2023年9月4日月曜日

早産児健康促進の為の包括的考察 (2)母子臍帯血輸血

分娩直後に赤ちゃんが急激な変化を経験する要因は
◎血液などを通じた循環器の変化
◎呼吸
◎飲食を通じた消化器
これらです。
臍帯遅延結紮(臍帯血の締め付けを遅らせる事)で
分娩時の胎児から新生児への赤ちゃんの移行の際
◎時間を延ばす事(751)、
◎より多くの血液を母親から受け取る事(752)
これらは特に早産児において有益かもしれないとされています(40)。
一方、臍帯血ミルキングは母親の臍帯を絞りだすことで
臍帯遅延結紮同様により多くの血液を赤ちゃんに
届けることを目的としています。
しかしながら、赤ちゃんのコンディションは
早産であるか、低体重であるか、満期産児であるか、
過体重であるか、呼吸はしているかなど
様々な条件があるため、
画一的にどのような手法がいいか?
そのプロトコルの決定にはまだ議論の余地があると理解しています。
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早産児において、臍帯遅延結紮に対して
臍帯血ミルキングは輸血戦略としては適さない可能性があります。
臍帯血ミルキングのほうが
有意に脳室内出血のケースが多かったことと、
赤血球輸血の頻度は少なかったものの、
臨床結果にとって優位性がなかったことが
メタ分析によって明らかになったためです(1)。
臍帯遅延結紮はへその尾の締め付けを
30-180秒遅らせる処置で、
臍帯血ミルキングは
臍帯を優しくつかんで胎盤の末端部から
それを絞ることで臍帯血を胎児に送り込みます。
そのタイミングは
結紮前後、切断後に行われる場合があります(2)。
臍帯遅延結紮は、
即時の結紮よりも
命を落とす、脳室内出血、壊死性腸炎、輸血の必要性が
少なかったことが示されていますが(3-6)。
少なくともこの中で脳の損傷、壊死性腸炎においては
有意性が見いだせなかったという
統計的に信頼性のある比較データもあります(40)。
但し、臍帯遅延結紮は蘇生処置を必要とする場合、
即時対応が必要な事から結紮処置を遅らせる事が
優先順位としてできないという事がある事は懸念材料です(7)。
従って、臍帯ミルキングは
20秒以内の手続きで血液を送ることができるので
蘇生処置を必要とする場合には
遅延結紮に対して手続きとして利点を生じる場合があると考えられます。
このように輸血が考えられる背景には
分娩前後で酸素飽和度がそれぞれ
50-60%から通常の85-95%まで上昇させる必要があり
適性な酸素濃度を実現させる必要があるからです。
特に脳は短時間でも酸欠になると細胞が壊死する可能性があり
分娩前後の過渡期に
酸素濃度に関わる呼吸、動脈の拡張をどのように円滑に進めるか?
それは短期かつ長期的なお子さんの健康に関わるとされています(37,38)。
しかしながら、その過渡期における移行が
必ずしも円滑に実現せず、
それに対して輸血による補助が必要な場合があるということです。
その母親から子供への輸血を
どのような手段で行うのが理想的か?
それについての議論が上述したように
現在進行形で行われているということです。
議論の余地があるのは、血液の輸送だけではなく
適性な酸素濃度の実現のためには呼吸も重要なため
呼吸不全が生じている場合には
極めて迅速な蘇生処置も必要だからです。
その場合、臍帯の結紮を遅らせる処置を取ると
蘇生処置が遅れる為、上述したようにリスクが生じます。
臍帯のミルキングでは輸血時間が短いため
同時に蘇生が必要な場合、蘇生を臍帯遅延結紮のケースに
比べて早めることが可能ですが、
臍帯のミルキングでは脳室の出血が
遅延結紮よりも疫学的にリスクが高いことが示されています。
これはひょっとすると
輸血時間が短いために急速な血圧上昇が生じ
バリア機能が十分発達していない新生児にとって
出血を生じさせるバリア損傷のリスクが高まる事を
示しているからかもしれません。
赤ちゃんが自発的に呼吸できなければ
環境からの継続的な酸素摂取が難しくなるため
分娩後の持続的な適正血中酸素濃度の実現は難しくなりますが、
臍帯切断による過渡的な貧血状態は
少なくとも一時的なお子さんの酸素飽和度の低下を招いてしまいます。
一方で、血圧の急激な変化は
一般的な出血のリスクを高める事は
脳症などのケースで知られていますが(39)、
輸血の速度を速めて、蘇生が必要な場合、
それと両立させようとすると出血のリスクが
おそらくそれによって高まってしまいます。
但し、即時結紮に対しての遅延結紮の臨床的有意性が
研究ごと一致しないのは、どういうことかを考える必要があります。

(参考文献リンク)

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