2022年12月14日水曜日

癌ドライバー遺伝子の重要性と発見

人の身体は主に細胞の働き、
それらの高次の相互作用によって
動的平衡、恒常性が保たれていると考えられます。
その準平衡状態(quasi-equilibrium state)や
恒常性の中には時間的な流れがあり、
そのダイナミクスには進化が
細胞レベルのような微視にも存在すると考えられます。
進化は自然選択や中立選択がありますが、
その選択性を決める大きな一つの要因には
自然淘汰に関わる細胞同士の生態競争があります(2)。
例えば、
通常細胞と癌細胞の間でも
どちらがその微小環境で主要となるか?
この競争があると考えられます。
細胞の融合、細胞外小胞、免疫細胞(3)なども
関わっていると想定されます。
また遺伝子レベルで
その細胞の競争は考えられます。
特定の環境で細胞が成長する事に関わる
遺伝子はドライバー遺伝子と呼ばれ、
とりわけ癌細胞の成長に関わる遺伝子は
癌ドライバー遺伝子と呼ばれます。
一般的に癌は歴史的に見ると
多細胞生物が生じた時から存在すると言われています。
一般的には
レトロウィルスなども含め
ウィルスなどによって生じる可能性は示唆されます(4)が
癌は直接的にはウィルスなどによる
間接的な伝染を除けば、
非伝染性であると考えられます。
従って、常に個体内の閉じたコミュニティーの中で
長い歴史を通じて生物と共存してきた
という風にも考えられます。
その様な中で、
癌と共存していくという考え方もあります。
特に高齢の方の場合には
診断されていない癌が多く存在するかもしれない
という指摘もあります。
そのような癌との共存を考える中で
より重要になるのが、
通常細胞と癌細胞の生態競争であります。
言い換えれば、
癌細胞を特定の環境内で成長させない、
あるいは周辺環境との相互作用の中で
制御下に置くことが大切になります。
そのような視点に立つと
癌の成長に関わるドライバー遺伝子を調べる事は
大きな意義を生みます。
ドライバー遺伝子の働きを抑えることができれば、
癌の成長を相応に抑えることができる
かもしれないからです。
そのドライバー遺伝子を
遺伝子治療によって無効にさせたり
ドライバー遺伝子に関わるたんぱく質を
消滅させたりすることで
癌の成長を有効に抑えることができるかもしれません。
--
Shimin Shuai(敬称略)らは
DriverPowerというソフトウェアを使って
38種類、2658癌細胞数の
ゲノムシーケンスデータを取得しています(1)。
このソフトウェアは
〇Mutation burden
〇Functioal impact evidence
これらを使っています。
それによって
従来難しかった(5,6)
ノンコード領域を含む
ドライバー遺伝子変異を明らかにしています。
その数は
コード領域で217種類
ノンコード領域で95種類となっています。
元々、体細胞変異の中で
ドライバー遺伝子変異は
少ない割合となっているため(7)、
この多くの種類の遺伝子を明らかにしたことは
大きな意義を生むと考えられます。

(参考文献)
(1)
Shimin Shuai, PCAWG Drivers and Functional Interpretation Working Group, Steven Gallinger, Lincoln D. Stein & PCAWG Consortium
Combined burden and functional impact tests for cancer driver discovery using DriverPower
Nature Communications volume 11, Article number: 734 (2020) 
(2)
Sanne M. van Neerven & Louis Vermeulen
Cell competition in development, homeostasis and cancer
Nature Reviews Molecular Cell Biology (2022)
(3)
BEVERLY A. PURNELL
Cell Competition and Immunity
SCIENCE SIGNALING 9 Dec 2014 Vol 7, Issue 355 p. ec345
(4)
Maria Braoudaki, Fotini Tzortzatou-Stathopoulou
Tumorigenesis related to retroviral infections
J Infect Dev Ctries. 2011 Nov 15;5(11):751-8
(5)
Khurana, E. et al. Role of non-coding sequence variants in cancer. Nat. Rev.
Genet. 17, 93–108 (2016).
(6)
Garraway, L. A. & Lander, E. S. Lessons from the cancer Genome. Cell 153,
17–37 (2013).
(7)
Martincorena, I. & Campbell, P. J. Somatic mutation in cancer and normal
cells. Science 349, 1483–1489 (2015).

0 コメント:

コメントを投稿

 
;