2024年11月3日日曜日

小児脳腫瘍の後遺症と1次治療の対策

小児脳腫瘍に関しては、
1992年から2020年までのおおよそ30年間で
生存率が劇的な向上を示しているわけではありませんが、
少しずつですが治療実績は向上しています。
今ではおおよそ75.5%のお子さんが
5年以上生存することが可能になっています(2)。

お子さんは残された人生は長いですから、
急性期治療後の長期的な生活の質、健康を支える重要性は
その生存率の高さ、発症年齢の低さ、成長期であることから
非常に高いです。

子供のがんサバイバーに関する国際的な合意声明(1)では、
専門家の意見を集約し、
一定のコンセンサスを得るために2ラウンドを通じて実施した
Delphiプロセスで
がんサバイバー共通の後遺症を定義しています。
それを以下に整理します。
ただし、これは小児脳腫瘍以外の白血病、固形がんなども含まれます。

Physical Outcomes - 身体的な後遺症
 Chronic graft-versus-host disease - 慢性移植片対宿主病
 Disfigurements - 形態変形
 Hearing problems - 聴覚障害
 Heart failure - 心不全
 Hypothalamic–pituitary dysfunction including diabetes insipidus - 視床下  部・下垂体機能不全(尿崩症を含む)
 Male sexual dysfunction - 男性の性的機能障害
 Motor problems - 運動障害
 Myocardial infarction - 心筋梗塞
 Neurodegenerative LCH - 神経変性型ランゲルハンス細胞組織球症
 Osteonecrosis - 骨壊死
 Overweight - 過体重
 Posterior fossa/cerebellar mutism syndrome - 後頭蓋窩/小脳無言症候群
 Pulmonary dysfunction - 肺機能障害
 Reduced joint mobility - 関節可動域の減少
 Renal insufficiency - 腎不全
 Seizures - てんかん発作
 Stroke (hemorrhagic or ischemic) - 脳卒中(出血性または虚血性)
 Subfertility - 生殖機能低下
 Subsequent neoplasm - 二次性腫瘍
 Temperature dysregulation - 体温調節障害
 Visual problems - 視覚障害

Physical Aspects of Quality of Life - 生活の質に関する身体的側面
 Chronic pain - 慢性痛
 Fatigue - 倦怠感
 Reduced levels of physical activity - 身体活動レベルの低下
 Sleep problems - 睡眠障害
 
Psychosocial Aspects of Quality of Life - 生活の質に関する心理社会的側面
 Behavioral regulation problems - 行動調整の問題
 Emotional problems - 情緒的な問題
 Low quality of life - 生活の質の低下
 Poor self-esteem - 自尊心の低下
 Reduced independence or autonomy - 自立性の低下
 Social problems - 社会的な問題

Neurocognitive Aspects of Quality of Life - 生活の質に関する神経認知的側面
 Educational or employment problems - 学業や就労の問題
 Neurocognitive problems - 神経認知の問題
(以上、(1) Table 1)

その中で特に小児脳腫瘍で頻発する後遺症は
Overweight(過体重)
Subsequent neoplasm(2次的な悪性新生物)
Subfertility(低受胎)
Hypothalamic–pituitary dysfunction(視床下部-下垂体不全)
Motor problems(運動障害)
これらで、
過体重、2次的な悪性新生物、低受胎は
癌腫非特異的に好発し、
脳腫瘍特異的な後遺症は
視床下部-下垂体不全、運動障害です(1:Table 2)。

特に小児脳腫瘍で頻発する
視床下部-下垂体不全、運動障害の
詳細な異常を下記します(1:Table 3)。

ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)欠乏症
 治療が必要な場合
GH(成長ホルモン)欠乏症
 刺激試験により確認された場合
TSH(甲状腺刺激ホルモン)欠乏症
 治療が必要な場合
LH/FSH(性腺刺激ホルモン)欠乏症
 治療が必要な場合
ADH(抗利尿ホルモン)欠乏症(中枢性尿崩症)
 治療が必要な場合
早発思春期
 女児:8歳未満でターナーステージB2(乳房発育)
 男児:9歳未満で精巣容積4 cc超

では、脳腫瘍ではなぜ、視床下部に異常が出やすいか?
それは正中隆起(Median eminence)が
視床下部⇔循環器のホルモンの移動を制御しており(4)、
物質交換が活発なため、
血液脳関門が形成されていません。
従って、視床下部付近に腫瘍組織が形成されていない場合でも
脳神経系への薬物治療は
より強く視床下部に影響を与えてしまいます。
薬物治療は一定の副作用があるため、
視床下部が薬物治療による損傷を受けやすく、
結果、ホルモン形成異常が生じてしまう
ということが考えられます。

視床下部は中枢神経系腫瘍の1次治療の後遺症として生じる
過体重、低受胎、運動障害にも密接に関わっている可能性があります。


上述した後遺症を軽減するために
どういったことが急性期(1次)治療で求められるか?
それについて整理します。

1. 治療計画の個別化
小児がん患者ごとに異なる
健康状態、がんの種類、進行度、治療。
これらに対する反応があるため、
個別に最適な治療計画を立てることが重要です。
例えば、最小限の放射線量で治療できる方法を検討したり、
必要に応じて薬剤の種類や投与量を調整するなど、
後遺症リスクを最小限に抑える工夫が求められます。

2. 低毒性の薬剤と放射線療法の工夫
後遺症のリスクを下げるために、
低毒性の抗がん剤や最新の放射線療法。
これらを選ぶことが推奨されます。
たとえば、放射線照射の範囲や位置を精密に調整し、
健常な組織への影響を減らす
「強度変調放射線治療(IMRT)」や「陽子線治療」。
これらがあります。
また、薬剤の毒性を抑えつつ
効果的に治療できる薬剤を用いることで、
体への負担を軽減します。

3. 内分泌および神経保護薬の併用
特に脳や神経へのダメージが予測される場合、
神経保護薬やホルモン調整薬を使用することで、
神経機能や内分泌機能を守ることができます。
たとえば、神経変性のリスクがある患者には
神経保護薬を、下垂体機能への影響が懸念される患者には
ホルモン療法の併用を検討することが推奨されます。

4. 血液・臓器機能のモニタリング
治療中に血液や臓器機能の定期的なモニタリングを行い、
異常が見つかれば早期に対応することが大切です。
これにより、例えば腎機能や肝機能の低下があれば
治療計画を見直すことで、
臓器障害のリスクを減らすことができます。

5. 栄養管理と身体的リハビリテーション
栄養不足や筋力低下は、
治療後の生活の質に大きな影響を与える可能性があるため、
栄養管理やリハビリテーションを行うことが重要です。
栄養士やリハビリ専門家を含めたチームでサポートし、
筋力や体力を維持することで、
将来的な身体的後遺症を予防します。

6. 精神的ケアの提供
治療過程でのストレスや不安が心理的な後遺症に影響するため、
精神的なサポートを行います。
専門の心理士によるカウンセリングや家族支援も含め、
患者とその家族の心理的負担を軽減することで、
治療終了後の生活の質を保ちやすくします。

7. 長期的なフォローアップ体制の構築
治療が終わっても、後遺症は長期的に現れる可能性があるため、
継続的なフォローアップが欠かせません。
定期的な診察や検査を通じて、
早期の段階で後遺症を発見し、
迅速な対応を可能にします。
また、早期発見と対応により、
生活の質への悪影響を最小限に抑えることが期待されます。

8. 家族教育と支援
家族も治療過程や後遺症のリスクについて理解し、
日常生活でのサポート方法を学ぶことが必要です。
家族への教育や支援プログラムを提供し、
後遺症が現れた際の迅速な対応や、
予防的な対策をとれるようにすることも重要です。

上述した後遺症の影響は5歳以下のお子さんで生じやすいです(3)。
例えば、小児脳腫瘍では3歳以下は
一般的には放射線治療の対象とならないため
より強い化学的治療が必要になります。
従って、身体的、心理社会的、神経認知的といった
複数のドメインで、生物学的、生活の質療法での評価が求められます。
また、薬物治療の負担が増えることは
薬物は視床下部に届きやすい可能性があるため
細胞障害性の強い薬が投与されれば、
視床下部に重篤な悪影響を与える可能性があります。
ましてや、脳の成長期にありますから、
3歳以下の放射線治療の対象外となるお子さんに対して
薬物治療を行う際には
少なくとも視床下部に対する配慮がより必要になります。
私が開発を目指す
超音波によるサーマルアブレーションや
脳神経系細胞腫特異的薬物送達システムは
このお子さんのためにあるといっても過言ではないかもしれません。
それが実現できるかどうかの保証はありませんから、
以下に、投薬条件、神経栄養因子の補充も含めて
より確実にできる私の知恵を
日本、世界の医療機関に無料でお届けします。

特に脳腫瘍では視床下部、
それによるホルモンの異常が生じやすいことから
薬物治療を行うときには
効果的な腫瘍部位への標的化、
あるいは薬物そのものが
視床下部の細胞に悪影響を与えにくい
より選択的な薬理を持ったものを選択することが挙げられます。

他には視床下部に薬物が届きにくい投薬条件があります。
基本的に視床下部の代謝需要が高まっているときには
血液がそこに運ばれますから、
薬物は視床下部により多く届きやすくなります。

例えば、昼食後の午後の活動の少ない時間帯では
視床下部の代謝需要が下がる可能性がありますが、
それは脳全体でいえることです。
このように脳の代謝需要のベースラインを下げた状態で
脳の病変部位だけ、
超音波照射、磁気、電気刺激などによって
代謝需要を上げることができれば、
視床下部に届く薬物の相対量を下げられるかもしれません。

後はストレスホルモンが増えると
視床下部の代謝需要が上がる可能性があるので
リラクゼーションや瞑想状態で
投薬することも考えられます。
基本的には食後、消化器にエネルギーが行く状態で
音楽をかけたり、マッサージを受けたり、
適切な温度、湿度条件で心地よく
リラックスした状態で
視床下部の負担を下げた状態が
投薬条件として適しているかもしれません。

視床下部の活動が下がる深いノンレム睡眠の時に
病変部位だけを何らかの方法で刺激しながら
投薬することも考えられます。

今まで、私は脳に血流が集まる状態での投薬。
このような考察をしていましたが、
視床下部の保護という観点では
そうではなく
ベースラインとしては脳に血流が届きにくい状態で
特定の病変部位だけ、
血流が高まるような介入の元、投薬するほうが
結果として、
患者さんの脳神経に優しい治療ができる可能性があります。

今の段階で、どのような条件がいいかわかりません。
すべて、推測に基づく考察のため、
とにかく臨床前の確認が必要です。

ここで逆に考えましょう。

神経系に作用する薬が、
もし、血液脳関門がなく、あるいは機能が部分的で
正中隆起によって物質が実質に届きやすいのであれば、
それを逆用して
視床下部の脳神経に良い効果をもたらす物質を
視床下部に届きやすい投薬条件で
患者さんに投与することです。

例えば、神経栄養因子を脳に届けると
血液脳関門の機能が小さい
視床下部に有効に届くかもしれません。
それによって
神経系の連結を促進することができるかもしれません。

視床下部の機能が落ちると
食欲、性欲、体温調整、睡眠などのほかに
オキシトシン、バソプレッシンの制御も低下する可能性があるので
愛着、社交性、不安、恐怖、興奮。
これらなどの心理的、社会的なコントロールにも
影響を及ぼす可能性があります。

従って、どうしても成長期の脳神経系への
進行性のがん細胞消滅のために
強い薬物治療が必要な場合は
付加的に、通常は脳神経に届きにくいような物質を含めて
神経細胞にとって良い神経栄養因子のような物質を
視床下部に届けることも
お子さんの健全な成長を助ける
医療介入となるかもしれません。




(参考文献)
(1)
Rebecca J. van Kalsbeek, Melissa M. Hudson, Renée L. Mulder, Matthew Ehrhardt, Daniel M. Green, Daniel A. Mulrooney, Jessica Hakkert, Jaap den Hartogh, Anouk Nijenhuis, Hanneke M. van Santen, Antoinette Y. N. Schouten-van Meeteren, Harm van Tinteren, Lisanne C. Verbruggen, Heather M. Conklin, Lisa M. Jacola, Rachel Tillery Webster, Marita Partanen, Wouter J. W. Kollen, Martha A. Grootenhuis, Rob Pieters, Leontien C. M. Kremer & the International Childhood Cancer Outcome Project participants
A joint international consensus statement for measuring quality of survival for patients with childhood cancer
Nature Medicine volume 29, pages1340–1348 (2023)
(2)
IronMatt
Pediatric Brain Tumor Statistics & The Critical Need for More Research
(3)
J Limond 1, S Thomas 2, K S Bull 3, G Calaminus 4, J Lemiere 5, T Traunwieser 6, H M van Santen 7, L Weiler 8, H A Spoudeas 9, M Chevignard
Quality of survival assessment in European childhood brain tumour trials, for children below the age of 5 years
Eur J Paediatr Neurol. 2020 Mar:25:59-67
(4)
Ebba Norsted, Burçak Gömüç, Björn Meister
Protein components of the blood–brain barrier (BBB) in the mediobasal hypothalamus
Journal of Chemical Neuroanatomy Volume 36, Issue 2, October 2008, Pages 107-121



 

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