(超)早産の一部の子どもでは脳神経の発育の遅れ、
それに伴う心の健康の低下が一つの重要な問題です。
特に脳神経の組織的な成長が大きく見られる
胎児、生後2年までの間に
超早産など環境的な課題があったとしても
健全な成長を支えるための物質的、心的な支援が必要です。
この章ではそのような支援をより具体化するために
一般的な脳神経の発達について
基礎科学的な見地(9)に基づいて記述いたします。
また、明らかになったことから内容を敷衍して
青年期を含めた心の問題についても一般的な事も含めて扱います。
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子供の組織の発達曲線の中で
特に脳は生まれる前後、生後2年の間に急速に成長します。
(参考文献(9) Fig.2より)
この過渡期においての成長は
認知機能障害、自閉症、統合失調症など
様々な病理に関わるとされています。
画像による解析は非侵襲であり、
組織を傷つけず実施する事が可能なため
実際に人の子どもの状態を安全に調べる事が可能です。
そうした中で脳の構造の成長の軌跡を調べ
それに対しての認知機能や精神疾患のリスクとの
関係性を明かにできつつあります。
灰白質の成長、構造機能的なネットワーク、
それらに対する環境、遺伝子的な影響を
特に年少の子どもに対して総括します(9)。
画像診断をベースとしたバイオマーカーが
認知機能の予測や神経精神疾患のリスクの予測において
どのように有用であるかを議論します。
前述したように
生後2年の年少の時期は満期産児であっても
生涯にわたる認知能力や行動において重要であり
思春期の頃に発症する事が多い統合失調症や
自閉症のような神経性精神疾患のリスクと
深いかかわりがあります(15,16)。
この頃の画像診断を含めた人の子どものケースでの
分析は難しいとされていますが、
近年の鋭意ある分析により
構造的、機能的な脳の急速な発育が
この生後2年までの間に生じている事が示されています(17-20)。
不運にも命を落とした子供の死後の
組織学的、遺伝子学的な分析から
おそらく生後2年、あるいはそれよりも速く
脳の基本的な構造や機能的な枠組みの
準備は整うとされています(26,27)。
脳の実質のうち、神経細胞が存在する部位を灰白質と呼びますが、
これらの神経細胞の塊は子宮内に在胎する
出生前に生じるとされています(21)。
神経細胞の増加、つまり神経新生は生後にも生じ
側脳室から前頭葉などへ移動することが
生後18カ月の時点で知られています(22)。
介在性抑制神経細胞も前頭葉で生じる事も知られており(23)、
運動、注意、思考、意欲、感情など
様々な機能において重要な役割を担うこの前頭葉において
神経細胞を占有する灰白質の拡大が
生後2年の時期に生じるとされています(9)。
今述べた前頭葉などを含む大脳新皮質を示す表層の神経細胞の
少なくとも構造的な複雑性は生後1年間に急速に高度化し、
皮質の厚みや表面積の増加は画像診断で見分けがつくほどになります。
この複雑性は生後すぐに増加し、
生後2年から4年で最大となるという調査もあります(24)。
生後2年というと世界保健機関が授乳を進める時期と重複します。
母乳はタンパク質、オリゴ糖、ビタミン、ミネラルなど
脳の成長にとって重要な栄養素を全て含み
顕著な特徴としてはそれらの物質としての
構造が非常に多様、多彩であるということです。
これはサプリメントはもちろん、
自然の食物ですら実現できない多様性かもしれません。
上述したように人の各組織の成長曲線は
ある程度の偏差があってもおおよそ決まっていて
脳においては生後2年までが非常に重要であるということですが、
その成長においては、その期間の授乳を含めた
ライフスタイルが非常に重要であるということです。
神経細胞の連結性を決める接合部であるシナプスの数は
生後すぐに急速に増加し、青年期に減少します。
シナプスのスパインも同様に生後2-5年でピークを迎え
青年期に減少します(17)。
特に音声、視覚の感覚に関わるエリアで
早い段階でピークを迎えます(28)。
例えば、子どもの言語習得のプロセスは
大人になって日本人が英語を学ぶような
第二言語習得プロセスとは異なると言われています。
一般的に特殊なケースを除いては
日本で育った子供が日本語でコミュニケーションをとれない
ケースはありません。
それはその言語を使用する頻度ももちろん関係しますが、
神経細胞の連結性の生物学的な事を含む増加率が
1つの主要な要因かもしれません。
このいわばスポンジのように様々な事を効率的に吸収する時期に
一気に能力を高めたいという需要はあるかもしれませんが、
それよりもその後の健全な成長の土台となる
組織、機能的な健全性をしっかり確保する
ということが重要かもしれません。
John H. GilmoreらがBox.1aに示す年齢依存的な
神経細胞とその連結性の軌跡では
生後24か月にはほぼ成熟するように観察されます。
しかし、運動や認知機能で明らかなように
2歳児と大人では明らかに出力できる質が異なります。
もし、上述するように連結性が減少するのであれば、
具体的に何が変わって、
一方で少なくとも部分的に機能が成熟するのか?
それに対する一定の疑問が生まれます。
一方、
白質の人の脳の組織分析によれば、
髄鞘形成は胎児の時期から始まり
生まれた時点で多くの領域に存在します。
特に感覚、運動経路に関わる領域に多く存在します(41,42)。
人の記憶や空間学習能力に関わる海馬では
髄鞘形成は在胎期間20週から始まり
おおよそ出生後2年まで続きます。
学習や記憶の機能に関わる歯状回のような領域では
髄鞘形成は子どもから大人にかけて続きますが、
多くの領域では2歳の時点で
髄鞘形成は大人のレベルに到達します(43-45)。
新皮質では成熟した髄鞘のパターンは大人のみで得られ、
人以外の類人猿と比べて、長期間かけて成熟するといわれています(46)。
700gを超える容量を持つ脳は
人以外ではゾウとイルカしかおらず、
人の身体の大きさを考慮すると如何に人の脳が発達しているか
ということを示すものです。
特に今述べた人の脳の外側に位置する大脳新皮質は
最も近い近縁種であるチンパンジーの約3倍もの大きさがあり、
その機能が特に発達しています。
このように他の生物と差異がある新皮質の成熟速度が遅い事と
人が20年程度の長い時間をかけて
知覚、記憶、言語、思考などの機能を発達させていく事は
進化の過程を含めて関係しているかもしれません。
乏突起膠細胞は髄鞘を産生する機能を担っています。
大脳白質の乏突起膠細胞の数は出生後、急速に線形に増加します。
その速さは1か月あたり6億とも言われています(47)。
John H. Gilmoreらが示すBox.1aを参照して
なぜ、2年間で連結性も含めてほぼ成熟するのに
実際の人としての機能としての変化が
その後、大人になるまで劇的に続くのか?
という疑問に関しては、
1つは高次の機能を司る大脳新皮質の成熟が
遅い速度で続いていく事と、
もう1つは、
「fine-tuning」(9)、
つまり、脳の可塑性により
主要な神経回路とネットワークが再構成される
ということが関係していると考えられます。
子どもの脳の発達を調べる上では
生存している状態でその変化を
画像診断を含めて分析する必要がありますが、
特に年少のお子さんにおいては
不動の条件を維持することが難しいことから
画像診断の分析が困難であるということがあります。
分析時間をその動きの影響を受けにくいように
短くすると当然、情報量が減りますから
詳細な分析に必要な像としてのコントラストが
でにくいということが生じます。
従って、交絡因子として
血液の脂質レベルやコルチゾールレベルなど
液体生検によるバイオマーカーを組み合わせる事によって
その精度を多角的に高めていくことが大切になります。
上述したように
年少時の脳の発達は急速で、
生後2年までに大人の80%の容量に達すると言われています。
神経細胞の多い灰白質は上述したように
青年時期には減少しますが、
髄鞘、軸索など神経連結に関わる白質に関しては
30歳まで緩やかに容量が増加し、
その年齢でピークを迎えるとされています(48,49)。
皮質の厚さは1-2歳で最大を迎え、
皮質のしわに関連する表面積は
年長の子どから早年の青年期まで拡大する
と言われています(50-52)。
皮質には灰白質が分布している事から
そこには主に神経細胞が存在します。
この皮質厚と一般的な知性は正の相関があるとされています(53)
この関係性は皮質表面積でも当てはまります。
従って、神経細胞の絶対数は
人の知性において当然ですが重要ということになります。
2歳には運動能力や言語能力が飛躍的に発達するといわれていますが、
0歳から2歳までにその飛躍的な発達の土台が出来上がる
ということです。
その中でも脳の厚み方向の神経細胞の増加が
知性の発達に重要であり、
遺伝子、環境がどのように神経細胞形成に関わるか?
それについて考える事は
お子さんの生涯にわたる知性に関わることです。
例えば、探求の為の豊富な経験は
神経細胞の発達に好影響を与えるかもしれないと考えられています(54)。
但し、早産児でリスクが高まる自閉症の子供の脳では
左半球の皮質厚が6歳の時点で厚く、
その成熟が遅れることが報告されています(55)。
従って、皮質厚のバランス、成熟期間なども
健康な脳の成長のためには重要であり、
単にその大きさだけでは計測できないことが示されます。
一方、
神経細胞の連結に関わる白質では
白質内に存在する水分子、流体の流れの異方性が高まり
それは、繊維質が発達し、白質の成熟に関連するとされています。
この事はMRIの画像診断によって測定可能です。
この白質の連結では
ネットワーク理論のスモールワールドモデルで記述できるような
比較的近い領域の連結が密になるような連結様式が当てはまります(56)。
この束になっている領域に多くの軸索が存在する
いわば、中枢、ハブとなっている部分が存在します。
白質は灰白質に比べて緩やかな成長曲線を描くとされていますが、
大人で形成されるような上述したスモールワールドの局所の中に
存在するハブに類似するような連結様式は
出生時点ですでに存在する事が
Connectomeで確認されています(57,58)。
このようなハブは出生前の在胎期間30週の胎児にも
同様に確認されています。
一方
連合野同士の巨視的なつながりを示す
灰白質の皮質同士の連結、連携は
灰白質の容積や皮質の厚さの関連する際に
密接に関連します(59,60)。
脳の表層の近くに主に分布する神経細胞を多く含む
灰白質がどのように連合野ごとに厚みを変えているか?
それを示すStructural covariance networksは
遺伝性を示します(61)。
これが通常の人との偏差が大きい場合には
精神疾患のリスクが高くなります(62)。
前述したように左半球の灰白質の厚みが相対的に厚くなり
その成熟が遅い場合には自閉症のリスクが高くなる
ということが示されていました。
このように灰白質の厚みの分布の違いは
脳の健康状態に影響を与えるという事です。
これは当然、知性にも影響を与えます(63)。
おそらく上述したように早産児が髄鞘など連結に関わる白質が
厚くなる傾向があるのは、
神経細胞の減少を連結によって補おうとする
脳神経の順応が関わっている可能性があります。
しかし、その副産物として、
異常なつながりによって自閉症や統合失調症などの
リスクを高めてしまう可能性もあるかもしれません。
脳神経のネットワークは
それぞれの連合野の中の局所的な領域内でのつながりを示す
スモールワールドネットワークを考えるほかに
連合野ごとのより巨視的なネットワークや
そのコンポーネントとなる灰白質や白質の厚さや表面積が
共変性をもつという
構造共変性ネットワーク(structural covariance networks)。
これについて考える必要があります。
領域間のつながりがどのように脳の機能に影響を及ぼすか?
この領域間が協働することで情報の統合が行われます。
それによって高度な認知機能が発揮されます。
Brandon A. Zielinski(敬称略)らによれば、
脳の組織的な発達は2歳までが主要ですが、
構造共変性ネットワークについては
5歳から18歳まで比較的年長の子供まで発達し、
その領域間ネットワークの領域は
年長になるにつれて拡大するといわれています(89)。
神経細胞がある灰白質と髄鞘など連結に関わる白質の
厚み、表面積が領域間の相互作用によって共変性を持つという
構造共変性ネットワークは
年齢経時的な変化の中での組織間の協調的な成熟の結果である
とされています。それは9歳から22歳で示されています(90)。
このような構造共変性ネットワークを含めて
脳の領域間のつながりを示す、
大きなスケールでのネットワークは
出生前の胎児の段階から生じます(91,92)。
脳の神経のつながりは電気信号によって起こるわけですが、
脳波記録(EEG)によると早産児において
ネットワークが機能化するための微調整(Fine-tuning)に必要な
間欠的な発火や領域間での同調的電流振動が確認さてています(93-95)。
人の発達において
嗅覚、視覚、知覚、聴覚、平衡覚、味覚といった
外界からの情報を認識するための基本的機能である感覚器では
上述した脳の野(特定の領域)間に及ぶ
広範なネットワークにおいて
その機能化のために必要な
特徴的な電気信号パターンとそれによるチューニング(微調整)が
自発的な活動として生じるとされています。
例えば、眼の網膜、耳の蝸牛、筋肉の運動などが挙げられています(9)。
チューニング、微調整とは組織学的にどのような事が起こるか?
という事はなかなか良い情報が引き出せませんが、
神経系に電気信号が入る事によって
組織的にも何らかの変化があるということかもしれません。
例えば、細胞同士の吸着には
細胞吸着分子(Cell adhesion molecules(CAMs))が関わります。
◎インテグリン
◎カドヘリン
◎免疫グロブリンスーパーファミリー
◎セレクチン
これらが細胞吸着分子です。
しかし、それらの連結性は1回で確立するわけではありません。
Yasuhiro Kanda(敬称略)らの総括の中で記述されているように
2次リンパ節内での抗原提示からエフェクター形質獲得まで過程において
樹状細胞とT細胞は最大で数時間相互作用する事があります。
何度も間欠的に結合し、脱離し、その結合時間を長くしていきます(753)。
このことは結合の回数によって
その結合時間、相互作用が強化されていくことを示唆するものです。
同じような機序が上述した細胞吸着分子である
インテグリンでも確認されています(754)。
上述した細胞吸着分子のうちカドヘリンのサブタイプとして
プロトカドヘリンがあります。
このプロトカドヘリンは70種類あり、
主に神経系を中心に多様に発現しています。
このプロトカドヘリンの遺伝子バリアント、
それと紐づく構造的な多様性は
神経系の連結における特異性を保証するものであると認識されています。
このプロトカドヘリンでもインテグリンと同じように(754)、
活性状態であるクラスタリングが生じます(755)。
神経連結に関わるプロトカドヘリンのこのような構造的な活性化は
神経回路の強化と関連しているかもしれません。
一方、
機能としては、1度経験した事を学習して
その機能を再現できるように神経機能が微調整されるということです。
その機能に関わる神経機能が強化、効率化されるということかもしれません。
年少の子どもの頃は、日々、成長し、学習して
それを当たり前にできるように再現できるようにしますから
このような感覚器を含めた神経機能の微調整は
恒常的に生じていると推定されます。
このような神経機能の分析はfMRIなどが利用されますが、
それができる理由としては
神経細胞と脳の循環器が
一時的な神経伝導などの活動によって
おもに星状膠細胞などからの
一酸化窒素やカリウムイオンなど
血管拡張作用のある分泌物を通じて
相互作用し、局所的に血流が変わるからです。
その血中のヘモグロビンに結合した酸素濃度をfMRIで分析する事で
間接的に脳の神経機能を分析するというものです。
このように神経活動の活性化を画像診断で
任意の分解能で分析する事で
ネットワークの発達を分析する事が可能です。
私たちがメディアなどを通じてよく耳にする
視床下部という脳の部位があります。
体温調整、ストレス応答、食欲、睡眠覚醒などを
調整する私たちのライフスタイルに密接にかかわる部位ですが、
この視床下部の隣接する上部には視床と呼ばれる部位があります。
この部位は感覚情報の処理と伝達に関与します。
その伝達はどこに向かって行われるか?
それぞれの感覚に関連する外側の大脳皮質に向かってです。
これを「Thalamus-based relay」と呼びますが(9)、
この連携により、
感覚入力の解釈、知覚、認知、記憶、意思決定などの
高次の認知機能が可能になります。
これのリレーが妨害されると
感覚過敏や注意力の欠如などが生じるという事なので、
高次の機能とは
ある種、動物的な感覚を視床で得て
それをより客観的、制御的に処理するのが
人においてチンパンジーの3倍も大きい
最外周部に存在する大脳皮質です。
このような脳の中心部から最外周への
信号リレーである視床-皮質ネットワークは
新生児の頃から発達すると言われています(96,97)。
それらの回路が精製、強化、微調整され
より広範に広がっていくと考えられています(97)。
このような
脳の中心部からの最外周部への
視床-皮質ネットワークは人でより発達的であり、
前述したように客観性、制御性を含む
高次の認知機能と関わりますから
年少の時期から、これに関する適切な神経発達が実現することは
成長後におけるこの感覚に関する高次の認知機能の高さに関連します(98)。
さらに、その高次とは同時に処理する能力も含まれます。
具体的には外部からの情報を心の中で短時間で処理し、
それに基づき他の人と会話したり、
文章として出力したり、計算する事です(97,98)。
読書における文章の理解も同様です。
これを一般に「ワーキングメモリ」と言います。
勉強する上において「本質的な理解」という事は非常に重要です。
大学など高等教育も含めて
学校で主に学習する科目の内容の一部は
過去から構築されてきた「概念」です。
この概念化とはいわば、基本的なルールであり、
その理解のためには高次の認知機能、客観視が必要になります。
客観とは共通に当てはまるということを考えることですから
それは科学に関していれば、
任意の理論の本質を理解する事に他なりません。
このような学習の機能を高めていくためには
視床から大脳新皮質のあらゆる領域に向けて放射状に広がる
神経ネットワークをバランスよく構築し、
その微調整、洗練が実現されるか?
それが一つ重要かもしれません。
但し、理解のためには
過去から積み上げてきた学習経験によって得られた
記憶を利用する必要があります(124)。
外部からの入力を統合するのが視床で
海馬はその情報を一定期間保持したり、
記憶に従った情報の関連付けを支援すると言われています。
大脳新皮質はこれら視床、海馬と連携することで
高次の機能を発揮し、概念化や抽象化などが行われ
理解につながると考えられます。
機能的なネットワークの中で
安静時や外界からの刺激がない状態での
内省的な思考状態の時に活性化される
デフォルトモードネットワーク
外界からの視覚的な刺激に対して注意を向ける際に活動が高まる
ドーサルアテンションネットワーク
外界の刺激に対する適切な注意の切り替えを調節する
サリエンスネットワークなどは
2歳までに形成され
複雑な認知タスクや問題解決、課題遂行などの際に活動が増加する
エグゼクティブコントロールネットワークは
認知的柔軟性に関わる高次の実効機能ですが
この能力は典型的な大人にみられるように
2歳以降に成熟すると言われています(154)。
上述した2歳までにネットワークの基礎が構築される
3つの機能は内的なイベントと外的なイベントで分けられます。
人は子どもも含めて外的な刺激を受けるケースも
生活の中で多くありますが、
そうした自分の中で閉じた思考状態と
外界からの刺激に対する反応のいわば競合を
1歳の時にすでに経験すると言われています(155)。
ここからは少し話は脱線しますが、
子供だけに限らず、大人の心の問題に影響を与える事なので
少し詳しく突っ込んで考えられる事を書きたいと思います。
社会に出ると人間関係で悩む人がおおよそ9割とも言われますが、
人との関係だけに限らず、社会が複雑化している中で、
学生さんを含めて何らかの悩みを持っている人はいると思います。
家族、友達の前では出さない場合もあると推察しますが、
心底で何らかの悩みを抱えている人はいると思います。
その「悩み」とは、「特定の気になること」ですから
それについて何度も繰り返し
「自分の中で閉じて」考える事になります。
言い方を変えれば、
外界の光、音、風、会話などに対する注意の中で
それについて考えるわけでは当然ありません。
あるいは学生さんであれば、
部活動で特定の運動をしていたり、
あるいは集中して勉強している時には
「注意」がそちらにいっているわけですから、
その悩みの事は当然忘れています。
こういう時には
ドーサルアテンションネットワークが活性化している
と考えられます。
しかし、家に帰って、自分だけの時間になった時
ある特定の環境で起きやすいかもしれないですが、
その悩みについて思い出します。
そしてそれを繰り返し自分の中で閉じて考えます。
このような反芻的な思考を「ループ思考」といいます。
このように内省的に自分の中で閉じて考える事は
上述したデフォルトモードネットワークに含まれ、
このデフォルトモードネットワークが活性化されると
そのネットワークがどのような領域同士つながるか?
これにはもちろん依存しますが、
様々な精神疾患と関わりがあると報告されています。
例えば、典型的なものとして、
◎うつ症状(166,168)
◎統合失調症(167)
◎不安障害(168)
これらです。
また、悩んでいる時には外的な刺激があっても
「心は上の空」という事もあります。
これは注意散漫で心の中の事象に捕らわれるということで
マインドワンダリング(心の迷走)と言われますが、
これもデフォルトモードネットワークと関連があります(169)。
総じて、自分の中で考え込む傾向のある人は
心の問題や心の病に一定の注意を向ける必要があるかもしれません。
特に、若い時期に発症しやすい精神疾患もあるので
そのような思春期に負のストレスがかかるような
自分の中での閉じた思考を繰り返す事は
少なくとも一定のリスクがあります。
そうした場合、注意を外に向けるとか、
家族、友人、パートナー、先生、医療福祉スタッフなど
他の人の力を借りる事も大切な解決策の内の一つです。
但し、自分の中で考えるというのは
必ずしも悪い事ではなく、
自分の知識、知恵、記憶を総動員して、
難しい問題解決や創造性を発揮する上でも必要です。
この時もデフォルトモードネットワークが必要です。
従って、例えば統合失調症の場合は
このネットワークが弱まっている領域も存在します(167)。
つまり、デフォルトモードネットワークそのものが
人の心の健康において必ずしもデメリットをもたらすものではなく、
人らしく創造的に生きていく上で必要なものでもあるということです。
上述したように生産的ではない悩みを
自分の中で抱え込んで、それについて繰り返し考え込むと
様々な心の問題につながる可能性が考えられます。
繰り返しになりますが、一つのソリューションとしては、
注意を外に向けることを意識的にすることも大切かもしれません。
様々な外の刺激を入れる事もそうです。
あるいは自分の悩みを人に話して
それについて会話することも意味があるかもしれません。
注意を切り替えるサリエンスネットワークというのがありますが
このネットワーク能力を高めると
自分の中で考え込む事と外的な刺激に注意を向ける事の
切替が上手くなることも考えられますから、
悩みを抱えやすい人は
日常生活の中で意識的に外の刺激に対して注意を向けられる時間を
設ける事が大切になります。
「これをしている時には集中できる」といった
自分の好きな事があれば、それは大きな味方になると思います。
あるいはストレスがかかることだけど
それについて何度も考え込んでしまうという
反芻的な思考に陥りやすい状況のときには、
その「考え方を変える」「見方を変える」という事は有効です。
これを認知的柔軟性とも言います。
例えば、大学生であれば友人関係の構築が
高校の頃のようにクラスが固定的ではないから
上手くできないという事もあるかもしれません。
1人でいるときには周りの目が気になるし、
自分の友人形成能力も含めて、
それが大きな悩みであるとします。
周りの目が気になるけど
では逆に自分は周りを注意深く見ているか考えます。
例えば、自分と同じように1人でいる人をくまなく
注意深くみているかどうか?
そうするとあまり関心はないかもしれません。
そうしたら少し見方が変わります。
あるいは友人がいないことで逆に1人でできやすいことも
考えてみるというのも異なる視点になります。
また、集団を想定している事が固定観念かもしれません。
1人の友人でいいなら、友人形成は楽かもしれません。
そのように複数の視点を持つと
案外、自分の悩みは分散され、弱まる可能性もあります。
しかし、自分ではどうしても解決できない難しい悩みもあります。
一度は聞いたことがあると思いますが、
「(一時的に)悩みを忘れる事ができてよかった。」
というものです。
何か難しい悩みがあって、
それを一瞬でも忘れる事が出来たことに対しての喜びですが、
正直なところ、それで悩みが解決するわけではありません。
それに対して絶望感を得る人もいるかもしれません。
でも、デフォルトモードネットワークの事を知ると
それに対する考え方は少し変わります。
なぜなら神経回路は繰り返されることで強化される事もあるからです。
つまり、忘れる時間、回数を増やすことができたら、
その悩みを直接的に解決しなくても、
状況は変わらないけど、あまり気にならなくなった
ということが将来的に起こり得るということです。
デフォルトモードネットワークが
弱まる、変わる可能性があるからです。
ここに気付くことは、
難しい悩みを抱えている人にとっては大きな事です。
さて、ここから内容を戻します。
例えば、
教育のカリキュラム、過程を見ると
小学校、中学校、高等学校、大学、大学院と
段階を経て、内容は高度化し、
より抽象的な判断が必要で有ったり、
答えの示されていない課題解決が必要になる
ケースが多く出てきます。
このような階層的、段階的に高次になっていく
学習などにおいても必要な
初期の基本的な機能から、中程度、
高次の脳神経ネットワークの機能化は
「階層的特徴」と呼ばれます(156,157)。
この階層化においては一般的な大人が有する
高次の機能は人で特に発達している脳の外側ににあたる
大脳新皮質の役割が低次の機能に対して
相対的に大きくなると言われています。
但し、それぞれの段階的な機能においては
階層的だけではなく、野ごとの連携を示す
分散的なネットワークも重要であるとされています。
このような低次から高次の段階的、階層的な
ネットワーク形成は1歳の時点で始まっています(158)。
また、脳全体としてみた時のネットワークの効率は
発達に従って、高くなり続けると考えられています(159,160)。
基本的に大人になった時の身体の大きさは
男性のほうが女性よりも大きく、
それに伴って頭、脳の大きさも大きいです。
脳は体と異なり成熟も早く、子どものころから差が出ます。
実際に生まれた時点においても
6%程度、男性の方が女性よりも脳は大きいとされています。
最終的にはおおよそ10%くらいの差になります(161)。
このように生まれた時と成熟段階で差が開くわけですから
男性の脳の発達は女性に比べて、
変化率が高いと言われています(162)。
このような性差について組織学的な観点と
その成長を支えるホルモンや染色体の作用などの
生物学的な観点、生活環境などの観点で事実を得ると、
精神疾患にはその種別において
疫学的に性差が存在することもありますから
性差特異的な治療や病理の理解に貢献する可能性もあります(9)。
実際に人の脳の機能が父親、母親からの
遺伝的な要因が大きいか?
これについて気になるところではありますが、
その遺伝性においては
機能によって差があるものの
おおよそ半分程度は大きさ、連結性において
遺伝性があるとされています(9)。
しかしながら、
胎児の時期には
脳の領域ごとの遺伝子発現の相違が確認され、
その発現の相違は生後、しばらく経つと均一化される
と言われています(163)。
もし、この差が領域ごとのバランスに影響を与えるとするならば、
自閉症や統合失調症などにおいては
脳の領域ごとのバランスの不全が確認されるという事ですから
実はその原因の一つは生まれてからの環境だけではなく、
領域間の遺伝子的な観点では
すでに胎児の時からリスク因子として存在している可能性も疑われます。
実際に自閉症が「いつ」「何で」「どのように」生じるか?
といった疑問があります(164)。
近年のコンピューターモデル、細胞モデル、動物モデル
臨床モデル、遺伝子モデル、組織解析から総合的に考えると、
自閉症は遺伝性が高く、多段的で、多様な経路で成長し
それは胎児の時期から年少の時期まで関連し、
脳全体の疾患であるとされています(165)。
もし、胎児の時期に組織的発達、遺伝子的発現が重要で
脳全体のバランスが関与するのであれば、
妊娠女性の早産のリスクである
高血圧腎症、生活習慣、羊膜炎などいずれかがあり
かつ、早産が生じてしまったときには
これらの要因に影響を与え、
自閉症の発症リスクを高めてしまう
という事は考えられるかもしれません。
なぜなら、Mihovil Pletikos(敬称略)らの報告に
示されるように(163)、
上述した因子のうち重要な遺伝子発現のレベルが
胎児の時期には脳の領域ごとの差異が大きいからです。
全体に均一的に発現されるわけではないので
遺伝子的な脳の領域間のバランスが
この胎児の時期にある程度決定される可能性もあるからです。
従って、胎児の時期の環境的な因子によって
それらの遺伝子的なバランスに影響を与えてしまう
それが自閉症と関連するという事は可能性として考えられます。
つまり、早産により自閉症が高まるという疫学結果(170)を
一部、合理的に説明しうることかもしれないという事です。
一方で、
そのような遺伝子の発現に関わる要素だけではなく
当然、元々の遺伝子変異も
脳神経の発育やそれに伴ういくつかの疾患に影響を与えます。
子供や青年期で発症する
直接的な脳神経の疾患である精神疾患だけではなく、
老年期で診られるようなアルツハイマー病に関わる
遺伝子変異はすでに新生児の時から確認されています(9)。
また、DNA情報がmRNAに転写される際には
mRNAがDNAにアクセスする必要がありますが、
DNAは通常ヒストンによって周辺の巻き付いた構造があり
それがアクセス性の高さを少なくとも一部決めています。
それが緩むとアクセス性が高まり、遺伝子発現が高まり、
きつく締め付けられるとアクセス性が弱くなり、
遺伝子発現が弱くなります。
このヒストンの締め付けはメチル化などの装飾によって
制御されており、メチル化は遺伝子発現の程度に影響を
与えると考えられていますが、
このようなメチル化は
遺伝子変異と共に胎児に影響を与える、母親の不安など
心の状態にも影響を受けて変わります(171)。
脳の急速な発達時期である胎児の時期に
こうしたメチル化が
感情に関わる扁桃体や学習、記憶に関わる海馬の大きさに
影響を与えている可能性があります(172)。
このような母親の健康状態だけではなく、
間接的な事も含めて考えると
親の経済状況や社会的状況が
子どもの脳の発育に影響を与えていると報告されています(173,174)。
特に、子どもが小さい時の
経済状況、周辺環境、教育状況が重要である
という報告もあります(175)。
これは当然、John H. Gilmore(敬称略)らが示す
Fig.2の発達曲線からわかるように(9)、
受精してからの時期が早いほど
その発達が急速に生じます。
2歳までに脳の組織の大部分が決まるとすると
遺伝子的な事も含めて
その組織の成長を支える様々な環境が重要である
という事は合理性があります。
遺伝子的な事だけではなく、
妊娠時期のストレス、抑うつ、不安なども重要であり、
パートナーも含めて、
妊娠女性をどのようにケアしていくか?
このことは子どもの健康に影響を与えると考えられます。
健康管理のために抗うつ薬も含めて投薬されることもありますが、
そのような妊娠時期に母親が薬を服用すると
子どもの休息時に関わるデフォルトモードネットワークに
影響を与えるという報告もあります(176,177)。
デフォルトモードネットワークについては
上でも取り扱いましたが、
非常に重要な項目なので、詳細に記述していきます。
タスクポジティブな活動とタスクネガティブな活動、
それの切替の活動といったことは
人が生きていく上で当然、基本的な分類になります。
例えば、仕事をしている時には
タスクポジティブな状態ですが、
人の生活には休息も必要なので、
通常は仕事中にも休憩があったり、
週末などの休みが設けられているケースが多いです。
「オンとオフ」このように言います。
従って、オンとオフを切り替える事も重要です。
タスクという観点で考えると
オンの状態がドーサルアテンションネットワークで
オフの状態がデフォルトモードネットワーク(178)、
その切替がサリエンスネットワークです。
より高度なオンの状態が
エグゼクティブコントロールネットワークです。
但し、考えながら作業をするということもあるので、
その場合はオンとオフが混在しているか、
あるいは非常に短時間の間に高頻度で
切り替わっているかもしれません。
アルツハイマー病の患者さんでは、
デフォルトモードネットワークの部分のエネルギー使用が
低下しているとされています(179)。
もし、その機能が低下しているのであれば、
特に進行した状態において患者さん本人が
外向きに観察される症状と合わせて考えると
どの様な状態であるかを推測する一つの糸口になります。
一方で、
うつでは反芻思考(Rumination)が一つの主な症状ですが
デフォルトモードネットワークが高まっているとされています(180,181)。
投薬によってこのネットワークが変わる事もあると
報告されています(185)。
一方で、デフォルトモードネットワークに着目すれば
健全なそれを形成するためにはどうしたらいいか?
反芻思考などの特徴などを踏まえて、
具体的な生活習慣や認知療法に役立つ可能性もあります。
また、自閉症では
自己と他人について考える部分であるmPFCと
デフォルトモードネットワークの中枢であるPCCの間の
つながりに異常があるとされています(182,183)。
これは、コミュニケーションが苦手な事と関連があるかもしれません。
ディフォルトモードネットワークは
自分の状態を抽象的に理解するメタ認知においても重要であり、
一方で、人の気持ちを理解したり、評価したり、
過去事について記憶を頼りにして考えたり、
未来の事について想像力を発揮して予測したりもします。
つまり、自己、他人、時間についての
抽象的な事も含めた深い思考において重要です。
あるいは睡眠の質に関わるとも言われています。
デフォルトモードネットワークが弱いと
睡眠の質が落ちるとも言われています(184)。
従って、
何かに集中できるとか、切り替えができるとか
高度なタスクができるといったこと以外に
健全な社会生活を送るうえで
このデフォルトモードネットワークというのは
非常に重要な役割を担っています。
全て完全とはいきませんが、
バランスの取れた良いデフォルトモードネットワークというのは
脳神経の様々な疾患の健全な維持において
非常に重要かもしれないし、
そうではない一般的な人も含めて、
ウェルビーイングの一翼を担うものかもしれません。
デフォルトモードネットワークは
上述した自分の中で閉じた積極的な思考状態だけではなく、
特に何も考えていない休息の状態にも生じます。
起きている時間、ずっと何かのタスクをしている、
あるいは何かを考えている、
そうしてないといられないというのは
ある種でしんどい、苦痛ですが、
そうした中でホッと一息つくような何も考えない時間を
うまく設けることができたら、
生活の中に少なくとも一つの多様性、アクセントが生まれます。
スマートフォンが普及して、
いつでも、どこでもインターネットにアクセスできる事で
暇な時間があれば、それを見てしまうということがありますが、
それが現代の人をひょっとしたら
気付かないところで苦しめているかもしれません。
特に何のタスクもしないで、
何か想像したり、考えるのを辞めてぼーっとしたり
そのサイクルを自由気ままに回すことが
心の一つの安らぎに繋がる可能性もあります。
このような機能は
デフォルトモードネットワークが関わるかもしれません。
このようなネットワーク構築は
いつでも変えることができるものだと推測されますが、
このネットワークが
上述したようにその人が自発的に制御できない
小さい頃に構築される事は見逃せない事実です。
今述べた様に心の安らぎにも関わり得ることですし、
一方で、人らしい創造性や深い分析能力にも関わります。
自分の今の感情を客観的に理解するメタ認知や
他人の気持ちを理解する事にもつながります。
日本で行われた数千人規模の比較研究で
統合失調症、双極性障害、大うつ病傷害、自閉スペクトラム症と
健常者の脳の体積の違いを部位別に統計的に比較した結果があります(369)。
それによると
海馬、扁桃体、視床、側坐核は
いずれの精神疾患でも健常者に比べて小さい傾向にあり、
統合失調症においては海馬の差が大きくなっています。
一方、脳室はいずれの精神疾患でも大きくなっています。
脳室は脳脊髄液が存在する液体が満たされた領域で
脳脊髄液は神経細胞への栄養供給や老廃物の排出に関与しており
その循環に関わっています。
特に脳室の拡大が統計的に見られた統合失調症では
確かに過去の分析でも脳室の拡大がみられるという研究があります(370,371)
その脳室の拡大がNaohiro Okada(敬称略)らの結果で示される(369)
視床の統計的な減少と一致して、視床の減少と関連している
可能性があるという結果もあります(371)。
脳室の拡大によって視床だけではなく
側坐核、海馬あるいは大脳新皮質(372)など
実質に圧力をかけ萎縮させている可能性もあります。
なぜ、こうした疾患が脳室を拡大させるかは未知ですが、
物理的に考えると脳室の拡大は
脳の循環が円滑でない事によっても生じている可能性を疑わせます。
下述するように脳室を血管として見立てた時に
血管の内皮組織に当たる部分は上衣細胞と呼ばれます。
Ángela Fontán-Lozano(敬称略)らがFIGURE 1に示すように(359)
上衣細胞には繊毛があり、それがなびくことによって
脳室内の脳脊髄液の循環性を一つ決めていると考えられます。
実際にこの上衣細胞の繊毛が脳室拡大に影響を与えている
という報告もあります(373)。
また、上衣細胞に関連して脳脊髄液の流れの滞りは
高齢になると大きくなると言われており、
不安症や鬱でも脳脊髄液の循環に影響が出るとされています(374)。
上衣細胞の下には
Ángela Fontán-Lozano(敬称略)らがFIGURE 1に示すように(359)
顆粒細胞の塊からなる組織があり、
現時点ではエビデンスが示せる段階にはありませんが、
血管には平滑筋と呼ばれる弾力性のある組織がありますが、
ひょっとすると顆粒状の組織が脳室の側壁の機械的特性(弾力性)の
1つの要因となっている可能性もあります。
循環器では高血圧が問題となりますが、
脳の高脊髄液圧も問題になる可能性があり、
その拡大は内壁に存在する組織学的な異常も関連しているかもしれません。
その拡大によって脳の実質が圧縮応力を受け
長期的に見た時に萎縮していくという事は考えられます。
Naohiro Okada(敬称略)らの結果は
実質、実質の中の灰白質、白質、脳室、脳膜などの大きさを
人のケースで大規模に健康な人と精神疾患を持つ人で比較したものであり、
この知見を子供の発達期にある脳の発達と精神疾患の関係に
適用することができると考えられます(369)。
統合失調症、双極性障害、大うつ病傷害、自閉スペクトラム症
全てにおいて両側の脳室ともに健常者に対して拡大がみられています。
上述したように脳室は脳脊髄液の循環に関わります。
従って、子どもの発達期も含めて
脳神経系を循環器的な視点で考える事で
病因のより深い理解、(早期)診断、治療に役立てられる可能性があります。
脳を循環器としてみるという考え方は
発達期の子どもの脳神経を健全にするだけではなく、
あらゆる年齢の脳神経の健康に関わることかもしれません。
循環器では度々、高血圧が問題になります。
高血圧になる理由は血管の柔軟性もありますが、
流れる血液の粘性も関わります。
脳脊髄液も同じ液体ですから
当然、その物性として粘性が存在します。
その粘性が高まれば、そのせん断応力により
Shigeki Yamada(敬称略)らによれば、
脳脊髄液の内壁に存在する上衣細胞上にある繊毛が
上衣細胞から脱離する(shedding)と言われています(373)。
この繊毛がなびくことによって
脳脊髄液の流速、循環に貢献していますから
その密度が減ることで、流速が低下し、
また脳脊髄液の粘性も高いことで
より脳室は高い圧力を受け拡大する事になります。
その脳脊髄液の粘性は
◎アルコールの過剰摂取(Alcohol abuse)(373)
◎高い血糖値(373)
◎高い塩分濃度
◎脱水
◎タンパク質量増加
これらが関わっています。
また、注目すべきは睡眠中は脳の間質液が60%増加するため
脳の循環が促進されることが考えられます(404)。
睡眠は脳のメンテナンスで重要ですが、
循環器としてみた時に
循環が亢進され、様々な物質の排出能力が高まっている
事が挙げられるかもしれません。
そうした時に、もし、脳の循環において重要な役割を担う
脳室の繊毛の濃度が低ければ、
よい睡眠に繋がらないという事はあるかもしれません(405)。
高齢になると睡眠の質が落ちる事は一般的に言われますが、
これはタンパク質の蓄積によって
脳脊髄液の粘性が高まる事と、
上述した上衣細胞の繊毛が少なくなっている事が
挙げられるかもしれません。
Naohiro Okada(敬称略)らの大規模な調査では
人のケースで統合失調症の人が他の精神疾患と比べても
明らかに脳室が大きい傾向にありました(369)。
統合失調症では完全に明らかではありませんが、
ドーパミンが高まる傾向にあります(406)。
そうすると睡眠の質が顕著に低下します。
一般的に
楽しみな事、興奮状態にあると眠りにくいです。
これは一部、ドーパミンが関係しています。
このようにドーパミンの調整が不全になると
睡眠に影響が出てます。
ドーパミンが過剰になると眠りにくくなると言われています。
その睡眠時には脳の循環系が高まるため
タンパク質など脳脊髄液の粘性を高める物質を排出する能力が
同様に高まると考えられますが、
睡眠の質が落ちる事で循環が弱まり、
それによってたんぱく質など粘性を高める物質が蓄積し
結果として脳脊髄液の粘性が高まり、
上衣細胞の繊毛が脱離して、さらに循環が弱まり
その結果、脳室が拡大するということです。
但し、これは現時点では仮説です。
睡眠の質というのはレム睡眠やノンレム睡眠の
タイミングと回数で定義されますが、
それと脳脊髄液の循環量差(起床時 vs 睡眠時)を個人ごと比較して、
それで相関があるか調べる事になります。
また、一方で統合失調症やアルツハイマー病などの疾患がある人の
脳脊髄液の粘性が健康な人に比べて高いか?
これについても調査の余地があります。
睡眠が大切なのはいうまでもないですが、
もし、このようなエビデンスである程度の合理性が得られれば、
なおさら、子どもも含めて、
脳神経にリスクを抱えた人は
薬などの力も借りて良い睡眠をとる事がとても大切です。
それが生活の基本となる可能性があります。
その為には薬だけではなく
規則正しい生活や
朝光を浴びて、運動するなど生活習慣も大切になります。
また上衣細胞の繊毛は遺伝子的な影響もあります。
Ccdc39, Celsr2, Celsr3, Cetn2, Dvls, FoxJ1, Hydin,
Mdnah5, Pkd1, Tg737, Daple, Dnah14, Cfap43 Cwh43
これらが関わっているとされています(407-424)。
従って、遺伝子的なアプローチも存在します。
(参考文献リンク)
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