2025年7月11日金曜日

栄養学としての水和

<背景>
タンパク質をはじめとした高次構造として栄養学について考える時、特に高次構造として多様性の高いたんぱく質を筆頭にそのタンパク質の構造に与える水分子、すなわち水和(hydoration)の影響について十分に研究、考察、考慮し、栄養学を再定義する事は非常に重要です。水は調理、栄養摂取において非常に普遍的かつ基本的な物質で、生命活動に欠かすことができず、双極性により栄養素とも強く相互作用する事から、その影響について考えることはより厳密に栄養素摂取を理解する上で必要です。


<たんぱく質>
(1)の冒頭右の図に示されるようにタンパク質の高次構造は周りの多くの水分子により、その3次元構造が主に弱い結合力によって、やや動的に支持されます。例えば、人、特に日本人における細かい栄養学、構造生物学的、水学における定義が必要な鶏卵、納豆(発酵大豆)においてこのようなたんぱく質の高次構造内の水和の影響をより強く受け、体内に取り込んだ時の水との複合体としての影響を考える必要がある、たんぱく質が存在する部位は鶏卵では卵白、納豆では液胞(Vacuole)です。豆の状態では子葉のためビタミンや抗酸化物質を保持する液胞ではなく、成長の為のたんぱく質貯蔵のための分割された少し小さめの複数の液胞が存在します(2)。特に大豆の液胞に含まれるタンパク質は子葉の細胞壁、細胞膜の中にさらに液胞膜に囲まれた様式で、かつ非常に多くの水分子の水和によって構造保持される為、たんぱく質の高次構造が調理の過程で保持されやすく、液胞により非常に水分子が多いことから、3次構造の水和の影響を考える必要があります。特に納豆の発酵では、納豆菌によって糸を引くような柔らかい構造になりますが、これは納豆が微視的にはたんぱく質構造など個別の栄養素が、巨視的には豆構造として柔らかくなり、それの間、取り囲む部分は一部でヒドロゲル化し、発光プロセスにより豆全体の水和性が上がる事(3)を示します。発酵プロセスは菌が放出する酵素により区画としての膜が変形、一部崩壊しますが、菌が集団的に持つ保水性によって内部のたんぱく質の水和性が高められる可能性があります。たんぱく質表面は水素結合受容グループ(hydrogen-bond acceptor groups (e.g., -O-, =O, =N-)がhydrogen-bond donor groups ( e.g., O-H, =N-H, -NH2, -NH3+)よりも大きいため(1)、水素結合を作りやすい傾向にあります。少し挑戦的に考察すると、こうした水素結合受容性のたんぱく質表面の高さは、水分子の集合体の中で電離した水素イオンと干渉しやすく、水素イオン濃度に応じた、すなわち酸性度に応じたたんぱく質の水和のバランスの一つの素因となっているといえます。また、水素イオン結合を供給するグループは水分子集合体の中の水酸基イオンとの相互作用に関連すると考えられますが、水酸基イオンは当然OHですから酸素を含みます。この酸素は、8つの電子を持ち、電子の配置における空間的揺らぎが大きく、電子が空間的に偏在した部分が存在します。これを孤立電子と呼びます。こうした孤立電子は強く水素イオンをひきつけるので、水酸基イオンに水素イオンをひきつける求核性が高くなり、水素イオンの単体が結合に関与するような弱い結合を形成しにくく、末端の水素を構造から引き離す性質があります。これはたんぱく質構造の周辺部からの分解を駆動する一つの因子のため、水素結合ドナーグループが表面に少ない事は、たんぱく質構造の水中での安定性に寄与する一因であると考察できます。従って、こうした原理からは一般的にはたんぱく質の水中の安定性はpH、すなわち酸性度の影響を受け、中性から弱酸性の方が、たんぱく質高次構造は安定化しやすい傾向にあるかもしれない事が示されます。従って、大豆のたんぱく質貯蔵型の液胞の中はこうしたタンパク質高次構造のための最適な酸性度になっている可能性があります。たんぱく質の高次構造の安定化には例えば、コラーゲンなどのたんぱく質のらせん構造の間に形成される水分子のように近接場を占有し、他の物質が入り込めない、構造に干渉できない領域ができることが重要です。このような特定の分子の空間占有の事を「excluded-volume effects(排除体積効果)」と呼びます。一般的には空間的に他の分子が存在できない領域が、ある分子、ここではタンパク質によって物理的に占有されることによって生じる効果を指します。そうすると新たに水分子が占有空間に入り込めなくなり、微視的に見たときのたんぱく質母体構造に存在する水素結合が空席状態(vacant state)になります。これにより水素結合が安定的に占有されたたんぱく質構造に対して、こうした活性部位が動的な形で残ることで局所的な再構成の自由度向上、熱ゆらぎやpH変化に対して迅速な構造応答、特定の刺激によりゲル状態などへの構造相転移(conformational switching)が誘導されやすくなるなどの機能化が生じる可能性があります。こうした排除体積効果やタンパク質表面の凹凸構造、そして極性・非極性残基の配置などの影響により、水分子は自由に並ぶことができず、その代わりにタンパク質表面に沿って「構造秩序化(structural ordering)」された配置をとるようになります。すなわち、水和水は空間的に整列された状態、もしくはタンパク質の構造に誘導された準結晶的なネットワーク構造を形成する傾向がある、ということが報告されています。この構造秩序化は、水素結合そのものの「結合強度(bond strength)」には大きな影響を及ぼさないと考えられています。言い換えれば、水分子同士の一対一の水素結合のエネルギー(例えばエンタルピー変化や結合距離、角度)には顕著な変化がないという点が指摘されているのです。したがって、タンパク質はあくまでも水和水の空間的配置(spatial configuration)や配向秩序(orientational ordering)に影響を与えるものであり、個々の水素結合の物理化学的特性にはほとんど作用しないとされます。これは少し視点を変えて言い換えると、たんぱく質の構造の秩序化は、一定の力の場がある領域において形成される水分子の分子同士の秩序性に一定、誘引される形で生じるといえます。その時には水素結合など微視的な結合様式を変化させずにより巨視的な系として秩序構造が形成されるということです。このようにたんぱく質の構造が水分子の巨視的な振る舞いに影響を受けるとすると後に飲料水としての水学でも深く掘り下げて考えますが、果物などの植物が取り込むイオンバランスなどを含めた水質が液胞の水分子の構成、挙動に一定の影響力があると仮定すると、液胞内の栄養素や子葉などのたんぱく質貯蔵などの機能がある液胞内のたんぱく質の立体構造、秩序化に影響を与える可能性があるし、飲料水として人が飲む水質が消化器に取り込んだたんぱく質の高次構造に影響を与える可能性があります。すなわち、こうした栄養素の水和の中での高次構造への影響を考えると、単なる水質基準を超えた水という共通の安全指標では十分に説明できな事が生じる可能性を示唆するものです。すなわち、ミネラルウォーターの価値を根本から見直す余地が生じるという事です。なぜなら、水分子の集団的な挙動は、ミネラルウォーターを飲んだ時の舌での口当たりで感じることができるようにそれぞれの水の特質ごと異なるからです。集団的挙動が変われば、それに影響を受けるたんぱく質を含めた栄養素がより高分子量である場合には、どのように動的な立体構造を形成するかに影響を及ぼす可能性があるというのは、今の栄養学ではここまでの事は考慮されていませんが、当然の仮説、帰結といえます。これを含めて考えると、生物がその環境で飲んできた水と食物連鎖で定義される自然な摂食は「飲」と「食」で明確に区別されることもありますが、栄養素の水和という観点では少なくとも、明確に区別できるものではなく、お互いに干渉してきた可能性があります。その飲食両方が人間の主に脳による介入によって特に近代のように高度に歪められている場合、こうした複雑な要素を含めて、進化の過程で構築されてきた自然なバランス、すなわち健康を同様に歪めている可能性を示唆するものです。言い換えると、食事だけではなく、どういう水を飲むかという事も、単なる必要な水分補給を超えた特別な意義が存在する可能性があり、その水資源が世界一多様で豊富な日本においてはその意義を根本から見つめなおす価値が、国有資産の有効化など経済的な面も含めて非常に高いと評価できます。あらゆる生物を含めた飲食の自然の影響は私たちが考えているよりもずっと複雑で、深遠なものです。人類の歴史の中で日本人である私が最も深遠な部分に踏み入れた最初の開拓者であるといえるでしょう。しかし、それでも到達した水深は浅く、その底は限りなく深いでしょう。テーマとして水和に着目した私の眼に狂いはありませんでした。さあ、読者のみなさん、私と共に、自然の飲食に関して、これからの健康、1次産業を含め、その未来を見据えた形で、知的な冒険をしましょう。
  たんぱく質の周りを水分子が取り囲んだ状態をhydration shellと呼びます。こうした水和は上述したようなたんぱく質の高次構造、すなわち折りたたみ構造だけではなく、たんぱく質分解酵素、抗原認識などにも影響を与えます(5)。この事実を栄養学と照らし合わせて考えると、こうした水和の状況、すなわち水がたんぱく質をどのように取り囲むかは、水分子の集団的挙動にも影響を与えると考えられるので、それはすなわち環境中の水分子のイオンなどの組成によって、シェルの状態が変わり、そのタンパク質の消化器、循環器での分解酵素による影響、免疫系の抗原認識が変わる可能性を示唆します。つまり、全身の細胞までどのような構造でアミノ酸源が供給されるか、免疫細胞の寛容性も水分子の組成が集団的挙動の違いを考慮すると影響する可能性があります。実際にこうした水和シェルの水はゲルに近い挙動をとりますから、バルクの水に比べて、2-3倍動きが遅い(拡散係数が低い)とされています(5)。ただ、この速度もたんぱく質の母構造がどの程度距離があるかによっても大きく変わると推定されますし、たんぱく質の残基ごとの特性によって特に近接場によっては取り巻く水分子の運動速度の偏差は非常に大きいと推定されます。実際に最大で10倍拡散係数が小さいという報告もあります(6)。(5:Figure 16)のシミュレーション結果を見ると、水分子が水和しやすい傾向のある部分は、少し構造的に巨視的にみると、溝がある部分に沿うように多く分布していると評価できます。従って、溝に沿って形成された水分子の集団的挙動は谷の構造を挟んだ尾根(ridge)の構造同士が水の場によってどのような力を受けて、位置を変えるかに影響を与えそうです。すなわち尾根の間隔やより複雑には振動の周期、振幅、その偏差にも関係する可能性があります。実際に分子動力学(MD: Molecular Dynamics)シミュレーションの結果によって、上述した溝、すなわちドメイン間に形成された裂溝(cleft)内における水和構造の協調的変化がドメインの開閉運動に影響を与えることが示されています。すなわち、たんぱく質構造は水分子の液体性の動的挙動に誘引される形で高次構造が常に動いている事を示唆するものです。この運動の時間単位がμs~msであることが示されています(7)。



<菌(発酵)>



(参考文献)
(1)Martin Chaplin Protein Hydration The contribution of water to protein structure Water structure and science
(2)Tomoo Shimada,1 Junpei Takagi,1,2,3 Takuji Ichino,1,4 Makoto Shirakawa,1,5 and Ikuko Hara-Nishimura1,3  Plant Vacuoles Annu. Rev. Plant Biol. 2018. 69:123–45
(3)Vinny Kohli & Siddhartha Singha Protein digestibility of soybean: how processing affects seed structure, protein and non-protein components Discover Food Volume 4, article number 7, (2024)
(4)R. Shi, The structural order of protein hydration water, Communications in Theoretical Physics, 74 (2022) 095602
(5)Aoife C Fogarty 1, Damien Laage Water Dynamics in Protein Hydration Shells: The Molecular Origins of the Dynamical Perturbation J Phys Chem B. 2014 Jan 30;118(28):7715–7729
(6)Shuai Guo a 1, Lin Yang a b 1, Chengyu Hou c 1, Shenda Jiang a, Xiaoliang Ma a, Liping Shi a, Bing Zheng d, Lin Ye e, Xiaodong He  The low-entropy hydration shell mediated ice-binding mechanism of antifreeze proteins  International Journal of Biological Macromolecules Volume 277, Part 4, October 2024, 134562
(7)R Bryn Fenwick 1, David Oyen 1, H Jane Dyson 1, Peter E Wright  Slow dynamics of tryptophan-water networks in proteins  J Am Chem Soc. 2018 Jan 3;140(2):675–682

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