2022年6月16日木曜日

腎臓病に対する細胞外小胞の概要

細胞外小胞は各細胞種から放出され
血液、リンパ液などを通じで全身にいきわたります。
細胞外小胞はmRNAに作用するmiRNAを胞内に含み
それが受け細胞内に取り込まれることで
遺伝子発現の可動性に関わります。
この細胞外小胞は腎臓の生理、病理において
中心的な役割を果たすと言われています(1)。
尿の細胞外小胞は糸球体の細胞と尿細管細胞の間の
クロストーク、相互作用における仲介役となります。
また長く伸びる尿細管の異なる領域間での
クロストーク、相互作用の仲介役となります。
また臓器間といったもっと広域での
クロストークにも関わります。
上述したように細胞外小胞は腎臓の病理に関わります。
その中で、腎臓の損傷や炎症の亢進に関与します。
従って、その病理に関わる細胞外小胞の
バイオマーカーを分析することによって
診断や予後の決定に貢献します。
一方で
外因性の、人為的な細胞外小胞の投与によって
腎臓の再生、炎症と線維化の抑制など
急性、慢性に関わらず
腎臓病の治療を実現します。
この事は臨床前データによって
強固に証明されています(1)。
細胞外小胞を生体外で精製、製造し
薬剤として投与することを考慮する際には
どの細胞種から放出された細胞外小胞を使うか?
この事が選択肢として存在します。
現状で最も有望な選択肢は「幹細胞」です。
従って、iPS細胞技術、ミューズ細胞技術なども
同様に有望であることを示唆しています。
この時に期待される作用機序は
上述した腎臓の再生機能活性です。
元々、幹細胞が再生機能を持つので
そこから放出された細胞外小胞も
直接的、あるいは間接的に
再生機能を持つという事です。
また
細胞外小胞は今述べた様に
それそのものが治療効果を発揮するケースもあります。
例えば、心臓血管の疾患では
上述した幹細胞由来のエクソソーム(細胞外小胞)が
治療に使われ、治療効果を発揮します(2)。
一方で
細胞治療で選択される細胞そのものに対する
細胞外小胞の差別化因子は
細胞外小胞は代謝機能を持たない(?)ため
内容物をそのまま輸送する事に適している事です。
クロストークに主に関わる生理機能ですから
内容物を安定的に輸送する事に長けている事は
ごく自然な想定です。
そうした場合、そうした優れた輸送機能を生かして
脂質ナノ粒子のように薬剤輸送媒体としても利用できます。
また、細胞外小胞を放出元の細胞を
遺伝子操作することでエンジニアリングすることも可能です。
--
Cristina Grange & Benedetta Bussolati(敬称略)
からなる医療研究グループは
腎臓病における細胞外小胞について
上述した概略を含めて総括されています(1)。
本日はそのキーポイントについて
読者の方と情報共有したいと思います。

//キーポイント//ーー
尿の細胞外小胞は
〇糸球体内
〇糸球体-尿細管
〇尿細管内
これらのクロストーク、連携に関わります。
また腎臓を含めた臓器のクロストークにも関わります。
これらの機序は
腎臓の損傷を強め、
急性腎疾患、慢性腎疾患の進行に関わります。
--
尿の細胞外小胞は多層的な診断プラットフォームを
使う事によって分析する事ができます。
そのことによって
病理の過程を特定することや
どの細胞種が病理に関わっているか
ということを特定することができます。
従って、分析に当たっては
混在する尿の細胞外小胞のバルク分析の中で
細胞種と特定できるように仕分けする技術革新が
必要になります。
--
大規模な患者さんのコホート分析の中での
厳格な標準化や妥当性の確保は
細胞外小胞をバイオマーカーとして
臨床応用するためには必要となります。
--
幹細胞由来の細胞外小胞は
〇腎臓の回復
〇損傷進行の抑制
〇線維化の抑制
これらが急性、慢性の腎臓病において
動物モデルで示されています。
--
腎臓の治療における細胞外小胞に対して
いくつかのエンジニアリングアプローチがあります。
〇薬剤を有効に搭載する
〇腎臓の有効に輸送されるようにリガント形成させる
これらが考えられます。
後者はおそらく細胞外小胞の親細胞の
表面リガンドの構成が顕著に狙い通り変われば、
実現できる可能性があります。
--
上述した動物モデルで示された
細胞外小胞の腎臓病に対する治療効果に対して
小規模ですが人に対する臨床試験が行われています。
慢性腎臓病の患者さんに対して
間葉系幹細胞の細胞外小胞の投与の効果は
臨床的の良好であったとされています。
しかし、細胞外小胞の安定的な製造の為の
プロトコルが未熟である事と
それを臨床応用する際の標準化が遅れている事から
その治療応用には壁、課題があります。

(参考文献)
(1)
Cristina Grange & Benedetta Bussolati 
Extracellular vesicles in kidney disease
Nature Reviews Nephrology (2022)
(2)
Selvaraj Jayaraman et al.
Stem Cell-Derived Exosomes Potential Therapeutic Roles in Cardiovascular Diseases
Front. Cardiovasc. Med., 10 August 2021


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