2022年9月10日土曜日

牛の着床前後の子宮内環境における細胞外小胞のmiRNA依存的な役割

子供を1人育てるのは
先進国では成人までに数千万円の費用がかかる
と言われています。
大学までの進学を考えると
それくらいの費用は日本でもかかるかもしれません。
1人ではなくても
結婚してパートナーがいても
2人の生活を十分に楽しみたいということで
意図的に子供なしの生活を選択する方もいます。
一方で、
自分の子供が何としても授かりたいと
考える方もいると思います。
もともと子供が好きな方は
特に自分の子供に対しては当たり前ですが
特別感が大きいので
それを経験したいとも考えます。
しかしながら、
そうは思っていても、
思い通りに妊娠に成功しない方もいます。
社会的にも子供が一定割合生まれるという事は
少子化である日本は特に好ましい事なので
子供を授かりたいと思うカップル全員に
その望みをかなえてあげたいという需要は
当事者だけではなく社会的にもあります。
もちろん、それはとても困難な事で、
多くの時間を要することですが、
そういったベクトルは存在します。
Keigo Nakamura(敬称略)ら医療研究グループの研究は、
そのようなベクトルの基礎の一つとなる内容となっている
と解釈しています(1)。
その内容の要約、背景、結果概要、考察、議論、まとめ
について読者の方と情報共有したいと思います。

//要約、考察//ーー
子宮腔に存在する細胞外小胞は着床前後の期間において
受胎産物と子宮内膜細胞の相互作用において重要な役割を果たす
という証拠が蓄積されてきています。
しかしながら、
子宮内膜上の子宮内の細胞外小胞がどのような機能を持つか
については良く調べられてきていません。
子宮内の細胞外小胞が畜牛内の子宮内膜の環境で
どのような影響を与えるか調べるために
牛の子宮内膜上皮細胞(Endometrial epithelial cells (EECs))。
これを子宮液から分離した細胞外小胞で処理しました。
妊娠から17日、20日でそれぞれ調べられています。
子宮内膜への着床は19日から19.5日です。

おそらく、今回、牛で調べられたのは
人と妊娠期間がほぼ同じの280日だからである
と考えられます。
また着床前後で調べられたのは
着床の成功の有無を考える事と、
着床の時に痛み、貧血、風邪のような症状、
情緒不安定などが生じるからであると推定しました。
従って、
着床前後で細胞外小胞がどのように母親に影響を
与えているか調べる事は重要です。
--
子宮内膜上皮細胞から取り出したRNAは
RNAシーケンス分析によって分析されました。
この分析によって
免疫系統に関連する転写因子が
妊娠17日に比べて妊娠20日において
細胞外小胞によって処理された子宮内膜上皮細胞内で
抑制されていることが示されました。
細胞外小胞内のmicroRNA(miRNA)が着床前後の
子宮内膜で母体の免疫機能をどのように制御しているか
どうか調べるために
microRNAシーケンスとコンピューター分析を行いました。
それによって
母体の免疫系統を制御している潜在的なmiRNAは
細胞外小胞内の
〇bta-miR-98。
これであることが確かめられました。
このbta-miR-98は
複数の免疫系統関連遺伝子
〇CTSC
〇IL6
〇CASP4
〇IKBKE
これらを子宮内膜上皮細胞内で
負に(抑制的に)制御している事が確かめられました。
この結果によって
bta-miR-98を含む細胞外小胞は母体の免疫系統の制御因子で
着床前後の期間において
子宮内膜腺上皮に受胎産物を生着させる事を可能にしている
かもしれないとされています。

//背景//ーー
妊娠は独特な生理プロセスであり、
受胎産物と子宮内膜の間の複雑な相互作用は
妊娠を成立させるために必要であると考えられています(2)。
着床に必要な胚盤胞ハッチング(Blastocyst hatching)(※)から
受胎産物の着床までの着床期間では
「牛の場合は」妊娠損失の50%は
胚盤胞と母体の子宮内膜との間の不十分なコミュニケーション
によるとされています(3)。
((※)参考文献(26)Figure,1参照)
妊娠初期の間の受胎産物と子宮内膜に存在する
転写因子を確認する多くの研究が行われてきました(4-12)。
しかし、
受胎産物と子宮内膜のコミュニケーションや
受胎産物の着床を制御する因子については
今まであまり調べられてきませんでした。
--
異なる細胞間のコミュニケーションは一般的には
ホルモンやサイトカインのような分泌性の可溶性因子が
持つ機能であると考えられています。
しかしながら、近年、
エクソソームやマイクロベシクルなどに分類される
細胞外小胞による細胞間のコミュニケーション機能に
ついて詳しく分析されてきています。
細胞外小胞は
脂質、タンパク質、核酸を含み、
核酸の中で、特に複数の転写因子のスイッチの役割を持つ
microRNAを含みます。
これがドナー細胞の形質に関連する上記物質を輸送し
受け細胞がそれを受け取る事によって
細胞間のコミュニケーションが一つ成立します。
また、細胞外小胞はドナー細胞特有の
表面リガンドを持つことが想定されるため、
特定の細胞種への走化性を獲得しています。
従って、
特定の標的細胞と相互作用する際の
輸送媒体、信号媒体として機能します(13)。
細胞外小胞はほとんどの体液の中に含まれ
子宮液(Uterine flushing fluids (UFs))。
この液体の中にも存在します(14-17)。
反芻動物内では
子宮液から分離した細胞外小胞は
着床前後の期間において、
受胎産物及び、または子宮内膜の分泌物を含みます。
それは栄養膜の発達や母体の子宮内膜への着床に
潜在的に関与するとされています(18,19)。
体液由来の細胞外小胞は着床のための
母体組織の準備において重要な役割を果たします。
胚の発達の間の受胎産物と母体の信号において
それが当てはまります(20,21)。
しかしながら、
着床前後における子宮内膜の受胎産物の着床に関する
miRNAを含む多様な生物分子を含む子宮内の細胞外小胞の
影響についてはまだわかっていないことが多いです。
--
Keigo Nakamura, Kazuya Kusama, Atsushi Ideta, Koji Kimura, Masatoshi Hori & Kazuhiko Imakawa 
(敬称略)からなる医療研究グループは
牛の栄養膜細胞と子宮内膜上皮細胞(EECs)を使って
子宮内膜に受胎産物を着床させるモデルを
牛のケースで試験管内でモデル化しています(22)。
受精から17日、20日の子宮内の遺伝子発現を模倣するために
それに影響を与える細胞外小胞を含む
子宮液を必要とします。
着床前後の子宮液には
様々なサイトカインや細胞外小胞を含みます。
それは受胎産物と子宮内膜の生物化学、物理的な
相互作用において重要です。
いくつかの世界的な分析では
妊娠初期の牛の子宮液は子宮内のタンパク質レベルが
改変する事が示されています(23-25)。
この結果をベースにして
Keigo Nakamura(敬称略)らは
受胎産物着床期間内で牛の子宮液に存在する
細胞外小胞が子宮内膜の環境を制御し、
子宮の上皮組織に受胎産物が固着することを促進すると
仮説を立てました(1)。
--
Keigo Nakamura(敬称略)らは
RNAシーケンス分析を使って
着床前(P17)、着床後(P20)それぞれの子宮液から
取り出した細胞外小胞を分析し、
その細胞外小胞を取り込ませた
培養された子宮内膜上皮細胞の転写因子の変化を調べました(1)。
コンピューター分析では子宮内膜上皮細胞の
増加、減少した分子機能を明かにしています。
また、
子宮内膜上皮細胞内の免疫系統、反応の変化における
細胞外小胞内のmiRNAの潜在的な機能について
miRNAシーケンスとPCR分析によって調べています(1)。

//結果概要//ーー
子宮液より抽出した細胞外小胞の径は
おおよそ50-150nmです。
従って、大きさから分類としては
エクソソームを多く含むと考えられます。
-----
着床前に対する着床後の変化(P17⇒P20)。
(抑制)
〇免疫反応
〇炎症反応
〇細胞増殖の制御
〇MHCクラスⅠ抗原提示
〇免疫系統
など、、、(差が大きいものから)
-
(亢進)
〇タンパク質の異種3量体化
〇アミノ酸刺激の細胞反応
〇コラーゲン線維、多重結合の構造の構築
〇コラーゲン生合成、酵素の改変
〇細胞外マトリックスの構築
など、、、(差が大きいものから)
(Figure.2b参照)
--
抑制された免疫系統
IL6, LTF, CFB, CTSC, NFKBIAなど
(Figure.2c参照)
-----
上述した免疫系統に関わるmiRNAは
bta-miR-98
これが作用する事で
上述した免疫系統が抑制されます。
(Figure.4b参照)
従って、着床後にbta-miR-98が細胞外小胞によって
受胎産物と子宮内膜上皮間で輸送され
コミュニケーションされている事が想定されます。

//議論、考察//ーー
これらの結果は、
着床後の細胞外小胞内で確認された
bta-miR-98は他のmiRNAと協調しながら、
母体の免疫系統を(抑制的に)制御している事を示しています。
また、アポトーシス機能も抑制されています。
これが受胎産物の着床において必要であると
提案されています(1)。
アポトーシス機能が抑えられているということが
組織の可塑的な成長を可能にすると言えるのかもしれません。
--
Kazuhiko Imakawa(敬称略)らの記述によると
人やネズミにおける着床の成功のためには
インテグリン仲介のシグナルが必要であるとされています。
〇fibronectin, 
〇vitronectin, 
〇laminin, 
〇collagen‐type IV, 
〇osteopontin (SPP) 
これらなど着床後に亢進されていたコラーゲンを含む
細胞外マトリックスはインテグリンと結合して
着床の成功の鍵であるとされています(26-30)。
従って、
Keigo Nakamura(敬称略)らが示した
着床後の着床前との比較データの結果
(コラーゲンが増えている)は、
上述した複数の報告と合理性を持ちます。
--
免疫機能に関しては
妊娠は抑制的であるとされています(31)。
従って、着床して胎盤や胎児に成長していく段階に入ると
その前に比べて、免疫抑制的になる事は
この一般性と矛盾しません。

//まとめ//ーー
着床前後のmiRNAやその翻訳を含めたタンパク質などの
変化を慎重に調べていく事によって
着床失敗による妊娠損失を抑える事に
将来的にはつながるかもしれません。
Keigo Nakamura, Kazuya Kusama, Atsushi Ideta, Koji Kimura, Masatoshi Hori & Kazuhiko Imakawa(敬称略)が
示した結果は、その一歩ではないか?
と筆者は解釈しています。

(参考文献)
(1)
Keigo Nakamura, Kazuya Kusama, Atsushi Ideta, Koji Kimura, Masatoshi Hori & Kazuhiko Imakawa 
Effects of miR-98 in intrauterine extracellular vesicles on maternal immune regulation during the peri-implantation period in cattle
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(2)
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