
扁桃体に負の感情が巻き起こり、
それによって特にグルタミン作動性の
興奮性の神経細胞のシナプス連結を強める傾向にあります。
ヒトの脳には、こうした環境ストレスの耐性として
こうしたいわば、原始的な感情を
客観的に認識し、制御する機能が備わっています。
それが、前頭前野であり、
通常、扁桃体と前頭前野は競合的な機能があります。
すなわち、
扁桃体が過剰に優勢になると、
感情的な即時反応が優先され、
その感情を抑制しようとする
あるいはメタ認知する理性的な判断が抑制されます。
「前頭葉のトップダウン制御が効かなくなる」
このように言われます(36)。
これは脳のエネルギー配分からも一定説明されます。
すなわち、
扁桃体は視床下部にストレスホルモンを分泌するように
指令する直接的な神経回路を有します。
しかし、扁桃体に前頭葉の前頭前野や海馬などが関わり
それらとの神経連携にエネルギー配分されると
脳内はエネルギーがある程度一定になるように調整されますから
相対的に扁桃体からの視床下部の信号強度が弱まります。
それによって、
ストレスによって生じた感情に対する
コルチゾールなどのストレス物質の感受性。
これが低下します。
他方で、進化的な観点では、
前頭前野の発達のほうが
生物の進化の中では扁桃体に比べて後期のため、
無条件に競合したときには
どちらかというと前頭前野の機能のほうが
優先的に壊れやすいといえます。
加えて、循環器的にも
中脳、脳幹、大脳皮質のほうが内側にあり
心臓から頸部を通じて流れてきた主要動脈と近い位置にあり、
血液供給が外側の大脳新皮質よりも優先されます。
これらの内側の組織は
基本的欲求や生存に関わる機能制御に関わるため、
生存優先の法則からも守られやすいです。
従って、
海馬、扁桃体は細胞生物学的にみれば、
神経細胞は代謝需要が大きく酸化ストレスに弱いですが
それを補う神経新生が大人になっても備わっています。
いいかえれば、
過剰なストレスによって扁桃体が異常に高まると、
エネルギー配分が優先されるため、
前頭前野の機能が相対的に低下してしまいます。
この時に危機だから前頭前野の機能を
より高めようとする適応は働きにくいといえます。
別の観点で、認知症では
脳に関連する機能が少しずつ失われていきますが、
進行しても残る機能を分析すると
初めに失われる機能は
感情に関することでいえば、
脳の外側の前頭前野がするような感情の制御機能。
これが失われるかもしれません。
脳の深部に位置する小脳に関わるような
歩く、食事をするといった日常的など動作、
扁桃体に関わる感情的な反応や親しみや愛情の表現は、
最期まである程度維持されることが多いです。
呼吸や心拍、体温調整などの生命維持に関わる基本的な機能は、
同じく深部にある脳幹で制御されており、
認知症によっては最後まで比較的保たれます。
このことは心の問題を含めて
脳に機能障害が若い人でも生じたとき
より傷害されやすいのは
大脳新皮質、もっと言えば、より外側の部位である。
このように推定することもできます。
動物が大脳新皮質が小さくても生きていける理由は、
ストレス因子、ストレス認識が人とは違う。
このことが挙げられるかもしれません。
人がストレスに対して不安になるのは
そうしたストレス認識において感情を伴うからであり、
ストレスの感覚認識はその一部です。
動物はストレスを主に感覚のみで受け取るため、
比較的、単純にストレスに対する処理をします。
危険に感じたら、逃げる。
逃げきれたら、リラックスする、というようにです。
年少の人の子どもも比較的、それに近いです。
例えば、
母親から離れたときに泣き出します。
また、母親が抱きかかえたら泣き止みます。
後になって、離れたときの不安を思い出して、
泣き出すことはおそらくありません。
特に思春期以降の成熟した人において
色んな事を客観的に理解できるようになると
それと引き換えに余計なストレスがかかってしまう。
このようなジレンマがあるため、
それに対する適応として
前頭葉のような感情を高度に制御できる
大脳新皮質が非常に発達したと考えることができます。
大脳新皮質は遅れて組織として成長するので
成長期に、余計なストレスを減らす。
このことも重要ですが、
それによって生じる感情を冷静になって抑える訓練も
健全な脳の発達の為、必要になります。
小児がん罹患歴のある子どもも、
病気にかかったことは事実としてあると認めて、
今述べたような生物学的観点も含めて
どうやって冷静に心身の状態と向き合っていくか?
かかりつけ医(先生)とよく相談しながら、
継続的に親族からサポートを受けながら、
落ち着いて、あきらめず考えていくことが大切です。
こうした状況は不安を改善すると思われます。
生物学、薬学、医学、医療を
今よりも研究開発、臨床研究などによって発達させ、
物質的なことも含めてより正確なことがわかる。
このことは、お子さん、医師(先生)の
冷静な長期的行動、選択の大きな判断材料になりえます。
脳内でストレスに対する初期の反応を引き起こす主要な物質である
Corticotropin-releasing factor (CRF)は
(コルチコトロピン放出因子)
視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)を活性化します。
このHPA軸に女性ホルモン受容体が多いことは、
これらのストレスに関連する軸と
女性ホルモンであるエストロゲンの
相互作用が大きいことを示します。
他方で、脳内でも覚醒に変わる青斑核を通して
ストレスホルモンに応じて、脳は興奮状態に入りますが、
女性はストレスの際、男性よりも
過剰な興奮状態に入りやすいことが示されています(37:Fig.1b)。
一方で
男性は愛情ホルモンであるオキシトシンが分泌されると
内側前頭前皮質を通じて不安に感じやすいといわれています(38)。
従って、
男性は愛情を(特に過剰に)高めると、
脳内の反応として不安を惹起することがあります。
一方で、
女性はオキシトシンが出ると
向社会的行動に出る傾向があります(37:Fig.1d)。
そのほか、
回避可能なストレスの対処能力は
一般的に男性のほうが女性よりも高いとされています(37:Fig.1c)。
女性は左の扁桃体の機能が高まりやすいことが示されています。
一方で、
男性は右の扁桃体の機能が高まりやすいです(40)。
右の扁桃体は
非言語的な情動制御や空間的認知に関連しており、
狩猟採取の時代に男性はより捕食者からの脅威が
子育てのためシェルターにいる女性よりも高かったため、
危険を察知したときに右の扁桃体が高まりやすいのかもしれません。
瞬間的な交感神経の高まりに優れています。
捕食者が出現すれば、すぐに逃げる必要があるからです。
一方で、左の扁桃体は
言語的な要素を伴う情動調節が得意です。
集団で子育てを行う際には
言葉によるコミュニケーションがより大切だった。
このようなことが推察されます。
私の(以前の)駒田の部屋、この医療の部屋
男性的な直感的理解を必要としますが、
どちらにおいても言葉の運用ですから、
活動としてはどちらかといえは女性的です。
活動している中で、向社会性を示したときに
より強く心に響くのはどちらかというと女性かもしれません。
手紙、メール、SNSなどのやり取りも含めて
言葉を大事にするのはどちらかというと女性です。
男性同士はマメに手紙のやり取りを
友人同士ですることは稀です。
少なくとも私はしません。
女性は感情的にも言葉の運用、
コミュニケーションを非常に大切にする傾向にある
というのは一つとして
左の扁桃体の能力が高いことがあります。
数学、物理、化学、生物学などの学問は
空間的認知を必要とする場合もあり、
その場合は右の扁桃体が発達している
男性のほうが空間的な情報で持って
本質的な内容を
コミュニケーションする上では優れている
ということはあるかもしれません。
そのように考えると
不安解消のための治療の方法は
ある程度、性別で変える必要があるかもしれません。
男性はより直感的な情報に基づくケア。
女性は励ましなど言葉によるケア。
これが適しているかもしれません。
例えば、男性の場合、
実際に運動をしてもらって、
その後に直感的に感じる不安解消の感覚。
それを患者さん自身で評価してもらうことです。
心的外傷後ストレス障害の前半部分は
主に(43)を参照して、必要に応じて追記します。
心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder、PTSD)は、
命の安全が脅かされるような出来事
戦争、天災、事故、犯罪、虐待。
これらなどによって強い精神的衝撃を受けることが原因で、
著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害です。
症状がまだ1か月を経っていないものは
急性ストレス障害として区別する。
この心的外傷後ストレス障害はがんでも生じることがあり
がん治療はPTSDを駆動する一つの主要な素因として総括されています(41)。
同じ顕性がんである小児がんにおいても
患者さんだけではなく、兄弟や親御さんなど介護人(Caregivers)も
持続的な心的外傷後ストレス障害に発展することがあります(42)。
心的外傷(トラウマ)には
事故・災害時の急性トラウマと、
児童虐待など繰り返し加害される慢性のトラウマがあります。
慢性トラウマは現在では
複雑性PTSD(Complex post-traumatic stress disorder)。
これに分類されることがあります。
治療では、精神療法においては
- 認知行動療法
- EMDR(※)
- ストレス管理法
これらなどが有効です。
(※)EMDRとは
Eye Movement Desensitization and Reprocessingの略で
眼球運動による脱感作および再処理法の略称です。
フランシーン・シャピロ先生により開発された心理療法です。
眼球運動によるトラウマの脱感作を生む仕組みは
完全には解明されていませんが、
以下、いくつかの仮説が提唱されています。
ここでいう脱感作とはトラウマに対する主に扁桃体を含めた
感情に関わる感覚の感受性を弱めることです。
1- 両側性刺激の効果
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)では、
眼球運動が両側性刺激を提供します。
両側性刺激は、左右の脳半球間の情報処理を促進し、
トラウマ記憶の統合を助けると考えられています。
トラウマは通常、
未処理で断片的な記憶として保持されることが多いですが、
両側性刺激がこれらの記憶を脳内で統合し、
適切な文脈に再配置するのを助ける可能性があります。
2- ワーキングメモリ理論
トラウマ記憶を活性化させながら眼球運動を行うと、
ワーキングメモリの負荷が増加します。
ワーキングメモリの容量は限られているため、
眼球運動とトラウマ記憶の両方を処理することで、
記憶が持つ感情的な強度が低下すると考えられます。
これにより、トラウマの記憶が生理的なストレスを引き起こしにくくなります。
眼球運動や小脳や脳幹を動かすほか
感情を制御する前頭葉も動かします。
従って、脈略としてはトラウマ体験と眼球運動は独立ですが、
同時にすることでトラウマ体験に対して
直接的かつ特異的に感情をつかさどる扁桃体を強く刺激する
ということは避けられる可能性があります。
3- リラックス反応の誘発
眼球運動は自律神経系に影響を与え、
リラックス反応を促す可能性があります。
特に副交感神経系が活性化し、
過剰なストレス反応が軽減されることが報告されています。
これにより、トラウマ記憶に対する情動的な反応が弱まる。
このように考えられます。
4. REM睡眠との類似性
眼球運動は、
REM睡眠(急速眼球運動睡眠)の一部と似た働きを持つ可能性があります。
REM睡眠中には、記憶が整理され、
感情が処理されるプロセスが進むとされています。
EMDRの眼球運動が
これと類似した神経プロセスを誘発する可能性があります。
5. 注意の分散と安全感の提供
眼球運動を行うことで、被験者は注意を分散させ、
過去のトラウマ記憶に対する感情的な再体験を軽減します。
同時に、セラピストが安全な環境を提供するため、
被験者はトラウマ記憶に取り組みながらも
安心感を保つことができます。
以下の3つの症状が、
心的外傷後ストレス障害(PTSD)。
この疾患を診断するための基本的症状であり、
これらの症状が、
強い恐怖、無力感または戦慄を伴う出来事のあと、
1か月以上持続している場合です。
1か月未満の場合には急性ストレス障害(ASD)です。
一方、その出来事から6か月以内に発症していること。
これも定義づけられている。
1- 精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状。
2- トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。
3- 事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる追体験。(フラッシュバック)。
がんの場合では、心的外傷後ストレス障害を駆動する原因は
一般的に想像される診断(告知)、急性期治療中の苦痛だけではありません。
- 診断の衝撃
がんの診断そのもの
- 治療関連のストレス
治療の副作用
治療中の孤立感
経済的負担
- 再発や進行の恐怖
再発の不安
進行がんの告知
- 身体の変化や機能の喪失
外見の変化
身体機能の低下
- 人間関係の変化
家族や友人との関係の緊張
社会的孤立
- 死や未知への恐怖
生命の有限性を意識
未知への恐怖
- トラウマ的医療経験
緊急医療の必要性
痛みや不快感を伴う処置
- 子どもや家族に対する心配
子どもへの影響
介護負担の罪悪感
- 社会復帰への不安
学校、仕事やキャリアへの影響
社会的スティグマ
患者が強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、
パニックを起こす場合があります。
そのため、その機能の一部を麻痺させることで
一時的に現状に適応させようとします。
そのため、事件前後の記憶の想起の回避・忘却する傾向、
幸福感の喪失、感情鈍麻、
物事に対する興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失、
身体性障害、身体運動性障害。
これらなどが見られます。
特に被虐待児には感情の麻痺などの症状が多く見られます。
これらの症状はいずれも、1930年代に
アメリカの精神科医ハリー・スタック・サリヴァン先生によって定式化されました。
- トラウマ的な出来事に関連する精神的なイメージ、考え、または動揺する夢を体験する。これらはいかなる意思の力によってもはねのけることができない。
- トラウマとなった出来事が今まさに起きているかのように感じる。
- 著しい不安と身体的苦痛。(息切れ、めまい、動悸、発汗)。
- トラウマのすべてのリマインダー(思考、人、会話、活動)を避ける。
- トラウマについての重要な詳細を思い出せない。
- 自分自身や他人について著しく否定的な信念や期待を持っている。
- 容赦ない否定的な感情。
- かつては楽しんでいた活動への興味を失う。
- 他の人から離れている、または切り離されていると感じる。
- 感情が麻痺している。(愛などの前向きな感情を体験できない)。
- 自分の人生が当初の予想よりも短くなると信じている。
- 常に危険を警戒し、びっくりしやすい。
- 神経が昂り興奮している。(睡眠障害、イライラする、攻撃的、無謀または自己破壊的、集中できない)。
1.これらの症状が1ヶ月以上続いている。
2.自宅、職場(学校)、または社会的状況で正常に機能する能力に深刻な影響を与えている。
これらを共に満たすことが
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断基準です。
前帯状皮質が小さいと発症しやすいことがわかっています。
発症後、眼窩前頭皮質が萎縮することも判明しました。
前帯状皮質(Anterior Cingulate Cortex, ACC)は
- 感情と情動の処理
- 身体的、社会的痛みの処理
- 注意とエラー検出
- 報酬とリスク評価
- 動機付けの調整
眼窩前頭皮質(Orbitofrontal Cortex, OFC)は
- 価値の評価
- 快楽や満足感の処理
- 共感と社会的判断
- 道徳的および倫理的判断
- 行動の調整
- 感情と意思決定の統合
それぞれこれらに関わります。
PTSDを持つ人はしばしば
アルコール依存症や薬物依存症といった嗜癖(しへき)行動(※)を抱えますがm
それらの状態は異常事態に対する
心理的外傷の反応、もしくは
無自覚なまま施していた自己治療的な試み(セルフメディケーション)
これらであると考えられています。
しかし、嗜癖行動を放置するわけにはいかないので、
治療は多くの場合、まずその嗜癖行動を止めることから始まります。
(※)嗜癖行動とは
特定の物質や行動、人間関係を過剰に好んで、
本人や周囲に不都合な事態を引き起こしながら
やめられない状態を指します。
様々な技法に共通する、援助の基本方針は次の通りです。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)を引き起こしたトラウマ体験は、
非常に苦痛で過酷なものです。
したがって、患者さんの苦しみやつらさに対して
共感的に接することが重要である。
例えば、患者さんに対して、次のような声掛けが考えられます。
「本当につらい体験をされましたね、よくがんばってここまでいらっしゃいました」)。
「がんは誰でもかかる病気です。たまたまの要素も大きいから、
あなた自身(患者さん、親御さん)をあまり責めないで。一緒にこれからのこと考えていきましょう。」
「そのつらい体験は、あなたの体全体だけでも弱める事ができるし、
わたし(医師)、親御さん(ケアギバー)と共有して弱めることができます。」
「適切な治療をすれば、時間が解決してくれる部分もあります。」
「少しずつでいいので、毎日の生活を見直していきましょう。
その中で辛いことがあったら何でも言葉にしてください。」
、、、
患者さんは、PTSD症状を自らの弱さと考えていることが多いです。
したがって、PTSDは誰にでも起こりうる病態であることを説明します。
出来事の原因が自分にあると自らを責める患者には、
「(加害者が悪いのであって)あなたは悪くないのですよ」
これらと伝え、自責感を軽減することも効果的なサポートなります。
患者が必要な司法支援や生活支援、被害者支援等を受けられるよう、
適切な支援機関(社会的資源)につなぎ、
医療と福祉が共同で包括的支援を届けられる体制を整えます。
持続エクスポージャー療法は、
トラウマに焦点を当てた認知行動療法であり、
セラピストとの会話を通じて心的外傷に慣れていく心理療法で、
国際的に推奨されています。
しかし、一方で有効性に限界があります。
また、技法に精通していなければ
ストレス症状を強めるため注意が必要です。
例えば、セラピストは以下のことに注意を払う必要があります。
- 患者さんに治療の目的を理解できるよう説明
- 段階的なトラウマ体験想起
- 安全な環境づくり
- 乖離、フラッシュバックが起きたときの対応(患者、セラピスト)
- 患者(さん)の情動のモニタリング
- 定期的な治療効果の評価
持続エクスポージャー療法の構成要素の一つとして
現実エクスポージャーがあり、
トラウマ記憶が頻繁に思い出され
トラウマに関連する物事・場所・状況。
これらなどへの恐怖や回避がある場合に用いられる技法となっています。
この技法を通して、治療者のサポートのもと
そのような物事・場所・状況。
これらなどへ段階的に直面していくことで、
「再び同じ被害にあうことはない」
「今まで回避してきた物事・場所・状況などが安全であった」
これらなどの気づきを得て、トラウマへの恐怖感を和らげていきます。
上の注意事項と一部重複しますが、
治療導入時には、丁寧な心理教育を通して
トラウマ症状と治療原理の理解をサポートするとともに、
患者さんとのラポール(信頼関係)の形成を行います。
不安時に用いることができる呼吸法についても教示しておくことが望ましいです。
全体を通して、患者さんがつらい経験を共有してくれていることを
常に頭に置き、支持と共感を示すことが重要です。
トラウマ・フォーカスト認知行動療法(TF-CBT)は、
子どものトラウマ治療に用いられるプログラムです。
基本となる構成要素は、「PRACTICE」の頭文字で表される8つであり、
P- 心理教育とペアレンティングスキル
(Psychoeducation and parenting skill)
R- リラクゼーション法(Relaxation)
A- 感情表出と調整(Affective expression and modulation)
C- 認知コーピング(Cognitive coping)
T- トラウマナラティブとプロセッシング(Trauma narrative and processing)
I- 実生活内での段階的曝露(In vivo mastery of trauma reminders)
C- 親子合同セッション(Conjoint child-parent sessions)
E- 将来の安全と発達の強化(Enhancing future safety and development)
これらから構成されます。
十分に有効性が実証されたプログラムであり、
今後の普及・発展が望まれます。
P- 心理教育とペアレンティングスキル
心理教育と子育てスキルに関してです。
心理治療を経て、どういったメカニズムを経て
患者さん(お子さん)が回復していくか?
それについての理解と、
親御さんが子供の回復を具体的にどうやって
支援(サポート)していくかの教育です。
例えば、
子どもの感情や行動を理解し、共感する方法。
子どもが安心感を感じられるようなコミュニケーションスキル。
子どものポジティブな行動管理技術。
R- リラクゼーション法
リラクゼーション技法を教えることで、
ストレスや過剰な覚醒(過剰反応)の管理を支援します。
- 呼吸法、筋弛緩法
体幹など一定の正しい姿勢を維持しながら、
手足、肩などの筋肉の緊張を意識的に弛緩(緩める)させます。
顔面の筋肉を意識的に弛緩させると自然と優しい表情になります。
そうすると自然と呼吸はゆっくりになってきますから
その状態で、鼻から息をゆっくり吸い込み
深呼吸を意識してみます。腹式呼吸も学びます。
意識的に気持ちを落ち着かせて、動作をゆっくりするのもいいでしょう。
- 視覚化
安心感を与えるイメージ(穏やかな風景など)を想像して、
心を落ち着けます。あらかじめ安心できるイメージを
テンプレートとして用意するのもいいかもしれません。
頭でイメージすることが大切です。
- 注意の再集中
マインドフルネスや瞑想を活用し、現在の瞬間に意識を集中します。
フラッシュバックなどが生じたときには
交感神経が高まり、極度に集中が難しくなるので、
普段から、物事に集中できる力を回復させます。
上で述べた呼吸法、筋弛緩法と組み合わせて、
集中力が高まっていくのを感じ、
その中で意識的に呼吸なり、聞こえる音など5感を意識して
マインドフルネスを実行してもいいです。
A- 感情表出と調整
強い感情が出ているときには
その感情を客観的には認識できませんから、
不安、悲しみなどを感じたときに、
その感情をできるだけ具体的に言葉にする練習をします。
それをケアギバー(親御さん)などに伝えましょう。
親御さん、患者さん自身どちらも
どういった時にそのような感情を抱きやすいか?
言葉にすることによって分析しやすくなります。
心に問題を抱える人はあなただけではありません。
生涯、経験する人は多く決して珍しい病気ではありません。
その事実を知り、今の自分を責めるのはやめましょう。
トラウマ体験は受け入れられませんが、
それによる自分の感情を受け入れましょう。
感情が過剰に高まったときには
頭の中だけでなんとかしようとするのではなく、
身体全体を使った具体的な方法でもって対処しましょう。
例えば、
- 全身の力を抜く
- 動作をゆっくりにする
- 「落ち着け~」と繰り返し自分に語り掛けてみる
- 鼻からの呼吸を意識する
- ゆっくり全身の筋肉を順番に伸ばしてみる
- 急いで何かをするのをやめて、気持ちをゆったり持つ
体全体を使ってできることは色々あります。
C - 認知コーピング
ストレスやトラウマに関連する歪んだ考え方を修正し、
適応的な思考を促します。
頭脳はより外側が傷害されやすいことを知ります。
外側は、考え方を調整したり、
計画的に考え、実践していく
人らしい行動を私たちに誘導してくれます。
その機能を回復させることは可能ですから
諦めず、日々、これらの能力を
具体的な手段で少しずつ高めていくことを考えます。
物事の捉え方には反対の捉え方があります。
「何か負のイベントが起こった。」
そうしたときには自分を責めがちですが、
人には負の作用を補う能力が備わっています。
そうした負の部分があるから、そのマイナスの分、
より強くなれるという考え方もできます。
1日の計画を立てて、
それができたかどうか?
決して予定通りできなかったことを責めずに、
まず、計画を立てて、
その計画に従って、行動してみる。
その結果を正当に判断する。評価する。
そこから始めることができます。
こうした計画遂行の能力は
脳の外側の大脳新皮質の部分が主に役割を担います。
T - トラウマナラティブとプロセッシング
ナラティブ(narrative)とは物語の語り手となることです。
イベントの種類によっては
初めは人に語ることは抵抗があるかもしれませんが、
トラウマとは断片的にも映像と共に
イベントを思い出すことですから
常に自分の頭の中の閉じられた空間で繰り返されています。
それを閉じられた空間にせずに、
より開かれた世界で冷静に言葉にして発信していく。
ということです。
自分の親御さん、セラピストに話します。
但し、言葉にして辛くなるなら中断しましょう。
フラッシュバックが生じる可能性があるので
安全な環境で行いましょう。
I - 実生活内での段階的曝露
患者さんが実生活の中で意識的に嫌がっていること
あるいは避けていることの中で
健康的な生活において欠かせないものに関しては、
段階的な暴露(Exposure)を試みます。
実際にケアギバーの人が一緒について、
意識的に経験させるときには、
両者ともにその状況が安全であるということを確認します。
そうして、お互いその都度できたことを労います。
少しずつ健康への階段を上っていることを確認し、
それを小さな成功として
患者さん、ケアギバーの自信、自己効力感、自己肯定につなげます。
C - 親子合同セッション
自分の子どもが小児がんも含め難しい顕性疾患、
あるいは許しがたいトラウマ体験があって、
それに対する後遺症、障がいがある場合は
往々にして親子間の絆は強いものです。
そうしたモチベーション、駆動力を味方につけ
この記事の内容を含めた科学的なアプローチ、
医療福祉スタッフと共に、
親子間のコミュニケーションを改善し、絆を強化します。
いいこと、嫌なこと。
どちらのことも共有し、
それに対しての感情的なことも共感します。
積極的なリハビリテーションだけではなく、
一般の人が楽しむような活動を計画し、
人生の中でポジティブな体験を共有します。
E - 将来の安全と発達の強化
患者さん(子ども)は、最終的にはある程度、自立する必要があります。
親御さんの介護がなくても健康的な生活ができるために
段階的な計画を立て、一つ一つ焦らずに実現していきます。
フラッシュバックなど患者さんを極度に混乱させる状況。
これが生じたときに、どのような対処をとればいいか?
それを継続的に確認し、対処できるようにします。
親御さん以外の第三者のサポートを含めて、
病気以外のことも含めて
社会心理的なストレスはどうしてもありますから、
そうしたストレスや困難に対処するための
長期的に実践を通じたコーピングスキルの習得と
それをしっかり言葉で定義して記録しておくことをします。
トラウマナラティブとプロセッシング
トラウマ記憶が
感覚運動的・身体的記憶(頭に残る鮮烈なイメージ)
これら(断片的な)映像、感覚としてとどまってしまっており、
叙述的記憶(言葉にできる通常の記憶)になっていないため、
フラッシュバックが生じるとされます(44)。
この理論を基に、トラウマ記憶を叙述的記憶にできるよう、
トラウマ記憶を言葉で表現するトラウマナラティブが行われることがあります。
トラウマナラティブとは、
トラウマ体験時の状況や感情をありのままに話すことであり、
話し手はどのような状況や感情を話してもよく、
治療者や支援者がどのようなものも温かく受け止めます。
この時、支援者は聞き手として
話している最中に自分が話すことを
高度に抑制的にコントロールする必要があります。
言い換えれば、聞き手に回るということです。
その後、
トラウマナラティブで表出された認知(自分を責める考えなど)を、
機能的な認知(自分を肯定する考えなど)へと修正していくための
支援、プロセスを具体的に考えます。
このトラウマナラティブとプロセッシングも有効な治療構成要素です。
過去のそういった自分がトラウマを抱えるようなひどいと考えられる事件は
時間的に風化する部分はあっても、
それを言葉にして客観的に認知できるようになっても、
ひどいことですからやっぱり許せないとなると思います。
そうした感情を無理に捨てる必要はありません。
特に言葉を大切にする女性であれば
「そうだよね。」と
肯定してくれる、共感してくれる人がいれば幾分か救われます。
男性の場合も、そうした感情とうまく付き合うことができる
自分を実感できたときに、少し救われる部分があります。
そういう許せない気持ちを高度に制御しながら
持ち続けて生きていくことは必ずしも不幸ではありません。
セルフヘルプ(Self-help)
今、様々な診療科の医師(先生)も含めて
この記事を、今日、どのような気持ちで読まれているでしょうか?
先生方は、大きな書店の洋書コーナーに行かれたことはあるでしょうか?
その洋書コーナーにはSelf-helpというコーナーがあります。
専門家の助けを借りず、自身の問題を当事者で解決すること。
このような定義ですが、
自分自身で書籍などの情報の力を借りながら、
抱える疾患も含めて、問題を解決していくことです。
私のイメージとしては日本の自己啓発本に近いですが、
この定義、心理療法に含まれることを考慮すると
自分自身の知識を書籍によって高めるというよりも
やや医療、健康に寄っている気もします。
自分で自分自身を助けるですから
治療の主導、主権は自分自身にあります。
書籍、オンラインプログラム、アプリ、ワークシート
これらなど多様なリソースを活用できます。
基本的に少なくとも子供、未成年が
セルフヘルプを基に治療を行うのは難しいと思われます。
トラウマ後ストレス障害(PTSD)の軽度症状で
比較的知識レベルに自信がある大人。
その方に向く治療だと思われます。
対人関係療法では、トラウマとなった出来事(過去)ではなく、
トラウマに影響を受けている対人関係のあり方や
それに対する感情等(現在)に主な焦点を当て、
心地よい対人関係を築いたり
さまざまなソーシャルサポートを受けたりできるよう支援することなどを通して、
トラウマからの解放をサポートします。
お子さんであれば、自分にとって大切な人、
あるいはいつも味方していくれる人、支援してくれる人。
そういう人たちが周りにいます。
例えば、
- 両親、兄弟姉妹、
- 親しい友人、学校の先生
- かかりつけ医(先生)、医療スタッフ
- ソーシャルケアラー
トラウマの影響が大きいと、
こうした本来大切な人との関係性にも影響を与えてしまう。
このようなことが懸念されてしまいます。
例えば、お母さんを責めたりすることもあるかもしれません。
「何か許せない出来事があった。」
トラウマではそういうことがあるわけですが、
それはそうした症状を抱えていない人もあります。
そうしたときに、心のコントロールがうまくいかないと
本来自分にとって大切な人も失ってしまうことにもなります。
例えば、男性であれば、
突然の解雇で、仕事を失い、そのショックから
アルコール依存などの日常生活にも支障をきたした。
それで大切な奥さんと子供を離婚によって失う。
そういったことは、まま、あります。
何か負のイベントがあったときに
自分を本来支援してくれる人との関係性を
どのようにうまく持続的に構築していくか?
これは実は一番、重要なことかもしれません。
例えば、仕事や学校は変えることができますが、
自分の子どもは不可換なことは自明です。
「許せないこと」というのはあるし、
ましてやトラウマでは
そんな簡単には消えないと思います。
こういう難しい状況の時は、感情的ではなく、
生物学的に考えるのがいいです。
結局、そうした制御不能な原始的な感情は
脳の扁桃体で生じます。それは比較的内側にある。
それを制御するのはより外側の前頭葉です。
そうした許せないイベントと
うまく付き合っていくためには
こうした外側の前頭葉の機能を高める介入を
具体的な行動に落とし込んで、
ただ、黙々と実施していく。
男性であれば、その中で生じる感覚を
直感的に評価していけばいいです。
女性であれば、人と共感の中で頑張っていく。
こうしたことと並列的にやっていかないと
特に、男性の場合は、
周りの大切な人との人間関係を維持しながら、
そうした閾値を超えた過剰なストレスと
向き合っていくことは難しいと思います。
こうした感情的なことが絡む問題は
まずは「認識」が重要です。
例えば、何か外的ストレスが入った。
その時に自分の心拍数が速くなっているということを
おそらく実感する人はほとんどいないと思います。
実際、そういうことが体のなかで起こっていても
それは決して意識下にありません。
でも、それに気づくことができたらどうでしょうか?
「あ、オレ、今、脈速くなっているな。」と。
対人関係も同じです。
差別、虐待、仲間外れ、失業、失恋、喧嘩、いじめ、無視、いやがらせ、、、
世の中には感情を掻き立てる色んなことがありますが、
そうしたときに、そうした敵ではなく
味方の人に対しての関係性の悪化が生じているとき。
たとえば、八つ当たりをしてしまった。
まずは、それに客観的に気づくことができるか?
八つ当たりそのものもそうですが、
それを「大切な人」にしていることです。
そこに「気づく」ということが
全ての出発点となります。
対人関係療法における予備研究では、
症状のスコアCAPSで50点以上の未治療の110人を
ランダム化して14週間の試験を実施し、
CAPSスコアを30%以上改善させた患者の比率は、
有意差はないが、
対人関係療法では63%と持続エクスポージャー療法の47%よりも
高い反応率を示し、曝露なく治療できる可能性を示しました。
急性ストレス期のデブリーフィングが止めるべきという
日本トラウマティック・ストレス学会の明言からしても
トラウマをもつ患者さんに対して、
トラウマ体験を意識的に思い出させるような介入は
少なくとも慎重に考えて実施すべきであるということです。
トラウマのフラッシュバックも含めて、
何か発作的に感情が爆発して、
行動の制御が全く機能しなくなることがあります。
これも、特にPTSD疾患有無に限らず、程度があります。
声を荒げて怒る程度で済む場合もあります。
あるいは涙を流して、解決する場合もあります。
しかし、多くの場合、
そうした感情の爆発はそれを惹起させる
(ストレス因子) > (制御)
このような不等号が成り立つとき、
すなわち、
自分の制御能力をストレスが上回ったときに生じます。
ストレス因子をなくすことは
現在の社会において不可能ですから、
自分の脳神経を傷害させないためにも
日頃から制御能力を継続的に高める介入が必要になります。
それは特にそうしたストレスがかかりやすい人の場合はそうです。
しかしながら、
こうした制御能力は往々にして大脳新皮質の仕事になるため、
そこが成熟している大人ならばいいですが、
それが未成熟の子どもに対して
過剰にそうした命題を与えるのは少し残酷です。
少なくとも、そうしたストレス因子に対抗するための
制御因子の支援が必要になります。
そのお子さん自身の制御能力が高められるように
サポートをすることも大事です。
とりわけ
顕性小児がん既往歴があり、
過去、辛い治療経験、予後においても
様々な因子において継続的にストレスがかかる状況においては
継続的にかかるあらゆるストレスに対する
対抗手段としての制御性を高めるための支援は
医療機関、福祉施設、親御さんなど
多次元的な人的ネットワークで必要になります。
例えば、健常者であるあなたが
外をジョギングするとします。
その際に、私はあなたに
極力、冷静な気持ちを意識して走って下さい。
このように注文しました。
もう一つ、自分の中で3段階、ペースを変えて下さい。
こうした追加注文をしました。
そうするとどうなるか?
より、速いしんどいペースでは
自分の心を冷静に保つことがより難しくなります。
しんどい局面になると
誰しも取り乱しやすくなります。
こうしたことが
心的外傷後ストレス障がいを呈している人、
あるいは小児がん罹患歴のある一部の人では
日常的に起こっているかもしれないということです。
小児がんなど子供のころに顕性の疾患、
あるいは、トラウマ体験など大きな負のイベント(事件)。
これらを抱えた子供は特に
人を人たらしめる
すなわち、人らしく健全に成長させるためには
生物学的にヒトが特異的に発達させる
大脳新皮質の健全な成長、機能を支援することが大切です。
好ましくは、子ども自身が具体的に
何が、その成長を支え、なぜ、それが重要なのか?
それを自身の言葉として定義できるようになる様式で
日々の日常生活の行動の選択を健全な方向に導くことです。
大脳新皮質は
1- 感覚の高次処理(統合、概念形成)
2- (長期)計画を立てて、運動、行動をする
3- 複雑な状況に対する判断、選択
4- 裏に隠れるリスクの評価
5- 長期的なストレス適応
6- 長期記憶
7- 意識の選択と集中
8- 感情の調整
9- 立場を変えて思考(他者理解)
10- 創造、想像力
11- 言語理解と文字処理
例えば、このような機能があります。
当然、こうした機能を実際に使うということは
健全な成長を促すことになりますが、
では、その成長をベースラインで支援するものは何ですか?
具体的に習慣的な行動に落とし込むとき、
どういった訓練が考えられるでしょうか?
果たして全部が全部、発達することが正解でしょうか?
現代社会、あるいは日本社会で生き抜くために
より必要とされる機能は何でしょうか?
小児がんなど難しい顕性疾患を抱えた
一部で明らかなハンディキャップを抱えた
子どもの幸せのための大脳新皮質の在り方とは?
(解答例)⇒
- 身体的な幸せ
- 心理的な幸せ
- 経済的な幸せ
これらは全て欠かすことができないが、
心理的な幸せが特に重要だと定義した。
そうであるなら、その子にとって
どういった機能が一番、
喜び、嬉しさ、充実などの感情を結びつくか?
それの見極めが必要である。
仮に科学的な創造性であるとする。
そうであるとするならば、
それを実現するための具体的な方略を考える。
長期的な計画とそれに基づいた持続的な行動。
これが必要である。
言語、空間情報の統合が必要である。
その子供の現在のレベルを見極めて、
常に1段上のレベルを目指すために必要なこと。
それを具体化して、日常生活に取り入れる。
そうした1段上のレベルを自らが設定できるように
自動的プロセスが回せるように教育する。
一方、
心理的な幸せとは感情の制御でもある。
感情を制御するために必要な事。
多次元的に定義して、日常生活に落としこむ。
すぐには完璧にできない。
でも、出来たか、出来なかったかを
正直に報告して、逐次、評価を行う。
結局のところ、日常生活で何をするか?なので
その人にとって最も幸せにつながる目的のために
具体的に何が必要かを定義して、
それを日常生活の具体的な行動に落とし込みます。
気分の変動も含めて、色んな事が起こるから、
実際にはこの行動することが誰しも難しいけど、
その計画に基づいた行動こそが、
大脳新皮質を鍛える事にもなります。
「なんか、機械のようで嫌だ」
そのように思う人もいるかもしれないですが、
この計画に基づいた機械的なシステムのほうが
高度、高次でずっと脆弱です。
このように生涯行動しても、
人は生物らしさを失うわけでは決してありません。
なぜなら、そこは高度に保持されているからです。
顕性がんを発症した人の少なくとも一部は
子どもに限らず、
- 漫然とした不安(Angst)
- (再発などによる)死への不安(death anxiety)
- 孤独感(Aloneness)
- 生きる意義、自由、制御の喪失
これらが挙げられています(41,45)。
患者さんが持つこころの部分。
ここは決して疎かにはできなくて、共感は必要ですが、
こころは物質ではなく機能、概念なので、
物質的な実在があるものではありません。
こころの問題を脳神経だけで扱うのではなく、
その患者さんの大切な資産である
頭から手先、足先までの体全体を使って、
どうやって上述した問題を物質的な問題に落とし込んで
体全体で解決していくか?
その具体的な提案が必要で、
それが患者さんが納得するものであれば、
当然、機能的な心にも影響してきます。
但し、この考え方は少し個人に寄りすぎな部分もあります。
心的外傷後ストレス障害では
恐怖を駆動する脳発生、その経路に異常が出る(46)。
このようにいわれています。
程度がひどくなると、何も特にストレス因子がないのに
不安や恐怖に感じたりします。
そういった感受性が低い健康な人からすれば
おおよそ理解しがたいことですが、
当の本人は、正直な感覚としてあるわけです。
生物学的にも脳内でそういった過剰興奮が生じているわけです。
子ども、大人関係なく、
何らかのストレスを与えるときに、
その人が怯えているのに、
日常的に軽度なことでもストレスを与え続ける。
ストレスを駆動する環境が改善されない状態でも
そういったことを何年も繰り返す。
そうしたことは少なくとも
当人が気づいて、生活習慣を改めるなり、
かかりつけ医が適切な治療することがなければ、
負のスパイラルとして
ずっと脳に負の影響を与え続けます。
すなわち、いずれ、何も刺激がなくても
その人は、不安や恐怖におびえるようになります。
こういうのを神経科学では
「Hyperarousal」と呼びます。
ある意味、この状態で
認知状態に不全が出るのも至極、自然なことです。
PTSDの典型的な症状としても
認知状態の不全が条件の一つであげられています(46)。
当然、ストレスを与えている本人は
そうした生物学的事実は認知していないということになります。
ストレスを受ける本人に非がある。
そのように考えているかもしれません。
一般的ないじめ、差別でもいえることです。
負の連鎖が起こった結果として、
そうした過大化された不安や恐怖におびえて生きることは
その当人にとっては下手したら
永眠するよりも辛いことかもしれません。
なぜなら、永眠するとは、永遠にその人から、
全ての感覚が物質的に喪失されるからです。
繰り返し組み合わせて提示されることによって、
中立的だった刺激(特に、もともと感情的な反応を引き起こさない刺激)は、
嫌悪的な無条件刺激(例:痛みや不快感など)
これを予測するものとして学習されます。
これにより、その中立的な刺激は「条件刺激」に変わります(46)。
その結果、条件刺激が提示されるだけで、
嫌悪的な無条件刺激が伴わなくても、
恐怖に関連する行動が引き起こされるようになります。
このプロセスは古典的条件付け(パブロフ型条件付け)の一例であり、
恐怖反応や回避行動の学習において重要な役割を果たします。
例えば、犬に噛まれるという嫌悪的な体験(無条件刺激)があった場合、
その際に聞いた特定の音や見た光景(中立的刺激)が
繰り返し関連付けられることで、
それらが条件刺激となり、
犬がいなくてもその音や光景を見るだけで
恐怖反応が起こるようになります。
特定の嫌悪的な刺激が日常繰り返されると
色んなものが関連付けられるため、
その関連付けが意図的なものであればより、
嫌悪感情を扁桃体で駆動する頻度は高くなり、
扁桃体は特別な対策をしなければ感作を起こします。
そうした状況の中で、専門的な生物学的知識がない人が
あるいは世界のほとんどの人が、
嫌悪的なストレス耐性を構築することは
いかに何らかの知識があっても難しくなります。
周りの理解者がいるかどうかも重要です。
例えば、トラウマ体験のフラッシュバックが起こるときは
すでにトラウマの原因となった事件から
数年以上時間が経過していることもありますが、
こうした時間的に不連続であっても、
そのフラッシュバックしたときの
周りの音、景色、輸送機器、人などが
それが仮に中立的刺激で事件に何にも関係がなくても、
その後、フラッシュバックを誘導する条件刺激として
学習されることがあります。
もし、そうであるとするならば、
フラッシュバックの頻度が重要であり、
頻度が多くなればなるほど、そうした体験が起こりやすくなります。
従って、ケアギバーは
そうしたフラッシュバックが起こる条件が
できるだけ成立しないように注意しなければなりません。
こうした観点から
事件を意図的に思い出すような介入は
段階的に行う場合は、功を奏する場合もあるかもしれませんが、
発作を起こさないような細心の注意が必要となります。
何らかの感情を惹起させるイベントが生じたとき、
それが視覚情報なら目からまずは信号が発信されると思いますが、
感情の出発点が仮に扁桃体であるとします。
そうした感情の変化を脳だけに着目すると
多くの場合、介入は失敗します。
すなわち、考え方や頭の中の思考だけを制御しようと思っても
なかなかそのための集中が得られないことがあるし、
それを持続することも難しいです。
脳神経系と体の機能を主につなげているのは視床下部で
外側視床下部(Lateral hypothalamus)は
心臓の心拍数や血圧の調整をしています
そのほか、脳幹にある
側脳橋核(Parabrachial Nucleus)は
肺の呼吸数などを制御しています(46;Fig.1c)。
扁桃体は視床下部や脳幹と神経連結していますから、
扁桃体の興奮がこうした体の機能に関わる脳の部位に伝わり
結果として、心拍や呼吸数が変化します。
こうした心拍などの信号をさらに
脳神経がフィードバックする機能もあります。
従って、感情的な信号は体の機能と連結しているので
その感情を刺激するストレス因子に対して
非常に強靭な形で対処するためには
体全体でどうやってそれを抑制するかを考える事が重要です。
この記事の一番の目的は
小児がんサバイバーシップのメンタルヘルス。
これについて考える事です。
冒頭で述べたように
小児がんに限らず、がん既往歴のある人が抱える心の問題は
- うつ
- 不安
- 心的外傷後ストレス障害
これらが多いとされています。
心的外傷後ストレス障害のがんにおける素因は
主には告知(診断)と治療(抗がん剤)とされています(41)。
また、不安はうつに一般的に先立つので、
治療後も再発、将来設計などにおける不安を
継続的に抱え、それが過剰、慢性になると
一部で、うつ病に発展することも考えられます。
うつ(47)、不安(48)、心的外傷後ストレス障害(49)では
いずれも感情に関連する扁桃体が過剰になる傾向にあります。
なぜなら、これらは情動の異常だからです。
この扁桃体の活動が過剰になると
- 前頭前野(Prefrontal Cortex)
- 海馬(Hippocampus)
- 帯状回(Anterior Cingulate Cortex, ACC)
これら、それぞれ
- 感情の調整と抑制
- 記憶とストレス応答の抑制
- 情動処理と注意コントロール
これらの処理を行う脳の部位が委縮する傾向にあります。
従って、
度重なる感情的な刺激は
その制御が十分でない状態で頻繁に続くと
それを制御する機能もどんどん失われていきます。
感情の惹起は生物学的に高く保存されていますから
それを抑制する方の機能が脆弱で、壊れてしまいます。
そういったことが現代で頻発するから、
うつ、不安を抱える人が世界で非常に多くいるということです。
これは、世界的な問題であり、
頭脳だけに着目するのではなく、
体全体で対峙、治療していく必要があるし、
そうしたストレッサーとなっている
加害者に明らかに非がある場合は、その処分。
それについても当然、議論される必要があります。
扁桃体は視床下部に強く働きかけます。
視床下部は自律神経のバランスの調整に関わります。
扁桃体に感作が生じ、過活性になると
視床下部に働きかけ、自律神経のバランスが崩れます。
自律神経の中では交感神経が高度に保持されているため
副交感神経が壊れやすいです。
この自律神経の乱れは睡眠の質に関わります(50)。
上述したように扁桃体に問題が出やすい
うつ、不安、心的外傷後ストレス障害では
比較的共通的に睡眠に問題が出ます(46)。
必ずしも不眠になるのではなく、
日々の睡眠時間が安定しないということが
うつでは問題点として挙げられています。
逆に言うと
睡眠が安定的にとれているかどうか?
それがその人の精神状態を評価する
一つの重要な項目となりまs。
例えば、
PTSDの患者さんは顕性疾患のない人に比べて
眠っていても心拍数が速い傾向にあります(46)。
心拍数は交感神経と関連がありますから、
眠っていても副交感神経が相対的に弱い。
このように評価することができます。
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小児がんも含めて、
未成年のがんサバイバーのうち
約60%に内分泌系の異常がでます(1)。
- 悪性腫瘍形成そのもの
- 治療(外科、放射線、薬物)
これらにより、
また、その中でも特に未成年の脳腫瘍は、
- 成長ホルモン
- 甲状腺ホルモン
- 性ホルモン
これらに異常(欠乏症)が出ることが多いです。
但し、少なくとも日本の調査では
未成年の脳腫瘍の後遺症として
どれくらいの程度、割合で
これらのホルモンの欠乏が生じるか?
それについては私が調べる限り明らかではありません。
脳腫瘍でこれらのホルモンに異常が出るのは
このホルモンを制御する脳の腺で(Glands)である
- 視床下部(hypothalamus.)
- 下垂体(pituitary gland)
これらに異常が出やすいからです。
これらの部位は腺であり、
循環器へ豊富に物質を放出する必要がありますから、
血液脳関門のバリア機能が緩やかで
逆に血液から脳腫瘍にアクセスする
薬剤によって傷害されやすい。
この特徴があります。
また、ここは第三脳室の周囲に存在するため
小児脳腫瘍で半分くらいが生じるとされる
水頭症によって機械的に障害されやすいです。
また、特に
視床下部は放射線によって傷害されやすい
感受性の高い(Radiosenstive)組織です(2)。
視床下部の神経内分泌細胞は
多くのたんぱく質を分泌のため合成する必要がありますから
転写関連遺伝子を含めると
多くのコーディング領域をオープンにする必要があり、
そのため、遺伝子構造的傷害を受けやすいです。
これらのホルモンが欠乏すると
様々な機能障害が生じますが、
懸念される大きな問題の一つは
身体の半分程度を占める
- 骨格筋
- 骨
これらの成長阻害が多層的に生じる。
このことです。
骨格筋や骨はその方の基本的な運動機能。
これにも関わります。
特に骨格筋を使った持久運動は
脳神経や循環器の健康と密接に関わります。
従って、
身体そのものの健康だけではなく
脳神経、心理的な健康にも関わります。
また、骨格筋と骨は
機能的にも相互補完的な役割があるし、
運動によって、双方において
健全な成長、恒常性、物質構成が実現されます。
特に成長期のお子さんの場合は
身長が伸び、体重も増えていきます。
その成長を主に支えるのが
身体の構成比の上位2つである
- 骨格筋 - 骨
これらです。
従って、
小児がんサバイバーシップで
骨、骨格筋の成長に関わる
- 成長ホルモン
- 甲状腺ホルモン
- 性ホルモン
これらが主に視床下部、下垂体が障害されることで
異常が多くのケースでみられるという現状は(1)、
解決すべき問題としては
優先順位の上位に位置するものです。
従って、再度、基本的な事から
この3つのホルモン、その欠乏。
それについて見直し、確認し、
小児脳腫瘍の今後のあるべき姿の定義を試みる事。
これを主な目的とします。
成長ホルモンについて。
成長ホルモンは、
脳下垂体前葉のGH分泌細胞から分泌されるホルモンです。
この分泌細胞はSomatotropesと呼ばれます。
その細胞組織(3:File:Pituitary histology 008.jpg)。
これを見ると細胞核は大きいように見えます。
この分泌細胞は単核性ですが、
多くのホルモン(アミノ酸)を常時放出する必要があり
転写活動を活発化させる必要があるため、
クロマチン構造は緩く、そのため
細胞核は大きいと考えられます。
従って、ストレスに弱い特徴があり、
これは分泌細胞に一般的に言えることかもしれません。
例えば、
膵臓のβ細胞(インスリン分泌細胞)は、
ROSや炎症ストレスに対して特に脆弱です。
これが小児脳腫瘍の治療において
特に脳の分泌細胞がストレスに脆弱であり
傷害されやすいもう一つの理由である可能性があります。
遺伝子が障害されやすいわけですから
放射線などの高エネルギーによっても
遺伝子が破壊され、細胞死が誘導され
分泌細胞の数が減少するということは考えられます。
また、水頭症による
過剰な機械的ストレスは
DNA構造そのものへの障害や、
細胞核膜を破綻させる可能性もあります。
従って、本質的な対策としてはシンプルですが
ホルモン分泌細胞の
- ストレスを減らす
- 抗ストレス機能を高める
- 遺伝子修復機能を高める
これらが少なくとも挙げられます。
但し、
視床下部の神経内分泌細胞
- オキシトシン分泌細胞
- バソプレシン分泌細胞は、
分化したニューロンに由来しており、
細胞分裂をほとんど行いません。
下垂体前葉のホルモン分泌細胞
- 成長ホルモン分泌細胞
- プロラクチン分泌細胞は、
高度に分化した細胞であり、
通常は細胞分裂を行いません。
従って、
従来の抗がん剤が
成熟した分泌細胞の細胞分裂を阻害するわけでは
基本ありません。
但し、転写の際に必要な一定の核酸合成。
これを阻害する可能性はあります。
また、抗がん剤が間接的に
ROSなど酸化ストレスを誘導することもあります。
身長、体重が伸びる思春期を含めて
子どもの体の持続的な成長は
主に骨、骨格筋の成長(細胞数の増加)。
これによって駆動されます。
細胞数当たり作用する成長ホルモンに
大きな差がないとすると、
こうした細胞数、体積に
ある程度の線形な正の相関を持って
成長ホルモンであるアミノ酸の物質数を増やす。
この必要があります。
その成長ホルモンを放出するのは
下垂体の成長ホルモン分泌細胞ですから、
1細胞当たり放出できる成長ホルモン数に
ある程度の限界があるとすると、
そのホルモンの需要が
身体の大きさに応じて増えてくれば、
その分、成長ホルモン分泌細胞の
細胞数を未分化の幹細胞を駆動させて、
増加させる必要があります。
従って、身長が急速に伸びる思春期の頃は
性ホルモンも手伝って、
成長ホルモン分泌細胞数を
未分化の幹細胞が活性化されることにより
急速に増加させる生物学的機序。
これが生じている可能性があります。
そうすると今ある
成長ホルモン分泌細胞を守ることと当時に
健全な成長ホルモン分泌細胞数増加。
この機能を保守するためには、
その数に影響を与える
下垂体にある未分化の前駆細胞。
これを守る必要があります。
少なくとも思春期の時には特に
こうした未分化の前駆細胞の状態。
それを可逆的修復を含めて
遺伝子構造的な状態を良化させておく
必要があります。
抗がん剤は細胞分裂を防ぐため
その細胞分裂の際に必要な
細胞骨格や遺伝子合成を防ぐ機序があります。
これは一般的な細胞分裂にも必要で、
その抗がん剤が
細胞分裂することが重要な細胞に到達すると
その細胞分裂機能が障害されることになります。
それで細胞死する場合もありますが、
それが比較的マイルドな場合には
未分化の細胞に細胞分裂に関わる異常が
ある程度、遺伝子構造に残る可能性があります。
より具体的には
抗がん剤によって細胞分裂が障害されることで
細胞の適応として細胞分裂機能を
補償的に高めようとします。
しかし、そうしたストレスは
逆に細胞分裂機能に関わる
遺伝子構造を過度に開き、
アクセス性を高め
ストレスん対する脆弱性を高めます。
それによって装飾、変異を含めて
細胞増殖能に異常が出てしまう可能性もあります。
ひどい場合には細胞死。
それによる細胞数の減少。
マイルドな場合にも
細胞分裂に関わる遺伝子異常がでる。
その遺伝子異常は未分化の細胞であり
長期的に残存するので、
その後、何年も細胞数に影響を与えてしまいます。
従って、
成長ホルモン分泌細胞の
下垂体の前駆細胞の細胞分裂能が
抗がん剤によって障害されると
その障害は過渡的なものにとどまらず、
後遺症として、恒常的に残る可能性があります。
小児脳腫瘍では特に悪性度の高いものでは
その細胞増殖機能を障害し、
あるいは遺伝子構造を崩壊させ、
細胞増殖を停止させ、
細胞死させる必要があります。
そうした薬理は、その裏の側面として
成長に必要な増殖能のある
未分化の細胞を含めた
細胞の細胞増殖にも影響を当然与えます。
従って、
どのような薬理を選択するにしろ
増殖性のある遺伝子多様性のある腫瘍組織。
(intratumor heterogeneity)
これの癌細胞に統一的に効果をを示す薬理は
ほとんどの場合、
成長期の子どもの正常細胞を強く
遺伝子構造的に
後遺症が残る形で傷害することになります。
では、どうすればいいか?
一つは選択性を上げることです。
薬効の選択性もあるけど、
それは、腫瘍組織内の遺伝子多様性に
対する薬理としてのユニバーサル性の低下。
それにつながります。
もう一つは、ドラッグデリバリー技術です。
腫瘍組織、癌細胞に特異的に
抗がん剤を送達する技術を確立することで
相対的に正常細胞への影響を減らせますから、
お子さんの成長を
今までよりも守りながら
腫瘍組織を退縮させることができる可能性があります。
それ以外にも、
- 投薬時血糖値
- 超音波、磁場などの外部刺激
これらなど投薬条件を最適化することで
がん細胞への薬物送達の特異性を上げることができる。
これらの可能性があります。
細胞外小胞表面装飾による選択的送達と
この投薬条件は両立できるので
セットで直列的に行うことは、
将来的には必須になる可能性があります。
私が2020年9月に提案してきてから
変わらず最重要のテーマとして掲げてきた
細胞腫特異的薬物送達システムは
これからも私が最も自分自身の資源を割いて、
実施する医療技術です。
最後まで残る技術であってよかった。
そのように考えています。
もう一つは、
すでに障害を受けた細胞の機能の
根本的な決定因子の一つである
遺伝子構造の修復性を上げることです。
急性期治療で
ある程度、後遺症として残る形で
遺伝子的な破壊やエピジェネティック装飾が入っても
それを一定、可逆的に修復する機能があります。
そうした機能を
生活習慣や医療介入(薬学、リハビリテーション)で
誘導することは推定される
一つの有力な対処法です。
例えば、
生活習慣でいえば、
定期的かつ適度な運動は、
内因的な抗酸化物質を誘導し(8)、
それにより損傷を受けた一部の内分泌細胞の
遺伝子構造の一部を修復してくれるかもしれません。
但し、実際に臨床上の結果としては
- 成長ホルモン
- 性ホルモン
- 甲状腺ホルモン
これらの分泌に障碍が出るかは、
一般的には放射線治療の線量に大きく依存します。
それは日本(24:表1)、世界(44:Figure 1)、
どちらとも共通的な事として明記されています。
従って、
小児がんにおける内分泌系の異常を予防する
最も重要なことは白血病治療も含めて、
放射線治療の負担を減らすこと
あるいは、
放射線治療を回避した治療法がないか?
それを今後、将来的に検討していくことです。
その一つとして、脳腫瘍に関しては
- MRIガイド経頭蓋集束超音波
これによる腫瘍組織の焼灼がありますが、
結局、細胞へストレスをかけるという意味では
放射線治療と同じです。
すなわち、そのストレスが
高エネルギー腺であるか、
熱であるかの違いです。
但し、
熱ストレスの場合は
DNAよりもたんぱく質のほうが熱に対する
感受性が一般的に高いので、
温度条件をしっかり最適化すれば、
タンパク質依存が強い状態で
細胞死させることができる可能性と、
こうしたタンパク質の影響を受けやすいのは
活発に細胞分裂する悪性度の高い癌細胞なので
こうした癌細胞は通常細胞よりも
熱に感受性が高く、
より低い温度で細胞死する可能性があるため、
一定の選択性を持たせることできる。
この可能性があります。
このような観点から
小児脳腫瘍の治療において
超音波治療による熱による焼灼。
これを外科的モダリティーの一つとして
日本の病院に広く高性能な装置を
将来的に提供することは
一つ大きな意義があります。
下垂体の成長ホルモン分泌は
以下の因子によって制御されます。
(視床下部 → 下垂体)
- GHRH(成長ホルモン分泌促進)
- マトスタチン(成長ホルモン分泌抑制)
(胃 → 視床下部、下垂体)
- グレリン(成長ホルモン分泌促進)
従って、食欲があるということは
身体の成長のために必要な食べ物を
積極的にとる欲望と共に
それ自身が成長を促すものです。
(性腺 → 視床下部、下垂体)
- 性ホルモン(成長ホルモン分泌促進)
(肝臓 → 視床下部)
- インスリン様成長因子(IGF-1)
(濃度依存的成長ホルモン分泌調整)
下垂体の成長ホルモン分泌細胞から
放出された成長ホルモンは
肝臓へ到達し、
IGF-1(インスリン様成長因子-1)に変換されます。
それが骨において
軟骨細胞の分裂・増殖を促し、骨を伸張させる。
筋肉においては
アミノ酸の取り込みを促し
筋線維の元となるタンパク質合成を促進します。
ここからは
成長ホルモン
IGF-1(インスリン様成長因子-1)
それによる骨の形成、その異常について
調査、確認、考察します。
骨は他の組織と決定的に違うことがあります。
骨の中には骨細胞(Osteocyte)と呼ばれる細胞があります。
この細胞は主に肝臓から放出された
IGF-1を骨芽細胞が受け取り、
遺伝子的な転写を受けて分化され生じます。
(4)の上右図に示されるように
骨の組織の中の骨細胞の細胞充実度は
決して高くありません。
骨は硬い組織である必要があるため、
弾性に富んだ細胞で主に組織を形成することができません。
材料として硬いカルシウムを多く含んだ
細胞外マトリックス。
これによって構築する必要があります。
従って、
骨の体積のうち骨細胞は2-5%にすぎず
95%以上は細胞外マトリックス(ECM)で
細胞外マトリックスのうち
無機成分
カルシウムやリンを含むハイドロキシアパタイト
これはは、骨の重量の 60-70% を占めます。
有機成分
主にコラーゲン、プロテオグリカンなどは、
骨の重量の 30-40% を占めます。
このような物質構成によって骨の硬さを保証しています。
基本的に考古学などでは明らかなように
骨の組織は死後でも強固に残ります。
従って、
特に骨の中の無機成分。
カルシウムやリンを含むハイドロキシアパタイト
これらは基本的には非常に長寿命で
少なくとも頻繁に入れ替わることはしません。
但し、骨は生活していたら強いストレスがかかるし
そういった物理的ストレスだけではなく
化学的ストレスもあるため、
微細なものも含めて構造的な欠陥を治す機序があります。
そうした欠陥を骨の組織の中に埋め込まれた
骨細胞(Osteocyte)が検知し、
破骨細胞はカルシウムやリンを分離させ
強度を支える無機物質を化学的に分解させて、
骨の再構築を果たします。
再構築のための物質合成、供給は
骨芽細胞によって行われます。
従って、骨の物質としての回転はありますが、
材料としての安定性は高く、
全ての組織において
頻繁に入れ替わるわけではありません。
他方で
有機成分であるコラーゲンやプロテオグリカンは
数か月から数年で入れ替わります。
これは、細胞外マトリックスの成分によって変わります。
例えば、コラーゲンの一部は
その中でも寿命が長いと考えられます。
これは材料としての堅牢度を含み、
一部はリモデリングにより
積極的に分解されることがあります。
但し、骨の内部には造血幹細胞が収納される
骨髄があり、この部分は空壁を作りながら
細胞外マトリックスのメッシュ構造が構築され
細胞と連携する必要があり、
有機成分から主になります。
この部分の網目構造は
3次構造として高度に制御される必要があることと
免疫機能、造血性に強く影響を与える事から
この部分のリモデリングはより重要になります。
但し、骨髄のリモデリングに関連する研究は
骨の密集した組織のリモデリングの研究(13)、
よりも黎明期にあります(14)。
このように材料として無機成分は特に安定なため、
無機物質でできた材料を維持するために
特にエネルギーが必要ないように
骨の無機物質を維持するためのエネルギーは
他の不安定な有機物質の恒常性維持のために
必要なエネルギーよりも
顕著に少なくて済むため、
物質を供給する組織維持のための細胞は
全構成の2-5%程度で済みます。
この点から考えると
一部は骨のリモデリングがあるものの
子供の時に初めに形成されるときの条件。
その組織としての完全性が
ある程度、長期間残存するため、
非常に重要になります。
従って、骨の成長を支える栄養である
- カルシウム
- リン
- ビタミンD
これらは重要であり、
この記事でテーマとして扱う
- 成長ホルモン - IGF-1
- 性ホルモン
これらは骨の形成において重要な役割を果たします。
骨の成長は骨組織の外周部に構成される
軟骨部から成長します(5:Figure 1)。
その中で骨端線(成長板:Growth plate)は
成長期の骨の長さの増加において
中心的な役割を果たします。
成長板は軟骨から骨に変換される部位で、
ここで骨芽細胞が新しい骨を形成し、
骨が長くなります。
骨端線が成熟し閉じることで
骨の成長は止まり、成人期に入ります。
この過程は主に
- 成長ホルモン
- 性ホルモン
これらによって調節されています。
骨芽細胞と破骨細胞のバランスが必要ですが、
骨芽細胞のほうが多くの物質合成を伴うため、
遺伝子構造がストレスに対して(おそらく)脆弱であり、
環境因子によって減少しやすいので、
疫学的にみても、高齢の方を含めて考えると
骨の過形成よりも、
過分解による骨粗しょう症。
この疾患のほうが問題となりやすいです。
従って、
成長ホルモンや性ホルモンで
骨芽細胞の成長を支えるほか、
他の因子がないかどうかも検討が必要です。
運動の際に筋組織から放出される
内分泌物質(マイヨカイン)の一つに
イリシン(Irisin)がありますが、
これが減少しやすい骨芽細胞の増殖を支援する。
その可能性が示唆されています(6)。
従って、
定期的、適度な運動は骨格筋との連携の中で
骨の成長、骨密度の増加を支援する可能性があります。
他には
過重力は骨芽細胞の分裂を促す可能性があります(7)。
例えば、歩いたり、走ったりすると
着地の際に足に過重力がかかりますが、
こうした適度な機械的ストレスが
骨芽細胞の分裂を支援し、
骨の成長に関わる可能性があります。
従って、
成長ホルモンの分泌に異常がある(可能性がある)
小児がん既往歴のある方は
それの不足によって
骨、骨格筋組織の成長が
程度の差はあれ、不十分かもしれなくて
しんどいかもしれないですが、
あなた(お子さん)ができる範囲でいいので、
足に一定の負荷がかかる
歩く、あるいはゆっくり走るといった
運動を日常的に続けることは大切です。
また、個人が動かせる範囲で
全身の体操(ストレッチ運動)も同様です。
歩行時の足の骨ほどではありませんが、
腱に引っ張られるたちで、
あるいは関節を動かすことで
弱い全身の骨への負荷がかかります。
それも骨の健全性に影響を与える。
この可能性があります。
それは筋肉依存的にも、骨自身でも
骨の成長を支援することにつながります。
こうした一定の活動的な日常生活は
睡眠の質を高めることなどによって
それぞれの患者さんが持っている
ホルモン分泌細胞の機能を高めることで
成長ホルモンの分泌を高める
直接的な効果と共に
その成長ホルモンの一つの機能である
骨や骨格筋の機能を
ホルモン非依存的な機序で
補償、補助することにもつながる可能性があります。
このことから
小児がんサバイバーの人に
その人ができる範囲でいいので
日常的に運動習慣を促すことは
特に成長期においては非常に重要です。
後は運動の際の特に朝の日光浴によって
ビタミンDを生成させることと、
栄養によるビタミンD、カルシウムの摂取。
これは成長期には大切です。
ビタミンDは骨でのカルシウム量の調整に
腎臓を介して関わります(16)。
(9)で示されるように
骨の内部にはメッシュ状に
細胞外マトリックス
- コラーゲン
- グリコサミノグリカン(GAG)
- プロテオグリカン
これらなどで構成された
一定の空壁を含む骨髄が存在します。
ここには免疫細胞(白血球)、赤血球、血小板を含め
血液の成分となる造血幹細胞が収納されています。
造血幹細胞は分化もしますが、増殖もするため
足場となる細胞外マトリックスが適正にないと
有糸分裂の際に異常が出てしまいます。
従って、骨組織の異常、骨粗しょう症と
白血病は関連があるかもしれません(10,11)。
そうであるとすると
脳腫瘍で成長ホルモン、性ホルモン欠乏になり、
骨の組織に異常が出ると、
造血幹細胞の増殖の際に遺伝子異常を起こす。
その可能性が上がり、
白血病につながる可能性もあります。
そうであるとするならば、
2次的な顕性血液性がん発症とも
関連する可能性があるため、
内分泌機能の維持と共に、
生活習慣によっても
内分泌機能の支援、
それによる健全な骨、骨格筋の成長。
それをできる限り、実現する必要があります。
他方で
骨組織の中で物質合成需要が大きく
その引き換えとして機能損傷しやすい骨芽細胞は
造血系幹細胞の維持に
必要なシグナルを提供しています。
骨の形成異常により骨芽細胞の機能が損なわれると、
造血系幹細胞の維持に必要なシグナルが不足し、
造血機能が低下することがあります。
一方
破骨細胞は多核性を持ち、
この細胞種は
造血幹細胞からの分化によって提供されます(12)。
これらの細胞の多核化は
細胞融合によって生じるかもしれません(17)。
骨芽細胞では多核化は生じませんが、
破骨細胞ではこうしたことが生じることは
骨芽細胞が少なくなりやすいことと
一定関連している可能性があります。
骨髄には脂肪細胞があり、
これが過不足、どちらでも問題ですが、
その抑制側の制御因子、
すなわち脂肪分解に関与するのが
成長ホルモン-インスリン様成長因子です(15,16)。
従って、
これが不足すると
骨の内部の脂質量が過剰になる懸念があります。
骨が脂質量の増加や密度が低下することで
剛性が下がると、すなわち柔らかくなると
筋組織を含めて以下の影響が考えられます。
1- 力の伝達効率の低下
骨の剛性が低下すると、
筋肉が収縮してもその力が骨に効果的に伝わらず、
運動の効率が低下します。
2. 姿勢やバランスの崩れ
柔らかくなった骨は、
関節や脊柱を支える能力が低下します。
これにより、姿勢の崩れやバランスの悪化が生じ、
筋肉が本来の役割以上に補助的な負担を強いられます。
筋肉が過剰に緊張することで、
疲労が蓄積しやすくなります。
3. 筋肉の不均等な負荷
骨が柔らかいと、
骨格がわずかに変形する可能性があり、
それに伴って
筋肉や腱への力の分配が不均等になります。
これが慢性的な筋肉の緊張やストレスを引き起こし、
筋力のアンバランスや痛みにつながることがあります。
4. 関節や腱への負担増加
骨が十分に硬くない場合、
筋肉の伸縮による運動の負荷が
骨ではなく関節や腱に集中します。
関節や腱は過剰な負担に弱いため、
- 炎症(例えば腱炎)
- 摩耗性疾患(例えば関節炎)
これらを引き起こす可能性があります。
5. 衝撃吸収の低下
骨の柔軟性が増すと、
運動中の衝撃吸収が骨自体で十分に行われず、
筋肉や軟骨にその負担が移ります。
特に高強度の運動(ランニング、ジャンプなど)の際、
筋肉が衝撃の吸収を代償的に担い、
損傷のリスクが高まります。
6. リハビリや治療時の注意点
柔らかい骨に対して
無理に筋肉を強化しようとすると、
骨への過剰な負担が骨折のリスク。
これを高める可能性があります。
従って、
小児がんサバイバーの人が
骨の機能が組織学的に低下している場合、
リハビリテーションを含めた
運動の介入の強度、程度。
これについては骨折のリスクを踏まえて
よく検討する必要があります。
その人の身長を決定づける因子は
半分以上は人種、家系なども含めた遺伝です。
物質的に何が身長を主に決定づけるか?
それは骨であり、大腿骨の長さなどです。
骨を長くするためには
成長板という軟骨組織が必要ですが、
ホルモンの影響で思春期を過ぎると
それが閉じることで骨の成長がとまります。
軟骨組織の軟骨細胞が骨化することで
骨が成長しますが、
この軟骨細胞がどれだけ増殖して
耐性を持って骨の成長を支援するかが
その骨格の長さの重要な決定因子の一つです。
軟骨細胞にもIGF-1があり
成長ホルモンが軟骨細胞の増殖を支えます。
そのほかにも
エストロゲンやテストステロンなど
性ホルモンも軟骨細胞の増殖を支えます。
従って、
脳腫瘍に罹患して
成長ホルモン、性ホルモンが過少になることは
本来、その子が持つ
身長の潜在性を引き出すことができず
想定よりも低身長になる可能性があります(24)。
ここからは成長ホルモンと骨格筋の関係。
それについて説明します。
骨格筋細胞は細い管上になっており、
長手方向には細胞としての
明確な境界はありません(18:image)。
細胞の長さは数mm~数十cmに及びます。
これにより
筋収縮が細胞の端から端まで
連携して効率的に行われます。
上述したように骨では
成長板の軟骨組織から骨芽細胞が
骨の構造を構築していくことで
骨は長手方向に成長していきますが、
こうした骨格に関節部で腱で結合している形で
連結している骨格筋の成長も
骨の成長と連動して、生じなければなりません。
それは言い換えると
筋線維をなすたんぱく質の合成による
筋繊維構造の長手方向への延長です。
身体は一定のアスペクト比がありますから
すなわち背が伸びれば、厚さ方向も成長します。
従って、骨、筋組織の長手方向の成長に伴い、
筋組織を一定の割合で太くしていく
必要がありますから、
骨格筋細胞の管を新たに形成することをします。
この時には連続構造ではないため
比較的大きな合成圧、
エネルギーが必要だと思われます。
この際には筋サテライト細胞が活性化します。
骨格筋細胞には一定濃度で
インスリン様成長因子受容体(IGF-1)と
インスリン受容体(IR)
これらを発現しています(19:Graphical Abstract)。
IGFは上述したように
成長ホルモンを主に肝臓で受け取って
IGFに変換されます。
インスリンがあるので、
血糖値が上がったときに
すい臓のβ細胞から放出されます。
成長ホルモンは運動時に多く放出されるので(20)、
運動後に糖をしっかりとって血糖値を上げる事。
これにより、
筋組織の肥大に関わる
インスリン様成長因子受容体(IGF-1)
インスリン受容体(IR)。
これら両方の亢進が期待できるので、
骨格筋の成長に関わります。
運動中にも放出されますが、
運動後、リラックスした
副交感神経が高まっているとき(21:Figure 1)、
この時に多く放出されている可能性が高いので
その時に糖をしっかりとって
血糖値を上げることで有効に
筋組織の成長が見込めるかもしれません。
従って、
運動後に食事するのがいいか
運動前に食事をするのがいいか?
そのタイミングは検討の余地があります。
特に
成長ホルモンが不足しがちかもしれない、
小児脳腫瘍罹患歴のある
成長期のあなた(お子さん)は
有効に筋肉をつける必要があるので、
成長ホルモンと糖(食事)の摂取のタイミングを
しっかり合わせることで
より有効に骨格筋を成長させることができます。
骨格筋は男性では体の30%を占める
最も大きな組織なので、
その組織がしっかり成長するということは
特に骨、脳の健康を強力に駆動するので
最適な形で解を用意することに意義があります。
このIGF-1は筋衛星(サテライト)細胞にも
発現されています(22:Fig.2)。
筋組織が運動によって伸長され
筋繊維の一部が破損したときの修復や
成長期の筋線維の成長にも関わる重要な細胞です。
また、筋組織に融合することで
骨格筋細胞の細胞核数にも関与します。
IGF-1はこの筋サテライト細胞の増殖。
これを促進することが示唆されています(23)。
骨格筋細胞のIGF-1数は動的です。
また、IGF-1数、密度が高くなれば、
筋組織は肥大しやすくなります。
基本的には筋組織が休んでいるときよりも
活発に活動しているとき、
あるいは、筋繊維再生(超回復)した筋組織では
高密度でIGF-1が分布しています(Search Labs | AI )。
従って、定期的な運動によって、
筋組織を刺激することで、
筋組織が成長しやすくなるため、
特に成長期には積極的に筋肉を動かすこと。
これが重要です。
また、筋肉を動かすときには
全身がよりいいはずなので
水泳などの全身運動が推奨されますが、
それよりも程度が低いですが、
全身体操や全身ストレッチをまめにすること。
それより程度が高いものでは、
体幹、肩など大きな筋肉の
室内でできるトレーニングなど。
これは全身の骨格筋の筋組織を
成長、維持させるうえで
非常に重要な可能性があります。
成長ホルモンを筋肉や骨で利用できる
インスリン様成長因子に変換する際には
肝臓での変換効率が存在します。
小児がんサバイバーの人では
成長ホルモンは非常に貴重ですから
成長ホルモンが少ないながらも分泌しているときに
有効に肝臓でインスリン様成長因子に変換する。
このことが重要です。
とりわけ、栄養状態、
すなわちたんぱく質や糖が
血中に存在するときには変換効率が上がるため
成長ホルモンが放出されているときに
栄養状態を良くすることで
より有効にインスリン様成長因子に
変えられるかもしれません。
睡眠中成長ホルモンが出ますから、
その数時間前によるご飯をしっかり食べる事。
それは成長期には重要かもしれません。
昼間のしっかりした運動によって
睡眠の質を上げて、
その睡眠の前に夕食として
しっかりバランスのとれた栄養をとる。
それがあなた(お子さん)の健全な
骨と筋肉の成長を支える可能性があります。
こうしたことは毎日ですから
毎日、高強度の運動をすることは
顕性疾患罹患歴のない人も、
がんサバイバーの方にとってもきついですが、
できるだけ自転車、車を使わずに徒歩で移動する。
電車に乗るときには
エスカレーターを使わず階段を使う。
あるいは
家で、全身体操をして
全身の筋肉を動かす機会を作る。
その人なりに筋肉を動かすという観点で
続けられる方法があると思います。
そうしたら睡眠の質も上がりますし
食欲も出てきますから、
その食欲に応じて、成長期には
タンパク質、糖、脂質を
自然食品から
微量栄養素、機能性物質を含む形で
バランスよく摂取することで
適切な成長を支援することができます。
薬による医療介入をするにしても
ベースラインして必要なことです。
あなたにこんなこと
(うるさいこと)を何度も言う人、
あなたの周りに多くいますか?
甲状腺ホルモン (チロイドホルモン、Thyroid hormone)
これは、甲状腺の
濾胞性上皮細胞(follicular cells)から分泌されます。
甲状腺の濾胞性細胞(または甲状腺細胞)は、
コロイドと呼ばれる物質で満たされた
中央の腔(ルーメン)を取り囲む
球状構造を形成します(25:Figure 2)。
従って、
ルーメンの周りに上皮組織のような
円形の層を形成します。
この内腔はホルモンの前駆体である
サイログロブリンというタンパク質で構成されており、
甲状腺ホルモンの合成と貯蔵の場として機能します。
濾胞性上皮細胞に比べて体積比は
組織を見ると(25:Figure 2)
人工的な描写像よりも大きいです。
これにより、全身の細胞の物質需要に
柔軟に耐えられる構造となっています。
サイログロブリンは
濾胞性上皮細胞で産生されますから
常時、大量のたんぱく質が産生されているため、
この濾胞性細胞は観る限り、単核性ですが、
細胞体積当たり、
非常に大きな細胞核を持ちます(25:Figure 2)。
濾胞性上皮細胞は特に損傷時、
その修復のため細胞分裂するため、
がん化、腫瘍組織化することがあります(26)。
但し、これは分裂能の高い
未分化の細胞が主にがん化しているかもしれません。
このように場合によれば細胞分裂し、
タンパク質需要に伴い細胞核は拡大していますから、
従来の細胞分裂を抑制する
抗がん剤に反応する可能性があります。
特に直接的にDNA構造を傷害する薬理を選択した場合。
これは濾胞性上皮細胞に
感受性が高いかもしれません。
これが甲状腺ホルモンの分泌抑制。
これの一つの原因となっているかもしれません。
また、特に放射線治療を受けた後、
2次悪性新生物として
甲状腺がんに進展することもあります(27)。
事実上、全身のすべての細胞種の
細胞核内にある甲状腺ホルモン受容体に作用します。
染色体内のDNAに結合して、RNAの合成を調整し、
細胞のたんぱく質産生量を調整します。
ヒトを含む恒温動物では、機能しては
呼吸量、エネルギー産生量が増大します。
サケ科などの魚類では海への降下時、
海水適応を起こさせたり、
両生類では、幼生から成体への変態を促進させます。
鳥類では、
季節ごとの換羽(かんう:羽を入れ替える事)。
これを起こしたりするホルモンとしても知られます。
従って、広く生物に進化的に保存された
内分泌機能として定義されます。
甲状腺ホルモンは
- トリヨードチロニン(Triiodothyronine):T3
- チロキシン(Thyroxin):T4
これらの2種類の化合物が
甲状腺ホルモンとして知られ、
それらの違いは、ホルモン1分子中のヨード数です。
生理活性は、T3の方が強いですが、
血中を循環する甲状腺ホルモンのほとんどはT4です。
甲状腺ホルモン分泌の調整機構は下記です。
(下垂体 → 甲状腺)
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH: Thyroid Stimulating Hormone)
甲状腺を刺激して合成と分泌を促進します。
(視床下部 → 甲状腺)
- 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
(TRH: Thyrotropin-Releasing Hormone)
甲状腺の分泌を促進します。
視床下部が検知する
体温や代謝の状態によって調節されます。
(視床下部、膵臓 → 甲状腺)
- ソマトスタチン(Somatostatin)
SHの分泌を抑制し、
甲状腺ホルモンの産生を間接的に制御します。
(副腎 → 甲状腺)
- グルココルチコイド(Glucocorticoids)
下垂体、視床下部に働きかけ
甲状腺刺激ホルモン、
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、
それぞれこれらのホルモンの分泌を抑制することで
甲状腺ホルモンの分泌量を間接的に減少させます。
これらの
視床下部 - 下垂体 - 副腎軸(HPA axis)は
ストレスに反応するため、
慢性的なストレス時に
甲状腺機能が低下する要因になります。
(卵巣、精巣、副腎 → 甲状腺)
- 性ホルモン
女性ホルモンであるエストロゲンは
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体
これの感受性を高め、
甲状腺ホルモン分泌を促進する傾向があります。
一方で、
テストステロンは
甲状腺ホルモン分泌に対して
抑制的に働く場合があります。
従って、甲状腺ホルモンは
視床下部、下垂体、副腎から放出される
内分泌物質によって制御されており、
これらの組織の機能不全は
甲状腺ホルモンの分泌に影響を与えます。
生殖器も関係しており、
- 成長ホルモン
- 甲状腺ホルモン
- 性ホルモン
これらは密接に連携しています。
少なくともセットで考えられるべきです。
甲状腺ホルモンは
甲状腺ホルモントランスポーターとなる
チャンネル構造を通過して、
細胞内に取り込まれ、
主に、ミトコンドリア、
染色体内に遺伝子に働きかけます(28:Fig.2)。
ミトコンドリアでは
- 酸素消費量
- 活性酸素量
- SIRT1活性
これらを向上させます。
酸素消費量が増えることで
タンパク質合成、遺伝子複製、細胞膜の維持に関わる
細胞プロセスを駆動するためのエネルギー量が得られます。
活性酸素はOXPHOS代謝の代謝産生物です。
SIRT1活性はミトコンドリアの活動、生物発生そのもの。
すなわち、ミトコンドリアの恒常性に関わります(29)。
例えば、代謝産物である活性酸素によって
損傷を受けたミトコンドリアを除去する
ミトファジー(mitophagy)を増加させます(31)。
染色体の遺伝子レベルでも
- 脂質合成、分解
- 糖の新生
これらに関わる遺伝子活性を高めます(28:Fig.2)。
従って、甲状腺ホルモンは
代謝を主にに担う肝臓において重要な役割を果たします(30)。
その他
- 脳の発達
- 心拍、拍出量制御
- 骨格筋収縮、筋生成
これらに少なくとも関わります(28:Fig.2)。
甲状腺ホルモンの骨格筋の働きは、
持久力を要する遅筋繊維よりも
瞬発力を必要とする速筋線維の成長。
これを促すことが示唆されています(28,32)。
同様に同じ筋繊維である
心筋の発達にも影響します(28,33)。
心筋においては
alpha-myosin から
b-myosin heavy chain 優位にシフトします(34)。
b-myosin heavy chainは遅筋繊維にあたり、
心室に多く発現されています。
従って、
甲状腺ホルモンは骨格筋に関しては
速筋繊維の発達を促進しますが、
心臓の心筋に関しては
遅筋線維の発達を促進させます。
心室の筋組織のほうが大きく
心室は血液を全身(左心室)または肺(右心室)
これらに送り出す主要なポンプです。
常に血液を拍出する必要がありますから、
持続的な運動がより必要であり
それに対応する遅筋繊維が多いです。
心房は心室が血液を効率的に充填するのを助けます。
通常の安静時では
心房収縮は心室への血液充填に対して
大きな影響を持ちません。
従って、
筋組織の大きさは
心室の周りのほうが圧倒的に大きいです。
心室の収縮力が血液循環を維持する上で
最も直接的に重要です。
従って、
甲状腺ホルモンは
心室の筋組織の恒常性に関与し
心臓血管の機能を維持するうえで
非常に重要な機能を有します。
原発性甲状腺機能低下症、
すなわち直接的に
甲状腺のホルモン分泌機能に不全が出るのは、
小児がん特異的ではなく
一般的には女性が多く、
疫学的には10倍程度リスクが高いとされています(45,46)。
大きな一つの理由は
女性は免疫機能が高まりやすく
自己免疫疾患のリスクが高く、
それによる甲状腺炎の発症率。
これが高いからであると推定されます。
他には、
甲状腺の機能において重要な
濾胞性上皮細胞における
甲状腺ホルモンの産生に細胞レベルで
性ホルモンが関係しているからですが、
なぜ、エストロゲン(女性ホルモン)依存の機序が
テストステロン(男性ホルモン)依存の機序に対して
甲状腺ホルモンの生成という点で
ストレスに対して脆弱なのか?
というよりも、
エストロゲンのほうが
甲状腺ホルモンの生成、放出の促進に関わり、
そのエストロゲンが月経周期に連動して
ホルモンレベルが
周期的に変わるからかもしれません。
もし、そうであるとするならば、
小児がんのケースでも初潮後には特に、
放射線治療に限らず、抗がん剤治療だけであっても
甲状腺に異常が出ないか?
性ホルモンにも異常が出ることがあることから、
治療後、数年以上時間が経過していたとしても
定期検査が必要になるかもしれません。
但し、疫学上、小児がんサバイバーにおける
甲状腺機能異常症の性差は
確かに女性のほうが多いですが
それほど顕著ではありません(47)。
(OR 1.06; 95% CI 1.03-1.08)
以下は、(46:Fig.1)で整理された
一般的な甲状腺機能低下症の共通的な症状です。
成長中の子どもに対して
どのようにあてははまるかを整理しました(Open AI) 。
但し、こうした症状が出るのは
甲状腺ホルモンの欠乏があって、
ホルモン補充などの治療がなされなかった、
あるいはそれが不十分であった場合。
このように推定します。
(外見)
むくみや顔の腫れ(Puffy face):
小児でも顕著になる可能性があります。
眉毛の喪失(Loss of eyebrows):
長期的に未治療の場合に見られることがあります。
(神経学的および心理的)
認知機能低下(Cognitive dysfunction):
学業の遅れや集中力の低下として
現れることがあります。
抑うつ(Depression):
特に治療後の心理的負担と相まって
現れる可能性があります。
(甲状腺)
甲状腺腫(Goitre):
放射線治療や抗がん剤による影響で
甲状腺の肥大が起こることがあります。
(循環器系)
徐脈(Bradycardia):
明確な甲状腺機能低下症では
しばしば観察されます。
拡張期高血圧(Diastolic hypertension):
特に放射線治療を受けた小児で
発生する可能性があります。
(消化器系)
便秘(Constipation):
小児でもしばしば報告されます。
(筋骨格系)
筋肉の痙攣や疲労感
(Muscle cramps, Fatigue and tiredness):
これは成長中の子供にも強く影響を与えます。
(代謝)
体重増加(Weight gain):
活動量が低下している場合、
特に顕著になります。
(生殖器系)
生殖機能低下(Subfertility):
思春期を迎えた子供では、
月経異常や性的発達の遅れ
これがみられることがあります。
(四肢)
感覚異常(Paraesthesia):
しびれや冷感として報告されることがあります。
脆い爪(Brittle nails):
栄養状態や代謝の変化によっ
て影響を受けることがあります。
性ホルモン(Sex hormone)は、
ステロイドホルモンの一種で、
主にこのホルモンにより第二次性徴において
性器以外でも外形的性差を生じさせ、
性腺に作用して
- 精子や卵胞の成熟
- 妊娠の成立・維持
これらに関与しまs。
性ホルモンは、
- 男性ホルモン(アンドロゲン)
- 女性ホルモン
これらに分けられ、
女性ホルモンはさらに
- エストロゲン(卵胞ホルモン)
- ゲスターゲン(黄体ホルモン)
これらに分けられます。
視床下部から分泌される
性腺刺激ホルモン放出ホルモン (LH-RH) が
脳下垂体での性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)
これの産生・分泌を促します。
下垂体から放出されるゴナドトロピンは
- 卵胞刺激ホルモン (FSH)
- 黄体形成ホルモン(LH または ICSH)
これらの2種類があり、
これらが性腺での性ホルモンの産生・分泌を調節しています。
精子や卵胞の発達段階によって
性腺で必要とされる FSH、LH の量は異なり、
性ホルモンが視床下部に
ネガティブフィードバックすることで、
すなわち、
量が多くなったら抑制的に制御することで
それらの分泌量が調節されます(48)。
テストステロン(Testosterone)は、
アンドロゲンに属するステロイドホルモンで、
男性における主要な性ホルモンであり、
蛋白同化ステロイドです。
タンパク質同化とは
食べ物などによって摂取した必須アミノ酸を含めて
そのアミノ酸から新しいたんぱく質を作る機能。
このことを指します。
具体的にはテストステロンが細胞核に移行し
遺伝子発現を促すことでたんぱく質を合成させます。
男性において、テストステロンは、
精巣や前立腺などの男性生殖組織の発達に
重要な役割を果たすと共に、
- 筋肉や骨量の増加
- 体毛の成長
- 声変わり
- 顔面の毛(髭など)
これらなどの二次性徴を促進します。
さらに、男女共にテストステロンは、
- 心理的健康(気分、行動、幸福感)(49)
- 骨粗鬆症の予防(50)
これらにも関与しているとされています。
テストステロンは、3位と17位にそれぞれ
- ケト基
- ヒドロキシ基(水溶性に関連)
これらを持つアンドロスタンクラスのステロイドです。
テストステロンの細胞内浸入能に関わる
脂溶性は炭化水素骨格によります。
その脂溶性は生合成の元が
脂質であるコレステロールであることも関連します。
アンドロゲン受容体に結合して活性化することで
細胞内でたんぱく質の合成などに関与します。
肝臓で不活性な代謝物に変換されます。
人間をはじめとするほとんどの脊椎動物では、
テストステロンは主に男性の精巣から分泌され、
女性の卵巣からも分泌されます。
成人男性のテストステロン濃度は、
成人女性の約7 - 8倍です(51)。
テストステロンは、
精子の正常な発育に必要な物質です。
テストステロンは、
セルトリ細胞の遺伝子を活性化し、
精子(精細胞)の前駆体である
精祖細胞の分化を促進します。
一般に30歳ごろから減少し始めるが
その減少幅は個人差も大きいです。
70代でも30代の平均値に匹敵する
テストステロン値を維持している
男性も多いとされています。
テストステロンは医療介入で補充することできますが、
自然な生活習慣でテストステロンレベルを上げる
方法は以下です。
1- 運動(特にレジスタンストレーニング)(52)
高負荷の筋力トレーニング以外にも
高強度インターバルトレーニング。
これも効果があるとされています(53)。
2- バランスの取れた栄養
主要栄養素、微量栄養素、機能性物質。
これらのバランスがとれた食事の中で、
肥満、すなわち脂肪細胞はエストロゲンを増やし、
その代償として、テストステロンを下げるので
肥満を予防することは重要ですが、
適正な体重、筋肉量を維持した状態で
脂質を取ることが重要です。
テストステロンはコレステロールから
生合成されるからです。
このコレステロールの原料は
食べ物摂取による脂質ですが、
特に牛肉、豚肉などの脂を含む
飽和脂肪酸、乳製品などが合成を促します。
実際に低脂肪の食事では
男性においてテストステロンレベル。
これを低下させたという報告もあります(54)。
もう一つはビタミンDです。
これは現代において不足する傾向にあるので
サプリメントなどは検討の余地があります。
テストステロンはビタミンDと協同的に
カルシウム量の調整をするため、
それによる筋肉の機能や骨密度管理。
これらに関わる可能性があります。
太陽光を適度に浴びることも大切です。
3- ストレスを減らす
テストステロンはストレスホルモンである
コルチゾールを減らす効果がありますが、
逆にコルチゾールが増えると
テストステロンが低下する傾向にあります。
座りがちな生活の回避や
運動などと組み合わせながら、
ストレスレベルを管理することが大切です。
4- 睡眠の質を上げる
睡眠の質は、運動によって高められます。
睡眠の質とテストステロンレベルには相関があります。
5- 過剰なアルコール摂取を避ける
テストステロンレベルは
アルコールを飲んた後30分で低下します。
従って、過剰に飲むことは
恒常的にテストステロンレベルを低下させる。
このことにつながります。
また、睡眠の質を低下させることもあるため、
それによる間接的な影響も懸念されます。
高齢男性において
テストステロンレベル(※)を正常に維持することは、
- 除脂肪体重の増加
- 内臓脂肪量の減少
- 総コレステロールの減少
- 血糖値のコントロール
これらなど心血管疾患のリスクを低減すると考えられる
多くのパラメータを改善することが示されています(55)。
(※)正常血中濃度(一般的な目安)
総テストステロン(Total Testosterone):
300 ~ 1,000 ng/dL(ナノグラム/デシリットル)
遊離テストステロン(Free Testosterone):
5 ~ 20 ng/dL(ナノグラム/デシリットル)
但し、子どもは異なるので注意が必要。
1–6歳 ND
7–9歳 0–8 ng/dL
10–11歳 1–48 ng/dL
12–13歳 5–619 ng/dL
14–15歳 100–320 ng/dL
16–17歳 200–970 ng/dL
子ど思は急激に上昇していくので
この時期にイライラや気分の変動が
見らえれることがありますが、
それは自然な成長の証でもあります。
テストステロン濃度は、性行為の有無にかかわらず、
毎日早い時間にピークを迎えるという、
概日リズムを有します。
男性の自慰行為後には、
さまざまなステロイドの血漿レベルが有意に上昇し、
テストステロン濃度はそのレベルと相関しています(56)。
射精後に明らかに愛情が下がるのは、
テストステロンの上昇と
関連しているかもしれません。
男性の交尾行動に影響を与えることが知られている
ホルモンであるテストステロンのレベルは、
排卵期の女性と非排卵期の女性の体臭に
曝されたか否かによって変化する。
排卵期の女性の香りに曝された男性は、
安定したテストステロン値を維持し、
非排卵期の合図に曝された
男性のテストステロン値よりも高い値を示したとあります。
他方で
恋愛をすると、男性のテストステロン値は減少し、
女性のテストステロン値は増加します。
はっきりとしたことはわかりませんが、
一般的な攻撃性の低下。
すなわち優しさ、
あるいは愛情などが女性ホルモンである
エストロゲンと関係しているからもしれません。
また、恋愛に対する認知的な性差もあるかもしれません。
女性は恋愛によってよりエネルギーに満ちる。
ということがある可能性がありますが、
なぜ、テストステロンレベルが上がるか?
はっきりしたことはわかりません。
テストステロンというのは
大切な人に対する優しさや愛情よりも
性としての生物学的な要素を優先する傾向があり、
パートナーを生涯大切にするという意味では、
分泌量が少なめのほうがいいかもしれません(57)。
男性的な健康という意味では
筋肉量(特に速筋繊維)を上げて、
脂肪細胞を減らし、見た目も魅力がある形で
比較的、肉を多く食べて、睡眠もしっかりとる。
そういったことが好ましいですが、
一方で、一人の女性、子供に対して
愛情、絆を持って大切にするという意味では
全てではなくても
競合する部分があるということです。
従って、
男性と女性は分かり合えない部分が
どうしてもあるということです。
研究数は多いわけではありませんが、
テストステロンの分泌量が多い男性は、
婚外セックスをする可能性が高い
という書籍もあります(57)。
従って、
自分の高いある種、男性としての健康を示す
テストステロンレベルを上げた状態で
大切な人を失わないようにするためには
そうしたリスクのある性行動を下げ、
イメージでマスターベーションする
映像を見るなど、
リスクのない性行動によって
そうした欲求とうまく向き合うことが重要です。
そうであっても、
女性に理解してもらうことは
一部で難しいかもしれません。
そうであるとするならば、
テストステロンレベルが低めのほうが
うまく協調的な関係を築ける可能性がありますが、
そうすると
その男性自体の健康や社会的成功。
これにデメリットを生じさせるかもしれません。
全然、笑えない話です。
ただ、人の身体のシステムを決めるのは
性ホルモンだけではないので、
グローバルに当てはまる根拠はありません。
ホモサピエンス、人、
特に現代の男性は私も含めて理性がありますが、
生物学上、仕方のないこともあるということです。
元々、先祖である類人猿であったときには
特に交尾相手の競争があったと思われるので、
男性はどうしてもその競争のもとに
生物学的に成り立つ部分があります。
父親になると
男性のテストステロン濃度が低下する
ということがあります。
例えば、わかりませんが、
男性でも、小さい時に
- 両親から高い愛情を受ける
- 年少のころから交際する
- 年少での叔父(伯父)経験
- 可愛い動物(犬、猫など)が身近にいる
- 可愛いキャラクターを好む
(ミッキーマウス、スヌーピーなど)
こうしたことがあると(複数あるとより)
その人のテストステロンのレベルは
あるいはエストロゲンのレベルは
発達に応じてそうでない場合に
比べて変わるかもしれません。
例えば、
発達期においてテステステロン量が少ないと
陰茎の発達に遅れがでることがあります。
成人になって、結果として
自分の陰茎、睾丸が平均的にみて
明らかに小さいとすると
テステステロン量が愛情(可愛い)など
(場合によっては好ましい)外的要因によって
成長期に阻害された可能性もあります。
但し、
男性として成長期に
テステステロン量が小さいと
場合によれば、弱くなることで、
暴力なども含めていじめられたり、
そういった社会的作用に加え
生物学的作用が複雑に絡み合い
メンタルヘルスに異常がでる
という可能性もあります(49)。
そういう観点においては
染色体上男性ならば、男性らしく育てる。
ということはその子を守るうえで
重要かもしれません。
実際に、男性は子を持つと(父親になると)、
テストステロン濃度が低下することから、
テストステロンの低下に伴う
感情や行動が父親としてのケアを
促進することが示唆されています。
しかし、
母親のように妊娠、出産、授乳など
物理的に何かがあるわけではないので、
何がこの変化を男性の場合、駆動しているのか?
それについては、はっきりわかりません。
ヒトの場合、テストステロンは、
単に身体的攻撃性を高めるというよりも、
その攻撃性の目的は、
- 社会的地位を求める
(動物にも共通するもの)
- 社会的優位性を高める
このようにあると仮定されています(58)。
今、社会的平等性などが謳われていますが、
男性がそれを実践する場合には
生物学的に
性ホルモンを中心とした影響によって
こうしたある種、
不平等を駆動する因子の可能性を
客観的に認識することは重要かもしれません。
(平均的な)女性が、一般的に地位を求めないのも
こうしたホルモンの影響はあるかもしれません。
私も含めて人は生物として特別なものという
認識がどこかにありますが、
そうではなく、生物学的に進化を遂げてきて
それらは一部、連続であるということです。
今までの人類の歴史を振り返り、
その中で日本の広島大学が掲げるように
恒久の平和を希求するのであれば、
社会的な活動と一部、一線を画し、
生物学的な観点での対策も重要になります。
今までは男性がどちらかというと
社会を支配してきたわけですから、
男性はテストステロンとどう向き合うのか?
男性にとってのエストロゲンとは何なのか?
男性にとっての
性ホルモン、さらにいえば
それに密接に関わる
甲状腺ホルモン、成長ホルモンとの関係があり、
それらが生涯にわたり変動する中で
健康な人生に貢献するホルモン量の在り方とは?
そのような研究も待たれます。
それは当然、この記事のメインのテーマである
小児がんサバイバーの人にとっての
その後の長い人生における
最適なホルモン量のガイドラインにもつながります。
こういうことが客観的にわかると
ヒトの行動に対して
過剰に憎しみ、怒りを持たなくて済む
ということにもつながるかもしれません。
端的に言えば
「(生物学的に)仕方ないよね。」
このように思える部分が出てくるということです。
逆に、それに任せた行動を
実際に自分が取ったとき、
「あ、俺、今、動物になっている。」
このように自覚でき、
その時に生まれた人間としての尊厳が
理性を生むかもしれません。
テストステロンの低下は、
- 認知機能の低下
- アルツハイマー型認知症の危険因子
これらである可能性を示す予備的な証拠があります(59)。
そのほか
- メタボリックシンドローム
- 心血管疾患、
- 死亡率
これらとも関係があります(60)。
脂肪組織(脂肪細胞)の多さはテストステロンを
減少させる要因であるということが
確定的ではないですが、示唆されるため、
肥満になること自体が
テストステロンを減少させ、
それがさらに代謝異常、
心臓血管異常などを駆動させる。
そのような負の連鎖はあるかもしれません。
男性のテストステロンは、
精巣で最も大量(95%以上)に生産されます。
LDLコレステロールは高値では
しばしば問題になりますが、
これが主に精巣細胞に運ばれるため、
適度な(飽和)脂肪酸の摂取は
テストステロン生成のために重要です。
効果的な毛細血管への輸送のためには
血液循環もおそらく重要になるので、
空腹や運動など血液循環が高まった状態で
そうした栄養素を過不足なく摂取すること。
これがテストステロンの生成の材料を提供する
という意味で重要かもしれません。
他方で、
テストステロンは上述したように
下垂体から放出されるゴナドトロピン
- 卵胞刺激ホルモン (FSH)
- 黄体形成ホルモン(LH または ICSH)
これらのホルモンによって合成の指令を受け取ります。
下垂体は視床下部からも指令がありますから
これを
「視床下部- 下垂体-精巣軸」
(Hypothalamic-Pituitary-Testicular Axis)
このように呼びます(61)。
テステステロンは自身が視床下部に働きかけて
量が多くなった時に抑制的に量を調整する
ネガティブフィードバックが働きます。
エストロゲン(米: Estrogen, 英: Oestrogen)は、
- エストロン
- エストラジオール
- エストリオール
これらの3種類からなり、
ステロイドホルモンの一種です。
一般に卵胞ホルモンなどと呼ばれるが、
主に女性ホルモンと呼ばれます。
エストロゲンは
- 卵巣(通常:約70%~80%)
-- 顆粒膜細胞(Granulosa cells)
-- 外卵胞膜細胞(Theca cells)
- 胎盤(妊娠時:90%以上)(※)
- 副腎皮質(約10%未満)
- 精巣(男性)
これらから作られます。
(※)
妊娠時、エストロゲンの放出が
卵巣から胎盤に変わることで
何か体の症状など変化はありますか?
0- そもそもなぜエストロゲンは増える?
妊娠時に通常よりもエストロゲンの分泌が増えるのは
エストロゲンはテステステロンと同じように
遺伝子に働きかけて
細胞、体の組織に必要な
多様なたんぱく質の合成に関与するからです。
従って、胎児の
性器、骨、心臓、脳、肺、脂肪組織などの成長を
遺伝子的に活性化させて、支援するための
重要なホルモン物質です。
1- ホルモンバランスの変化
妊娠初期には、卵巣(特に黄体)が
エストロゲンとプロゲステロンを分泌しており、
これらのホルモンが妊娠の維持をサポートします。
しかし、妊娠中期以降、
胎盤がエストロゲンの主要な供給源となり、
エストロゲンのレベルは大幅に増加します。
これにより、ホルモンバランスが大きく変わり、
特に妊娠後期では
エストロゲンの血中濃度が非常に高くなります。
2- 体内の水分量の増加
高エストロゲン状態は
体内の水分保持に影響を与えます。
エストロゲンはナトリウムの再吸収を促進し、
これが水分の保持を助けるため、
妊婦はむくみや浮腫が生じやすくなります。
特に足や手、顔にむくみが見られることがあります。
3. 血行系の変化
エストロゲンは血管を拡張し、
血流を増加させる作用があります。
これにより、妊娠中期から後期にかけて、
血液量が増加し、血圧が低下することが一般的です。
ただし、エストロゲンが引き起こす血管拡張は、
妊娠後期に妊娠高血圧症候群(または妊娠中毒症)
これを引き起こす原因となることもあります。
4. 乳腺の発達
エストロゲンは乳腺の発達を促進します。
妊娠中は胎盤から分泌されるエストロゲンが
乳腺の肥大や乳管の拡張を助け、
授乳準備を整えます。これにより、
乳房の張りや痛みを感じることがあります。
5. 気分の変化
妊娠に伴うエストロゲンの急激な増加は、
気分の変動を引き起こすことがあります。
エストロゲンは神経伝達物質である
セロトニンやドーパミンに影響を与えるため、
妊娠初期から中期にかけて、
感情の不安定さや気分の浮き沈み。
これらが見られることがあります。
これはいわゆる「妊娠中のホルモンの影響」。
これとして広く知られています。
6. 子宮の成長とリラックス
エストロゲンは子宮の成長を促進し、
胎児の発育を助けるために必要です。
また、エストロゲンは
子宮の筋肉を弛緩させる作用もあり、
これにより子宮の収縮が抑制され、
妊娠を維持しやすくなります。
7. 消化系の影響
エストロゲンの増加は
消化系にも影響を与えます。
特に、胃腸の運動が遅くなることがあり、
これが妊娠中の便秘の原因となります。
また、
- 食欲の変化
- 胃酸の逆流(逆流性食道炎)
これらなどの症状が見られることもあります。
8. 皮膚の変化
高いエストロゲンのレベルは、
皮膚にも影響を及ぼします。
特に、妊娠線や色素沈着
などが見られることがあります。
また、エストロゲンは皮膚を柔らかく保つため、
(おなかを大きくするために重要)
妊娠中に皮膚が乾燥しにくくなることもあります。
9. 免疫系への影響
妊娠中のエストロゲンの増加は、
免疫系にも影響を与えます。
エストロゲンは免疫抑制的な作用を持つことがあり、
これにより免疫応答が調整され、
胎児が母体の免疫システムに
拒絶されないように助けます。
乳児期早期(1-3ヶ月)の女性は
思春期並に分泌量が多く、小卵胞が出没するが、
2歳から思春期を迎えるまでは分泌量が減少します。
2歳から思春期を迎えるまでの分泌量は
女性で0.6pg/ml、男性で0.08pg/mlと
女性の方が高く
これが女性の思春期初来が
男性より早い原因の一つとなっています。
思春期に卵巣が発達し始めると共に
分泌がプロゲステロンも増加し始め、
第二次性徴を促進させます。
更年期以降は分泌が減少するため
更年期障がいなどの原因の一つとなります。
年配女性で問題となるのが
骨密度低下による骨折ですが、
エストロゲンは下述するように
おそらく男性のテストステロンよりも
多様に体の機能に関わるため、
こうした機能が全般的に低下することから
生活習慣の改善(食事、運動、ストレスケア)や
エストロゲン補充療法などが検討されます(62)。
今述べたようにエストロゲンは女性において
体全身において重要な役割があります。
以下にまとめます。
1-筋骨格系
同化作用:
- 筋肉量や筋力の増加
- 筋肉の再生速度の向上
- 骨密度の増加
- 運動に対する感受性の向上
- 筋肉損傷からの保護
- コラーゲン合成の強化
これらなどを促進します。
特に、腱や靭帯などの結合組織の
コラーゲン含量が増加しますが、
腱や靭帯の硬直度が低下します(特に月経時)。
これにより、
女性は筋肉の損傷や筋肉のひきつりに対して
低いリスクを持つ一方、
軟らかい靭帯が怪我に繋がりやすく、
ACL損傷は女性に多く見られます(男性より2〜8倍高い)。
このことから
女性は基本的に筋組織が男性よりも
密度が低いため柔らかいですが、
筋組織の過不足ない発達と、
歩行習慣による骨密度の適正と
日々の体操やストレッチによる柔軟運動。
これはこうした怪我のリスクを
低下させると考えられます。
骨吸収を減少させ、骨形成を促進します。
この記事でも述べたように
骨は骨を形成する骨芽細胞と
骨を分解する破骨細胞、
それを調整する骨細胞
これらで主に恒常性が調整されています。
しかし、骨芽細胞は
破骨細胞のように多核性ではなく
単核性で、合成需要も大きいため
環境に対して脆弱な側面があります。
従って、環境的ストレスが入ると
骨の過形成のリスクよりも
骨密度が低下する骨粗鬆症のリスク。
これのほうが高くなります。
すなわち、
骨芽細胞が相対的に少なくなりやすいです。
エストロゲンは骨芽細胞を
生存を支援する働きがあります(66)。
このことが一つ
エストロゲンが減少したときに
骨密度が下がりやすい生物学的な原因です。
他方で、筋組織では、
マウス実験では、エストロゲンが
速筋繊維タイプ(タイプIIX)の割合を
40%以上増加させることが示されています。
従って、閉経後に
骨密度、筋力が低下することが懸念されます。
2- 代謝
- 抗炎症作用
女性は免疫が高まりやすいので
それを抑制するエストロゲンによる
抗炎症作用は重要です。
- 代謝の加速
- 脂肪の適正分布
エストロゲンは
-- 胸部
-- 臀部
-- 脚
これらなどの部位に脂肪を蓄積させ、
腹部や内臓脂肪(アンドロゲン性肥満)
これらを減少させます。
また、エストラジオールは
エネルギー消費や体重の恒常性を調節し、
一般的にテストステロンよりも
強力な抗肥満作用を持っています。
3- 他の構造的作用
- 血管や皮膚の維持
- タンパク質合成促進
- 肝臓での結合タンパク質の生成増加
- アドロピンという肝臓由来のヘパトカインの生成を促進します。
4- 凝固
血中で凝固因子(因子II、VII、IX、X)、
プラスミノーゲンを増加させ、
抗凝固因子III(アンチトロンビンIII)を減少させます。
血小板の付着性を増加させ、
vWF(von Willebrand因子)や
PAI-1、PAI-2の生成を増加させます。
5- 脂質
- HDL(高密度リポタンパク質)
- トリグリセリドを
こえらを増加させ、
- LDL(低密度リポタンパク質)
- 脂肪の沈着
これらを減少させます。
6- 体液バランス
塩(ナトリウム)と水分の保持:
顔や腹部に浮腫(むくみ)が見られることがあります。
7- メラニン
エストロゲンは皮膚の色を暗くする作用があり、
特に顔や乳輪で顕著です。
妊娠中の女性は「妊娠線」として知られる
皮膚の変色が見られます。
エストロゲンは
女性が男性よりも肌が暗くなる原因とされています。
8- 肺機能
肺機能の促進:
エストロゲンは肺胞をサポートすることにより、
肺機能を促進します
(動物実験では確認されていますが、
ヒトでもおそらく同様の作用があります)。
9- 性的作用
女性の二次性徴の形成を助けます。
子宮内膜の成長を促進し、
子宮の成長を増加させます。
また、膣の潤滑を促進し、膣壁を厚くします。
妊娠において、エストロゲンは子宮内膜を維持し、
受精卵の着床準備を行い、
陣痛時のオキシトシン受容体の発現を増加させます。
10- 排卵
エストロゲンの急激な上昇は、
LH(黄体化ホルモン)の分泌を促し、
卵巣のグラーフ卵胞から卵子を放出させ、
排卵を引き起こします。
11- 性行動
エストロゲンは、雌性哺乳動物が発情期に行う
「ロルドシス行動」を促進します。
これは性行動に必要なもので、
視床下部の腹内側核によって調節されています。
12- 性欲
性欲は、エストロゲンが存在する場合のみ、
アンドロゲン(テストステロンなど)の影響を受けます。
エストロゲンが不足すると、
テストステロンの自由分画濃度が高くても
性欲は低下します。
このため、性欲低下障害を持つ女性に
エストロゲンを投与することで
性欲が回復することがあります。
13- 神経保護作用
エストロゲンは脳において
DNA修復作用をもちます(63)。
上述したように脳においても
抗炎症作用を持ちます(64)。
14- メンタルヘルス
閉経後(月経、出産後)でのエストロゲンの(一時的な)減少は
うつなどメンタルヘルスにも
影響を与える可能性あがります(65)。
その細胞生物学的機序は
エストロゲンが神経伝達物質である
ドーパミンやセロトニンの受容体などに作用し、
それらの伝達を正に調整していることと
ストレスホルモンである
コルチゾールの抑制因子であることです。
15- 心臓血管系
エストロゲンは動脈を守る効果があります。
感染症に対しても一般的に強いです。
それによって、動脈硬化リスクも低下させます(67)。
16- 免疫系
エストロゲンはTh2シフトするので
一般的に細胞性免疫よりも液性免疫に優れます。
従って、
ワクチンによる抗体価が高く出やすく
一般的にワクチンの効果は高いですが、
一方で、発熱などの副反応や
自己免疫疾患(自己抗体)への発展リスクを抱えています。
ゆえに、橋本病など
甲状腺の自己免疫疾患も疫学的に有意なほど
女性のほうが高いと推計されています。
オキシトシンは男性、女性において
- 博愛
- 自己愛
- 友愛
- 兄弟姉妹愛
- 無償の愛
- 性愛
- 慈愛
- 郷土愛、愛国心(パトリオティズム)
- 恋愛
- 親子の愛
- 可愛い
これらなど様々な愛情と密接に関わるホルモンです。
このオキシトシンは主に視床下部で産生され、
- 循環器系
- 脳神経系
これらへ向けて分泌されます。
一般的にストレスホルモンである
コルチゾールを抑制し、
他の甲状腺、性、成長ホルモンの調整に
も影響を与えるかもしれません。
ただ、こうした愛情、社会的つながり、絆とつながる
オキシトシンの合成に関わるのは、
エストロゲンです。
エストロゲンは
視床下部の神経核(特に視索上核や室傍核)に作用し、
オキシトシンの合成を増加させます(68)。
従って、
男性が女性が持つ愛情を理解するのは
少し難しさがあるのかもしれません。
少なくとも私が持つものとは違うでしょう。
典型的な精神症状である
不安、うつなどを抑制する効果があるので
女性にとって必ずしも異性ではなく
同性とも社会的つながるを持つこと、
家族、親族とのつながりをより大切にすること、
お孫さんを含めた子供とのつながり、
これらは、
特に更年期においては重要かもしれません。
逆に、男性がこうした愛情に依存することは、
テストステロン抑制的に働く可能性があることから
不安やうつなどを誘導するかもしれません。
どちらかというと
運動でしっかり筋肉をつけるほうが
男性の場合は重要かもしれません。
日本ではあまりニュースになりませんが、
50代の男性が一番、自殺者数が多いですから、
求めているかどうかによりますが、
適切な手段で手を差し伸べることが重要です。
アフリカのコンゴの調査では
高いオキシトシンレベル
低いテストステロンレベルでは
夫婦間において協力的な態度を促進すること。
これが知られていますが、
一方で、男性として経済的に
家計を支えるレベルは
テストステロンレベルが高いほうが高い。
このようにされています。
従って、ミックスな(複雑な)結果です。
高齢の男性では個人差があるものの
一般的にはテステステロンが低下する傾向にあります。
性器(陰茎、睾丸)が小さかったり、
筋肉量が少なく、脂肪が多かったり、
ストレスが多いような生活では
テストステロンが低下する傾向にあります。
これは
機能的あるいは晩発性低ゴナドトロピン症
(late-onset hypogonadism)
このように呼ばれます。
この状態では、
正常なテストステロン濃度の男性と比較して、
- 不機嫌、
- 活力や精力の低下
- 短気
- 自信のなさ
- うつ症状
- 倦怠感(Fatigue)
- 不安
これらが生じやすい傾向にあります(49)。
特に50代というと、
仕事の地位の差も最も現れやすく
地位が高くても、低くても
ストレスを非常に受けやすいです。
また、女性のように助けを求めることも
尊厳、誇りもあってできにくいことから、
一気にそうした負荷が噴き出てしまう。
そういった危険性もあります。
- 医療機関
- SNS(適切な情報)
- 自治体主導の地域活動
尊厳を阻害しない形で、
これらなどによる対策は必要だと思います。
- 運動不足
- 睡眠不足
- 過剰な飲酒習慣
- ストレスフルな生活
- 肥満傾向
これらがあり、さらに
「怒りっぽくなったな」
「活力がないな」
こういった症状があるときには、
男性ホルモンの量に異常があること。
これも疑う余地があります。
場合によれば、医療機関によって
ホルモン量を計測してもらい、
ホルモン補充療法なども検討されます(69)。
興味深い研究があります。
高いテストステロンレベルが
必ずしも破壊的な衝突を生むかはわかりません。
同じ霊長類であるリスザル
(Rhesus monkeys)において
高いテストステロンレベルがある個体は
必ずしも直接的な攻撃行動を用いないこと。
これが示されています。
代わりに
- 凝視(stares)
- 脅し(threats)
- 押しのけ(displacements)
これらをすることがわかりました。
これは「明確な物理的衝突を回避しながらも」
自分の優位性を主張する方法として機能します(70)。
ヒトでも肝の据わった男性というのは、
落ち着いていて、自分の優位性を
「睨み」「姿勢」など態度で示す
傾向にあるかもしれません。
これは暴力など物理的衝突をしない方法として
非常に重要かもしれません。
テストステロンが過不足なくあるというのは
男性において心も含めて健康の面で重要です。
ただ、そこには愛情はないとは言えないけど
少ないといえます。
一方で、
愛情の高い男性は男性的な強さはなく、
心が不安定かもしれないけど、
困った人を救う人情があるかもしれません。
大阪がなぜ(今はわかりませんが)、
人情の街と呼ばれるのか?
それにも関心があります。
事実として生活保護が必要な人。
これをできるだけ救うということは
行政としてあります。
一般的には少なくとも普及してませんが、
成長曲線において身長、体重は観ますが、
睾丸、陰茎などの性器は
基本的には倫理的な側面から診ませんが、
医学的にはその成長曲線を見ることは
その人のテステステロンレベルや
思春期の社会的な事も含めた
心身の健康の基盤の素因の一つの評価。
生殖機能の評価。
これにつながるかもしれません。
まあ、でも子供は嫌がるでしょうね。
私は2015年から2021年まで
確かに事実、駒田の部屋として
受験生(学生さん)に対してブログを書きました。
私の男性らしくない側面がありましたが、
気持ちが伝わったならば、
ひょっとすると成長期の
男性らしくなっていく時期には
あまり良い影響はなかったかもしれません。
少なくとも今、
もし再開するなら(しないけど)、
やり方はもう少し考える事になります。
サッカーなどのスポーツ観戦などでも観察されますが、
テステステロンが高いと
個人選択: 自己利益を最大化する行動。
集団選択: 内集団の利益を守る行動。
これを取る傾向にあります(71)。
もし、こういう傾向がグローバルにあるなら、
こころのケアをしっかりして、
テストステロンレベルが高くない男性。
それで私を超える優秀な
日本の男性が次世代にほしいなと思います。
あるいは、もう少し日本において
女性の社会的地位を相対的に上げる事です。
例えば、名古屋大学の報告で
日本人は困っている人への同情が低い
ということが示されています(72)。
この報告をしたのは二人とも女性ですが、
先進国の中で女性の社会的地位の低さ。
これが背景の一つかもしれません。
新型コロナウィルス世界的感染流行時、
一番社会が苦しい時、
名前は失念しましたが、
上智大学の女性の先生(教授職)が
一番底辺で食事のサポートを
ボランティアでしていることがありました。
ま、偉い先生ですよね。
今でも無職の私を一番心配して
お金を送ってくれるのは母親です。
利他というとやはり女性なのかなと思います。
もちろん、全員ではないです。
私自身、個人的に岡山で立て続けに女性に
ひどい目にあわされたこともあるので。
そういう意味では
苦しめた部分もあったかもしれないけど
私の6年間の活動も決して無駄ではなかった。
そのようにも思います。
日本では男性のほうが自殺者が明らかに多く、
特に無職の人が多いです。40代、50代が多いです。
- 運動
- 筋肉をつける
- 肉も魚も食べる
- 一定の社会的つながりを持つ
- 雇用の安定
- ストレスケア
- 飲酒を控える
- よい睡眠をとる
こういった交絡する要因を確保することですが、
こういう状況を救ってくれるのは
上には含まれませんが、
利他性のある女性でもあります。
必ずしも配偶者とは限りません。
ずっと一緒にいるわけにはいかないので
そういう困っている方々を救うとなると
進化学、人類学、生物学、
薬学、医学、医療などを駆使して
合理的にその方のWell-being軌道転換。
これに手を差し伸べるということになります。
Hormone replacement therapyも一つです(69)。
男性の場合は、生物学的に
男性ホルモンが低かったり、
脳が発達する時期にそうであると、
- 不安
- うつ
- ムードスイング
これらなど心に問題を抱えやすい
ということがあります。
これはもうおそらく生物学的な問題です。
ホルモン量が確かに低く、
あるいは性器が異常に小さいなど
問題がある場合には、
場合によれば、医療機関で
テストステロンの補充を行う。
これは合理的な選択肢になる可能性があります。
そのうえで、良いと考えられる
生活習慣の改善をすることです。
女性が主導してもいいかもしれません。
但し、
治療後すぐに変わる部分と、
長期間かけて変わる部分。
一方で、変わらない部分。
その反面としてリスクがあること。
また、どういったプロトコルで介入するか?
ベースラインとしての生活習慣の改善はできるか?
そういったことが複合的に関与すると思われます。
明らかに影響が大きい
閉経後の女性でも
医療介入が60歳を過ぎると
少なくともアメリカの調査では
エストロゲンの補充が必ずしもよい。
このようにはなっていないので、
医療介入するとなると少なくとも
慎重な判断が必要です。
ただ、テステステロンの場合でも
個人差があり、それは若くても低い人がいる。
ということが推定されますから、
脳を含めて回復力がある若い時に
生活習慣と合わせて介入するほうが
良い効果が出る可能性があります。
ホルモン補充療法はホルモンの低下が
閉経後に変化率が高く女性で生じるので、
高齢女性に対して、
エストロゲンの減少量を緩和させるために
あるいは正常値に戻すために行われることが多い。
このように認識しています。
- 骨折のリスク
- 生活の質の向上
これらがあります。
逆に、乳がん、子宮がんなどの
性機能に関連が深い部分の癌化などのリスクもありますが、
基本的にはアメリカの総括では(69)、
リスクがベネフィットを上回ると評価されています。
但し、50 - 60歳までの女性の評価です。
60歳以降では利益があまりなく、
リスクが高くなってくると評価されています(69)。
※ただし、これはアメリカの調査です(74)。
例えば、治療を開始してから1-2年の間に
心臓に問題が生じる可能性があります(69)。
これは複数のランダム試験によって評価されています。
ここは見逃すことができない重要な結果です。
日本でも女性は保険適応で受けられます。
1か月 1,000 ~ 2,500円程度です(73)。
実際にこの結果は、
日本女性医学学会が発行するガイドライン。
これにも示されています(73)。
以下、引用文です。
HRTを閉経後10年未満
もしくは60歳未満で開始した場合には
心筋伷塞の 発症リスクが減少すること、
そして閉経後10年以上もしくは
60歳以上で開始した場合は
その予防効果は消失し、
脳卒中や深部静脈血栓症のリスクは
逆に増加することが多くの研究で示されています
(以上、引用文)
骨折に関しても、60歳未満の女性のほうが
ホルモン補充療法による予防効果は高い。
このように評価されています(69)。
(74)に基づく(66:Box.2)を引用します。
50 - 59歳のグループにおいて
- Coronary heart disease: 0.65 (0.44–0.96)
- Myocardial infarction: 0.60 (0.39–0.91)
- Breast cancer: 0.76 (0.52–1.11)
- All cancers: 0.80 (0.64–0.99)
- Global index: 0.82 (0.82–0.98)
- Total mortality: 0.78 (0.59–1.03)
従って、
本来、ホルモン補充療法は乳がんのリスク。
これを上げる懸念がありましたが、
逆の結果になっているということです。
この理由は、高齢になったときの
組織の不可逆性にあると思います。
高齢になると全体的に細胞が老化します。
従って、例えば、
血管の内皮細胞、平滑筋細胞などが
一度、傷ついて炎症を起こし、硬化すると
それを再び若返らせることが容易ではありません。
それはエストロゲンをもってしてもそうです。
一方、
閉経前は、成人してから
ずっとエストロゲンが高い状態ですから、
閉経前の時点では50歳であっても組織は
非常に高いレベルで守られています。
そこで閉経を経験して、
エストロゲンが一気に下がったときに
すぐに、エストロゲンの減少を抑えれば、
エストロゲンの広範な保護効果は
持続したままですから、
組織の状態は損傷せず維持されます。
従って、原理的には
閉経後、すぐがいいかはわかりませんし、
最適な間隔はあるかもしれないですが、
できるだけ早期に始めたほうがいいです。
これは重要な情報なので、
日本においてもどこかの段階で
疫学的な結果をもとに
より正確なガイドラインが出るかもしれません。
ホルモン補充療法(Hormone replacement therapy)。
以下は、主に小児がん予後管理について述べます。
若い回復力のある時に
ベースラインとしての生活習慣と共に、
適切なホルモン量を管理して維持することは大切である。
このようなことは当てはまるかもしれません。
上述したように小児がんの60%で内分泌系の異常がでます。
4年の累積発現率(予後、4年の間いずれかでの発症割合)。
これは主に小脳にできる髄芽腫(Medulloblastoma)。
これでは成長ホルモンの不足は
90%を超えるといわれています(38)。
その最も主要な理由は
髄芽腫は脳脊髄液を通じて
脊髄へ転移するリスクがあるため
脊髄を含めて頭蓋内に広範囲に
放射線が照射される場合があるからです。
こうしたリスクは
放射線療法の負荷に依存します(39)。
甲状腺ホルモンの不足は
同じく放射線療法の線量に依存しますが、
成長ホルモン不足よりも低いです(4-13%)(41)。
視床下部、下垂体、副腎、甲状腺、精巣、卵巣。
これらの異常による
- 成長ホルモン
- 甲状腺ホルモン
- 性ホルモン
これらの不足があることから、
それに対する医療介入としては
そのホルモン不足量を補う
ホルモン補充療法が検討されます。
しかし、
小児がんの予後管理における
子どもに特化したホルモン補充療法のガイドライン。
これの制定がまだありません(35)。
ホルモンを補充するにあたり、
- がんの再発
- 2次的な悪性新生物
これへのリスクを考慮する必要があります(36)。
甲状腺ホルモンをはじめ、
ホルモンを過剰に投与することは、
細胞の増殖を促すことになり、
増殖性のある細胞種に過剰に作用してしまうと
それががん化する可能性があるからです(37)。
成長ホルモンでもホルモン補充療法を受けた子供は
14,108人の調査で
2.15 (95% confidence interval, 1.3-3.5; P < 0.002)
リスクが高いことが示されています(40)。
これはもともと治療後に
休眠している細胞を含めて
一定、癌細胞が残存していること。
あるいは遺伝子構造的に残っていること。
もともと癌リスク遺伝子変異があること。
このようなことも
付加的に関係しているかもしれません。
ただし、
ホルモン補充療法が適切に成長曲線や量が
個別化された形で管理され、実施された場合、
本当にがんの再発や2次発生のリスクが高まるか?
そうではない可能性もあるため(35)、
慎重な解釈、判断が必要です。
ホルモン補充療法によって
がんのリスクを考える際には、
当然、原発腫瘍がどこにあったかにより、
原発腫瘍部での再発に対する配慮もあると思いますが、
それ以外の部位での2次的発生は
- 乳房
- 前立腺
- 腸
- 肝臓
これらの部位での悪性腫瘍の発生に
注意を払う必要があります(35)。
小児がんサバイバーの甲状腺機能低下症に対する
甲状腺ホルモン補充療法は
性ホルモン、成長ホルモンが不足する場合に
それを補充する治療よりは
懸念の材料が少ないといわれています(35)。
但し、がんの2次発生のリスクが
ないわけではありません。
性ホルモン量が低下する
性腺機能低下症(Hypogonadism)は
小児脳腫瘍を含めた小児がんの
最も蔓延した合併症です。
男性、女性共に生殖機能の異常が出る患者さんは
全体の10%前後で診られます。
性腺機能低下症に対して治療を行わないと
- 心臓血管
- 骨密度
- フレイル
これらのリスクが高まります。
しかし、性ステロイドによる補充治療を行う際
性ホルモンと密接に関わる器官である
乳房、前立腺の悪性腫瘍について
細心の注意を払う必要があります(42)。
小児がんサバイバーにおいて
上述したように成長ホルモンは
肝臓でのIGF-1変換を経て、
身長、それに応じた体重に関わる
骨、骨格筋の成長に密接に関わる内分泌物質ですから、
大人になって、成長板が閉じ、
骨格の成長が止まるまでの間に
成長ホルモンの不足を医療介入によって補うことは
小児がん既往歴のある子どもの
維持管理(マネジメント)において
主要な役割を担います(43)。
成長ホルモン、性ホルモン、甲状腺ホルモン
これらの補充療法では
主に懸念される
顕性がんへの発展のリスクを低減するためには
ホルモン量の管理が重要だと思われますが、
投与量はどのように決定されるでしょうか?
- 成長ホルモン(GH)、
- 性ホルモン、
^ 甲状腺ホルモン
これらの補充療法における投与量の決定は、
個別化されたアプローチが重要です。
投与量は患者さんの
- 年齢
- 体重
- ホルモンの不足具合
- 治療歴
- 全体的な健康状態
- 治療目的
これらなどに基づいて決定されます。
それぞれのホルモン補充療法について、
投与量の決定基準は以下のように考えられます(※)。
(※)
但し、これはガイドラインに
基づく情報ではありません。
1- 成長ホルモン(GH)補充療法
1.1- 診断に基づく量
GH補充療法は、主に
成長ホルモン分泌不全(GH不足)
これと診断された場合に行われます。
通常、GH不足が確認された後に治療を開始します。
診断には、成長ホルモンの
- 血中濃度測定
- 成長速度の評価
- 放射線治療歴
- その他の病歴
これらを考慮します。
1.2- 投与量の決定
GHの補充量は、
体重や身長に基づいて決定されることが多いです。
一般的には、
0.025〜0.05 mg/kg/日の範囲で投与が始まりますが、
治療を開始した後は
- 血中のIGF-1(インスリン様成長因子-1)レベル
- 成長速度
これらをモニタリングして、投与量を調整します。
1.3- 骨形成のモニタリング
例えば、下述するような骨の形成異常(※)のリスク(35)が
成長ホルモンの量がもともと不足していて
それを補充していく場合には
多少なりとも生じる可能性があるので
定期的にレントゲン、骨密度検査などで
骨の形成異常がないかどうかはチェックが必要です。
(※)
- 股関節すべり症(大腿骨頭すべり症)
Slipped capital femoral epiphysis,
大腿骨頭(股関節のボール部分)が、
大腿骨の首部分から
後方および下方に滑ってしまう状態。
通常、成長期の子供(特に10~16歳)に発生し、
肥満や成長スパートがリスク要因となる。
- 脊柱側弯症(Scoliosis)
背骨(脊柱)が異常に横方向に湾曲する状態。
成長期の子供(特に10代前半)によく見られるが、
軽度の場合は無症状のことが多い。
湾曲が進行すると、
外見上の変化や痛み、
呼吸機能の障害を引き起こす可能性がある。
2- 性ホルモン(エストロゲンやテストステロン)補充療法
2.1- 年齢と発育段階
性ホルモンの補充療法は、
- 性成熟の遅れがある場合
- 性ホルモンの分泌不足が確認された場合
これらの場合に行われます。
補充療法の開始時期や投与量は、
- 患者の年齢
- 性別
- 骨年齢
- 発育の段階
これらを考慮して決定されます。
2.2- 投与量の決定
性ホルモン補充療法の量は、
通常、以下のような点を考慮して決められます。
2.2.1- エストロゲン(女性)
エストロゲンの投与量は、
通常、思春期を迎えた年齢(13〜15歳)で開始され、
体重に応じて増減します。
エストロゲン補充の初期投与量は、
一般的に0.025〜0.05 mg/dayで、
少しずつ増やしながら月経周期を正常化させます。
2.2.2- テストステロン(男性):
男性では、テストステロンの投与量は
50〜100 mg/月(筋肉注射)や、
経皮的なgel(1〜2%)を使用する場合もあります。
治療開始時は低用量から開始し、徐々に増量します。
2.3- ホルモンレベルのモニタリング:
性ホルモンのレベルを定期的に測定し、
体内で適切なホルモンバランスを
維持するために量を調整します。
特にエストロゲンは
骨密度や乳腺組織に影響を与えるため、
過剰にならないよう注意が必要です。
3. 甲状腺ホルモン(T4, T3)補充療法
3.1- 甲状腺機能低下症の診断
甲状腺ホルモンの補充療法は、
甲状腺機能低下症(hypothyroidism)。
これが診断された場合に行われます。
診断には血中のTSH(甲状腺刺激ホルモン)や
T4レベルの測定が使用されます。
3.2- 投与量の決定
甲状腺ホルモンの補充量は、
通常、体重や年齢に基づいて計算されます。
一般的な初期投与量は、
1.6〜1.8 µg/kg/日(レボチロキシンナトリウム)
これが基準となりますが、
年齢や体重、病歴を考慮して調整します。
3.3- 血中TSHとFT4(遊離T4)レベルのモニタリング
ホルモン投与量は、
TSHおよびFT4のレベルを監視して調整されます。
正常な甲状腺機能を維持するためには、
TSHが正常範囲内に収まるようにすることが目標です。
4- 一般的な考慮点
4.1- 個別化:
患者(さん)ごとの
- 病歴(例えば放射線治療歴)
- 身体状態
- ホルモンの不足具合
これらに基づいて、治療の開始時期や投与量を調整します。
4.2- 副作用のモニタリング:
過剰投与や不十分な投与がもたらす副作用
- 骨密度の減少
- 心血管系への影響
- がん(過剰の場合)
これらを避けるため、
- 定期的な健康チェック
- ホルモンレベルのモニタリング
これらが重要です。
4.3- 成長と発達のモニタリング:
特に小児の場合、
治療を受けている間の成長や発達を
注意深く追跡することが求められます。
また、これらホルモンが一時的に不足、過剰。
これらになったときに
急性症状としてどういったものが出るか?
継続的なモニタリングにおいては
それについて整理することも
常時、適量のホルモン量を実現するうえで重要です。
1. 成長ホルモン(GH)
過剰(急性)
高血糖(インスリン抵抗性の一時的な増加)
頭痛(急性の圧効果や代謝異常による)
動悸や高血圧
多汗
精神的不安定(不安感や焦燥感)
足の浮腫
関節痛
過少(急性)
急激な低血糖(特に小児で顕著)
全身のだるさや筋力低下
頭痛や意識混濁(重度の低血糖時)
集中力の低下や気分の落ち込み
2. 性ホルモン(エストロゲン、テストステロン)
過剰(急性)
エストロゲン:
血液凝固亢進(血栓症のリスク増加)
頭痛(片頭痛の悪化や新規発症)
急な乳房痛や乳房の腫れ(女性、男性共に)
感情の波(急激な気分の変化)
テストステロン:
急激な攻撃性やイライラ感
にきびや脂性肌の急速な悪化
血圧上昇や動悸
不眠
過少(急性)
エストロゲン:
急なほてりや発汗(ホットフラッシュ)
頭痛や集中力低下
骨痛(急激なカルシウム代謝変化)
テストステロン:
急激なエネルギー低下や疲労感
気分の落ち込みや集中力低下
筋力低下の自覚
3. 甲状腺ホルモン(T4およびT3)
過剰(急性)
動悸や頻脈
発汗の増加
不安感や神経過敏(振戦を伴うことも)
体温上昇(微熱や発熱)
下痢や胃腸不快感
過少(急性)
急激な倦怠感や脱力感
むくみ(特に顔面)
精神的な鈍麻や反応性の低下
冷えや体温低下(寒気を伴う)
徐脈や低血圧
少なくとも頭痛、集中力の低下なども含めて
ホルモン補充療法を実施している
患者さんの健康状態において
心身の調子に異常がある場合には
ホルモン量に異常があることを疑って、
その時に血液検査などで
その量を適宜、検査するなどは必要かもしれません。
小児期の脳腫瘍、白血病、
その他の固形腫瘍の治療後には、
下垂体機能低下症を合併することが多く、
その中でも
成長ホルモン分泌不全症(GHD)を呈することが多い。
このように評価されています。
白血病よりも脳腫瘍に
成長ホルモン分泌細胞がある
下垂体機能低下症の合併が多いです(24)。
頭蓋照射量と視床下部・下垂体機能異常との関係では
GHRH-GH系が最も放射線量感受性が高いです(24)。
小児期では、7~12 Gy でも
異常を呈する場合があります。
性腺系の障害は、
- 中枢性
- 原発性(末梢性)
これらに分類されます。
脳腫瘍では視床下部・下垂体腫瘍の多くに
中枢性の異常、すなわち
ゴナドトロピン分泌異常が認められます。
ゴナドトロピン系の分泌障害は、
- 分泌不全(不足)
- 分泌亢進(過剰)
これら両方が生じる可能性があります。
視床下部・下垂体に対する放射線照射は、
線量が 18 Gy 以上で
視床下部を活性化して思春期早発症、
約 30 Gy 以上になると
ゴナドトロピン分泌不全による性腺機能低下症。
これをきたす危険性が上昇します。
思春期早発症をきたす頻度は
女児の方が男児より高いです。
固形腫瘍や血液腫瘍の場合は、
その発生部位と治療により
原発性性腺機能低下を引き起こす可能性があります。
原発性性腺機能低下は、
男児、若年齢の方が危険が高いです。
原発性性腺機能低下症とは、
精巣が不活発で十分な量のテストステロンが
生産されない状態です。
放射線治療が全身に行われた場合
(全身照射:Total Body Irradiation, TBI)
精巣に直接影響を与えることがあります。
精巣は前思春期・思春期ともに
放射線照射とアルキル化剤により障害を受けます。
アルキル化剤はDNAの複製を障害します。
Leydig 細胞によるテストステロン産生能は
比較的維持されやすいですが、
Sertoli細胞と胚細胞はより障害を受けやすく、
性ホルモンによる二次性徴
- 体毛の増加
- 声変わり
- 乳房の発達
これらなどが発現して
必ずしも生殖能力獲得を伴いません。
精巣の直接照射では、20Gyを超えなければ
テストステロン産生能は障害されにくい。
このように説明されています(24)。
小児期の白血病・脳腫瘍・他の固形腫瘍の治療後には、
各種甲状腺異常の発症にも 注意が必要です。
小児脳腫瘍の放射線治療として
頭蓋への照射量 40 Gy 以上になると
中枢性甲状腺機能低下症を呈する
危険性が増加します。
他方で
原発性甲状腺機能低下症においては
頭蓋、頸部局所、および
全身への照射で危険があり、
照射量 10 Gy 以上で危険、
20 Gy 以上で極めて危険とされます(24)。
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