2023年7月19日水曜日

生体内水和反応促進による薬物動態安定化

ドラックデリバリーシステム、薬物送達学の
1つの大きなメリットは
送達効率を劇的に高める事によって
薬効を高め、一方で副作用を下げることです。
現時点で「劇的な送達効率改善」ということは
難しいかもしれないという認識に留まっていますが、
いくつかのイノベーションによってそれは覆るかもしれません。
また、それらの情報を元にして
いくつかの草案(創案)がこの部屋から生まれるかもしれません。
しかし、
薬物送達を有効に行うためには
薬剤自体を機能化する必要があるため、
その機能化の為の装飾、あるいは胞によって
余分な物質を形成させる必要があります。
それによって、
薬物が循環器内全体を長く回るのであれば、
循環器に存在する免疫細胞やその他の血液成分、
あるいは様々な抗原、抗体との相互作用を機能化物質を含めて考える必要があります。
その相互作用の少なくとも一部は
身体にとって副作用となるものですから
その相互作用をできるだけ減らす必要があります。
これを実現しない事には
冒頭で述べたDDSの目的から外れる事にもなります。
そのような視点において
複合体としての薬物のデザインがどのようであればいいか?
その一つの理想像はどのようなものであるか?
それについて考えます。
DDSで使われる薬物デザインのうち
受動的な送達媒体としてナノ粒子が使われ、
近年、mRNAワクチンにも使われます。
そのナノ粒子の構成材料は
細胞膜などに多く含まれる脂質です。
従って、生体内の物質を一部模倣する形となります。
生体内にあるもの、類似するものですから、
身体の拒絶性は低いだろうという視点があります。
このような視点を参考にすると
より体内に普遍的に存在する物質は何か?
そのようなアイデアが生まれます。
その一つの物質は水素と酸素から成る水です。
薬物が巡る循環器内において
水の割合は80%程度と言われます。
従って、ほとんどが水なので
その水を使った材料にすると
血液内の余計な相互作用を減らせるかもしれないという事になります。
しかし、水は常温で液体なので、
薬物として固定的な構造を取るためには
ゲルのような骨格のある物質に
水分子を組み込む必要があります。
それを「ヒドロゲル」と呼びます。
すでにヒドロゲルを使った薬物送達については
いくつかの総括論文が存在するくらい活発に研究されています(1,2)。
しかし、ヒドロゲルは免疫細胞が侵入することがあり
それで免疫反応が起こることもあるので、
おそらく不活性である水で保護したとしても
その微細構造を含めてマテリアル開発の精度を高めないと
当初の狙いの物性は得られにくい可能性があります。
その物性の為には
◎穴、空壁がない、小さい
◎最表面の多くが水である
ということが少なくとも重要であると推定しました。
最表面が水であれば、内側に薬物動性を持つ物質があったとしても
それを有効に保護する事ができるため、
設計の一つの理想形ではないか?と仮説を立てました。
当然の帰結ではありますが、
それを実現するためには
水自身が単体では液体であることから
それに相互的に作用する様々な力をうまく利用する必要があり
技術的なハードルは高いかもしれないという認識でいます。

そうした背景もあり別の可能性を探りました。
そもそも血液内には8割もの水が存在するわけですから
その水とも薬物複合体は相互作用する機会があります。
実際に
血中のタンパク質などの様々な物質は水で覆われると言われます(3)。
これは、薬物動態を考える上で重要な事実ですが
このような水和現象を逆に活発に利用するということです。
その水和現象を活発にするために
◎親水処理(ハイドロフィリック表面処理)
◎触媒
これらなどがありますが、
一方で、水だけを引き付ける必要がありますから、
このような処理によって表面状態が活性となり、
血中に入れた時に様々な相互作用を引き起こしてしまうと逆効果です。
まずは、すでに
タンパク質等が水に覆われる現象が確認されているわけですから
それが薬物の安定化、不活性化のためにメリットをもたらすかもしれない
という観点を持って様々な条件で分析していくことで
なんらかのソリューションが生まれる可能性があります。

但し、薬物の代謝は一般的に
水素基が水酸基に変わることが想定されます。
(参考文献(4) Fig.1cより)
水酸基に変わると親水性が増し、
腎臓において尿として排出される確率が高まります。
また、有毒な代謝生成物や物質としての不安定性を高めることもあります(4)。
つまり、親水性が高まると
少なくとも溶解性、排泄性が高まる可能性があり、
ナノ粒子などより物質として大きな薬物送達媒体であっても
その親水性を高めようとする場合には
反応性や排泄について考える必要はあるかもしれません。

(参考文献)
(1)
Ruibo Zhong, Sepehr Talebian, Bárbara B. Mendes, Gordon Wallace, Robert Langer, João Conde & Jinjun Shi
Hydrogels for RNA delivery
Nature Materials (2023)
(2)
Jianyu Li & David J. Mooney
Designing hydrogels for controlled drug delivery
Nature Reviews Materials volume 1, Article number: 16071 (2016)
(3)
(1)Song-Ho Chong, Sihyun Ham
Dynamics of Hydration Water Plays a Key Role in Determining the Binding Thermodynamics of Protein Complexes
Scientific Reports volume 7, Article number: 8744 (2017)
(4)
Rita Maria Concetta Di Martino, Brad D. Maxwell, Tracey Pirali
Deuterium in drug discovery: progress, opportunities and challenges
Nature Reviews Drug Discovery volume 22, pages562–584 (2023)

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