特に小児タイプびまん性高悪性度グリオーマは
3年生存率が20%程度と言われています。
近年、日進月歩で臨床研究が進んでいると
言われていますが、
この種の難しい癌では治療において
50年、顕著な改善は見られていない
とされています。
もし、腫瘍が無ければ、
そのお子さんに経験できる人生の時間は
少なくとも数十年以上です。
今は人生100年時代と言われます。
従って、非常に優れた治療を提供することができれば
医療的な介入による貢献は
非常に大きいと考えられます。
--
Alan R. Cohen(敬称略)は
子供の脳腫瘍の総括をされています(1)。
本日はその内容の中の
毛様細胞性星状細胞腫と
小児タイプびまん性高悪性度グリオーマ
の内容の一部、追記、考察について
読者の方と情報共有したいと思います。
//毛様細胞性星状細胞腫(*1)//ーー
(*1)pilocytic astrocytomas
子供の最も共通的な星状細胞腫は
毛様細胞性星状細胞腫であり、
20歳までの未成人の脳腫瘍の20%を占める
と言われています(2-4)。
それらは成長が遅く
境界性を持ち(Circumscribed)、
10年生存率は90%を超えます(3,5)。
これらの腫瘍のほとんどは
小脳、トルコ鞍上部に位置しますが、
それ以外のケースでは
脳内領域に依存せず現れます。
毛様細胞性星状細胞腫は悪性への転換は
ほとんど起こらず、
一般的に予後は良いとされています。
しかし、20%のお子さんはそうではなく
局所的な再発や播種が起こります(2,6)。
遺伝子的な特徴では
KIAA1549–BRAF fusion。
これが毛様細胞性星状細胞腫80-90%の患児で
生じているとされており、
この遺伝子的な特徴は
後方窩にこの腫瘍がある場合に顕著です。
それらは全生存に関わっているかもしれない
とされています(2,7,8)。
//小児タイプびまん性高悪性度グリオーマ(*2)//ーー
(*2)Pediatric-Type Diffuse, High-Grade Gliomas
小児タイプ高悪性度グリオーマは
子供の脳腫瘍の10%を占めます。
この予後は不良であるとさてています(9)。
--
手術と抗がん剤によるアドジュバント治療による
懸命な治療に関わらず、
70~90%の子供は診断後2年以内に
命を落としてしまいます(10)。
--
〇多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)
これが大人のケースでは
最も共通的な原発性の脳腫瘍であるとされています。
結果として、子供の腫瘍の用語から
膠芽細胞種(glioblastoma)は取り除かれました。
--
高悪性度グリオーマの理解が深まった事によって
クロマチンリモデリング遺伝子ファミリーの
ヒストンH3。
これがドライバー変異である事が特定されています(11,12)。
びまん性正中線(midline)、半球の脳のグリオーマを持つ
患者さんにおいては
ヒストンH3遺伝子の尾部の体細胞変異は
メチル化を減少、
グリア細胞分化をブロックし、
グリオーマ生成を促進します(13)。
--
4つのサブタイプがグリオーマにはあります。
びまん性正中線(midline)グリオーマは
致死性の腫瘍で、切除が難しいです。
H3K27が遺伝子改変したケースは
おおよそこのタイプの90%であるとされています。
びまん性正中線(midline)グリオーマの
メチル化を調べた結果、
発がん性ヒストンミスセンス点変異を
ヒストンH3内に確認しました(14,15)。
この腫瘍は同様の
小児タイプびまん性高悪性度グリオーマの
ワイルドタイプの分類の腫瘍よりも
生存率が低いことが知られています(16)。
このH3K27 alterationは
組織学的グレーディングよりも
予後に関わる因子であるとされています(14)。
--
このH3K27 alterationは
びまん性正中線(midline)グリオーマを持つ
子供に特異的であると想定されています(17)。
--
2つの目のタイプとして
びまん性半球グリオーマがあります。
H3G34変異が小脳の半球に現れます。
年長の子供や若い成人に多いとされています(14,18,19)。
この腫瘍は他の遺伝子改変が生じます。
〇α-thalassemia X-linked (ATRX)
〇TP53 tumor protein 53 (TP53) mutations
〇O6-methylguanine–DNA methyltransferase (MGMT)
promoter methylation
これらです(20)。
ヒストンの変異の確率は
びまん性正中線グリオーマよりも低く
40%程度であるとされています。
主に子供が主要であるとされています(11,21)。
--
3つ目のタイプとして
H3ワイルドタイプ、IDHワイルドタイプがあります。
これは進行性の腫瘍で
主に小脳の半球に見られます。
予後は不良であるとされています(22)。
--
4つ目のタイプとして
幼児タイプ半球性(hemispheric)グリオーマがあります。
これは
受容体チロシンキナーゼ遺伝子融合が見られます。
〇ALK, NTRK1/2/3, ROS1, and MET4
これらを含みます。
これらのキナーゼ改変は
潜在的に標的化する事が出来、
予備的調査によれば、
キナーゼ融合が生じている腫瘍を持つお子さんに
おいて治療効果があったと報告されています(20,23,24)。
--
標準的なアドジュバント治療は
focal palliative irradiation。
緩和のための放射線治療です。
長期的な生存効果は芳しくありません。
この50年で目立った改善がないのが現状です。
3年のイベントフリー生存、
全生存率は高悪性度グリオーマで
それぞれ10%、20%程度です(25)。
--
特に身体の正中線の小脳に隣接する橋の
びまん性正中線グリオーマの治療効果は低く、
放射線治療がない場合には生存の中央値は4か月です。
放射線治療をしたとしても
8カ月から11カ月です。
--
変異に対する標的化治療は顕著な効果は
今のところは見られません。
しかし、近年臨床診療に導入されています。
一般的に
化学療法は高悪性度グリオーマを持つ子供に対する
治療においては効果は限定的です。
大人に対しては
テモゾロマイドがイベントフリー、全生存を
高めた事が示されています(25)。
しかし、子供に対してはその効果はありません。
DNAの修復酵素
O6-メチルグアニンDNAメチル基転移酵素[メチルトランスフェラーゼ]
MGMT。
これが亢進していることによって
テモゾロマイドによるメチル化への作用が
弱められている可能性が示唆されています(26)。
従って、このMGMTを欠如させる
ロムスチンをテモゾロマイドに加えて
治療したところ、
テモゾロマイド単剤による治療のケースよりも
イベントフリー、全生存が長くなった
と報告されています(27)。
しかし、これはMGMTの機能が遺伝子によって
改変されているかどうかの確認が必要になります。
--
上述したH3K27変異は
ヒストンジアセチラーゼ(HDAC)抑制剤によって
標的化することができます。
〇Panobinostat
同所性の異種移植ネズミモデルで
浸潤性グリオーマに対して効果があり、
現在、臨床試験で評価されています(28,29)。
〇Fimepinostat
これはpan-HDAC and PI3K抑制剤です。
これが高悪性度グリオーマの子供に対して
治験(フェーズⅠ)で調べられています。
その他には
〇免疫チェックポイント抑制剤
〇CAR-T療法
〇癌ワクチン
これらなどの癌免疫療法や
腫瘍破壊のウィルス療法の効果が調べられています。
//考察//ーー
高悪性度のグリオーマに関しては
外科と放射線治療だけでは治療が難しいと考えられます。
どの遺伝子に変異が入っているかを調べて
その特徴に合わせた治療が求められます。
特に予後が非常に悪い、橋など脳幹にできる
正中線のびまん性高悪性度グリオーマの場合は
外科によるアクセスが難しい位置であることから
より放射線、化学療法、あるいは免疫療法などの
負担が増える事になります。
現状でそれぞれの変異に合わせた
薬剤が選択され、現在治験が始められているところです。
その次の段階としては
その薬剤をどうやって病変部位に有効に輸送するか?
というフェーズがあります。
高悪性度のグリオーマにおいて
免疫的な治療も検討されています。
薬剤輸送媒体として細胞外小胞を使う場合には
例えば、免疫細胞由来の細胞外小胞を使い
免疫機能を誘発しながら
薬剤を輸送する事も可能かもしれません。
その細胞外小胞がお子さんの脳の腫瘍形成部に対して
高い走化性、向性を有しているのであれば、
その輸送媒体に免疫療法的、化学療法的
両面の機能を同時に備えさせることは
それぞれ別個、組み合わせて治療するよりも
効果を発揮する可能性があります。
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