2023年9月4日月曜日

早産児健康促進の為の包括的情報: (5)脳神経(臨床医学)

前章では脳神経の発達について基礎医学的な観点で記述しました。
また、そこから考えられる一般的な心の問題にも触れました。
しかしながら、早産の子どもの一部が
一般的にどのような脳の傷害を持つのか?
特に臨床的な内容については欠落していました。
Terrie E. Inder(敬称略)らは
早産の神経学的臨床結果の最新の総括を提供されています(240)。
その内容を詳しく引用、参照させていただき、
いくつかの付加的調査、考察を加え
読者の方と情報共有いたします。
--
世界全体で毎年、在胎期間37週以下で生まれる
早産の子どもは1500万人いると見積もられています(244)。
早産は新生児が命を落とす最大の原因であるとされています。
世界保健機関に統計によれば、おおよそ100万人の命が失われているので
おおよそ6.7%の早産の子どもが亡くなっている事になります。
世界全体の乳幼児に亡くなる子どもの割合は3%程度なので
早産で命を落とすリスクは2倍以上になるということです。
しかし、逆にいえば93.3%の子どもが生存しているという事になります。
世界全体で早産で亡くなる子どもを何とか助けることも
もちろん必要ですが、
生存した93%以上の子どもの生涯を考えて、
最もクリティカルな時期に最善のヘルスケアを提供する事は
それ以前に信頼性ある情報(240)を届けることは
非常に重要な意義があると考えられます。
その93%を超える早産の子どものサバイバーの
長期的にリスクがある疾患は
脳神経学的、かつ発達的な障害が主であり
近年のヘルスケアの発展にも関わらず
そのリスクは高いままであるとされています(245)。
過去20年間を超えて
脳性まひ、特に高度の麻痺状態の発生は減少してきています(246,247)。
例えば、脳性まひで言うと
1997年時点では12%でしたが、
2016-2017年では半分の6%に減少しています(247)。
例えば、新生児集中治療室の設備と医療スタッフの能力、
予防策と早期介入、母子の健康改善、教育と啓発などが
関係していることが示唆され、
産後のヘルスケアだけではなく、
妊娠時からのそれが継続的に関連している可能性が考えられます。
脳性まひは運動の問題、知的発達、嚥下機能など
生活の基本的な事に関わる障がいであり、
この疾患に対しては減少傾向はみられますが、
認知機能の低下、社会的、感情的な困難性に関しては
早産の後、成長した子ども、大人において
減少がみられないとされています(247,248)。
知的機能に関して、統計的には
在胎期間32週以下の超早産の子どもたちの
IQは満期産児の子どもよりも11-12ポイント低く(249)、
26週以下になればそれが15-20ポイント低くなります(250)。
しかしながら、
早産でも神経発達において問題のない子どももいるので
IQに関しては非常に個人差が大きいとされています。
同じ在胎期間でも神経発達において
問題のある子どもとそうではない子どもがいるというのは
注目に値するところです。
なぜなら、超早産であっても神経発達に問題のない
様々な軌跡を集団的に分析する事で
子どもの脳の健康において
重要な要因が浮き彫りになる可能性があるからです。
例えば、Alicia K. Yee(敬称略)らの数十人規模の研究では
上述した在胎期間32週以下の超早産児において
分娩後の呼吸状態について生まれて
数週間、3か月、6か月とフォローアップ研究をしています。
3秒以上呼吸が止まる無呼吸状態は
ほとんどの子どもで上述したあらゆる期間で経験し、
その頻度が高い子供は言語や運動機能が低い傾向にありました(403)。
現場の経験がなく、リスクも伴うので
抽象的な表現に留めますが、
適切な監視の下で体の位置、環境などを整える事で
自然と赤ちゃんが呼吸をしやすいような環境、
あるいは安全な範囲での呼吸機能の訓練も
介入として考えられるかもしれません。
もちろん、受精、胚の時点での遺伝子的な影響、
妊娠初期の着床の条件、母親の子宮内膜の状態、
在胎期間中の環境なども関わっている可能性がありますが、
分娩直後も含めたヘルスケアにも関連があるかもしれません。
このような神経発達の結果の異種性、個人差は
分娩後の比較的短い期間での
脳の損傷、未成熟の重症度を反映してそうである
という現場の感覚があるようです(240)。
在胎期間が短ければ、短いほどリスクが高まるので、
この記事の冒頭で述べた様に
在胎期間を長く取れるように妊娠時の管理が一方で大切になる
と考えられます。
未成熟の脳は損傷に対して特徴的な脆弱性を持っています。
◎白質の損傷
◎脳室内の出血(germinal matrix–intraventricular hemorrhage)
◎小脳の出血
これらなどです。
これは仮説ですが、早産の子どもが脳出血を起こしやすいのは
分娩時に過渡的に血圧が上がりますが、
その時にまだ脳の血管が十分発達しておらず、
また血管径もほそく、
血管壁に強い力がかかりやすい状態で
その血管壁が薄く、もろい状態であるため
出血が起こりやすいと考えられます。
仮に観測できるほどの出血はなくても
血管壁の細胞同士の連結がとれ、損傷が残っている可能性もあります。
実際に、分娩時に臍帯血ミルキングなど
短時間で母親の血液を送り込んだ場合に
脳出血のリスクが高まるという事は知られています。
このような出血は脳脊髄液が通る
上衣細胞直下で生じる事が多く、
血液は脳脊髄液よりも粘性が高いので、
それによる脳脊髄液の流体としての循環機能低下が懸念されます。
発達した神経イメージング技術や
それを補完する発達神経科学の進展による新しい見識は
一時的な損傷の特徴の理解、
二次的な未成熟効果の理解の両方を深めてきました。
脳障害の主な形式は神経発達の不全によるものですが、
早産の幼児の改変された脳の発達の近年の認識は
生まれてすぐに新生児集中治療室(NICU)で過ごした期間における
非常に重要な因子の新しい理解を導きました。
その生まれてすぐの集中治療を受けた期間は
そのお子さんの神経発達の重大な結果を決めるものかもしれません。
なぜなら、急速に脳が発達する時期だからです。
脳の発達曲線から言うと
横軸を時間、縦軸を体積増加率で関連性を取ると
胎児の頃が一番時間に対する体積増加率が高いわけですが、
おそらくTerrie E. Inder(敬称略)らが
現場の感覚も含めて新生児集中治療室の間の重要因子を
特に取り上げているのは
子宮内から外界に出る環境変化への急速な順応時期と重なっている
ことも関係しているかもしれません。但し、これは仮説です。
脳の障害だけではなく、
損傷とは直接関連のない発達の不全も
早産の幼児の神経発達の不全に関連していると考えられています(240)。
Terrie E. Inder(敬称略)らは、
◎超早産の少し成長した幼児の脳損傷の3つの主要な形式
◎脳発達の改変の特徴
◎脳損傷、脳発達改変を仲介する因子
◎これらによってどのような結果になるか?
これらについて総括されています(240)。
これらの要因の理解は未来の神経保護的な戦略を使う中での
新生児医療の臨床医、その他医療スタッフを
アシストするものになるでしょう(240)。
これらの要因を理解する事は早産の子どもの
長期的な神経学的結果を改善するものになると考えられます(240)。
<<脳損傷>>
早産児の認識されている脳損傷の3つの主な形式は
その後の神経発達不全に関連しています。
その三つとは上述した
(1)白質傷害
(2)脳室上衣下胚層脳室出血(germinal matrix–intraventricular hemorrhage)
※胚発生行列とは脳室周辺に位置する
脳の発育初期において
神経細胞の分化や増殖が行われる領域であり、
早産児においては未熟な血管や脆弱な組織が存在するため、
出血が生じやすい箇所とされています。
(3)小脳出血
これらです。
((1)白質の損傷)
発達期にある早産の子どもの脳に影響する損傷の中で
白質の損傷は最も普遍的、疫学的に多いとされています。
白質は主に神経連結に関わる組織が多く存在し、
その神経連結には軸索がネットワークのノード(線)として機能します。
そのノードの機能を決める、電気伝導性を決めるのは
その軸索の周りにある絶縁膜である髄鞘(ミエリン鞘)であり、
この髄鞘を生み出すのが乏突起膠細胞です。
この乏突起膠細胞の前駆状態、未分化の状態
(early differentiating preoligodendrocytes)
が非常に脆弱性が高いため、白質の機能が低下するということです(240)。
早産児で共通的に生じる白質損傷には
脳室周囲白質軟化症があります(256)。
これにおいてTerrie E. Inder(敬称略)らが述べるように(240)
乏突起膠細胞の成熟に従って様々なストレスに対する脆弱性が変わる
ということです。
早産の子どもは腸などにも異常があるケースもあり、
炎症性の免疫機能が高まっている事と、
そのような免疫機能は酸化ストレスを高める事が知られています。
Xiao-Bo Liu(敬称略)らがFig.1A,Bに示すように
乏突起膠細胞は細胞成熟が多段階に及びますが、
初期状態であればあるほど、
炎症や酸化ストレスに対して脆弱になります(257,Fig.1B)。
Terrie E. Inder(敬称略)らが冒頭で述べるように(240)、
早産の分娩直後の集中治療室に入っている時に
脳の障害の程度に大きく影響を与えている可能性があるとされています。
ここからは重要であり、かつ仮説ですが、
分娩直後には循環器、消化器の環境が大きく変わります。
そうした中で共通的に影響を受けるのは免疫系です。
なぜなら血中にも腸にも多くの免疫細胞、サイトカインが存在するからです。
そうするとその環境変化に対する順応が円滑でない場合、
免疫細胞の炎症性が高まる可能性が考えられます。
循環器は脳にも当然到達していますから
このような炎症反応は脳へも影響を与えます。
それにより酸化ストレスも高まります。
一方、
新生児で在胎期間から加算して年少であればあるほど
乏突起膠細胞の分化において前駆状態の割合が多い可能性があります。
その状態で過剰な炎症や酸化ストレスを受けると
通常ならそこから成熟して適切な髄鞘を形成するはずのプロセスが
大きく阻害されることになります。
Xiao-Bo Liu(敬称略)らがFig.1A,Bが図に示すように(257)
乏突起膠細胞は成熟するにしたがって、
樹状突起を樹木のように枝分かれした状態で成長させていきます。
これも仮説ですが、未成熟の状態では
その機能の核となる乏突起膠細胞の細胞核の部分が
大きく露出しているため
炎症性シグナルに影響を受けやすいかもしれません。
言い方を変えれば、
乏突起膠細胞から伸びる枝の部分が
少なくとも一定割合ストレスに対するバリア機能がある
可能性を想定しました。
なぜ、小児において白質が影響を受けるのか?
その理由は未知のままだったので、
それが一部明らかになったことは大きなことです。
ボストン小児病院の記述によれば、
脳室周囲白質軟化症の効果的な治療は存在しません(256)。
そもそも大人を含めたケースでも
脳の組織学的な事も含めた様々な疾患を治すことは
他の組織に比べても難易度が高いです。
既に生じてしまっているお子さん(患児)もいるので
乏突起膠細胞や髄鞘に異常があるのであれば、
それに対して医療、医学、薬学ととして
何らかの医療介入、アプローチを考える事は大切ですが、
それよりもまずは予防的処置が重要です。
脳組織に対する
免疫細胞や炎症性サイトカインの影響を減らすためには
◎炎症性を上げない
◎血液脳関門を含めて脳血管の組織を守る
これらのアプローチが少なくとも重要になります。
前者は腸に密接に関連しています。
下述するように壊死性腸炎の一つのリスクは
リスクの高い摂食によるとされています(187,251)。
とにかく壊死性腸炎、あるいは腸の炎症を防ぐことが大切です。
血液脳関門、血管組織は
分娩時における循環器の移行によります。
臍帯遅延結紮、臍帯血ミルキングによるメリットと
脳血管系に対するデメリット、
赤ちゃんが呼吸していないときの蘇生処置
これらのバランスに加えて
これらの条件が成長後も含めた
脳血管の損傷にどのように影響を与えるか?
それも考える必要があります。
記述を引用論文(240)に戻します。
白質の障害の原因となる鍵となるリスク因子は
低酸素虚血と炎症です。
これは多くの場合、出産前後、新生児の感染に関わります(323)。
壊死性腸炎になると摂食を含めて
感染のリスクが高まるので
交絡因子として壊死性腸炎は関連している可能性があります。
また、循環器の損傷も低酸素虚血と関連があると想定されます。
23-32週の在胎期間は胎児の白質損傷において
高いリスクを伴う時期です。
そのピークは28週の早産にあるとされています(324)。
白質の損傷は3つの主な病理的形質があります。
①Focal cystic necrosis
限られた範囲の病変部において液体で満たされた嚢胞内で
細胞が壊死する状態
②focal microscopic necrosis
限られた範囲の病変部において微細なレベルで
細胞が壊死する状態
③Diffuse non-necrotic lesions(拡散性非壊死病変)
病変が広範にわたっているが細胞の壊死がみられない状態
③はDiffuse gliosis(拡散性グリオーシス)に分類され、
アストロサイトの反応性変化やグリア細胞が活性化が生じている状態です。
①の白質嚢胞の形成、つまり液体が溜まる事は
細胞の壊死による細胞内の液体や血液によって生じると想定されます。
これが生じる場合、症状としては重篤で
在胎期間32週よりも前に生まれた
早産児の5%未満に影響を与えます(324,325)。
②の微細なレベルで細胞が壊死するケースでは
白質に点状の病変としてMRIで観測する事ができます。
28週未満の在胎期間の超早産児の15-25%に診られます(240)。
③の病変が広範囲にわたる拡散性の細胞の壊死を伴わない病変では
MRIで病変を可視化するのは難しいですが、
その後、白質が萎縮し、
脳脊髄液で満たされた脳室が拡大します(ventriculomegaly)。
これは超早産児のおおよそ半分で診られます(326-330)。
白質のグリア細胞の活性化を示す、拡散性のグリオーシスは
超早産児のおおよそ半分で診られるとされていますが、
この拡散性グリオーシスは早産の羊のケースにおいて
リポ多糖体が血中に点滴された際に生じやすい事が
示されています(331)
このリポ多糖体はグラム陰性の細菌の細胞膜に発現されており(332)、
それが血中に入る事を想定して実験された背景がある
と考えられます(331)。
これらのグラム陰性のバクテリアは
出生後、壊死性腸炎などバリア組織に異常がある場合
腸から循環器に入ることが想定されます。
従って、白質の拡散性グリオーシスは
超早産児において高い割合で診られますが、
これは腸の炎症と密接に関わっている事が想定されます。
①の嚢胞性白質傷害の発症率はもともと低く、
それは減少してきています(326,336)。
これは早期分娩のリスクがある母親に対して
予防的に出産前にグルココルチコイドを処方する事が
一般的になったことがおそらく関係していると考えられています(333,337)。
嚢胞性白質傷害は臨床的に顕著な発達不全と関連しています。
脳性まひは嚢胞性白質傷害を持つ小児の75%で発達します。
影響を受けた小児の半分は一般的な認知機能、視覚に悪影響ができます。
25%は発作性疾患を持ちます(338,339)。
Terrie E. Inder(敬称略)らがTable.1で示すように(240)
白質に液体の塊ができる嚢胞は
他のタイプと比べて様々な脳の障害とより強くかかわっています。
おそらく、嚢胞によって血管や液体の流れが圧迫されることで
神経系への栄養供給が一部遮断され、栄養不足とあり
それが障害と関わっている可能性があります。
一方、
②の微細な点状の白質病変や③の拡散性のグリオーシスは
学力、運動機能、注意、情報処理、言語、
記憶、実行機能の不全を高めるとされています(328,334,335)。
((2)脳室上衣下胚層脳室出血)
((2)Germinal matrix–intraventricular hemorrhage)
脳室上衣下胚層は
Walufu Ivan Egesa(敬称略)らがFIGURE.1に示すように
側脳室の下側の
側頭から断面を観た時の下向きの三日月上の形状を持つ組織です(346)。
ここは神経細胞の分化や増殖が行われる領域で
未熟な血管が多く存在します。
従って、早産児において損傷を受けやすい脳血管となります。
ここから脳脊髄液が満たされている脳室へ出血が生じ、
それを脳室上衣下胚層脳室出血。
(Germinal matrix–intraventricular hemorrhage)
このように定義されます。
脳室上衣下胚層脳室出血は新生児の頭蓋内の出血の
最も共通的な形式であり、
早産児の中枢神経系の出血と特徴づけられます。
この形式の脳損傷に
1500g以下の超低出生体重児の早産の子どもの約25%が
影響を受けているとされています(340)。
周産期医療の発達に関わらず、
脳室上衣下胚層脳室出血の発生率は最近20年で変化していません(341,342)。
おおよそ超低出生体重児の早産児の1/4の子どもが
影響を受けているという高い発生率と共に
脳室の出血としては重篤な形式となっています。
また結果として伴う合併症も存在します。
脳室の出血の重篤度はグレート1~4まで4段階あります。
Papile(敬称略)らによって1978年に報告され、
その後、改定されています(343,344)。
そのグレードは側脳室、脳実質内への血液の量に基づきます。
頭蓋内のスイープする超音波イメージでは
脳室上衣下胚層脳室出血は
分娩から平均して24-48時間に起こるとされています。
12時間以内ではおおおそ10%となります。
Inmaculada Lara-Cantón(敬称略)らが示すように
一般的に酸素飽和度は85-95%までの到達は
満期産児を含めてのデータでは10分程度です。
(参考文献(368) Fig.1より)
心拍数も10分程度で安定します。
(参考文献(368) Fig.2より)
従って、診断可能になるまでの時間は
分娩前後の循環器の変化の過渡期よりも顕著に長いです。
この過渡期に最も血管に負荷がかかると考えて自然です。
しかしながら、Terrie E. Inder(敬称略)らは
臨床的なサインは出血が生じたときには影を潜めている事が多く
臨床症状によって診断する事は主ではないとされています(240)。
従って、出血があると診断されるのがMRIによるとすると
多くの場合、診断がつくよりもかなり前から出血が生じている
可能性は否定はできません。
脳室上衣下胚層脳室出血の病理は
それぞれの幼児によって異なり、
複数の因子が複雑に交絡しています。
脳への血流の安定性に関連する脳血管因子は特に関連があります。
超早産児では
心肺機能の不安定性に起因する未熟な脳の自己調整能力が
虚血や再灌流の結果となり得るとされています。
これは組織として脆い脳室上衣下胚層の血管を
損傷させる原因となります。
その損傷が進むとやがて破裂し、出血が生じます。
脳室上衣下胚層脳室出血の発症率を減らすための
エビデンスベースの医療介入は制限的です。
なぜなら
◎病因の複雑性
◎正確かつ継続的に脳の血流を測定する方法の制限
これらがあるからです。
例えば、病因としては
心肺機能が安定しない事、あるいは蘇生処置が行われることで
脳へ送られる血圧が安定しない事も考えられます。
あるいは分娩時の血圧上昇の移行が円滑ではなかった
可能性もあります。
血管生成の未熟性は血管壁が同様に未熟になり
血管自体もより細くなるかもしれません。
さらに脳室上衣下胚層にある血管は脆いとされていますから
少ない血流でもより強い圧力がかかり、
脆い血管が損傷、破裂しやすいかもしれません。
摂食が消化器に移行する事で
感染症のリスクが高まります。
それによる循環器を通した炎症反応が
脳室上衣下胚層の血管に影響を与えるかもしれません。
このような血流を出血が生じやすい部分において
「局所的に」測定する事は難しいです。
しかも、それを継続的にモニターする事はさらに困難です。
唾液や尿などの液体生検によるバイオマーカーなど
他のアプローチが必要かもしれません。
但し、バルク結晶成長可能な
常圧室温超電導材料が開発されれば、
MRIの性能向上、コスト低減、フットプリント低減などの
効果が期待され、それによりポータブル性が上がれば、
血流の連続的なモニタリングも可能になるかもしれません(349)。
MRIは何回受けても人体に影響がないとされています。
従って、連続的なモニタリングは
安全面を配慮した上でも装置制約がなくなれば可能です。
仮に子どもの頭にヘルメットのようにかぶって
固定できるような形式のものができれば、
子供が無作為に動くという問題が
大幅に緩和される可能性もあります。
それに加えて
常圧室温超電導材料が開発されれば
磁気医療も変わる可能性があります。
磁気によってフォーカスした状態で
病変部位に照射することで
血流を促すことができるかもしれません(348)。
例えば、振動した磁場を30分間、内皮細胞に当てると
血管の組織修復など恒常性に関わる(350)一酸化窒素の産生が
増加したという報告もあります(351)。
実際に磁気による刺激は
脳神経変性疾患、精神疾患などで検討されており、
血管を保護したり、血管新生を促した
という報告もあります(357)。
鬱に関する研究では顕著な効果はまだ立証されていません(358)。
但し、照射する場所、磁力の強さ、パルス幅、振動数など
多くの重要な要素があると考えられます。
したがって、それらの条件が最適化されれば、
より幅広い臨床応用が可能になるかもしれません。
新生児の脳室上衣下胚層脳室出血において
侵襲する事が難しいと考えると
磁気治療がより高性能、小型化、低コスト化など便利になれば、
動物実験などを経て、将来的には早産児に適用できる
可能性はあるかもしれません。
脳室上衣下胚層脳室出血の発生は
複数の様式でその予後において脳の発達に影響を与えます。
脳室上衣下胚層から脳出血が生じると
未成熟な胚芽大脳領域の破壊が生じるかもしれません。
それによって神経の前駆細胞を欠失したり、
末端の静脈を圧迫する事につながります。
その結果、
◎高グレードの実質の静脈出血性梗塞
◎酸化ストレスによる白質損傷の加速
◎水頭症
これらを導きます。
脳室への出血は軸索や他の損傷を導く恐れがあります。
脳室上衣下胚層脳室出血は前述したように
4段階のグレードにわかれますが、
◎低グレード:グレード1,2
◎高グレード:グレード3,4
このように2つに分類されることがあります。
低グレードの脳室上衣下胚層脳室出血は
組織学的には長期的な神経発達の影響は
極めて小さいとされています(352,353)。
しかしながら、
超早産児を含む国際的(Large geographic)のコホート研究では
低グレードの脳室上衣下胚層脳室出血は
脳性まひのリスクをわずかに上昇させ、
早期の認知遅延、視覚障害のリスクは顕著に上昇する
という事が示されています(340,354)。
低グレードの脳室上衣下胚層脳室出血罹患後
長期的にどのように影響があるかというエビデンスは限られています。
1つの研究では8歳、18歳の時点で影響はないとされています(355)。
一方で
高グレードの脳室上衣下胚層脳室出血は
神経発達的な不全のリスクを高めます。
(参考文献(240) Table 1より)
出生後、脳室上衣下胚層脳室出血に罹患して
成長した年少の子どもにおいて
脳性まひになるリスクは6倍高く、
視覚障害になるリスクは11倍高く、
毛髪のロスになるリスクは4倍高いとされています(340)。
高グレードの脳室上衣下胚層脳室出血に罹患後、
成長して、年長の子どもになった時の
IQ、学力は低い傾向にあり、
言語能力、注意、ワーキングメモリ、処理速度、
視覚空間的な推理、視覚運動統合、実行機能。
これらにおいて同様に能力が低い傾向にあります(353,356)。
((3)小脳出血)
脳室出血と同様に、
早産児の小脳出血の感受性は
いくつかの形成成熟依存的な血管領域に関連しています。
これらの領域は
◎顆粒細胞層中の脳室上衣下胚層
◎小脳のサブ上衣領域
※脳室と実質を分ける組織の脳室側の上皮細胞
◎内部顆粒細胞層の接合部の急速に成長する領域、
※顆粒細胞は(おそらく)上衣細胞の下にある粒上の
細胞が集まった領域(参考文献(359) FIGURE 1参照)
◎小脳白質
これらを含みます。
脳の血管はÁngela Fontán-Lozano(敬称略)らが
FIGURE 1に"BV(blood vessel)"として示すように
これら脳室から実質(小脳)までの
境界となる上衣、顆粒組織の中を貫通しています(359)。
細胞が密集している領域なので
虚血になると影響を受けやすく、
また血管が通っている場所なので
血管の破裂の影響も受けやすいとされています(360)。
小脳出血の発症率は評価手法に依存します。
小脳出血は最初は
大泉門を通して頭蓋超音波検査の手法によって出血を評価した時
30週以下の在胎期間で生まれた早産児の
おおよそ3%程度の少ない割合であったとされています。
しかし、後側頭泉門を通した超音波検査に基づく評価では
それが9%まで上昇しました(361)。
MRIを使ったときにはそれが19%になりました(362)。
小脳出血の病理因子は
脳室上衣下胚層脳室出血のそれと強く類似します。
最も顕著な因子は未成熟と心肺機能の不安定性です。
小脳出血におる傷害は
脳の片側だけにみられる点状の出血から
広範囲にわたる両側病変まであります(363)。
小脳の出血が広範囲にわたると
その子どもの症状や予後は悪くなります(364)。
しかし、小脳出血の影響を独立に評価する事は難しいとされています。
なぜなら、小脳と大脳を隔てる
小脳テントよりも上の病変も度々共存するからです(365)。
分離した小脳出血の総括では
◎認知機能(38%)
◎運動機能(39%)
◎言語機能(41%)
◎行動発達(38%)
これらの機能、割合で遅れがみられたとされています(366)。
病変部位の場所と大きさは機能的な結果に影響します(367)。
しかしながら、
小さな病変を持つ小児の長期的な結果は明らかではありません。
(まとめ)
出血の量が問題で、少量に抑えれば、
その出血による機能障害の影響を小さくする、
あるいはほぼなくすことが可能であることが
疫学的な結果から推測されます。
従って、非侵襲の治療も含めて、
出血のリスクが高いお子さんをスクリーニングして
適切な治療ができれば、予後の改善が図れるかもしれません。
<<脳成熟不全(Brain dysmaturation)>>
早産の子どもの神経発達不全の結果は
上述したように生まれてすぐに集中治療室にいるような
生後直後から生じる出血を含めた脳の傷害と
この時に生じた傷害が白質、灰白質の発達に
悪影響を与えることによって生じているという事は
徐々に明らかになってきました(240)。
これは「成熟の障害(Dysmaturation)」として参照されます。
早産の脳のこの特徴的な脆弱性は
妊娠期間20週~40週の未成熟な大脳で生じる
多様で、急速で、かつ複雑な細胞発達的なイベントによるものです。
この脳成熟不全の章では
(1)MRIの結果を基にした早産の子どもでの脳の成熟不全の定義
(2)白質の障害による脳の成熟不全のメカニズム
(3)NICU内で生じる主な成熟不全効果のエビデンス
(4)脳の成熟不全の発達への影響の要約
これらについて扱います(240)。
これらの成熟不全に関わる細胞機序は
比較的長い期間にわたり生じます。
従って、新生児集中治療室(NICU)にいるときだけではありません。
ゆえにこの成熟不全を持つお子さんの
予後を改善するためには
NICUにいるときだけではなく、
退室後にも合わせて医療的介入をデザインする必要があります。
赤ちゃんが子宮にいるときに受け取る
神経ホルモンが早産によって失われることが
脳の成熟不全においてどのように影響を与えるか?
それについては現在ではわかっていません。
上述したようにAlicia K. Yee(敬称略)らの
在胎期間32週以下の超早産児における
数十人規模の研究では
3秒以上呼吸が止まる無呼吸状態は
ほとんどの子どもで経験すると言われています。
それは生まれてすぐの数週間だけではなく
半年後も続き、その無呼吸状態が多いほうが
脳の機能が低下する事が知られています(403)。
一方、Yoko Asaka(敬称略)らの研究では
生後1.5年の子どもにおいて
早産と満期産児の夜間の睡眠の質を100人程度の規模で調査すると
早産の子どものほうが睡眠の質が低いことが示されています(431)。
睡眠時には間質液も含めて、脳の循環器の機能が向上する事が
知られており、それによって脳の成長を阻害する
有害な物質も排出すると考えられます(405)。
(グリンパティック系)
それは実質と脳室のバランスにも関わると考えられます。
脳の成長著しい2歳までの過渡期において
睡眠の質が低下する事は
特に白質や灰白質などを含む脳の実質に悪影響を与える事は
十分に考えられます。
おそらく睡眠の質が低下している事は
Alicia K. Yee(敬称略)らが示した(403)
無呼吸状態の時間と頻度も関わっているはずです。
その背景には一つは呼吸機能もあると想定されます。
特に早産児の脳の発達を考える上で
その生活習慣の中で、如何によい睡眠をお子さんが取れるか?
赤ちゃんにとって心地よい生活環境も含めて
それについて考える事は
ここでTerrie E. Inder(敬称略)らが問題にしている
脳の成熟不全(240)にも密接に関わると想定されます。
(1)脳の成熟不全の定義
早産の脳において成熟不全に対して
いくつかのMRI技術を使用して
お子さん自身の脳を解析することで定義づけします。
容積測定のMRIは
大脳皮質、白質、視床、脳幹神経節で異常を示しました。
Terrie E. Inder(敬称略)らがFig.3の左右の比較では
脳脊髄液が流れる脳室が大きくなり、
灰白質、視床、脳幹神経節、ミエリン鞘、海馬、小脳など
実質に関わる多くの部分の容積が減少する事が示されています(240)。
この事はNaohiro Okada(敬称略)らが行った
数千人規模の比較研究で
統合失調症、双極性障害、大うつ病傷害、自閉スペクトラム症と
健常者の脳の体積の違いを部位別に統計的に比較した結果と一致します(369)。
つまり脳に障害があるケースでは
脳室が大きくなる傾向にあり、
それに伴い実質が小さくなるということです。
この特徴を決めている重要な生活環境の要因は
上述したように毎日の睡眠である可能性があります。
睡眠については別途、章を設けて詳しく考えていく事になります。
上述したようにMRIで健康な子どもと比較する事で
同じ年齢の早産の子どもの脳の発達の異常を
それぞれの部位の容積から明らかにできます。
それは年長、青年、大人と成長後も続き、成長すると
その差がより顕著になると言われています(432-437)。
(2)白質の障害による脳の成熟不全のメカニズム
未成熟な白質の乏突起膠細胞の前駆細胞の
傷害の神経病理的な結果は
髄鞘(ミエリン鞘)を生成する乏突起膠細胞への成熟の不全です。
その結果、神経の軸索を通した伝導性を決め髄鞘が不足します。
脳の成熟不全の2つ目の形式が
白質の傷害に引き続き生じる可能性があります。
それは妊娠後期の時期に活発に成長する
白質や灰白質の一連の構造的な事に関与します。
これらの発達不全は
乏突起膠細胞が前駆状態から成熟状態へ分化する事の
不全に始まります。
今述べたような白質、灰白質の一連の傷害、構造擾乱は
早熟の脳症「Encephalopathy of prematurity」と呼ばれます(452)。
(3)NICU内で生じる主な成熟不全効果
神経の成熟の改変は早熟の脳の主なイベントである事が
臨床研究、実験で明らかになっています。
これは白質の障害による成熟不全とは異なります。
この概念は集中治療室を含めた入院中の間の
2つの時期での早産児の
拡散ベースMRI(diffusion-based MRI)を使った
研究によって構築されてきました(453)。
原理的に明らかになったことは
白質の傷害がみられない状況で皮質内で
成熟の遅れに関する不全であり、
これは皮質の灰白質の微小構造的な発達の遅れと定義できます。
これは拡散ベースMRIの水分子の異方性測定で明らかになりましたが、
このような異方性測定では
発達期の皮質では水分子の拡散が減少する事が知られています。
これは樹状組織が精緻に形成されている事を示します(454,455)。
(Dendritic elaboration)
このように水分子の拡散をMRIで計測する画像分析によって
新生児の皮質の灰白質の樹状組織の発達の主な不全を
明示する事ができると考えられています。
主な神経的な成熟不全の決定的な神経病理的なエビデンスは
臨床的な研究ではまだ明らかにはされていません。
しかしながら、
未成熟の羊のモデルにおける研究では
皮質の神経発達の主な不全について観測されています。
この研究では
局所的な低酸素状態が海馬での
神経細胞の枝状分岐を改変させる事が示されています。
それにより神経連結に不全が生じ、
結果としてワーキングメモリが改変されます(456)。
このような結果は
おそらく人にも当てはまることです。
なぜなら、ワーキングメモリの状態に異常が出る事は
超早産児のサバイバーで一般的に報告されているからです(457)。
この羊によるモデルの追加実験では
低酸素状態に加えて、虚血の状態が
神経発達の異常を導くことが示されています(458)。
低酸素状態以外の他の因子が
新生児集中治療室に早産児が入院している間の
灰白質や白質の発達異常に関与していそうです。
例えば
◎栄養状態
◎成長状態
◎不快な経験(痛み、光、音)
◎快体験(子育て、人の声を聴く事、肌のふれあい)の喪失
これらです(459)。
特に超早産児に生じる事がある
脳神経の成熟不全の病理に関して
神経細胞に対する低酸素、虚血状態や
子どもの生育環境がどのように影響を与えるか?
それを白質の障害と切り離して、独立で評価する事は
難しいと考えられています。
(4)脳の成熟不全の発達への影響
脳の成熟不全と神経発達の結果の関連において
主に白質の傷害を含む脳の傷害が交絡因子となります。
新生児集中治療室から退院した時点での
早産児の脳の皮質の体積の実証された現象は
その子どもの臨床結果と様々な関連を持っている事が報告されています。
これらの脳の体積の比較の試みによって
そのお子さんのその後の状態の予測の精度を向上させます(460)。
満期産児に比べて、早産の子どもたちの
領域ごとの脳の体積の差異は
社会感情的な発達のような特定の成長後の結果に関連します(461)。
皮質の表面積に関して、
前頭、側頭、頭頂領域の面積が満期産児に比べて
早産児で小さい傾向にある事は
認知や言語の発達と負に関連しています(459)。
早産で生まれた後、成長した
年長の子どもたちや大人の皮質の変化や機能的な結果の
実験的な研究によって
前頭と側頭の領域が特に早産の子どもで
影響を受けやすいことが示されました(462-466)。
(参考文献(240) Figure 4)
早産で生まれた子供たちの中の
皮質の表面積に関わる前頭、側頭の領域の
表面状態の(モフォロジーの)改変は
IQ、言語能力、実行能力に関わります(467,468)。
海馬は小さく、まっすぐな形をしている
ことが示されています(463,469)。
これはばらつきがありますが、
記憶の能力に関連しているとされています(463,470)。
皮質下の構造に関して
超早産児は成長後、脳幹神経節、視床の体積が
同じ年齢の満期産児のそれよりも6-10%減少している
ことが示されています。
これらの体積は
IQ、記憶、学習能力、行動、運動の機能に関連します(471)。
脳の体積が小さいことは
◎新生児の期間(472,473)
◎小児期(474)
◎成人期(475)
これらのいずれの期間でも観られることが
経時的な分析によって明らかになっています。
(異なる観点による考察)
ここからは仮説を含む考察について述べます。
特に超早産児の健康ギャップにおいて脳の発達が重要であり、
その脳の発達は下述するように生後2年までの間に
体積に関しては大部分が決まってしまうからです。
従って、考え得る何らかの考察をここで示すことは
研究で十分に立証されておらず仮説を含むにしても
一定の意義を生むと考えています。
John H. Gilmore(敬称略)らがFig.2に示す
脳の発達曲線を見ると(9)
脳の容積、表面積は2歳まででおおよそ決まります。
唯一、脳の連結に関わる白質は青年になるまで
少しずつ変化していきます。
一番、時間に対する変化率が大きいのは
在胎期間20週から35週の15週間
つまりおおよそ3か月半程度の期間です。
従って、この期間、子どもの脳にとって良い環境を
整える事の重要性はいうまでもないですが、
出生後の特に1年の間においても
脳の体積は急速に大きくなります。
従って、超早産であって、
一般的に脳の体積が小さい傾向にあるという結果から
超早産児において生まれてから
1年間の医療介入、子育ての条件によって
成長後の脳の体積が変わる事も考えられます。
例えば、
同じ在胎期間の早産児の脳の体積を比べた時に
満期産児と差がない子供とその差が大きな子供がいた時に
それらの子どもにおいて
どのように成育環境が異なっていたか?
それについて分析する事で
より脳の成長にとって好ましい条件が見つかるかもしれません。
この章での記述では
脳の領域ごとの体積の減少について
中心的に記述されていました。
これが一般的な傾向であるとすると
Terrie E. Inder(敬称略)らがFigure 3に示す(240)
逆に早産児で生じている傾向にある
脳室の拡大についてはあまり考えられてこなかった
という事はあるかもしれません。
一方で、Terrie E. Inder(敬称略)らは
新生児集中治療室に入っている期間が
脳の発達においてクリティカルでありそうだ
ということを述べられています(240)。
脳の発達に差がでるような
超早産児の場合、その期間が数か月になることもありますが、
その時期に実質を縮小させる要因だけではなく
脳室を拡大させる要因についても考える事で、
実質の縮小幅をより小さくすることに貢献するかもしれません。
大人も含めて多くの場合
実質の縮小と脳室の拡大が関係性を持っているからです(369)。
実質の縮小は上述したように
低酸素や虚血により
神経細胞、グリア細胞、乏突起膠細胞など
脳神経系を構築する細胞の増殖に影響が出る事で
生じると考えられますが、
脳室の拡大がなぜ生じるのか?
この記事で循環器的な性質に基づいて
仮説的な事を述べていますが、
それについてはよくわかっていません。
但し、Terrie E. Inder(敬称略)らが述べるように
単に虚血や低酸素状態だけが関わっているのではなく、
不快感や赤ちゃんにとって安心材料となるような
母親との肌と肌とのふれあいを含む心地よい感覚も
関わっていそうだということです。
例えば、子どもは不思議と
お父さんやお母さんに抱かれた状態では眠りますが、
ベッドに置いた途端、泣き出して起きることがあります。
心地よい感覚の中でお子さんが安心して眠る事は、
特に脳が急速に発達する時期において重要な可能性があります。
実際にお母さんが抱っこして育てる事は
カンガルーケアと呼ばれますが、
カンガルーケアによって新生児の睡眠時間が顕著に上昇し、
無呼吸、興奮状態、徐脈が抑えられ、
酸素飽和度の安定したという報告があります(476)。
超未熟児においては厳格な健康管理が必要なので
それとのバランスだとは思いますが、
母親との触れ合いは脳の発達においても
非常に重要な意味を持つかもしれないので、
それについて検討する事は
その後の成長の事も含めて考えると
お子さん、家族にとってメリットがあるかもしれません。
<<脳の成熟不全への対策>>
脳の傷害に直接的、あるいは間接的に関連する
白質、灰白質の構造の成熟不全に対して
何らかの対策をするために
様々な臨床研究、疫学研究、実験的研究が行われてきました。
その成熟不全の対策としては
低酸素状態、虚血、炎症を防ぐだけではなく、
◎出産前のグルココルチコイド処方
◎硫酸マグネシウム処方
◎臍帯結紮遅延
◎NICUによる血圧、糖、CO2濃度の安定化管理
◎脳への安定な血液供給の為の心臓血管モニタリング
◎神経系のリハビリテーション
◎授乳を含めた栄養管理(477-481)
◎ストレス、痛みの低減(482-485)
◎スキンスキンケア(488-490)
◎両親による子育て(488-490)
◎家族の声を聴く、見る事(486,487)
◎在宅ベースの発育プログラム
これらが挙げられています(参考文献(240)Table 1)。
<<結論(240)>>
近年の医療の発達により
超早産で生まれた子供の命が救われるケースが増えていますが、
一方で、その後の長期的な神経学的な不全が度々生じます。
多くの超早産の子どもの健康状態は改善しますが、
一部のお子さんで生じた脳を含めた健康上の問題のメカニズムを
より深く理解する事はより多くの超早産の子どもの
健康状態を改善する上で非常に重要です。
脳の健康状態の不全は
特徴的な損傷と発達不全の組み合わせから生じると考えられます。
脳の損傷の最も共通的な形式は
心臓を中心とした循環器、呼吸システムの不安定性に関連します。
局所貧血-再灌流による脳の損傷の緩和する事は
脳への血液の安定的な灌流のための監視システムを
構築する技術的な発展を必要とします。
脳の損傷を初期の段階で診断することと共に
新生児集中治療室滞在の間、退室後、両方の期間において
脳機能を回復させるためのリハビリテーションの導入は
神経を回復させる事に貢献するかもしれません。
脳の発達に関して、系統的な調査が優先される必要があります。
早産の子どもが入院している間に
痛み、ストレス、子育て、睡眠などが
どのように神経生物学的な影響を及ぼすかの理解はまだ不十分です。
上述した栄養的な支援のほかに、
NICU、退室後において両親が
子育てのエンゲージメント、関与を高める事は
神経の発達の結果を改善するかもしれません(240)。

(参考文献リンク)  

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