<要約、序論>(1)
中枢神経系の胚細胞腫腫瘍は
原発性小児脳腫瘍の約3%を占めます。
その病理は異種性を持ちます。
典型的には松果体や鞍上部に生じやすいです。
臨床症状は腫瘍が生じた
場所、腫瘍の大きさによって異なります。
第三脳室に近い松果体に生じやすいので
その場合は特に、
内分泌的異常、視覚異常、頭蓋内圧の上昇などを示します。
頭蓋内圧上昇の主な原因は水頭症であると考えられます。
腫瘍マーカーとして
アルファフェトプロテイン(AFP)や
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)が
血清や脳脊髄液で特徴的に上昇することが示されます。
胚細胞腫腫瘍には
Germinomas(胚種)とNGGCTs(非胚種性胚細胞腫瘍)があります。
Germinomas(胚種):
起源:
胚細胞が未分化のまま腫瘍化したもの。
病理学的特徴:
均一で未分化な胚細胞で構成され、単一の組織タイプ。
顕微鏡下では、腫瘍細胞は大きく、
核が目立ち、周囲にリンパ球浸潤が見られる。
性質:
良性に近い性質で、治療反応が良好。
5年生存率は90%以上です。
NGGCTs(非胚種性胚細胞腫瘍):
起源:
胚細胞が異なる方向に分化したもの。
病理学的特徴:
複数の組織タイプが存在し、多様な分化形態を持つ。
例: 卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、胚細胞癌、奇形腫(成熟型/未熟型)。
性質:
より悪性度が高く、治療が難しい場合が多い。
放射線療法が治療の選択肢です。
化学療法は放射線療法による治療負荷を減らすことができます。
非胚種性胚細胞腫瘍は
胚種に比べて放射線感受性が低いです。
小児胚細胞腫腫瘍(Pediatric germ cell tumors)の
標準的な医療的管理、維持は議論の余地があります。
無進行生存、全生存の向上のための
治療法の確立が日夜進められています。
上述したように非胚種性胚細胞腫瘍には
以下、複数の腫瘍タイプが存在します。
絨毛癌 (Choriocarcinoma)
概要:
絨毛癌は胎盤の栄養膜細胞(合胞体栄養膜細胞や細胞栄養膜細胞)が腫瘍化したもの。
非常に悪性度が高く、転移しやすい性質を持つ。
腫瘍マーカー:
β-hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が顕著に上昇。
このマーカーは診断や治療効果のモニタリングに重要。
発生部位:
中枢神経系では主に松果体や鞍上部で発生。
他の部位(性腺、異所性)にも見られることがある。
臨床的特徴:
高い転移能を持ち、肺や肝臓などの遠隔転移が早期に起こりやすい。
卵黄嚢腫瘍 (Endodermal Sinus Tumor / Yolk Sac Tumor)
概要:
卵黄嚢腫瘍は、胚発生過程での
卵黄嚢(胎児の栄養供給に関与する構造)由来の腫瘍。
小児に多く見られるが、成人にも発生する。
腫瘍マーカー:
AFP(アルファフェトプロテイン)が著しく上昇。
AFPは診断や治療経過の追跡に非常に有用。
発生部位:
中枢神経系のほか、性腺や体内の他の部位でも発生。
臨床的特徴:
高い増殖能力を持ち、治療が遅れると悪性度が増す。
早期診断と治療が鍵。
胚細胞癌 (Embryonal Carcinoma)
概要:
胚細胞癌は、未分化で非常に悪性度の高い胚細胞腫瘍。
他の胚細胞腫瘍への分化が可能な性質を持つため、
混合型腫瘍の一部を構成することが多い。
腫瘍マーカー:
AFPやβ-hCGが上昇する場合があるが、
他の腫瘍マーカーも検出されることがある。
発生部位:
性腺(精巣や卵巣)や中枢神経系に発生。
臨床的特徴:
悪性度が高く、早期に転移する可能性がある。
化学療法や手術が治療の中心。
混合型腫瘍 (Mixed Germ Cell Tumors)
概要:
混合型腫瘍は、
上記の腫瘍タイプ(絨毛癌、卵黄嚢腫瘍、胚細胞癌、奇形腫など)が
複合的に存在する腫瘍。
それぞれの成分が混在するため、治療計画や予後予測が複雑になる。
腫瘍マーカー:
成分によってAFPやβ-hCGなど、
複数のマーカーが上昇することがある。
発生部位:
中枢神経系や性腺が一般的だが、
異所性腫瘍としても発生する。
臨床的特徴:
悪性度や治療方針は含まれる腫瘍成分によって異なる。
詳細な病理診断が必要。
<疫学>(1)
中枢神経系の胚細胞腫腫瘍
地域的に発症率が異なります。
西洋の国では全ての小児中枢系腫瘍の0.4-3.4%。
これであるのに対し、
日本や他のアジアの国では
全ての小児脳腫瘍の11%を占めます。
若い人に好発し、
中枢神経系の胚細胞腫腫瘍の約90%のケースは
20歳よりも若い子供です。
最も高い発症年齢は10-12歳です。
悪性度が高い非胚種性胚細胞腫瘍が
より好発発症年齢が低い傾向にあります。
男性では70%が松果体領域に生じ
女性では75%が鞍上部に生じます。
男性が発症率が高く
3:1の割合で非胚種性胚細胞腫瘍
1.8:1の割合で胚腫。
これらとなります。
なぜ、男性に好発するのか?
それはX染色体が神経発達と関連があるからかもしれません(2)。
神経発達に関わるX染色体上の遺伝子は
MECP2、FMR1、OPHN1です。
ただし、これらの遺伝子が
松果体胚細胞腫瘍のリスク遺伝子である証拠はありません。
これらの遺伝子は
自閉症、レット症候群、知的障害と関連があります(3)。
これらの神経発達疾患は男性に好発します(3;1)(4)。
女性の場合はX染色体が2つあるので
一方のX染色体に神経変性に関わる変異があったとしても
もう一方で、補うことが原理的に可能です。
従って、
自閉症などと同じように
胚細胞において男性で腫瘍形成しやすいのは
X染色体に胚細胞の腫瘍化に関わるリスク遺伝子がある。
この可能性を疑う余地があります。
そのほかにも
色覚異常(色盲)や血友病などのX連鎖劣性疾患は、
女性では発症しにくいとされています。
また、胚細胞は性を決定する性腺の生殖細胞の前駆細胞なので
胚細胞腫瘍が性に関わる性染色体に
重要なリスク遺伝子を持つことは不思議ではありません。
特に精巣や卵巣である性腺は
人の発達の初期に形成されます。
性腺の発達は胚発生の初期段階で始まり、
性別が決定されるとともに、
胚細胞を供給する重要な機能を持つようになります。
これは環境因子など後天的な遺伝子変異が
代々、子孫に付加的に引き継がれにくいことを示します。
なぜなら、環境因子などの影響を(特に時間的に)受けにくい
受精してから極めて早い段階で
子孫の生殖細胞系列の遺伝子に影響を与える
精子、卵子の供給母体である性腺が完成するからです。
また、X染色体は免疫機能に関わる遺伝子があります。
新型コロナウィルスでも女性が重症化しにくこと、
新型コロナウィルスワクチンの副反応が出やすいです。
このように
免疫機能が女性の場合、強く、高まりやすい一つの素因は
X染色体の免疫に関連する遺伝子的形質が挙げられます(5)。
基本的に性染色体遺伝子の不安定性は男性が高く、
X染色体遺伝子に関わる疾患は男性に好発しやすいと考えられます。
では、胚細胞腫瘍になぜ日本人が
最大で西洋の10-20倍程度も罹患しやすいか?
これについてはよくわかりません。
例えば、胚細胞腫瘍がX染色体にリスク遺伝子を持ち、
それが一つの素因で男性に好発すると仮に定めると、
他のX染色体に関わる自閉症などの疾患が
日本人において同様罹患しやすいか?
それについて検証しました。
日本は自閉症は3%で(6)、
ヨーロッパは0.8-1.4%です(7)。
診断基準とかもあるのではっきりわからないですが、
X染色体に関わる子供のころの疾患は
日本、アジア人が(やや)発症率が高い。
このような可能性も現時点では否定できません。
胚細胞腫において女性が鞍上部に好発するのは
鞍上部が視床下部の一部で
視床下部が女性ホルモンに影響を受けやすいからかもしれません(8)。
ただし、上述したことも含めて
これも推測の域を現時点では出ません。
<病因論>(1)
Teilumの「胚細胞説」では、
外胚性胚細胞腫(GCT)は、
胚発生中に異常に移動した原始胚細胞から発生し、
その後悪性変化を起こすと提唱されています。
この理論によれば、
これらの腫瘍は、
正常な性腺に発生する胚細胞と同じ起源を持ち、
胚発生過程での異常な移動が原因で
体の他の部位に現れるとされています。
異常な移動はその環境での遺伝子成長や細胞の成長に
影響を与え、腫瘍形成に関与するかもしれません。
こうした移動の異常を示す因子は
細胞の量とタイミングがあります。
人の体は発達の順序があるので、
(多能性)胚細胞の移動、配置に異常が出ると、
組織学的な異常が生じ、
その細胞生物学的背景には
遺伝子の発現異常がおそらく存在します。
それが奇形、腫瘍形成にリンクする可能性があります。
<分子生物学>(1)
従来の細胞遺伝学的分析から得られたデータでは、
胚細胞腫瘍(GCT)の分子および
細胞遺伝学的変化の意味について
決定的な結論は出されていません。
ほとんどのデータは
外科的胚細胞腫瘍(特に精巣のもの)。
これから推測されていますが、
GCTが異なる発生段階の胚性要素から
発生する可能性があることを示唆しています。
これはすなわち
胚細胞が不適切な場所に留まり、腫瘍を形成する可能性があるため、
GCTは発生の異なる段階で
異なる胚性細胞から発生することがあるという
上述した病因論の「胚細胞説」を支持するものです。
4歳以下の低年齢の子供において、
中枢神経系(CNS)の胚細胞腫瘍(GCT)は、
性腺や性腺外の部位から発生する場合、
組織学的、臨床的、遺伝的に
非常に類似しているという点が
分子生物学的特徴として挙げられます。
これは、これらの腫瘍が
発生する起源の場所にかかわらず、
同じ種類の細胞から発生し、
似たような症状や遺伝的な特徴を持つことを示唆しています。
<分類>
Germinoma(胚細胞腫)
最も一般的な胚細胞腫瘍で、悪性度が低く、
放射線治療に対する感受性が高い。
主に中枢神経系や性腺に発生。
Nongerminomatous germ cell tumors (NGGCTs)
(非胚細胞型胚細胞腫瘍)
悪性度が高い多様な腫瘍群。
胚細胞腫瘍の中で化学療法に対する感受性が低い傾向があり、
複数の亜型に分類される。
Embryonal carcinoma(胚性がん)
高い悪性度を持つ腫瘍。
胎児の発生中の胚性細胞から起源し、
迅速に増殖・転移する特性がある。主に20代に発症。
(細胞の特徴)
胚性がんは、大型の細胞で構成されています。
これらの細胞は、通常よりも大きな核を持ち、
核小体(ヌクレオール)が目立つのが特徴です。
また、細胞質は比較的少なく、強い増殖能を示します
(高い分裂能(高い有糸分裂指数))
高い有糸分裂指数(mitotic index)は、
これらの細胞が急速に分裂・増殖していることを意味します。
組織学的には、細胞分裂中の細胞が多く観察されます。
(凝集性の構造)
胚性がんの細胞は、組織内で
「凝集性の巣(cohesive nests)」や
「シート状構造(sheets)」を形成します。
この構造は、密集して増殖する腫瘍細胞が
秩序立った配列を持っていることを示しています。
(凝固壊死(zones of coagulative necrosis))
腫瘍組織の中に「凝固壊死」の領域が見られることが一般的です。
これは、腫瘍細胞が急速に増殖することで
血液供給が追いつかなくなり、
一部の細胞が死滅してしまうためです。
この壊死の領域は、組織学的に凝固したような外観を呈します。
Yolk sac tumor(卵黄嚢腫)
小児によく見られる悪性腫瘍で、
AFP(アルファフェトプロテイン)という腫瘍マーカーの上昇が特徴的。
性腺や腹膜で発生することが多い。
Choriocarcinoma (絨毛癌)
非常に高い悪性度を持ち、
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の高値が特徴。
胎盤の絨毛細胞由来で、転移が早い。
Teratoma(奇形腫)
全胚層(外胚葉、中胚葉、内胚葉)由来の構造を含む腫瘍。
良性および悪性の形態が存在し、
年齢や部位により特性が異なる。
Benign teratomas(良性奇形腫)
主に成熟した組織から成る腫瘍で、悪性転化のリスクが低い。
卵巣や精巣で多く見られる。
Immature teratoma(未熟奇形腫)
未熟な胎児組織を含むため悪性度が高い傾向がある。
成長が速く、化学療法が必要になる場合が多い。
Mature teratoma(成熟奇形腫)
より成熟した組織から成る腫瘍で、
一般的に良性。皮膚や歯、毛髪を含むことが多く、
卵巣奇形腫(皮様嚢腫)が代表的。
Teratoma with malignant transformation
(悪性転化を伴う奇形腫)
奇形腫内の成分が悪性腫瘍(例:がんや肉腫)に進展した状態。
一般的に予後が悪い。
Mixed germ cell tumors(混合型胚細胞腫瘍)
2つ以上の胚細胞腫瘍成分を含む腫瘍で、
治療方針は成分ごとに異なる場合がある。通常、悪性度が高い。
<中枢神経系胚細胞腫瘍の臨床症状>(1)
CNS GCTs(中枢神経系胚細胞腫瘍)の初期症状は
、患者の年齢、腫瘍の位置、および腫瘍の大きさに依存します。
以下に主要な症状を位置別に説明します。
(松果体領域の腫瘍(Pineal region tumors))
頭蓋内圧亢進症状(Increased Intracranial Pressure, ICP)
腫瘍が脳室を圧迫し、水頭症を引き起こすことで、
頭蓋内圧が上昇するのが一般的です。これにより以下の症状が現れます:
頭痛
悪心・嘔吐
意識レベルの低下
※治療としてシャント術や脳室ドレナージ術(ventriculostomy)が
必要になる場合があります。
眼科的異常と傾眠(Ophthalmologic abnormalities and somnolence)
約25%~50%の患者さんで以下の症状が見られます:
視力障害
眼球運動障害
過剰な眠気
運動失調、発作、行動の変化
(Ataxia, seizures, and behavioral changes)
別の25%の患者さんでは以下が見られることがあります:
歩行のふらつき
けいれん発作
性格や行動の変化(例:攻撃性や無気力)
パリノー症候群(Parinaud’s syndrome)
中脳周辺の構造への腫瘍の影響により発症し、以下の特徴があります:
上方注視麻痺(眼球が上を向けない)
対光反射障害(瞳孔が光に反応しない)
松果体胚細胞腫の50%近くで見られる典型的な症候です。
(内分泌異常(Endocrinopathies))
ホルモン異常と性的発達の障害
松果体単独の腫瘍では
内分泌異常や性的発達の障害は比較的少ないですが、
一部の症例では思春期の遅延や異常が見られる場合があります。
尿崩症(Diabetes Insipidus, DI)
尿崩症の症状が見られる場合、
第四脳室底に胚細胞腫瘍組織が存在する可能性が示唆されます。
特に腫瘍の放射線学的証拠がなくても、
尿崩症が重要な診断のヒントとなることがあります。
<診断>
CNS GCTsの診断は、
臨床症状、
腫瘍マーカー、
神経画像検査、
細胞学的(髄液)
組織学的評価
これらに基づいて行われます。
(D1)診断の基本的手法
臨床症状と徴候
患者さんの年齢、腫瘍の位置、および大きさに応じて異なる症状
(頭痛、視力障害、内分泌異常など)が見られます。
腫瘍マーカーの測定
血清および髄液中の腫瘍マーカー(AFPおよびβ-HCG)の測定が重要です。
AFP(αフェトプロテイン):
通常、NGGCT(非胚腫性胚細胞腫瘍)で上昇します。
β-HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン):
低レベルの上昇が純粋な胚腫でも見られる場合がありますが、
NGGCTではより顕著に上昇します。
基準値:
多くの欧米ではAFPが10 ng/dl以上、
β-HCGが50 IU/l以上を「分泌 性腫瘍」として分類します。
一方、アジアではより高い基準値が使用される場合があります。
神経画像検査
CTおよびMRIは、松果体や鞍上部の腫瘍を高感度で検出可能です。
しかし、GCTs全体で類似した画像所見を示すため、
単独で腫瘍の正確な組織型を特定することは困難です。
胚腫(Germinoma):均一に増強されることが多い。
NGGCT:出血が伴う場合があり、
より不均一な増強パターンを示すことがある。
松果体および鞍上部にまたがる病変:通常は両側性胚腫を示唆します。
腫瘍生検
腫瘍マーカーが特徴的でない場合、
組織学的診断を確定するために腫瘍生検が必要です。
髄液細胞診と神経軸全体の評価
CNS GCTsは初期段階でも神経軸全体に播種する傾向があるため、
全身のCNSステージングが必須です。
髄液細胞診:髄液中の腫瘍細胞を確認。
脳および脊髄MRI(ガドリニウム造影付き):神経軸全体の評価。
(D2)診断の歴史と進歩
過去のアプローチ
手術による合併症リスクが高かった時代には、
放射線治療の試験的適用が診断手法として用いられました。
放射線に「良好な反応」を示す場合は胚腫と診断され
、治療が継続されました。
一方で、「不良な反応」を示した場合、
NGGCTや他の腫瘍と診断されました。
現在の進歩
手術技術の向上とCNS GCTsに関する理解の深化により、
より正確で信頼性の高い診断手法が利用可能になっています。
(D3)その他の推奨検査
内分泌系および視野検査
鞍上部や視床下部の腫瘍が疑われる場合、
下垂体および視床下部の機能評価や視野検査が推奨されます。
神経心理学的検査
基本的な認知機能や心理状態の評価も行われることがあります。
(D4) 診断の注意点
混合型GCT(Mixed GCTs)
混合型腫瘍では、最も悪性度の高い成分が予後や治療方針を決定します。
腫瘍マーカーの解釈
純粋な胚腫や奇形腫では腫瘍マーカーが陰性であることが一般的ですが、
髄膜播種や合胞体栄養膜巨細胞を含む場合、
低レベルのβ-HCGが検出されることがあります。
<外科的治療>
(S1) 水頭症の管理
松果体部に腫瘍ができると第三脳室と組織学的に近接しているため
特に結節を形成するような腫瘍のタイプでは
脳脊髄液が流れる第三脳室を閉塞するため、
それにより脳圧があがり、
水頭症をお子さんが呈するケースがあります。
その場合
脳室腹腔シャント(VPS)や内視鏡的第三脳室開窓術(ETV)
これらが必要になる場合があります。
近年、多くの神経外科医が初期治療としてVPSの代わりに
ETVを使用していますが、
これは依然として議論の余地があります。
この方法では内視鏡を
前頭部頭皮を切開し、第3脳室へ通し、
脳室底をオープンにします。
この方法により
第三脳室とくも膜下腔の間に流路を作り、
脳脊髄液が流通することができます。
新生児や幼児など年少であると
内視鏡下第3脳室底開窓術の失敗の比率があがります。
出生後6か月未満の赤ちゃんの場合
成功率は50%を下回ります。
この成功率は水頭症が生じている
原因に依存して変動します。
多くの神経外科医は
6か月未満の子供に対しては
この手術を試みないとされています(9)。
(S2)残存病変の評価と外科的切除
外科的手術による全摘出は現在推奨されていません(1)。
術後に合併症を呈するリスクがあるからです。・
胚腫では
全摘出、部分摘出の価値が証明されていません。
非胚性胚細胞腫では放射線治療の役割は不明瞭です(1)。
画像診断で腫瘍があることが疑わしい場合でも
真に進行性の癌細胞があるかどうか?
これを判定するためには
液体生検による腫瘍マーカーと
腫瘍が実際にあるかどうかを外科的に確認する
セカンドルック手術(Second-look surgery)。
これらが診断の信頼性向上のため必要になります。
<治療>
(GT1)胚腫
胚腫(Germinomas)は放射線治療に対する反応性は良好です。
胚腫は細胞周期やDNA修復能力の低さから
DNAに損傷を与える放射線療法が
より有効に細胞死シグナルを誘導できるからである。
このように推定されます。
また、細胞死シグナルの誘導において重要な
p53の機能が比較的正常に働いていることも挙げられます。
さらに、組織学的には
細胞の均一性が高いことと
血管が豊富で放射線酸素効果が期待できること。
これらが挙げられます。
5年生存率は放射線治療のみで90%を超えます。
全脳脊髄照射(CSI)は局所的な胚腫、
混在がない胚腫では推奨されていません(1)。
上述したように放射線治療のみでも奏功しますが、
化学療法を加えることで
放射線量や照射領域を減らすことができます。
これらの組み合わせの奏効率は非常に高いです(10)。
(GT2)非胚種性胚細胞腫瘍(NGGCTs)
胚腫よりも放射線治療感受性は低く、
全脳脊髄照射後の予後は不良です。
5年生存率は30-50%です。
診断から18か月以内に多くのケースで再発します。
放射線治療の感受性が低く、予後不良な理由は
いくつか考えられます。
非胚種性胚細胞腫瘍は複数の分化形態、細胞腫をとり、
組織学的に不均一なため、
標的が定まりにくいということがあります。
また、低酸素状態で、
かつDNA修復能力が異常に高まっているケースもあります。
化学療法と放射線療法の併用は
患者さんの全生存率を高める可能性があります(11)。
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Model of autism: increased ratio of excitation/inhibition in key neural systems
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