2023年4月19日水曜日

植物を利用したナノ粒子形成

薬物送達の一つの方法は
ウィルスを使ったものですが、
最も注意しなければならないのが、
その副産物としての公衆衛生への影響です。
基本的にウィルス学者の中では難しい
という見解が一般的ですが
それについては気を付ける必要があります。
しかしながら、
薬物送達学において重要な分野である
ウィルスを主要な送達キャリアとして位置付けている大学もあるので
注意しながらもその分野に焦点を当てるのであれば、
書かないわけにはいかない
ということがあります。
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薬物送達に期待される役割は
1つはまだなかなか人のケースで広範に実現しない
遺伝子治療に有ります。
遺伝子改変技術はあり、成功を収めていますが、
遺伝子を改変したい細胞種があるわけですから
そこに特異的に遺伝子編集構成物質を送達させたい
というほぼ揺るぎない需要があります。
その遺伝子改変物質の送達媒体として、
アデノウィルスが挙げられてます(2)。
アデノウィルス自身は型によって
肺炎、脳炎、結膜炎などが起こります。
従って、
肺、脳、眼に影響を与える性質があり
それに対する走化性などのフィットネスがある
と考えられることから
眼、脳に対する臨床応用が多くなっています(2)。
その他は筋肉、肝臓であり、
肝臓はもともとナノ粒子が送達されやすい臓器です。
この事は
ウィルスを薬物送達に利用する際に
そのウィルスが元々どの器官に影響を与えるのか?
その適合度が重要という事を示しています。
例えば
前立腺ではHPV、HCMV、HIV、BKウィルスが挙げられています。
心臓でも心筋に影響を与えるウィルスとして
アデノウィルス、インフルエンザウィルス、
サイトメガロウィルス、エプステインバールウィルス
これらなどが挙げられています。
いずれにしても
人の過去からの歴史を見ながら
それぞれのウィルスがどこに影響を与え、
それは免疫機能による間接的影響なのか?
それともウィルスの
直接的な送達によってそれが起こったかどうか?
それについて調べる事は
それをウィルスを無毒化して送達キャリアとして利用する際の
重要な科学的情報、選択項目となります。
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Lukas Eidenberger(敬称略)らは
植物ベースのナノ粒子について報告されています(1)。
植物ベースのナノ粒子は
植物を育てる環境コストが非常に低いという事から
コストや資源の視点で優れていると言えますが、
機能的に着目すべき点があります。
植物ベースのナノ粒子の選択として
その植物に生息するウィルスを使うというのがあります。
その(少なくとも一部の)ウィルスは興味深いことに
増殖するための遺伝子を持っていません。
従って、増殖能が
それを人や動物で使ったときにはないということになります。
従って、増殖して数が制御できなくなる、
あるいはウィルスが人に定在するというリスクは
ほぼ皆無に近いと言えると思います。
では、植物ベースのウィルスは
どのように植物に寄生して数を維持できるのでしょうか?
その疑問が当然浮かび上がります。
その理由は、植物の細胞内に含まれる
遺伝子に結合するタンパク質を有していて
その遺伝子の活性を制御し、
それによってウィルスの膜の元となるたんぱく質が
植物の細胞内で作られ、
それが自己形成することによって
ウィルスの膜、それがつながり胞となります。
それでウィルスは数を増やすことができます(3)。
--
合成ナノ粒子において、
ナノ粒子のエンベロープ膜がどのような
材料構成がいいか?というのは精緻に考えられます。
1つの材料ではなくて、
非常に複雑な材料構成となっています。
植物ベースのウィルスは
植物の細胞内で自己形成されますから
その外膜の材料は
どのように細胞内から自己形成過程において
物質を取り込むかに
少なくとも一部(大部分)依存します。
ここをうまく制御して、生かす事が求められる
のではないか?と考えられます。
また、表面タンパク質などの機能化をどのように行うか?
ex vivoで精製した後に行うか?
あるいはin vivoで行うか?
このような選択肢があると思われます。
例えば、
ウィルスやナノ粒子の機能化として
抗体を使うという事が考えられます。
その抗体は植物の場合は獲得免疫系がないので
遺伝子導入によって細胞内で生成させる必要があります。
しかし、人や動物などのように
元々、植物は抗体を作る能力がないことから
それによって困難な点もあるだろうし、
逆に、余計なノイズが入りにくいという事は
あるかもしれません。
抗体を作る一つの自然にある工場として
植物を利用するという事は選択の一つです。
「Molecular farming」の一環です。
複雑な有機物質、生体物質を一からくみ上げる事は
できませんから、そうした自然の力を借りるときに
利用しやすい植物をその工場として使うという視点です。
このような
「任意の分子、構造体を生み出す自然の工場」の
利用価値を高めるためには、
植物が遺伝子、タンパク質などを取り込んで
どのようにウィルスを含む粒子、抗体、
タンパク質などの構造体を自己形成するか?
その生物学的、物理化学的プロセスの
詳細を掴む必要があります。

(参考文献)
(1)
Lukas Eidenberger, Benjamin Kogelmann & Herta Steinkellner
Plant-based biopharmaceutical engineering
Nature Reviews Bioengineering (2023)
(2)
Dan Wang, Phillip W. L. Tai & Guangping Gao
Adeno-associated virus vector as a platform for gene therapy delivery
Nature Reviews Drug Discovery volume 18, pages358–378 (2019)
(3)
Raquel Tenorio,Isabel Fernández de Castro,Jonathan J. Knowlton,Paula F. Zamora,Danica M. Sutherland,Cristina Risco, and Terence S. Dermod
Function, Architecture, and Biogenesis of Reovirus Replication Neoorganelles
Viruses 2019, 11(3), 288


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