2024年11月25日月曜日

小児脳腫瘍治療の観点を含めた腫瘍崩壊症候群(Tumor lysis syndrome)

小児脳腫瘍をはじめ、
体の中にできた癌細胞が組織化し、
特に大きな腫瘍を形成した場合、
あるいは散在していても絶対的な癌細胞が多い場合、
外科などによって物理的に細胞を摘出する場合を除いて、
化学療法、放射線療法、
あるいは将来的に集束超音波による焼灼によって
癌細胞(腫瘍組織)を壊死させたとき、
大量の癌細胞内の物質が循環器に流れ出ることになります。

癌細胞内には通常と異なる物質成分がありますし、
通常ある物質であっても量が異なります。
それらが壊死によって一気に循環器に流れ出ますから、
少なくとも一時的に
体の中の特に循環器の物質のバランスが崩れる可能性があります(1)。

このようなことで引き起こされる症状を
腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)といいます。
具体的には以下の物質の上昇で
それぞれ体に悪影響を与えます。

- カリウム(Potassium)
血中カリウム濃度の上昇(高カリウム血症)により、
心電図異常、不整脈、最悪の場合心停止を引き起こす。
筋肉のけいれんや麻痺を誘発する可能性があります。

- リン酸 (Phosphate)
高リン血症によりカルシウムと結合して
低カルシウム血症を引き起こし、
筋肉けいれんや神経障害を誘発します。
カルシウムリン酸塩の沈着により、
腎不全のリスクを増加します。
カルシウム濃度が低下すると心臓にも影響を及ぼします。
左心室の収縮機能が低下する(1)ことで
血液の拍出能力が低下する
あるいは不整脈につながる(1)可能性があります。
上述した神経障害の中にはてんかん(seizures)が
主に含まれます(1)。 
また、カルシウムは神経伝達を制御する
主要な因子の一つなので、
神経系の神経伝達に異常が出る可能性もあります。

高リン血症(Hyperphosphatemia)は
化学療法から24-48時間以内に生じ
以下の症状を呈することがあります。
- mental symptom: 精神症状
- Weakness: 筋力低下
- Cramps: 筋痙攣(けいれん)
- Hyperreflexia: 反射亢進
- Tetany: テタニー(筋けい縮)
- Renal failure: 腎不全
これらです(3)。


- 核酸由来物質 (尿酸: Uric acid)
高尿酸血症により腎臓で尿酸結晶が形成され、
急性腎不全を引き起こす可能性があります。
尿路閉塞のリスクがあります。
キサンチン蓄積も腎機能や
尿路を塞ぎ、激しい痛みや血尿を引き起こす可能性があります。

高尿酸血症(Hyperuricemia)は
化学療法から48-72時間後に生じます(3)。
高リン酸血症よりも1日程度遅れる理由は
核酸のプリン体から尿酸への肝臓での代謝過程がある
からであると考えられます。
従って、高尿酸血症は前駆状態で
高リン酸血症よりも介入の猶予があると考えることができます。

高尿酸血症によって生じることのある臨床症状は以下です(3)。
- Nausea: 吐き気
- Vomiting: 嘔吐
- Lethargy: 倦怠感(けんたいかん)
- Oliguria: 乏尿(ぼうにょう)
- Anuria: 無尿(むにょう)
- Anorexia: 食欲不振
- Hematuria: 血尿(けつにょう)

pHが5.0になるとになると、7.0に比べて
尿中の尿酸の溶解度が13倍低下するため(3:Table 2)、
結晶として析出しやすくなります。

尿酸は結晶とは関係のないメカニズムによって
も急性腎障害を引き起こす可能性があります。
これには、
- 腎血管収縮
- 自動調節の障害
- 腎血流の減少、酸化、および炎症
これらが含まれます(11)。


- 乳酸 (Lactic acid)
乳酸性アシドーシス(血液が酸性に傾く)のリスクがあります。
酸塩基平衡が崩れ、呼吸困難や臓器不全の原因となります。

- 細胞内酵素
ロクターゼ、プロテアーゼなどが
局所的な炎症や組織損傷を悪化させる可能性があります。

- サイトカイン (Cytokines)(11)
壊死した腫瘍細胞や周囲の癌微小環境
腫瘍組織中に浸潤した免疫細胞が放出します。
サイトカインストームを引き起こし、
全身性炎症反応症候群(SIRS)やショックを誘発する可能性があります。
特にインターロイキン-6(IL-6)や腫瘍壊死因子(TNF-α)。
これらが問題となります。

- 細胞膜由来の脂質 (Phospholipids, Lipid mediators)
壊れた腫瘍細胞膜由来の物質です。
血液中の脂質濃度上昇(脂質異常症)し、
炎症や血栓形成を助長する可能性があります。

- DNA/RNA フラグメント
血液中の遊離核酸として免疫系を活性化し、
炎症を引き起こす可能性があります。
自己免疫反応を誘発する可能性。

- 腫瘍特異的抗原
壊れた細胞から放出されるタンパク質があります。
免疫反応を引き起こし、
場合によっては自己免疫疾患のリスクを増加します。

さらにこれら物質を一部含む
癌細胞崩壊時に大量に放出される、
アポトーシス小体を含む細胞外小胞があります。
これらの一部は、マクロファージによって消化されますが、
この量があまりにも多いと
免疫的な活性を含め、
あるいは通常細胞への物質の取り込みを含む
体に悪影響を与える可能性があります。
例えば
細胞外小胞内の癌細胞由来のmicroRNA(miRNA)や転写因子が
正常細胞の遺伝子発現を調節し、
2次的な癌の進行や炎症性疾患を助長する可能性があります。


こうした物質の放出によって
体の中の
- イオンバランス(electrolyte balance)
- 代謝生成物バランス(metabolic balance)
これらが崩れ
- 急性腎傷害
- 不整脈
- (脳卒中やてんかんなどの)発作
- 多臓器不全
これらが生じ、死に至ることがあります。
実際に死に至るケースは稀ではありません。
アメリカの調査では腫瘍崩壊症候群に罹患した
患者さんの21%が命を落としたという報告があります(1)。
癌別でみると、この死亡率は過少評価されているかもしれません。
- 血液系悪性腫瘍(28 -59%)
- 膵臓癌および胆道癌(100%)
- 消化管間質腫瘍(67%)
- 肝細胞癌(58%)
- 大腸癌(54%)
- 胃癌(50%)
このような統計結果があります(1)。
従って、もし、私が小児脳腫瘍の内科的治療の効果を上げたら
この腫瘍崩壊症候群で子供の命を失うことになるかもしれません。
今までの外科的な摘出。
これも含めて、最適解を見つける必要があります。


当然、体の割合に対する腫瘍組織の大きさがリスクなりますから
体の小さな子供の特に脳腫瘍において
特に短期的に有効な治療、
すなわち、一気に腫瘍組織を崩壊させるような治療に至った場合、
壊死した大量の物質が循環器に短期的に流れることになるので
こうした体の中の物質バランスが崩れることによって
多様な臓器不全、あるいは後遺症につながる可能性もあります。
一般的には
子どもの場合、
体の表面積に対して 300g/m^2以上の
大きな腫瘍組織が存在する場合には
こうした腫瘍崩壊症候群が生じるリスクが上がるとされています(1)。

こうした過渡的な物質バランスの異常に対する処置としては
- どういった物質の量が異常になっているかの
評価、モニタリング(現状把握)
- 腎灌流を促すための水分補給(hydration):水で薄める
- 腎灌流を促すための利尿
これらによって特に異常値になっている物質の把握、
それに合わせた適切な処置、
また、迅速に物質バランスを回復させるために
体全体の循環、排出、灌流を促すことが挙げられます。
ただし、こうした処置を行っているときには
血圧、脈拍、呼吸、体温などのバイタルサインを
しっかり監視しながら行う必要があります。

例えば、尿酸値が顕著に上昇し、
腎臓、尿路閉塞のリスクが上がっているときには
- キサンチンオキシダーゼ阻害薬(Allopurinol)
- 尿酸オキシダーゼ酵素(Rasburicase)
これらによる医療介入も検討されます(1)。


小児脳腫瘍であれば、
その脳腫瘍が大きければ大きいほど、
子どもの脳組織が小さければ小さいほど、
その脳腫瘍を
内科的治療、放射線治療、焼灼(アブレーション)。
これらなどによって壊死させたときには、
それぞれの癌細胞や炎症性免疫細胞、
あるいは組織間質にある細胞外マトリックス
腫瘍によって形成された血管組織。
これらの細胞内、細胞外にある物質(その断片)が
その崩壊した組織から放出されます。

そうした物質の影響は
近くの脳組織により強く影響を与えることになります。

イオンバランスの変化によって
浸透圧が変化し、浮腫が生じる可能性もあります。
こうした浮腫は
当然、脳腫瘍の場合は脳神経系で生じやすくなります。
あるいは神経毒性や
免疫系を惹起させる炎症反応なども
脳組織で生じやすくなります。

従って、こうした影響を小さくするには
腫瘍組織崩壊によって放出される大量の物質を
速やかに全身の循環器で灌流を促し
薄める必要があります。
また、利尿を促し、物質を交換させる必要があります。
あるいは
腫瘍組織崩壊時に生じる物質の放出を
ゆっくりにさせることはできないか考える必要があります。

<循環器の灌流促進と物質の希釈>
- 十分な水分補給 (Hydration)(2)
静脈内輸液(IV輸液)を使用して、血流量を増やし腎灌流を促進。
患者に対して維持液量の2〜3倍を、
5%デキストロースを含む
0.2%塩化ナトリウム溶液として静脈注射で投与します(3)。

化学療法の2日前から始め、
治療が終了する2-3日まで続けます(3)。

- 利尿薬の使用(3)
ループ利尿薬(例:フロセミド)を投与し、尿量を増加させる。
これにより、腎臓を通じた物質の排泄を促進します。

<腫瘍組織崩壊時の物質放出を緩やかにする方法>
これに関しては現在確立されていません。
化学療法や放射線療法を低用量・段階的に実施し、
腫瘍の壊死を徐々に進行させるということがありますが、
進行性の強い小児脳腫瘍の治療においては
このような時間的猶予は存在しないので、
それとは別の効果的な方法が挙げられます。
例えば、
癌細胞が細胞死したときに
一部の物質は細胞膜に覆われて放出されます。
その細胞外小胞の寿命を人為的に長くできれば、
例えば、脂質2重膜の構造安定性を上げるような物質があれば、
物質の一部は細胞外小胞に覆われるので
その放出が緩やかになる可能性があります。
ただし、細胞外小胞は通常細胞同士の物質交換にも関わる
普遍的な細胞間コミュニケーション機能であるため
それに介入することのリスクは同時に存在します。

<放出された物質の中和・代謝促進>
- 血液透析(Hemodialysis)(4)
腎不全や重度の電解質異常が発生した場合、迅速に血液を浄化します。
高カリウム血症や尿毒症の予防・治療として利用されます。

- 代謝補助薬の使用は(推奨されない)
炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)により
代謝性アシドーシスを予防し、腎臓での尿酸やリン酸の排泄を促進します。

腫瘍崩壊症候群(TLS)の予防と管理の一環として、
尿をアルカリ化するために
重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)を使用することが
伝統的に推奨されてきました。
しかし、アルカリ性尿は尿酸の排泄を促進する一方で、
キサンチンやヒポキサンチンの溶解度を
大幅に向上させるわけではありません。

具体的には、キサンチンの溶解度は
pH 5.0では5 mg/dL、
pH 7.0でも13 mg/dLと低く、
これらの代謝物が増加する状況、
例えばアロプリノール治療後などでは、
キサンチン結晶が腎尿細管内に沈着し、
キサンチン閉塞性尿路症(xanthine obstructive uropathies)
これを引き起こす可能性があります。

さらに、尿のアルカリ化に関連する潜在的な合併症として、
以下の点が挙げられます:
- 代謝性アルカローシス(体内が過度にアルカリ性になる状態)
- リン酸カルシウムの沈着
(これにより腎結石や他の障害を引き起こす可能性がある)
これらのリスクと、尿アルカリ化の有効性に関する
明確なエビデンスが不足していることを考慮すると、
腫瘍崩壊症候群の予防と治療の目的で
重炭酸ナトリウムを使用することは現在推奨されていません(2)。

すなわち
尿のアルカリ化は
キサンチン蓄積を解消する効果が
限定的であるにもかかわらず、リスクが大きいということです。

高リン酸血症は高尿酸血症よりも
正常値に戻すことが難しいため(11)、
アルカリ化するとリン酸カルシウムの
尿中の溶解度が下がるため(3:Table 2)
リン酸カルシウムが蓄積されやすくなります。
従って、尿酸を分解できるrasburicaseが利用できる時には
特に、尿のアルカリ化は避けるべきです(11)。

<炎症反応の制御>
- ステロイド療法は(推奨されない)
デキサメタゾンを使用して炎症を抑え、腫脹や浮腫を軽減を試みます。
デキサメタゾンなどのステロイドは
逆に腫瘍崩壊症候群を誘導するかもしれません(5)

こういった想定される医療介入は
当然、患者さんの体示す数値をみながら行うことが求められます。
また、上記は生成系AIが示した医療介入ですが
推奨されない介入も含まれていたので注意が必要です。

こうした循環器が示す数値を体全体で平均化することなく
小児脳腫瘍であれば、脳の循環器系の局所的な
数値を計測することも重要になります。
体全体の分布がマッピングできればより理想的です。


以下は、Howard–Puiによる
実験室および臨床的腫瘍崩壊症候群(TLS)の定義です。
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<実験室での腫瘍崩壊症候群(Laboratory TLS)の基準>
※患者さんの血液検査に基づき腫瘍崩壊症候群の兆候と
判断される基準

- 尿酸: 8.0 mg/dL(475.8 μmol/L)以上(成人の場合)、
または年齢に応じた正常範囲の上限を超える、
または基準値から25%以上増加

- カリウム: 6.0 mmol/L以上、または基準値から25%以上増加

- リン酸: 成人で4.5 mg/dL以上、または子供で6.5 mg/dL以上、
または基準値から25%以上増加

- カルシウム: 7.0 mg/dL未満(1.75 mmol/L)、
またはイオン化カルシウムが4.5 mg/dL未満(1.12 mmol/L)、
または基準値から25%以上減少
----------
<臨床的腫瘍崩壊症候群(Clinical TLS)の基準>
実験室での腫瘍崩壊症候群の基準を満たし、
かつ以下のいずれかを伴う場合:

- 腎機能障害: クレアチニン値が正常値の1.5倍を超える、
または基準値から0.3 mg/dL以上上昇

- 心疾患: 高カリウム血症や低カルシウム血症による症状
(不整脈または突然死)

- 神経学的症状: 低カルシウム血症による症状
(けいれん、手足の痙攣)

この定義に基づき、腫瘍崩壊症候群は、
実験室での異常所見に加えて
臨床的な症状が現れる場合に診断されます。
----------


もし、私が将来的に目指す小児脳腫瘍に対する治療が
世界の5年生存率が100%となるような
圧倒的な奏功を実現するということの
その裏にはそれだけ多くの腫瘍組織を
お子さんの体内で選択的に細胞死させることを示します。
特に
- MRIガイド経頭蓋集束超音波
- 細胞腫特異的薬物送達システム
これらによって外科的な負担を減らし
非侵襲で腫瘍組織を内科的貢献を上げて消滅させ、
治療が奏功した場合には
この腫瘍崩壊症候群(Tumor lysis syndrome)のリスクが上がります。
多分、それは間違いなく生じます。

そうではなくても、実際に、
ここ3年程度の調査では、癌治療の改善が見られた結果を
おそらく反映して、
腫瘍崩壊症候群(TLS)の発症率は16%から23%に上昇しています(1)。

エビデンスは不足していますが、
歴史的にほとんど小児白血病を含めて血液系の癌における
腫瘍崩壊症候群のリスクはほとんどありませんでしたが(1)、
近年の治療でそのリスクが上がってきています。
ただ、血液性の癌は
腫瘍組織をあまり形成せず、全身の循環器に分布し、
腫瘍組織のように癌細胞、免疫細胞
細胞外マトリックス、血管など
癌微小環境のマテリアルを同時に多く含まないので
近年、効果的な標的治療によって
腫瘍崩壊症候群のリスクは上がっているとはいえ
小児脳腫瘍に比べては、そのリスクは小さいかもしれません。
例えば、
- 白血病(5.1%)(6)
- 肝細胞がん(17%)(1)
- 肺がん(13%)(1)
- メラノーマ(10%)(1)
これらのデータが示されています。
実は、脳腫瘍は腫瘍崩壊症候群のリスクは非常に低いといわれています。
これはなぜでしょうか?
おそらく、その理由は、脳腫瘍治療の多くは
外科的な摘出に治療の多くを依存しているからであると考えられます。
そこまで、掘り下げた記述は存在しません。
従って、
もし、将来的に脳腫瘍の内科的治療、焼灼の比重が
最先端の治療によって上がってきた場合、
これまで示されてきた疫学的結果は変わる可能性があります。
ただ、小児白血病で
Burkitt leukaemia (26.4%)(1)
と腫瘍崩壊症候群が多い理由は、
外科的治療に依存せず、全て内科的な治療で
より効果的に、短期的に多くの癌細胞を消滅させているから。
ということが考えられます。
従って、
原理的には固形がんを内科的に消滅させたほうが
癌微小環境の物質もあるわけですから
腫瘍崩壊症候群が生じやすいと考えられますが、
現在の疫学結果でそれに矛盾があるのは、
癌の種類によって外科的腫瘍組織摘出と内科的治療の比重が異なり、
それが腫瘍崩壊症候群のリスクに密接に関わる因子だからです。
それはたぶん、間違いないと思われます。

体の中の特に循環器の物質を調整するのは
物質をろ過して、選択的に排出する機能がある腎臓です。
従って、小児脳腫瘍、小児白血病に罹患している患者さんにおいて
腎機能に異常がある場合には、
より、腫瘍崩壊症候群(TLS)に対する配慮が必要です。
実際に
腎機能に異常がある高齢者(患者さん)のほうが
腫瘍崩壊症候群(TLS)への感受性が高いことが示されています(1)。

腫瘍崩壊症候群で一番配慮が必要な物質は尿酸です。
なぜなら、腫瘍が崩壊する前後で
一番、血中濃度の変化が一般的に多い物質だからです(1:Fig.1b)。
では、なぜ、尿酸があがりやすいのか?
それについては不明ですが、
一つの理由は、尿酸の元となる
プリン体(特にアデニンやグアニン)はDNAの成分で
このDNAは通常は細胞核に収納されていますから
その多くが循環器に出ることはありません。
しかし、癌細胞が消滅すると
細胞核にある、あるいは細胞外にある(7)、
染色体内のDNAが一気に循環器に放出されるため
プリン体濃度が上がり、それによって尿酸が上がると考えられます。

従って、内科的治療に強く依存する白血病や
将来的に脳腫瘍を含めて焼灼や内科的治療への依存を
高めていくことを考える場合には
特に治療後の尿酸の適正管理が求められます。
尿酸オキシダーゼ酵素(Rasburicase)
これの使用の検討、
この薬剤へのアクセス性が重要になります。
1回の治療に日本円で10万円程度必要かもしれません。
基本的に高価であることが指摘されています(1)。
投与量は患者さんの癌腫、癌の大きさ
内科的治療の依存度、実際の尿酸値などを含めて
よく検討する必要があります(1,8,9)。

基本的に尿酸が高まると尿酸が結晶化し
それが関節部に蓄積すれば、痛風となりますが、
もっと深刻なのは
腎臓のろ過部に沈着することです。
これで腎臓のろ過機能(GFR)が急激に低下し
急性腎傷害のリスクが高まる可能性があります。
ろ過部に循環器の物質が集まることと、
尿酸が過飽和になって結晶化することで
ろ過部細孔(4~8nm)より
尿酸結晶ドメイン(1~10μm)が大きいため
腎臓はろ過できず、メッシュ部に尿酸結晶が堆積し、
プロテオグリカンなどによって固定もされることで
そこにある程度、長寿命で堆積して
腎臓のろ過機能を低下させる可能性があります。
ただし、腎臓の糸球体のろ過部で
尿酸の結晶化が起こる可能性は低いとされています(Open AI)。
尿酸の結晶化が生じるのは
遠位尿細管と尿細管です(10)。
尿細管で尿酸の結晶化が起こりやすい理由は以下です。

- 尿酸の溶解度が低い
尿のpHが5.5以下になると尿酸の溶解度が大幅に低下し、
尿酸の結晶(尿酸塩)が形成されやすくなります。

- 尿管内での尿滞留
尿管の狭い構造や一時的な尿流の遅延が起こると、
尿が局所的に滞留する可能性があります。

- 尿酸の結晶化が促進される温度条件
尿管内の温度は体温に近いですが、
尿が腎臓から尿管に流れる際に
わずかな冷却が生じることがあります。

- 尿の濃縮
尿管を通る尿は、腎臓で濃縮された後の状態にあるため、
尿中の尿酸濃度が高いことがあります。

- 尿管の流速の変化
尿管では尿が蠕動(ぜんどう)運動によって排出されますが、
流速が一時的に遅くなる箇所があります。

- 尿管壁との相互作用
尿管の内壁には微小な凹凸があり、
これが結晶化の核となる場合があります。

- 尿酸の過剰産生や排泄障害
高尿酸血症(プリン体代謝異常など)がある場合、
尿中に過剰な尿酸が排泄されます。

基本的に血液で上述したようなことが生じると
血栓ができるなど、命にかかわりますが、
尿の場合は、乱流への生命活動への感受性が
血液よりも低いため、
逆に尿酸などの物質が結晶化して詰まりやすい
ということが挙げられるかもしれません。


例えば、プリン体の元となるアデニンやグアニンなどの
DNAの成分を肝臓の細胞で尿酸生成できなくなるように
癌治療を講じたときに未然に分解して防ぐアプローチがありますが、
これは、DNAそのものを破壊するアプローチであり
こうした医療介入は非常に危険を伴います。
従って、生成された尿酸が過飽和し結晶化する前に
分解する尿酸オキシダーゼ酵素(Rasburicase)が有力です。

私の専門は結晶成長ですから、その観点で申し上げると
基本的に物質が気相、液相から結晶成長するためには
多くの場合、過飽和状態を作る必要があります。
例えば、
窒化ガリウム(GaN)の結晶成長では
窒化ガリウムは尿酸結晶と同じように六方晶が安定ですが、
その六方晶の結晶に格子整合する基板であるほうが
局所的な過飽和が実現しやすく
核形成、結晶成長しやすいです。
こうした条件がより尿管で生じやすいということです。

結晶成長の観点から言うと
結晶化した尿酸を表面から分解していくよりも
尿酸結晶とその基板の界面が
結合力としては一番弱く、不安定であると考えられるので
尿酸結晶そのものを分解することを考えるよりも
むしろ「尿酸結晶を剥がす」という観点のほうが合理的かもしれません。
その場合、少なくとも
尿酸結晶とその基部の界面の結合状態、物質を
より詳しく調べる必要性があります。
尿酸結晶を効率的にはがすことができれば、
それが尿として体外に放出されるため
尿酸結晶起因の腎機能低下を防ぐことができるかもしれません。


こうした結晶化は
- リン酸カルシウム
- キサンチン
これらでも起こり、腎臓に蓄積する可能性があります(1:Fig.2)。
基本的に結晶化する前に制御するという
従来の考え方が基本ですが、
結晶化してしまった後も、
どのような基部との界面、結合状態をもって
ろ過部で安定化、固定化されているか?
それを明らかにします。
そうすることで
- 核形成、(局所的)過飽和(吸着)を防ぐ
- 結晶化後、界面状態を不安定化、解消させる
これらのアプローチにつながる可能性があります。
これは超音波による物理的刺激によっても
結晶化した物質が壊れるよりも
界面が不安定化し、剥がれるという可能性もあります。

治療において、最も重要なことは
体が本来持つ機能を維持することです。
体の中の物質的なバランスを整える最も基本的な臓器は腎臓なので
腎臓の機能をどうやって健全に保つかを考える必要があります。
また、一方で
物質の変化が少ないほうが当然いいわけですから、
その絶対的な変化量を小さくすることと
同じ変化量であれば、
その変化の時間を長くすることが求められます。
他の観点では
同じ時間変化量であれば、
その物質変化の領域を広げたいということがあります。
すなわち、全身に分散させる、局在化させないということです。
これらがベースであって
それでも異常があれば、これらを実現するために
それぞれのイオンを含めた物質濃度を調整する薬剤を使うということです。

腫瘍崩壊症候群、
それが顕性ではなくても、
体内の腫瘍組織を消滅させ、
それが体の中に循環するということは
DNAなど通常多くは循環器に存在しない物質を放出させ、
主にキサンチン、尿酸の
主に尿管による結晶化によって
腎機能が過渡的に低下します(1:Fig.4)。
ただし、腫瘍崩壊症候群による腎機能低下が
結晶化によるものであれば、
その結晶化を尿路の流れをスムーズにすることで
あるいは機械的、化学的刺激、pHの調整などによって
結晶化物質の固着を解消し、排出すれば、
腎機能は回復する可能性があります。

元々、尿細管で結晶化するというのは
尿酸など結晶化する物質が
局所的な過飽和になることが一つの大きな原因であり
それが固定されることなので、
基板との結合条件と過飽和の原因。
これらをつかむことが重要になります。
このモデルにおいて
(特に溶液からの)結晶成長の専門家が
貢献できる部分はあると思われます。

尿酸はリン酸カルシウムと共存する形では
尿中の結晶化が促進される可能性があります(11)。
その理由は
尿酸はリン酸カルシウムと反応し
尿酸カルシウムとなります。
この尿酸カルシウムの尿中の溶解度は
pH5.5では10倍低いです(1mg/100mL → 0.1mg/100mL)。
従って、10倍結晶として析出しやすくなるため
尿管が詰まりやすく、腎障害を起こしやすくなります。

結晶化した尿酸、リン酸などを含めて
尿として排出することができれば
腫瘍崩壊症候群のリスクを減らすことができます(11:Figure 1)。

尿管結石も尿管が結晶化して詰まる疾患ですが、
これに超音波刺激による機械的ストレスによって
半分の患者さんに対して
完全な尿管結石の排出が可能になっています(12)。
これはカナダからの2024年の報告なので非常に新しいですが
この超音波技術は
尿管内の結晶化防止にも利用できる可能性があり
特に内科的治療、焼灼によって
癌細胞の多くを短期間に細胞死させた場合、
腫瘍崩壊症候群に発展させない予防的処置として
将来的に標準治療の一つとなるかもしれません。
超音波は比較的安全なので
子どもにも利用できる可能性があります。
ただし、尿路を超音波で刺激することによって
腫瘍崩壊症候群の原因となる
尿酸、リン酸カルシウムなどの結晶沈着を崩壊できるかは
まだ、臨床的証拠がないため、検証が必要ですが、
検証する価値があると思われます。
また、超音波は温度を上げることができるので
温度を上げると原理的に物質の溶解度が上がるので
それによっても結晶化を防ぐことができます。

すでに集束超音波による焼灼によるがん治療が
腫瘍崩壊症候群のリスクを上げるという報告が
限られたものですがありますから(13)、
細胞腫特異的薬物送達システムや
MRIガイド経頭蓋集束超音波による腫瘍組織焼灼は
外科的摘出の負担を減らすものの
体内で細胞死した大量の細胞の物質を
効率的に尿として排出させる必要があるので
この治療とセットで
尿管を超音波で温めて、機械的なストレスを与えながら
尿管での結晶化を温度と力で相乗的に防いで
腫瘍崩壊症候群への発展のリスクを防ぐ必要があります。
利尿剤、水分補給とともに
この超音波による尿管の刺激は
上述した私が開発する技術とセットになるかもしれません。


(参考文献)
(1)
Scott C. Howard, Anna Avagyan, Biruh Workeneh & Ching-Hon Pui
Tumour lysis syndrome
Nature Reviews Disease Primers volume 10, Article number: 58 (2024)
(2)
Jessica Hochberg Mitchell S. Cairo
Tumor lysis syndrome: current perspective
Haematologica Vol. 93 No. 1 (2008): January, 200
(3)
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