2022年6月17日金曜日

尿の細胞外小胞と尿生殖路細胞の関係

慢性腎臓病(CKD)とは慢性に経験するすべての
腎臓病を指します。
実際の患者さんは日本国内で1330万人、
20歳以上の8人に1人いると考えられており
新たな国民病であるとされています。
慢性腎臓病はメタボリックシンドロームとの
関わりが深いと考えられています。
腎臓は全身の臓器で作られた老廃物を尿に捨て
きれいになった血液を心臓に戻すという
大切な役割を担っています。
そうした中で心臓の大動脈から1分間に流れる
血液量のおおよそ1/5は腎臓に行きます。
1分間に1Lと大量です。
従って、上述したメタボリックシンドロームを含む
血液性の疾患との関わりが深いと考えられます。
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この腎臓は組織が非常に複雑であるため
iPS細胞などを用いて臓器再生する際の
最後の難題と言われることもあります。
従って、再生が難しい臓器の一つです。
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人の遺伝子を持つブタの腎臓を
脳死した人に移植した報告もあります。
54時間、機能を発揮したと言われています(10)。
このような選択肢が人に適用される可能性もあります。
このような移植を動物に求める背景は
ドナー不足があると考えられます。
日本を含め、世界で多くの人に腎障害が起これば
ドナー不足はより顕著になります。
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Cristina Grange & Benedetta Bussolati 
(敬称略)からなる医療研究グループは
腎臓病における細胞外小胞について総括されています(1)。
細胞外小胞は病気のバイオマーカーとしても
期待されますが、再生機能を持つなど
腎臓病に対する治療においての機能を有する側面もあります。
本日は、尿の細胞外小胞の供給元についての
内容の一部を読者の方と情報共有したいと思います。

尿の細胞外小胞は異種性に富みます。
その種類は尿生殖路の細胞が主です。
詳しくは後述しますが、
糸球体にあるバリア機能によって
血液中の細胞外小胞がろ過されるからです。
尿の細胞外小胞は
〇糸球体の細胞
〇尿細管細胞
〇前立腺の細胞
〇膀胱の細胞
これらが主です(2)。
尿の細胞外小胞の99.96%は
尿生殖路の細胞であることが示されています(2)。
尿の細胞外小胞は
典型的な頂端膜マーカーを発現しています。
この頂端膜とは内腔に面した細胞膜の表面です。
従って、尿細管の内腔壁にある細胞から
細胞外小胞が放出されている事が示されます(3)。
--
また腎臓由来の尿の細胞外小胞と
完全な尿細管由来の細胞外小胞の比較によると
尿の細胞外小胞のタンパク質は
両方の比較サンプルに含まれていました。
この事は腎臓が尿の細胞外小胞の主要な供給元である
ことを示しています(4)。
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上述した99.96%以外の残りの0.04%は
腎臓浸潤細胞由来
あるいは血中の細胞外小胞である可能性があります。
しかし、
無傷の糸球体ろ過障壁は
4nm以下の物質しか通さないと言われています(5)。
一方で、別の経路として
糸球体のろ過障壁の細胞をトランスサイトーシスして
尿に血中の細胞外小胞が流れ出す事も考えられます。
他方で、
血中の細胞外小胞の尿への排出は
ラットのモデルで示されています(6)。
しかし、今までのところ
内因性の尿路由来ではない細胞外小胞の
尿への排出は明瞭には示されていません。
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腎臓に傷害があると血尿やタンパク尿が出るように
細胞外小胞も糸球体ろ過障壁を超えて
尿路へ流れ出す事も想定されます。
実際に
急性腎障害では静脈注射されたラベル付きの
細胞外小胞の腎臓への分布が増えたことが
示されています(7)。
これらの血中からの細胞外小胞は
尿細管細胞に5分以内と急速に取り込まれる
ことが確認されています(8,9)。

//Author correction//ーー
細胞外小胞を患者さんの病態の継続的なモニタリングのため
に使用する際、毎日の尿から分析する事を以前提案しました。
しかし、
Cristina Grange & Benedetta Bussolati(敬称略)の
総括で示されているように(1)、
血液と尿の間には糸球体のバリア機能があり
血液だけではなく、細胞外小胞もほとんどブロックされて
しまうことが明らかになっています。
むしろ血液中の細胞外小胞が尿にでるということは
腎臓に問題があるという事です。
従って、
尿の細胞外小胞の分析によって
身体全体の状態を把握する事は原理的に難しい
ということを理解しました。
一方で、
糸球体、尿細管、前立腺、膀胱の機能は
尿の細胞外小胞から調べる事ができる可能性があります。

(参考文献)
(1)
Cristina Grange & Benedetta Bussolati 
Extracellular vesicles in kidney disease
Nature Reviews Nephrology (2022)
(2)
Erdbrügger, U. et al. Urinary extracellular vesicles:  
a position paper by the Urine Task Force of the 
International Society for Extracellular Vesicles.  
J. Extracell. Vesicles 10, e12093 (2021).  
(3)
Pisitkun, T., Shen, R. F. & Knepper, M. A. Identification 
and proteomic profiling of exosomes in human urine. 
Proc. Natl Acad. Sci. USA 101, 13368–13373 
(2004).  
(4)
Blijdorp, C. J. et al. Nephron mass determines the 
excretion rate of urinary extracellular vesicles.  
J. Extracell. Vesicles 11, e12181 (2022).
(5)
Huang, J. et al. A cationic near infrared fluorescent 
agent and ethyl- cinnamate tissue clearing protocol  
for vascular staining and imaging. Sci. Rep. 9, 521 
(2019).
(6)
Cheng, Y. et al. A translational study of urine miRNAs 
in acute myocardial infarction. J. Mol. Cell. Cardiol. 
53, 668–676 (2012).
(7)
Grange, C. et al. Biodistribution of mesenchymal stem 
cell- derived extracellular vesicles in a model of acute 
kidney injury monitored by optical imaging. Int. J. 
Mol. Med. 33, 1055–1063 (2014).
(8)
Bruno, S. et al. Mesenchymal stem cell- derived 
microvesicles protect against acute tubular injury.  
J. Am. Soc. Nephrol. 20, 1053–1067 (2009).
(9)
Cantaluppi, V. et al. Microvesicles derived from 
endothelial progenitor cells protect the kidney  
from ischemia- reperfusion injury by microRNA- 
dependent reprogramming of resident renal cells. 
Kidney Int. 82, 412–427 (2012).
(10)
Robert A. Montgomery, M.D., D.Phil., Jeffrey M. Stern, M.D., Bonnie E. Lonze, M.D., Ph.D., Vasishta S. Tatapudi, M.D., Massimo Mangiola, Ph.D., Ming Wu, M.D., Elaina Weldon, M.S.N., A.C.N.P.-B.C., Nikki Lawson, R.N., Cecilia Deterville, M.S., Rebecca A. Dieter, Pharm.D., B.C.P.S., Brigitte Sullivan, M.B.A., Gabriella Boulton, B.A., Brendan Parent, J.D., Greta Piper, M.D., Philip Sommer, M.D., Samantha Cawthon, B.S., Erin Duggan, M.D., David Ayares, Ph.D., Amy Dandro, M.S., Ana Fazio-Kroll, Ph.D., Maria Kokkinaki, Ph.D., Lars Burdorf, M.D., Ph.D., Marc Lorber, M.D., Jef D. Boeke, Ph.D., Harvey Pass, M.D., Brendan Keating, Ph.D., Adam Griesemer, M.D., Nicole M. Ali, M.D., Sapna A. Mehta, M.D., and Zoe A. Stewart, M.D., Ph.D.
Results of Two Cases of Pig-to-Human Kidney Xenotransplantation
The New England Journal of Medicine 2022; 386:1889-1898

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