2022年3月3日木曜日

CARベース療法の広範な適用可能性

様々な疾患において
「特定の細胞を取り除く」ということが重要です。
癌組織で有れば、癌細胞。
自己免疫疾患であれば、自己抗原を分泌する免疫細胞。
組織の線維化、老化であれば、それらの細胞。
もともと、このような細胞を取り除く機序は体内にありますが、
罹患していれば、それらが制御不能な状態になっているため
外因性の中で病状を治す、制御する必要があります。
この場合、問題となる細胞を取り除くのを助ける
機序を治療の中で組み込む必要があります。
キラーT細胞は細胞傷害性を持つため、
上述した「特定の病因となる細胞だけに」
攻撃性を持つようにプログラムさせることができれば、
目的を実現する事が期待できます。
その具体的な方法として「CAR-Tベース療法」があります。
ーー
Haig Aghajanian, Joel G. Rurik & Jonathan A. Epstein
(敬称略)からなる医療研究グループは
CAR-Tベース療法の癌治療を超えた広範な利用可能性について
総括されています(1)。
そのFig.1で示されているように
上述した問題となる細胞は標的となり得る
特異的な表面タンパク質を発現しています。
例えば、
自己免疫疾患であれば、B細胞表面に
自己抗原特有の表面タンパク質があります。
感染症で有れば、ウィルス表面の抗原が標的となります(2)。
この表な標的に結合するキラーT細胞を
細胞内(3,4)、もしくは細胞外(5)でデザインできれば、
目的の細胞「だけ」を細胞死させる事が期待できます。
この特異性があがれば、
例えば、従来の自己免疫疾患で問題となっていた
B細胞無形性などを防ぎながら、
自己抗原を抑えて免疫を制御する事が期待されます(6)。
ーー
今の述べた様に細胞内で免疫細胞のリプログラミングをする場合には
RNAなどを使って体内の免疫細胞内で目的となる
タンパク質を細胞外に形成させるために
新型コロナウィルスのワクチンのように
脂質ナノ粒子を輸送媒体として
RNAを輸送することが考えられます。
その際、脂質ナノ粒子の標的性を上げるための
表面物質の工夫などが必要だと考えられます(1)。
この場合、生体内の「自分の」細胞を使えるため
他人の細胞を移植するよりも免疫異常のリスクを減らすことが
できる可能性があります。
また自家移植よりも時間とコストを減らすことができる
可能性もあります。
従って、追究する価値のある方式です。
ーー
今述べた様に、CAR-T細胞は毒性や副作用も報告されています(7)。
1つの考えられる理由としては、
T細胞表面に発現されている表面タンパク質は一つではないので
それによってオフターゲットが生じてしまう可能性がないか?
一方で、自家移植の場合は
リプログラミング時の制御性が高ければ、
そういったリスクは小さいと考えられますが、
他人の細胞を使う場合においては当然、
副作用のリスクは上がってきます。
自分の細胞を使う場合にはコストと時間がかかるのも
デメリットの一つです。
このようなことを考慮すると
移植片対宿主病が生じにくいとされるNK細胞を
CAR療法の細胞として選択する事も考えられます。
また、制御型T細胞も同様に生じにくいとされてます(1,9,10)。

//考察//--
細胞種特異的輸送系統では
表面に標的細胞に特異性を持つ物質を結合させて
標的性を高めたナノ粒子を輸送媒体とします。
この時、ナノ粒子が今使われている脂質ベースであれば、
輸送後、長期間残る事がなく分解されます。
一方で、
T細胞や、免疫細胞を使って
標的化治療をするCAR免疫療法では
細胞自身が免疫的な特定の機能を持っていることで
一定の薬理を得る事が期待されます。
一方で、J. Joseph Melenhorst氏らの
10年にわたる長期的な評価では
こうしたT細胞などが生着した後、
体内に残ることが報告されています(11)。
従って、CARベース治療をする際に当たっては
その後、長期的に残る事を想定しておく必要があります。
もちろん、このことが継続的に治療する上での
メリットとなることも考えられます。

(参考文献)
(1)
Haig Aghajanian, Joel G. Rurik & Jonathan A. Epstein
CAR-based therapies: opportunities for immuno-medicine beyond cancer
Nature Metabolism volume 4, pages163–169 (2022)
(2)
Shreemanta K Parida et al.
T-Cell Therapy: Options for Infectious Diseases
Clin Infect Dis. 2015 Oct 15;61Suppl 3(Suppl 3):S217-24.
(3)
JOEL G. RURIK et al.
CAR T cells produced in vivo to treat cardiac injury
SCIENCE • 6 Jan 2022 • Vol 375, Issue 6576 • pp. 91-96
(4)
Thomas J. Gardner, J. Peter Lee, Christopher M. Bourne, Dinali Wijewarnasuriya, Nihar Kinarivala, Keifer G. Kurtz, Broderick C. Corless, Megan M. Dacek, Aaron Y. Chang, George Mo, Kha M. Nguyen, Renier J. Brentjens, Derek S. Tan & David A. Scheinberg 
Engineering CAR-T cells to activate small-molecule drugs in situ
Nature Chemical Biology volume 18, pages216–225 (2022)
(5)
Saba Ghassemi, Joseph S. Durgin, Selene Nunez-Cruz, Jai Patel, John Leferovich, Marilia Pinzone, Feng Shen, Katherine D. Cummins, Gabriela Plesa, Vito Adrian Cantu, Shantan Reddy, Frederic D. Bushman, Saar I. Gill, Una O’Doherty, Roddy S. O’Connor & Michael C. Milone
Rapid manufacturing of non-activated potent CAR T cells
Nature Biomedical Engineering volume 6, pages118–128 (2022)
(6)
Ellebrecht, C. T. et al. 
Reengineering chimeric antigen receptor T cells for targeted therapy of autoimmune disease. 
Science 353, 179–184 (2016).
(7)
Challice LBonifant et al.
Toxicity and management in CAR T-cell therapy
Molecular Therapy - Oncolytics Volume 3, 2016, 16011
(8)
Enli Liu, M.D., David Marin, M.D., Pinaki Banerjee, Ph.D., Homer A. Macapinlac, M.D., Philip Thompson, M.B., B.S., Rafet Basar, M.D., Lucila Nassif Kerbauy, M.D., Bethany Overman, B.S.N., Peter Thall, Ph.D., Mecit Kaplan, M.S., Vandana Nandivada, M.S., Indresh Kaur, Ph.D., Ana Nunez Cortes, M.D., Kai Cao, M.D., May Daher, M.D., Chitra Hosing, M.D., Evan N. Cohen, Ph.D., Partow Kebriaei, M.D., Rohtesh Mehta, M.D., Sattva Neelapu, M.D., Yago Nieto, M.D., Ph.D., Michael Wang, M.D., William Wierda, M.D., Ph.D., Michael Keating, M.D., Richard Champlin, M.D., Elizabeth J. Shpall, M.D., and Katayoun Rezvani, M.D., Ph.D.
Use of CAR-Transduced Natural Killer Cells in CD19-Positive Lymphoid Tumors
The New England Journal of Medicine 2020; 382:545-553
(9)
Boardman, D. A. et al. 
Expression of a chimeric antigen receptor specific for donor HLA class I enhances the potency of human regulatory T cells in preventing human skin transplant rejection. 
Am. J. Transplant. 17,  931–943 (2017).
(10)
Noyan, F. et al. 
Prevention of allograft rejection by use of regulatory T cells with an MHC-specific chimeric antigen receptor. 
Am. J. Transplant. 17, 917–930 (2017).
(11)
J. Joseph Melenhorst, Gregory M. Chen, Meng Wang, David L. Porter, Changya Chen, McKensie A. Collins, Peng Gao, Shovik Bandyopadhyay, Hongxing Sun, Ziran Zhao, Stefan Lundh, Iulian Pruteanu-Malinici, Christopher L. Nobles, Sayantan Maji, Noelle V. Frey, Saar I. Gill, Lifeng Tian, Irina Kulikovskaya, Minnal Gupta, David E. Ambrose, Megan M. Davis, Joseph A. Fraietta, Jennifer L. Brogdon, Regina M. Young, Anne Chew, Bruce L. Levine, Donald L. Siegel, Cécile Alanio, E. John Wherry, Frederic D. Bushman, Simon F. Lacey, Kai Tan & Carl H. June 
Decade-long leukaemia remissions with persistence of CD4+ CAR T cells
Nature (2022)


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