2023年7月18日火曜日

意見:生成系AIについて

生成系AIについては世界中で議論されていると思いますが、
現時点での私の意見は、
むしろ人の能力、創造性、生産性を上げるものである
ということです。
例えば、実務的な面では
創造性の高い人が一番集まるのは
ベンチャー企業以外には大学です。
大学は事務的な作業が多いため、
それによって多くの知的資源が失われています。
また、論文掲載の際の訂正にも大きな労力があります。
もし、今の私のように
多くの時間を勉強に費やすことができたら
あるいは私は無理ですが、
実験や研究に費やすことができたら
おそらく多くのイノベーションが生まれるはずです。
これらの助けになるのは生成系AIだと思います。
生成系AIによって
子どもの教育はどうなるか?
この議論もあります。
私はSTEAM教育は今まで同様重要で
その礎には言語リテラシーがあります。
生成系AIは少なくとも使い方を間違えなければ
言語リテラシーを上げるものです。
例えば、
大学の英語の試験で
「上述した一部の文章を生成系AIで英語にした。
それに対してあなたならどのようにその英語を書き換えるか?」
そうした問題も意義があります。
このような問題に将来的になるかもしれません。
文章の一部としたのは、
生成系AIは対象となる文章のみで翻訳するわけですが、
受験する学生さんは文章全体の大意を理解する必要があります。
その大意を含めると生成系AIの翻訳がおかしいところに気付きます。
実は、私は2か月前就職活動していました。
その時に私の出願した特許の内容を職務経歴書の中で
英語で提出する機会がありました。
その時に生成系AIを使って翻訳しましたが、
かなりそのクオリティーの高さに驚きましたが、
それでも訂正する箇所は多くありました。
それは私がその特許の内容を本質的に理解しているからです。
つまり、出題として文章の一部にする価値は、
その文書の本質が分かった状態で、
一部しか情報が与えられていない人工知能の翻訳に対して
どのようにその大意を英文に反映させるか?
このことを入試で問う事ができます。
これはおそらく
東京大学医学部、京都大学医学部くらいのレベルの問題です。
しかし、将来的には
このレベルの学生にはこれくらいはできてほしい
というのが私にはあります。

生成系AIで人のクリエイティビティーが奪われて
もう人のやることはないのような意見があるかもしれませんが、
おそらくそうはならないという展望を持っています。
例えば、この記事にしても
全く同じ内容の、同じ書き方の文章を
事前に生成系AIが作成することは不可能です。
その組み合わせは無限だからです。
どういった文章が人中心の社会で価値があるか?
これは、内容だけではなく書き方もあります。
「なんか興味のひく書き方だよね。」
同じ内容でも興味の引く、読んでもらえる文章は
人中心の社会で価値があります。
そこのクリエイティビティーは人には少なくとも残されているし、
生成系AIで埋めるのもおそらく無理です。
検索エンジンも世の中に出て20年以上になりますが、
未だ、使いこなせていない部分もあるでしょう。
また、検索エンジンの性能もシンギュラリティー性があるわけではなく
どちらかといえば、時間経過に対してLog曲線です。
おそらく生成系AIもそうなるのではないか?と私は予想しています。
その理由は
生成系AIはおそらく人工知能のアルゴリズムからして
インターネット上にある膨大な文章データを文節解析して
それらを何億次元の関数で瞬時的に出力していると思います。
これは人には到底できないことです。
しかし、ここで選ばれる情報は、
どちらかというと統計的にマジョリティーで
マイノリティーの内容は含まれません。
しかし、例えば最先端の科学論文でいえば、
必ずしも総括されるような共通的な情報が
革新性につながるか?というと必ずしもそうではありません。
むしろ、それを一部裏切ることで
今までにない革新性が生まれます。
それは、おそらくアルゴリズムを変えない限り
生成系AIにはできないことです。

検索エンジンと生成系AIを巧みに利用して
議論できる環境にある人は周りの優秀な人と議論して
それを公開することで
おそらくイノベーションは次々に生まれます。
その革新の源泉はやはり「人」です。
そういったことを未来の子どもに託す人も多いかもしれないですが、
これからは実は中年、シニアが熱い時代になるかもしれません。
今まではおおよそ人のキャリアは決められていました。
40代以上になれば、管理職になって
現場から離れる人が多くなります。
それは人の能力が生理的にそうなるからだけではないはずです。
40代になれば、当然40年以上生きているわけですから
もし、仮に10代から多くの時間、
科学全般の勉強、研究、議論、執筆に携わっていたら
30年以上のキャリアになり、
そこからまたさらに上乗せすると
おそらく生み出される事の質があがります。
これからはむしろ、若い時代に成功するよりも
より長い時間、最も価値のある事に費やすためには
どのような社会設計にするべきか考える必要があります。
生成系AIを初め、
これから人工知能によって生み出される製品は
そういった長い時間人が最前線でいるための
助けになるようなものであるべきです。
このような話を聞いて、若い人はワクワクしませんか?
ハーバード大学の人はどうですか?
東京大学、京都大学の人はどうですか?
灘高校、桜蔭高校の人はどうですか?

生成系AIもおそらくデータが蓄積すると
それだけノイズも多くなることも一方ではあると思います。
また、検索エンジンと違って
出力される結果は今のところ1種類です。
それを増やすことは原理的に可能だと思いますが、
エネルギー消費の問題はあるかもしれません。
生成系AIについて否定的な意見もありますが、
おそらく人のクリエイティビティーを奪うものにはなりません。
現時点で頻繁に使っている感じからすると
私の意見(Opinion)としては
検索エンジンと並ぶくらい有効なものである
という認識です。
ツールの一つであり、
どのような質問をするかを含めて
創造性の核、その成長を自発的に生み出すものではありません。
人工知能が統計的な処理を行っている限り
おそらく人の創造性の空間は必ず残ります。

どれくらい人が地球で生活できるかわかりませんが、
アメリカ、中国、ドイツ、イギリス、日本、韓国といったような
科学の世界でインデックスの高いの国にいる人たちは
少なくとも、
様々なイノベーションを生きている間に見たい
と考えていると思います。
不老不死を実現したいと本気で考えている人もいるかもしれません。
私はそのイノベーションの一つの源泉は
「新しい空間を見つける」という事だと思っています。
◎実空間
◎ダークマター
◎量子もつれなど不可解な空間
◎脳神経が生み出す創造、思考の空間
◎仮想空間
◎人工知能の空間
◎情報空間
◎サイバー空間
◎言語空間
それらに合わせて
◎連続的な空間
◎離散的な空間
◎波数空間
など数学的物理的な空間の定義もあります。
インターネットと人工知能は
間違いなく社会に与えた影響は大きいです。
仮想空間も立ち上がりは今一つですが、
その可能性を持っていると思います。
インターネットはサイバー空間という
今までにない空間を生み出したことが
1つのイノベーションの源泉です。
さらに古くはテレビやラジオも
広義に見れば、情報空間の一つではあります。
空間を起点にすると
何か新しい発見があるかもしれないと思っています。
空間に限りませんが
新しいフレームワークを生み出すのは
私は人工知能ではなく人だと思います。
今述べたことを生成系AIは出力できるでしょうか?
いくつかの間違いがあるとするならば、なおさらそうです。
失敗、間違いを共有して、正して、軌道修正して
イノベーションを生み出すのも
やはり人の集団となります。
人生長いわけですから
子どもの頃の教育をあまり劇的に変える必要はありません。

生成系AIの進化は非常に大きな速度で進んでおり、
それは時間単位であるとも言われます。
生成系AIは単語、文節を次々に並べて、
そのプロセスの中で関連性、意味を
評価しながら進めていくと現時点では理解しています。
そのバックグラウンドには
SNSを含め、クラウド空間上にある
人が生成した膨大な文章として意味のある
文字情報があります。
これは文章に限らず
文字としてコード化された
あらゆる情報に対して有効であるとされています。

将棋、囲碁なども含めて、基本的にAIは
評価による数字化が必要です。
その数字が最大化されるように成長していきます。
従って、評価関数をどのように定めるか?
それが重要になります。
但し、生成系AIによって出力される情報は
そこにはスポーツ、囲碁などのように
明確なルールはありませんから
その評価においては意見が分かれると思います。

細胞種特異的な薬剤送達では
細胞レベルでのそれを実現するため
表面タンパク質のデータベースを使って、
特異的なたんぱく質を見出し、
そのたんぱく質に高い結合性を持つ
対となる物質を生み出す必要があります。
その為の必要な要素としては
①物質の結合性の評価(1)
②任意の物質の合成手法の生成(2,3)
③任意の物質と遺伝情報の関連
これらが必要になります。
特に難しいのが②です。
②ができるという事は
作用させたい結合部位に対して有効な
薬剤を自在に作れるようになるという事につながるので
おそらく薬剤メーカーは
そのための研究をしていると思います。
技術開発をしているとわかりますが、
理想となるデザインがあっても、
それをどのように作製するか?
ここが非常に難しいです。
自然現象は非常に複雑ですが、
②のコストは非常に大きいので、
その合成手法を人工知能である程度効率化できれば、
それによってもたらされる付加価値は
利用方法をよく考えれば大きいと想定されます。

自然言語の生成系AIでは
単語、日本語などでは助詞も含まれますが、
それらのつながりを与えられた質問に対して
1つ1つ評価しているはずです。
その評価はSNSなどの普及によって可能になった
膨大な文字情報のつながりから、
統計的な手法で行っているのかもしれません。
そのプロセスには
クラウド空間に蓄積された情報に対する
アクセスがあり、選択が当然あります。
物質の合成の人工知能のアルゴリズムを構築する際に
果たして文章のような膨大なデータを
クラウド空間から取得できるか?
このような問題がまずあります。
物質の合成は因果関係が明確で
元となる物質の組み合わせから
合成条件を定めて、結果として生み出された物質を予測します。
このプロセスを人工知能が果たして
自然の摂理に沿った形でうまく評価できるか?
当然、
合成方法が情報として不十分で明らかでなかったり、
再現性がなかったり、
その為のデータが少なかったりすると
それは不可能という事になります。
そうすると、生成系AIのようにはいかず、
物理化学的な法則をアルゴリズムの中に組み込む必要があります。
しかし、複雑系の中の
物理化学的な法則は計算コストが大きく
それも現実的ではないのかもしれません。
また、生成系AIで明らかなように
まだ存在していないものの未来予測はできません。
例えば、
室温超電導をどのように実現できますか?
このように質問してみます。
しかし、それに対して従来にはない視点で
何か創案してくれるわけではありません。
これらの創案は当然多くの場合、失敗に終わり、
そのような答えは人工知能は示してくれません。
今ある情報から可能な範囲で示してくれるだけです。
そのような観点から
今までにない物質の合成方法を人工知能が示すことは
強力なデータベースがあったとしても
困難な事かもしれません。

ただ、いずれにしても
生成系AIと同様に問題はあると思いますが、
将来的にデザインされたものに対して
それをどのように作製するかという
合成方法が「ある程度」わかる人工知能ができれば、
薬学に関わらず、機械分野、
エレクトロニクス、メカトロニクスなども含めて
ある種、革命的であり
うまく利用すればSDGsに貢献すると考えられます。

(参考文献)
(1)
Ayan Chatterjee, Robin Walters, Zohair Shafi, Omair Shafi Ahmed, Michael Sebek, Deisy Gysi, Rose Yu, Tina Eliassi-Rad, Albert-László Barabási & Giulia Menichetti
Improving the generalizability of protein-ligand binding predictions with AI-Bind
Nature Communications volume 14, Article number: 1989 (2023) 
(2)
Norihiko Sasaki, Jun Kikkawa, Yoshiki Ishii, Takayuki Uchihashi, Hitomi Imamura, Masayuki Takeuchi, Kazunori Sugiyasu
Multistep, site-selective noncovalent synthesis of two-dimensional block supramolecular polymers
Nature Chemistry volume 15, pages922–929 (2023)
(3)
Noriyuki Uchida
Design of supramolecular nanosheets for drug delivery applications
Polymer Journal (2023)

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