2023年8月10日木曜日

常圧室温超電導の現在の理解と方向性

Sukbae Lee(敬称略)らによって
常圧で400Kを超える常圧室温超電導が出来た可能性があるという事です。
ある方の評価ではもし証明されれば、
世界的な革命になるはずであると言われています。
実際に過去、界面の超電導というのは酸化物を中心に出ていて
その様な界面は
平板に層状にミルフィールのように重ねて
結晶成長させる事が通常なのですが、
今回は材料そのものに「シリンダー状」の層が縦方向にできて
縦方向に形成された内側と外側の界面付近で
2次元電子ガスが
電荷密度波を生むと予想されている
1次元の結晶のつながりを中心にして(?)生じる事で
超電導が実現された可能性があるということです。
鉛イオンを銅イオンに置換する事で強力な圧縮歪がかかり、
それによって電子系も圧縮されて
密度が強まって相互作用が高まった可能性があります。
電子密度を高めることは
基本的には高温でクーバー対をつくるうえで重要であると理解しています。
局所的に圧縮しているという事も本質的に重要です。
通常、2次元電子ガスというのは
密度を高める事が非常に難しいです。
それが局所置換によって可能になったということです。
今までの2次元電子ガスというのはおそらく3次方向の広がりもあって
高密度になっていなかったということもあるかもしれません。
しかし、今回は強力な圧縮歪によって電子系が強く界面に引き付けられる事と
そのベクトルも関係しているかもしれません。
つまり、中心に収束するように力が加わっている事が
層状の圧縮歪とはベクトルが異なるということです。
おそらく
one-dimensional(D) chains(Pb2−O 1/2 −Pb2 along the c-axis) 
の1次元の効果
と圧縮歪による2次元電子ガスの効果が
両方効いているということです(1)。
1次元の効果は電荷密度波に関わっているので、
電子ガスによる電子の閉じ込めだけではなく
その場の中での電子分布の揺らぎがある可能性が示唆されます。
このCDWの物理はこの超電導モデル、電子分布の上で重要なので
分析(4)によるそのエビデンスが欲しいです。
この2次元電子ガスの効果を
「超電導量子井戸」と呼んでいます(2)。
私が2022年に1月に提唱したのが、
クーバー対を量子井戸に閉じ込めればいいというものです。
青色LEDや半導体レーザーは室温で動作できるからです。
これはどういう構想かというと
エネルギー的に束縛した状態で
クーパー対をつくるというものです。
従って、クーパー対の条件とともに
近隣のエネルギー状態をよく考えて、
できるだけ急峻で、深いエネルギーポケットを作る事が重要です。
光によって材料中のイオンを動かすことによって
歪の量を変えられる可能性があります(9)。
材料中の銅イオンの位置を少し動かすことができたら
特性に影響を与える可能性があります。

この材料系はおそらく超電導が材料全体に生じるわけではないし、
界面付近だけですよね。
1次元に近い可能性もあります。
それがまた縦方向に切れ目なく
つながらないといけないわけですから、
少なくとも超電導現象が生じる部分は
材料のうち一部であるという解釈です。
従って、超電導の回路としては脆弱な可能性があります。
それが再現が難しい事と関連しているかもしれません。
材料としての結晶性も問われると思います。
例えば、結晶の中に格子欠陥があると回路が途切れてしまいます。
銅に置換するわけですから、すべての銅が入れ替わるかという
要因もあります。そうすると、どういう事が重要か?
銅と鉛の入れ替わり率を何らかの方法で評価する必要があります。
この知恵を持っている人は世界にいるはずです。
もともと結晶に入っている格子欠陥を
特にシリンダー付近の重要な位置において定量化する必要もあります。
結晶成長は私の一番の専門です。
上述したように良い結晶を作る事が基本にあります。
温度、形成速度、前駆物質、圧力、成長方式など
あらゆることを最適化する必要があります。
例えば、参考文献(2)で示されていますが、
合成する周りの物質(石英、銅)で特性が変わります。
また、X線評価など結晶性をフィードバックする事も非常に重要です。
また、2次元電子ガスができる界面のTEM評価などもできるでしょうか?
界面に対して垂直方向に加工する必要がありますが、
パルスレーザーで結晶にダメージを与えず加工できるかもしれません。
この辺は日本、ドイツの技術ならできる可能性があります。
そうして六角形状の断面の格子像を見て、界面の品質を評価します。
青色LEDでは量子井戸構造GaN/InGaNが活性層ですが、
発光効率の中で重要な要素の一つがGaNとInGaNの界面急峻性です。
その評価として高解像度のTEMで格子像を見る必要がある。
シリンダー状の界面においてどのような格子状態が理想か?
それは評価して、特性をみて判断していかないといけません。
今回の室温超電導の一つの重要な学問は界面物性物理ですから
界面の特性がおそらく生命線の一つであり、
そこをエビデンスに基づいて詳細に詰めていく必要があります。
後、見たいのはSIMSですね。
不純物の濃度も見ていく必要があります。
石英と銅で品質が変わるみたいなので、
その一つの原因は結晶中の不純物濃度だと思います。
SIMSは最小で10^16/cm3くらい。
つまりアボガドロ定数から7桁落ちくらいまでみれるので、
不純物の評価には一般的に使われます。
これは、私たちの専門では常識的なことです。
後、断面が綺麗に出れば、XPS測定もしたいですね。
表面の元素の種類、量、化学結合状態がみれます。
これは、私、実務経験がありますからね。
とにかく合成して、考えられる様々な解析をすることです。
下述するEPRやCDWの評価ももちろん重要です。
上述した多様な評価と関連付ける、紐づけます。
そのフィードバックを速く回して、議論して、考察して
世界中の様々な論文を調べて、読んで、
条件を考えて、作る。それの繰り返しです。
後は、統計的な評価も重要です。
数字のデータを多元的に評価することです。
今は人工知能など使えるかもしれないですね。私は経験ありません。
室温超電導はとにかく特性をかなりのレベルで上げないと
産業応用にはたどり着かないと思います。
実際に外部磁場、電流量が多くなると壊れますよね。
少なくともその土台となるのは結晶の品質です。
参考文献(1,2)で示された理論がありますが、
その理論通りとなるためには、設計も大事ですし、
その設計通りの品質も大事です。
その為には合成方法の最適化、評価(エビデンス)が大事です。
今よりももっと材料としての最適な組み合わせがあるかもしれません。
それも探索する必要があります。

全ては2次元電子ガスの密度、歪、
そして1次元の効果を
エネルギ分布、電子の分布、流れに対してどう見るか?
それによってこの技術を発展させていくことができるはずです。
またシリンダーの密度、方向を考える事で
全体としての超電導特性に影響を与えるはずです。

原子の置換によって
歪を導入できるわけですから、
もっと圧縮歪を与える事ができる組み合わせ、
原子もあるかもしれません。
それを探すのは重要なポイントです。
その時にSukbae Lee(敬称略)らが観ている様に
EPRの温度特性で2次元電子ガスをしっかり評価することです。

材料に光を当てるという事も考えられます(3)。
それによって超電導現象を強調させられる可能性も
あるかもしれません。
実際に超電導秩序パラメータと呼ばれる
クーパー対の位相と振幅を示す因子があります。
それを光によって間接的に増大させた報告があります(5)。
一般的にクーパー対の振幅を上げることができれば、
既存のクーパー対がその振幅増幅によって
他のクーパー対の形成の為の励起状態の形成を容易にする
と現時点では理解しています。
それによって超電導状態は安定化します。
上述したように「間接的に」としたのは
基本的にクーパー対の振幅を直接的に増大させる事が難しい
と考えられているからです。
例えば、半導体レーザーの場合は
エネルギーギャップに相応する光を共振させて
コヒーレントな光を干渉させることで、
ボースアインシュタイン凝縮を誘導することができると考えられてます。
しかし、クーパー対の場合は
レーザーと異なるのは光ではなく
電子の供給によっての相転換ですが
仮にレーザーの原理が当てはまるとして
光で励起しようとしたときには
クーパー対のエネルギーギャップが数meVなので
光の波長にすると約200μm(200000nm)となります。
このような狭いバンドギャップの状態で
レーザーと同じ原理で共鳴させ、誘導させる事は
原理的可能かどうかはわかりませんが
技術的には少なくとも難しいということかもしれません。
従って、Kazuki Isoyama(敬称略)らが示すように
間接的に電子-正孔(5)系を光で操作させる事で
超電導を誘発させるというプロセスが現実的である
という理解です。

もう1つ考えないといけないは
今回の超電導モデルが2次元系、1次元系の電子の振る舞いである
という可能性があることです。
2次元電子ガスのモデルと超電導のモデルを考えるときには
初めにウィグナー結晶のモデルが挙げられる事があります(6-8)。
これは2次元の電子系のクーロン引力が運動エネルギーに対して
非常に大きくなっている時に生じると言われています。
従って、通常はクーロン引力を上げるため
強い磁場をかけないと生じないとされています。
無秩序に動く能力を電子が獲得していると、
エントロピー増大の法則で位置が固定されない
という事があるからだと思っています。
超電導は非常に複雑なので一般的に述べる事はできない
とされていますが、
電子の位置の秩序が守られているほうが
クーパー対は生じやすい傾向にあると言われています。
その為には系の電子密度を上げて、
相対的にクーロン力を上げる事と、
電荷密度波のように周期的に電子の規則的な動きが
個別の電子、集団としての電子群で生じている事が
好ましい可能性があります。
格子振動相互作用でもあるように
電荷密度波においても、
電子間の距離が周期的に
遠くなったり、近くなったりしていると
その動きによるエネルギーと
最も接近した時の優位性によって
クーパー対の形成が促されるかもしれません。
しかし、超電導は非常に複雑であると考えられており、
一般的な傾向を示すのが難しいとされています。
従って、
繰り返しますがあくまでも可能性です。

Danijel Djurek(敬称略)が
Ag5Pb2O6/CuO Compositeで
138Kで超電導を示すという報告を挙げています(10)。
鉛、銅、酸素が関わっているという事で
今回の材料と類似性は一定見られます。
参考文献(10)の被引用件数は3件であまり注目はされていません。
Danijel Djurek(敬称略)は
Pb6-xAgx(CO)9という材料も合成しているようです。
しかし、少なくとも超電導の再現が得られていないとされています。
今回は銅の添加が一つのキーとなると思います。
それが結晶の圧縮歪に関わっているからです。
通常のドーピングでは
例えば、窒化ガリウム(GaN)のケースでは
p型半導体ではマグネシウムがドーピングされますが、
アボガドロ定数の2桁、3桁落ちくらいの
10^20/cm3くらいいれると
結晶性が著しく落ちる事が一般的に知られています。
従って、p型半導体を作るのは比較的難しいです。
この時、一部のガリウムに対して、マグネシウムが置換されます。
ここでの銅はドーピングレベルではなく
結晶の基本構成要素となっているので、
この銅が本当に意図した結晶サイトに入っているか?
つまり、鉛に対して置換されているか?
その上で、結晶性はどうなっているか?
同じ族なら比較的置換は楽です。
例えば、ガリウム、インジウム、アルミニウムの関係のようにです。
鉛と銅ではどうか?
論文中では多結晶という話もあり、
参考文献(1)Fig.2(b)に示される
X線回折のピークもドープ量が上げると顕著に下がっているので
結晶の基本的な品質でみると低いかもしれません。
但し、これが必ずしも特性を悪くするかはわかりません。
SIMSで銅の結晶中の濃度を見るにしても、
その濃度だけでは判断できません。
本当に参考文献(1)Fig.3(a)に示される結晶サイトに
Cuが入っている必要があります。
Cuが完全に置換されたときにどれくらい結晶が収縮するか?
この理論値がわかれば、
Fig.2(a)でAエレメントのX線のピークがシフトしているので
そのシフト量から計算される格子定数の変化を見る事で
どれくらいの割合の銅が入っているかの評価はできるかもしれません。
参考文献(1)Fig.3の結晶構造と基本的な化学式から
銅(Cu)を組成レベルで添加するときには
シリンダー構造の外側に排他的に銅が本当に置換してくれるか?
もし、内側に銅が入れば、シリンダーに対して
歪は伸張歪になってしまいます。
混在すれば、歪は打ち消しあいます。
従って、強い圧縮歪を入れるためには
外側のサイト「だけに」銅を置かないといけません。
評価として重要になるがX線のシフト量になります。
これが歪の量を示しているので、
これが大きければ、特性がいいか?
あるいは最適値があるか?それを確かめていくことになります。
半値幅、ピークなど結晶性も評価する必要があります。
選択的に置換するときには色々考える要素はあると思いますが、
基本的には置換するサイトの結合性、束縛が弱い場合には
当然、そのサイトは置換されやすいという事になります。
元々の絶縁体の鉛のアパタイトがシリンダー構造の外側の
サイトが内側に対して相対的に周囲の結合性が弱ければ、
鉛と銅は価数が同じなので、外側のサイトに入りやすくなる傾向にあります。
しかし、それは合成条件にも依ります。
化学反応を考える際、
合成前の初めのエネルギーがあって、エネルギーのバリア、山があって
最終的に生成物のエネルギー状態があります。
これらの関係は合成温度によっても変わると考えられます。
もちろん、前駆物質、圧力、触媒なども関係すると考えられます。
例えば、合成温度で言うと
窒化ガリウムの場合はそれよりも小さな元素であるアルミを
混晶として入れる場合、
窒化ガリウムの最適な合成温度よりも高い合成温度に最適点があります。
したがって、今回の銅を鉛のアパタイトに入れる合成も
銅は顕著に鉛よりも原子量が小さいですから、
925℃という比較的高い温度で合成されています。
熱力学的安定性は格子定数だけは定義できませんが、
窒化ガリウムのケースでいれば、
格子定数が大きな窒化インジウムの場合、
格子定数が小さい窒化アルミニウムの最適な合成温度にさらす
つまり、窒化インジウムの最適合成温度よりも顕著に高温に暴露すると
結晶化して、安定している状態でもインジウムは結晶中から脱離します。
参考文献(1)のFig.3(a)を見る限り、
外側の鉛のサイトの方が周りの元素との距離が大きくなっており、
内側の鉛サイトは密に凝縮している様に評価できます。
そうするとこの差から最適な成長温度、圧力を探して、
外側だけを効率的に入れ替える方法が存在するはずです。
組成からすると
Pb10-xCux(PO3)6Oにおいて
x=5、つまり鉛と銅の比率は1:1が良いと考えられます。
その状態でシリンダーの外側サイトだけ入れ替わるのが
中心収束的な圧縮歪をかける上では理論的には最大となるはずです。
また、圧縮歪という観点でいれば、
組成の数桁落ちのドーピングレベルでも改変する事が可能かもしれません。
基本的には3d軌道の電子量が多い銅を基材とすることが理想かもしれませんが、
それよりも原子量が小さないくつかの元素を選択することができます。
格子サイトだけではなく、格子間位置(interstitial sites)にリチウムなど
非常に原子量の小さな元素を入れる事が窒化ガリウムのケースでは可能です(11)。
基本的に圧縮歪を結晶中に掛けたい場合には
もちろんどのサイトに入るかによると思いますが、
基本的には原子量の小さな元素を選択する事が多いかもしれません(12)。
従って、リチウムは選択肢の一つになる可能性があります。

X10(PO3)6Oという基本構造は
10x+(-3)*6+(-2)=0なので
x=2で基本的にXは二価の陽イオンであれば
置換可能ということになります。
従って、上述したドーピングの話は価数が異なる元素をいれるので
鉛と銅は価数が一致しているので、
窒化ガリウムのケースで言うと
インジウム(InGaN)やアルミニウム(AlGaN)で3元混晶を作るようには
簡単にはいかないけど、
シリコンやマグネシウムをドーピングするよりも
高濃度で添加することができる
という結論になりそうです。
この物質は
最後の酸素の部分が水酸基であることもありますが、
調べてみるとXが鉛や銅の他にカルシウムもあります。
基本的に電子を最も収容できるのは3d軌道であり
電子が多いことで強相関が生まれやすいと言われています。
3d軌道は遷移金属などの元素で一般に見られ
鉄や銅を含みます。
今までの実績では
基本的に鉄系よりも銅系の方が超電導温度は高く
置換するとしたらやはり銅が最適となるのかもしれません。
いずれにしても鉛をもっと環境に優しい元素に変えたい
というのがあります。
それでかつ、超電導の特性が良いならなおさらいいという事になります。
鉛と周期表が近い物質で無害で豊富に含み2価のイオンを含む元素は
スズ(錫)ということになります。
但し、スズはS軌道が5s軌道であり、原子核からの距離が
鉛の6s軌道よりも短いので極性相互作用が弱くなります。
そうするとやはり鉛という事になります。
鉛に近くて無害で豊富に含む元素としてビスマスが挙げられますが、
これは陽イオンとしては3価です。
ビスマスは重金属の中では環境への影響が比較的少ないと言われています。
しかしながら、埋蔵量は鉛の方が多いです。
電線などに使う事を想定するのであれば、
埋蔵量が多いほうがいいわけですから
そういう点でも鉛ということになります。
また、価数の整合性から
ビスマスを無理に組む込もうとすると結晶構造が大きく崩れます。
より強い歪をいれるためには周期表で離れている方がいいでしょうし、
そういう観点でも銅に対して錫がある第五周期よりも
鉛がある第六周期の方がいいと考えられます。
細かい物理的な議論はあると思いますが、
より抽象的には、
歪を入れるためには周期表で離れていて
かつ同じ価数の元素が好ましく、
電子相関としては3d軌道に多く電子が含まれている元素が好ましい
という事になります。
3d軌道は遷移金属となるので第4周期からであり、
銅という比較的最適な元素が選択されています。
それに対して埋蔵量の多い第6周期の鉛が選択されています。
まだ、わかりませんが、
室温超電導がもし立証されたとしたら
その材料として鉛を使う事は避けられない可能性があります。
鉛は埋蔵している国が比較的分散しているので
そういう点でも好ましいと思います。
そうした場合、製造プロセスの管理、リサイクルなど
環境に配慮した形で鉛を使用する事が求められます。
代替の元素を見つけるよりもそちらが現実的かもしれません。
世界の産業を支える鉱物資源というのがあり、
その鉱物は
◎ベースメタル
◎貴金属
◎レアアース
◎その他レアメタル
これらにわかれています。
そのうちベースメタルが
鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉛
これらになっています。
今回の超電導はメタルの部分は
銅と鉛が使われているわけであり、
高価な銀、金、白金やレアメタルが使用されているわけではありません。
確かに鉛は環境への影響が懸念されますが、
超電導が出来た時の巨大なメリットだけではなく、
その他、様々なことを総合的に考えます。
Sukbae Lee(敬称略)らの超電導が証明されれば、
単に物理的な観点の偉業だけではなく、
産業応用を考えた時の材料選択としても革命的です。
リンも埋蔵量が多いと言われています。
今回、もし超電導が再現できないとなったとしても
引き続き詳しく研究、開発を続ける価値は十分にあります。
考えられる別の可能性として、超電導ではなく
今までの理論では説明できない非常に低抵抗な現象だった
としても材料としての魅力は残ります。

研究チームによれば2000回くらい条件だしを行ったとされています。
論文に合成方法は記載されていますが、
同程度の特性を得る事は難しい可能性があります。
過去Danijel Djurek(敬称略)の研究(10)でも同じですが、
本当に超電導を示すかどうかは
研究グループから示された結果を疑う事も大事ですが、
マテリアルとして本当に再現しているか?
そこを疑う事も大切です。
今回の材料であったり、参考文献(10)に関しても
しっかり材料の品質と設計を最適化していけば、
再現できるかもしれないし、さらに特性が上がる可能性があります。

超電導の際には相転移が生じる必要があります。
同じ量子状態を取ることができないフェルミ粒子である電子が
ボース粒子のように濃縮する事によって超電導相転移が起こっています。
クーパー対は抵抗がないという事は光のようなボース粒子
の特徴があると理解しています(17)。
そのように仮に想定すると、
これは、まるでLEDの再結合のようです。
なぜなら、発光ダイオードも
フェルミ粒子の電子と正孔が結合して、ボース粒子である光に変わるからです。
従って、発光ダイオードの再結合について考える事は
超電導のまだ不明な点が残る相転移の理解に近づくかもしれません。
少なくとも超電導は
自由電子同士の位置が近づいた状態で
かつ両者において引力が働いている事が重要であると考えました。
しかし、これだけでは不十分なようです。
LEDでは再結合を考える際、
横軸に波数、縦軸にエネルギーをとります。
これをE-k分散と呼びます。
このE-k分散において
再結合粒子である電子と正孔の横軸、つまり波数が一致している方が
一般的に再結合確率が高くなります。
しかし、これは絶対条件ではないと理解しています。
位置に関しても当然、近いほうがいいです。
従って、位置を近づけるために
数ナノ程度のエネルギーポケット(量子井戸)を作ります。
それによって電子と正孔はその空間内に束縛されます。
しかし、LEDの経験上、
このエネルギーポケットをさらに小さくした方がいいか?
というとそれも必ずしもそうではありません。
おおよそ2nm~3.5nm程度の幅がよさそうでした。
しかし、最適値は歪、結晶性、電流密度によって変わります。
従って、超電導においても
LEDの電子と正孔の再結合を参照にするのであれば、
電子同士の波数と位置が重要なはずです。
波数とは運動量なのでフェルミ粒子の場合、速度になります。
従って、隣り合う電子が近ければ近いほどよく、
それぞれが光学フォノンのように逆位相を持っていて
その速度が一致していると超電導の相転換は起こりやすいかもしれません。
ただ、電子と正孔の場合は有効質量が違いますから、
本質的には速度の一致ではなくて、波数、運動量が
一致していることだと考えられます。
一方、超電導の場合はLEDのように正負の電荷で
自動的に引き合う物理は働かず、
マイナスの電荷をもつ電子同士の重なりを考える必要があります。
そうした場合、引力を誘発する付加的な物理が必要です。
その引力の源泉となるのは
格子振動(フォノン)や軌道(14)やスピン(15)がもつ
「揺らぎ」が選択肢の一つではないか?
と想定されます。
上述したようにそうした揺らぎにおいて光学フォノンのように
その揺らぎに影響を受ける隣り合う電子同士逆位相を持っていて
それによって負の電荷による電子同士の反発を遮蔽するような働きがあり、
その揺らぎの周期、振動数が一致している事が大切かもしれません。
但し、ここの揺らぎの波は電子の波数と異なります。
電子が波数を持つとは飛び飛びの量子状態を持ち、
それは運動量が連続的に変わらないことを意味します。
現時点において超電導において量子井戸、量子準位を
対象となる自由電子が獲得しているという理論、デザインは
まだ一般的ではないと理解しています(16)。
従って、電子同士の
①絶対的な位置(の近さ)
②(量子状態を作った場合(16)の)波数、
(※電子同士の場合は有効質量が一緒だとすると速度の一致)
③格子振動(フォノン)や位置やスピンの揺らぎ(14,15)
これらを整理し、
②、③に関しては電子同士のコヒーレンシーについて考える
ということになると現時点では理解しています。
①と②においては量子井戸、量子細線、量子ドット、
それらのエネルギー窪み幅を極限までに小さくする
2次元電子ガス(面)、1次元電子ガス(線)、0次元電子ガス(点)にしたほうが、
電子同士を近づけやすく、かつ量子状態を作っているので
波数(運動量、速度)を一致させやすいという事はあるかもしれません。
量子井戸、量子細線、量子ドットという構造は
すでに半導体で長い時間かけて理論化、開発、応用されている技術です。
今は漠然としていますが、
今回のアパタイトの構造は六角形の対称性がある程度あります。
この六角形というのはGaNだけではなく
グラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイドなど
様々な材料の結晶構造と類似します。
ハチの巣状の六角形構造はイノベーションが隠れている気がする中で
元素の構成もすべて豊富で安価で希少金属がない事などメリットもあるので、
少なくとも今回再現できなくて、世界的に熱が冷めたとしても
私の関心が弱まることはないと言えます。
一方で、
電子は同じ量子状態を取ることができないという
パウリの排他則がありますが、
そのエネルギー準位が縮退している場合、
そのエネルギー準位に少なくとも2つの電子が入る事が許されます。
しかし、これはパウリの排他則をバイオレートするものではありません。
この時には2つの電子はスピンの回転の向きが異なる電子同士になります。
このスピンの回転の向きが異なる電子がもし結合したらどうなるでしょうか?
これは完全反磁性(マイスナー効果)と関連する可能性があります。
但し、これはLEDの電子と正孔の再結合の経験的な観点での考察であり、
LEDのフェルミ粒子の電子と正孔が再結合して
なぜボース粒子である光に変わるのか?
そもそも正孔の実体もわかっていません。
その不明瞭さの中で超電導の相転移について考察している限りにおいて
見当違いが生じる事は避けられない部分があります。

もう1つ、重要な事があります。
将来的に常圧室温超電導の材料が出来たとします。
しかし、その結晶構造が比較的複雑だとします。
そうすると様々な応用において製造上の問題が浮上します。
化学式として単純なGaN(窒化ガリウム)でも、
電線に使えるような規模、大きさの結晶を高品質で作るのが難しいです。
基板などを使わずに、自立成長させる必要があります。
窒化ガリウムの場合、Naフラックス法というのがあります(13)。
細かい議論はしませんが、液相成長に近い形の成長なので
気体からいきなり固体の結晶を得るような気相成長ではなく
液体からになるので化学ポテンシャルオン変化が小さくて
理論的にはよい結晶が得られやすいと理解しています。
これはGaNの大きな結晶を得るために利用される方法で、
窒化ガリウムはパワー半導体などの応用もあり、
高品質なGaNの基板が求められており、
GaNの大きな結晶、バルク結晶の高品質な物質の需要は大きいです。
銅系の超電導材料も高い超電導遷移温度を持つのですが、
それがリニアモーターカーなどで利用できない背景は
レールのような大きな材料を合成できないことにあります。
これは結晶構造が複雑で、
品質の良いという条件を満たしながら、
大きな結晶が得られないからです。
鉛、銅のアパタイトも、仮に超電導を示したとしても
電線やリニアモーターカーなどで利用しようと思ったら
どうやって大きな結晶を得るか?
そこの壁を突破する必要があります。
そうするとGaNのバルク結晶を得るような技術が非常に大切になります。
少なくとも液相から合成するような方法が好ましいかもしれません。

もう1つは、機械的特性です。
アパタイトは硬いけど、脆いという性質があり、
銅が入ると、歪が入るのでさらに脆くなる可能性があります。
従って、道路などで高温にさらされるなど
温度変化がある場合、材料として寿命が短くなる可能性があります。
従って、その脆さを補うようなシールド構造が必要です。
ペロブスカイト太陽電池でも懸念されるように
鉛を環境内で使うと、雨などにさらされることで
溶けて、地中に溶け込み、土壌や川を汚染する可能性があります。
人体にも悪影響があります。
従って、どちらにしろ電線で使うならば、
銅系で影響の受けやすい外部磁場の問題もあるし、
外側をシールドする必要があります。
従って、シールドする場合、好ましくは
◎機械的特性(脆さ)を補助する
◎外部磁場などの遮断する
◎鉛の溶けだしを防ぐ
これらを両立するような条件を探すことが重要になります。

もちろん、この技術というのは競争だとは思いますが、
本当に地球の持続可能性に関わる事です。
人工知能などの性能向上などリスクもありますが、
それよりもエネルギー問題の根幹にかかわる重要な発見です。
この技術に関しては
かなりスピード感を持って動かれている方もいるので
この技術、派生技術をできるだけ早くものにして、
産業化につなげる事が重要です。

このブログは「医療の部屋」であり、
物理単独の情報を載せるサイトではありません。
しかし、重粒子線やMRIなど医療にも関わる情報です。
また、常圧室温超電導に関しては
リニアモーターカーなど子供の夢につながるものです。
子どもは輸送機器が好きな傾向にあると思います。
小児医療に力を入れているサイトとしては
健康な子どもをより幸せにする可能性のある技術に関して
私が関与する事は全体的なビジョンとして矛盾しません。
健康な子ども世代、孫世代のありふれた日常の為には
環境問題も無視する事は出来ません。
今まで、決定的に重要なソリューションは見つけられないでいました。
以前、環境問題に取り組んだ時期もありました。
私は技術者出身です。テクノロジーで何とかしたいという思いがあります。
この韓国から出た常圧室温超電導(の可能性がある)技術は
まだ、再現性がある形で十分立証されていませんが、
もし、その立証が不十分であっても
これから有望な新規材料として積み上げていく価値は
少なくともあると考えられます。
難しい病気を持つお子さんを救う事も
私の知識、経験でできるなら様々な方々と協力して
助けをもらって成し遂げたいですが、
それよりもはるかに多い健康な子ども、孫世代、その次の
ありふれた日常を用意する事も大切な責務です。
再現が難しいのは上述したように品質の問題もあるかもしれません。
私よりももっと計算、理論に優れた方が
あるいは超電導に長く携わってきた方が関与すれば、
もっと良いフレームワークができるかもしれません。
常圧室温超電導は夢のある技術です。
私は企業の経験がほとんどです。
固体物理に関わる難しい業務もこなしてきました。
だから産業化のための様々な知恵を出せるでしょう。
実務として貢献するという事もできるでしょうし、
今のように書くだけであれば、
様々な事と両立する事ができます。
実務になると書くだけとはレベルが断然変わってくる
というのは当然です。

(参考文献)
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