<背景>
磁気共鳴/経頭蓋集束超音波装置の開発/臨床応用の実現は不運にも世界で小児脳腫瘍に罹患した子どもの運命を変えるためには必要不可欠な事です。命を落とすお子さんを0人にするだけではなく、救命可能な良性脳腫瘍を含めた治療の改善においても外科的な選択肢を手術/放射線以外に用意する上でも重要な事です。まだ、市場に提供されている装置では小児脳腫瘍に適用するためには装置性能/仕様/手順/実績など様々な点で不足しており、少なくとも一部は抜本的な対策が必要になります。この装置開発においていきなり人で試しながら性能確認/改善を行っていくわけにはいかないので、マウスなど動物でするということになりますが、マウスと人の頭部の大きさ/構造/形は大きく異なりますから、装置の設計が最終形と大きく異なることになります。少なくとも一部の性能確認を実施することができません。音響特性を類似させた人(特に子ども)の頭部の模型(マネキン)が必要になります。特に子供の脳は水分が多いですから、実質に関しては水分を含んだヒドロゲル構造によって音響特性を模倣する必要があります。経頭蓋集束超音波において最も音響特性に影響を与えるのはわずか5mm程度の頭蓋骨であり、人の頭部と類似する実験系(模型)を構築するにあたり、頭蓋骨をどのように人為的に再現するかが装置開発の重要なテーマの一つとなります。骨に関しては亡くなられた患者様の頭蓋骨をいただいてつなげるという方法もあるかもしれえないですが、人工的に合成する技術に関して少なくとも調査し、その実現可能性を探ることは医療プロジェクトを始める前の現時点でも求められることです。
<前提条件>
頭蓋骨を模倣した骨を形成する場合、基本的に骨の内部にある海綿骨を構造内に組み込むことは非常に複雑なプロセスを要すると思います。加工の後も考えてパターン化して組み込む必要がある為、初めから型を決めながらある程度生物学的プロセスに依存するような方法ではないと難しいと推定されます。初めの段階では緻密骨に近い構造を均等に全体に合成して、最終的にバルクから頭蓋骨の形に加工するときに、海綿骨がある状態での音響特性と均等な人工骨の音響特性を厚さを変えるなどして合わせるほうが全体的なプロセスとしてはシンプルになると思います。
<潜在的な課題>
骨をバルクで作るときには場合によれば(サブ)メートルオーダーの塊となる骨を作らないと骨の加工を施し、体の大きさを模した構造として連続性ある形で形成できません。そうすると必然的に問題となるのが、それだけ多くの前駆物質を用意できるかという事があります。骨を体の材料に類似した形で作るためには大量の細胞外マトリックスが必要です。リン酸とカルシウムと水は用意できても、骨格となる細胞外マトリックスの前駆物質としての量という基本的な問題があります。単位構造としても細胞外マトリックスを大量に抽出する事ができるか?そのためには大量の細菌もしくはiPS細胞が必要となります。これが明らかに現実的ではない可能性があります。バルク:1m^3/骨の密度:1.8 g/cm^3/コラーゲン重量比30%/単位細胞分泌量0.1μg/dayで計算すると1日でこの量を得ようと思うと約5,400億個の細胞が必要となります。場合によれば、数兆個レベルの細胞を管理できる設備が必要となります。場合よれば、1,000平方メートル程度の巨大な装置フットプリントを要するかもしれません。材料そのものを作る大きさが1m立法であっても、その合成を可能にする前駆物質、特にコラーゲンなど細胞外マトリックスの単位構造をiPS細胞から得ようとするとコラーゲン単位構造を用意するだけのプロセスでの細胞の管理だけで、それよりもはるかに大きな装置を要するかもしれません。さらに、コラーゲンをらせん構造に合成する必要があります。コラーゲンはHodge and Petruska’s quarter-stagger modelで示されるような1/4長さだけずれた3重らせん構造を取ります。体の中で自然に合成されるプロセスで温度/pH/水条件などで架橋なども含めて一番安定する配置である可能性がありますが、それを(サブ)メートルオーダーで人工的に合成するとなるとそうした環境をどのように再現して重合体化(複合体化)を駆動するかという問題もありますが、根本的な問題として規模とスピードが差があります。少なくとも体の中のコラーゲン合成は人工的に合成する場合に想定されるような規模とスピードにはなりません。何年もかけて成長と共に段階的に構築されていきます。その物理的な差があるので、顕著に合成効率を上げて、かつ類似する特性を得ることに物理的な限界があるかもしれません。また、合成したとしてもどうやって前駆状態としてそれだけの規模を配向させるかという問題もあります。そもそも大量の細胞からコラーゲン単位構造を分離/精製できるかという問題もあります。少なくとも磁気共鳴/経頭蓋集束超音波装置の開発の為の頭部模型の骨形成においては、プロジェクトの前期の段階で必要とされる材料の為、完全に身体の構成材料と一致するバルクを得ることは現実的ではないかもしれません。小さなスケールでは工夫次第で下のモデルを使いながら、画期的な方法と材料を作れる可能性がありますが、骨に代替されるような大きなバルク結晶を得る必要が最終的にはあり、大きな結晶を得ること自体が小さなスケールで合成方法が確立されてもさらに難しさがある上、人の身体の中のコラーゲンを細胞から得るとなった時には、その材料を用意するために細胞分化誘導・培養技術/コラーゲン分離精製技術/コラーゲン重合体化・複合体化技術/ゲル形成技術、それぞれにおいて同様のスケール問題が生じるという事です。初めからこうした課題があるという事は見越しておく必要があります。小さなスケールでも体の中の材料を使うとなった時にはこれらの要素技術それぞれを高度に構築する必要があります。乗り越えれば今までにない世界は確かに広がっていますが、冷静にその難易度は概算でもいいので見積もっておく必要があります。
<生体内の骨の形成プロセス>
(9:Fig.14)で示されるように骨は間葉系幹細胞がまずは一塊の軟骨組織が形成されます(Fig.14B)。栄養性に富んだ軟骨細胞が中央部に集まります(Fig.14C)。それらは血管新生を誘導し、細胞に成長の為の栄養が送られます(Fig.14D)。内部に骨芽細胞が形成され、骨の組織が作られていきます(Fig.14E)。内部が段階的に広がっていき、緻密骨/海綿骨と分離し、やがて、骨髄が形成されます(Fig.14F)。両端部に軟骨が残り、骨端線がX線検査で所見される場合には、骨を成長させる原料となる軟骨細胞が境界面で多く残っている事を示します。上述した様に生体内での骨の形成には軟骨細胞や骨芽細胞が関わっていますが、Ⅰ型コラーゲンなど有機物質に対するヒドロキシアパタイトによる石灰化のプロセスの前駆物質の特異的な供給経路について報告されています(10)。具体的には特にリン酸塩など反応サイトでの結晶成長させるうえで過飽和を実現するのが難しい前駆物質は細胞からの供給経路において細胞外小胞に包まれている可能性があります(10:Graphical abstract)。この細胞外小胞はマトリックス小胞(Matrix vesicles)と呼ばれます。大きさはエクソソームの上限に近い150nm程度です(10:Figure 2B)。マトリックス小胞の内部は非常に特徴的な酵素構成を有しており、特にアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase)およびATPアーゼ(ATPase)が豊富に含まれている。これらの酵素は、カルシウムイオン(Ca²⁺)およびリン酸イオン(PO₄³⁻)の局所的な濃縮に寄与する。具体的には、ATPアーゼは細胞外のATPを加水分解してリン酸を生成し、アルカリホスファターゼはリン酸エステルを加水分解して無機リン酸を供給する。実はヒドロキシアパタイトの結晶化は細胞外小胞内部でも行われているかもしれません(10:Figure 3)。ヒドロキシアパタイトは細胞外小胞で一定の大きさに成長した後、コラーゲンに生着/結晶成長するのか、それとも別の機序として前駆物質からも結晶成長するのははっきりしたことはわかりませんが、(11:Fig.1b)コラーゲン繊維の「Hole:Gap region」にヒドロキシアパタイトが結晶成長するモデルが示されています。基本的に大人になってからでも生じる主に骨梁部にける骨芽細胞/破骨細胞による作用は骨のリモデリングなので骨組織の修復/維持となります。新たに積極的に骨を大きくしていくようなプロセスではありません。骨を大きく成長させるプロセスは主に軟骨から生じる成長期のプロセスです。軟骨は約80%が水分なので(12)、成長時にはリモデリング時と比べて、溶液/ゲルプロセスで比較的分子の動きが制約された中で成長していくプロセスかもしれません。
<骨の鉱物結晶性>
実際に骨の合成環境はゲル相を介するとなると理想的である可能性がありますが、実際の骨中にあるヒドロキシアパタイトの結晶性はX線開設測定の半値幅から見積もると決して高くはなく、カーボネート、ナトリウム、マグネシウムなどの不純物が(サブ)パーセントオーダーで混入しており、結晶学的な不純物濃度としては極めて高いです(1)。従って、実際に人工的に骨を形成する場合には鉱物化するヒドロキシアパタイトの結晶性を任意に調整できる余地がありますから、それに応じて通常の骨よりも硬度の高い骨を形成できる可能性がありますが、逆に、このような不純物混入がないと硬くなりすぎて、実際にインプラントする骨としては適さない可能性があります。少なくとも実際に骨に複合体化する無機物質の結晶には非常に多くの不純物が混入している可能性があるという事は念頭ん置いておく必要があります。また、骨に鉱物化されているヒドロキシアパタイトは化学量論比ではCa:P = 5 ; 3(Ca/P=1.67)ですが、それよりもカルシウムが少ないとされます(1)。カルシウムが一定、ナトリウム/マグネシウムなどで置換されているか、Ca空孔があるかもしれません。繊維内の石灰化(ヒドロキシアパタイト形成)は独自の構造を示します。一軸配向(uniaxial orientation)を示すことが知られています。但し、子豚の大腿骨の骨の断面解析のヒドロキシアパタイトの配向特性の結果を見ると配向度を示す(Hermans' parameter/S=0 ランダム/S=1 一軸配向)によると002方向に対して0.3が最大で位置により揺らぎが大きいです(5:Figure 4)。通常、コラーゲン繊維は骨の成長方向に対して縦に延びると考えられるので、そのコラーゲン繊維の強い方向に対して結晶が配向している場合、断面を切ったときのX線回折で観察されるヒドロキシアパタイトの結晶方向は002面(c軸配向)です。しかし、実際にX線のピークを見るとおおよそc軸から40°傾いた121面が強く出ています(5:Figure 2h)。ただ、121面のX線ピークはブロードで002面はシャープであることから配向した結晶においては角度が安定するけど、傾いて成長した場合は角度が不安定であることを示します。実際には人のケースでは異なるかもしれないし、骨の部位によっても異なるかもしれません。例えば、配向特性の高い七面鳥の腱ではヒドロキシアパタイトがトランプのカードのように層状に配向するとされます(6)。
<コラーゲン高次構造合成技術>
骨のバルク結晶の形成の為には鉱物化の前段階としてのコラーゲン配向性を持ったヒドロゲルを得る必要があります。単位コラーゲンは特定のたんぱく質としての構造を持ちますが、それらが一定の配向性を持って繊維化して、3重らせん構造を作る物質は超分子(あるいは高次分子構造)と定義できます。実際に生物学的なプロセスに依存して高次分子構造を形成する速度/スケールでは顕著に不足する事と、そういった自然の間質条件を大きなスケールで形成し、その後、構造を水分子から分離して精製する事が原理的に難しいことから、単位コラーゲン分子を得ることができたら、そこから少なくとも一定、人工的に介入して非常に効率的なプロセスで骨の有機物質としての特性として必要条件を満たす高次構造を構築する必要があります。その点において既存の超分子合成技術を参照する価値が存在します。超分子構造では初期的前駆状態から一定の大きさを持った単位構造が出来上がると、その構造自体が基板となり、その基板上で基板自体が形成された核形成とは異なる条件で核形成が生じます。これを二次核形成(Secondary neucleation)と呼びます(7:Fig.2)。一方で、iPS細胞などでコラーゲンの単位構造を分離精製した後に高次構造を形成する場合は、単位構造を前駆物質と見なして、それらのピースを3重らせん構造になるようにつなぎ合わせていく非常に効率的な合成プロセスを考える必要があります。そのコラーゲン単位構造そのものを人工的な代替物/模倣品で人工合成し、3重らせん構造を作る場合は超分子構造合成のプロセス(7:Fig.2)を踏んで高次構造を形成していく必要があります。コラーゲン単位構造がiPS細胞/細菌などから十分な量を用意でき、分離精製できる状態にある場合には、3重らせん構造と単位構造の構造的な関係性を正確に解析して、それらをつなぎ合わせている物質を明らかにして、単位構造と架橋物質を効率的に合成し、高次構造形成プロセスを定義する必要があります。一方で、iPS細胞でコラーゲンを得る場合には、その分泌機会を利用して、単位構造独立した物質生成を試みるのではなく、分泌環境を体の環境に近い簡便に用意できる環境を用意して、自己組織化をやや促して、完全な高次構造とはならなくても、その途中プロセスまで一定誘導した後に分離精製するほうが、分離精製プロセス自体も分子量と分子特異性が高いため容易になるだけではなく、その後の3重らせん構造の完成品までの合成プロセスを簡略化できるというメリットもあります。培養したiPS成熟細胞(骨芽細胞/軟骨細胞)を液体の中に浸し、骨に適したⅠ型コラーゲンを分泌させます。骨の形成の場合には非常に大きなバルク結晶が必要なため、その前駆物質を細胞に依存するのは本質的に筋が良くない可能性があります。医療プロジェクトに関してはできるだけ前半工程はiPS細胞工場に集約する事を考えますが、経頭蓋集束超音波装置の開発の為の頭部模型の骨材料やこの記事で付加的に焦点を当てている移植の為の人工骨バルク結晶の形成においては、完全に人工的に精製しやすい前駆材料から最終的なコラーゲン高次構造(超分子構造)を作るようなプロセスが好ましいかもしれません。有機成分/無機成分の合成、それらの複合体化、固形化のプロセスを完全に独立させないで一連の合成プロセスで実現できれば理想的ですが、この記事では分離して考えています。すなわち、この章では骨の有機物質であるコラーゲンの高次構造の合成について焦点を当てています。基本的にコラーゲン、あるいは類似するたんぱく質を骨の有機物質としての必要条件を満たす形でどうやって手に入れるかというのは非常に難しい問題です。結晶成長はS字カーブを描くことが多いです。初めは遅く、中間で最も速くなり、やがて飽和するというプロセスです。一つの根源的な理由は結晶が大きくなると反応するサイトがある体積に占める表面の割合が小さくなることです。従って、エピタキシャル成長のように成長面が保たれ、層で成長していく場合には、歪などの蓄積でクラックが入る可能性がありますが、持続的な成長が可能であるという推定です。基本的には成長面(点)で化学反応が持続的に起これば、(体積成長率は変わっても)増えていく分子の量は変わらないはずなので、コラーゲンを重合体化させる場合にはその点を考慮する事が重要になります。むしろ、超分子の2次的核形成などが生じると特に、成長に従い成長面積は増えるはずなので、常に成長のために必要な前駆物質の過飽和状態を成長圧が高まっても持続的に維持する事が効率的な成長では求められます。2次核形成が側鎖同士の結合によって駆動されるのであるとしたら(8)、コラーゲンにおけるピリジノリンなどの架橋物質(Cross-linker)が直線構造から逸脱しキラルな成長を駆動する前駆物質となると考えられます。おそらく一定の分子量の直線構造として重合体化しないと2次核形成が成立しない理由は、それぞれの単位構造が2次核形成サイトの資源となる側鎖を有していたとしても、核形成から連続した構造として成長するためには一定の密度の同時核形成が必要だからではないかと考えられます。すなわち、1つの核から放射状に大きくなり成長するのではなく、複数の核から成長し、会合して連続した重合体構造として成長するという事です。基板上のエピタキシャル成長でも同じようなモデルが成立します。但し、このモデルでは会合したときの構造の不整合によって構造欠陥が入る可能性があります。
<鉱物化合成技術>
骨の生体鉱化に関して、最近の研究では、骨構造の最も基本的なレベルである相互に貫通するナノ構造を、比較的簡単なアニオン性ポリペプチドを使用して複製できることが分かっています(1)。バルク構造(固相)を構築するためには気相から化学反応によって構築する方法と、液相から形成させる方法があります。Polymer-induced liquid-precursor(PILP)は液相鉱物前駆体からバルク(一定の大きさを持つ塊)の骨を成長させることを考えます。気相よりも液相の方が固相へ相転換させるときの化学ポテンシャルの変化が穏やかであり、気体のように自由に動き回っている分子の状態ではなく、液相として比較的束縛された状態から固相へ相転換し、骨が得られるため、骨に限らず様々な結晶成長において元来の結晶構造の安定性に準じた格子欠陥の少ない規則性の高い結晶が得られるということがあります。一般的には相転換させてバルクの結晶を得るときには、揮発しない程度に成長速度をゆっくりにすることが求められます。エネルギー的に安定になるような分子の動きには一定の時定数が必要であり、その時間に応じて(十分な形成時間によって)適切な結晶配置が整えられるからです。骨を作るときには、自然/人工のポリマーいずれにしてもコラーゲンのようならせん構造を持つ単位構造体が必要ですが、バルク結晶を得る前の前駆体の状態において、このポリマーの分子自体が液体のように動き回るわけではありません。このポリマーは多糖のように陰イオン性があり、その電荷密度によって水分子をひきつける性質があります。前駆体が液体様の振る舞いをするのは、ポリマーと複合体化された水分子に依存します。ヒドロキシアパタイトもCa陽イオン/PO陰イオンがあり、極性を持ち、水分子をひきつけます。従って、水分子を豊富に含む溶液中にポリマーとヒドロキシアパタイトを混合させたときには、微視的には元来ポリマーに結合する最もヒドロキシアパタイトの結合において安定性(結合性)が高い電荷の高い部分は水和します。ヒドロキシアパタイトも水和します。その水和とは微視的な空間的広がりを見れば、水分子が液晶のように配向することになることですから、それらの水分子の配向性に誘導されるようにヒドロキシアパタイトはコラーゲンなどのポリマーの結合サイトに誘導されることになります。水分子は液体として流動的(適度に動的)で、ヒドロキシアパタイトのコラーゲンに対する近接場において緩衝分子(バッファー分子)のような役割とシャトル(輸送媒体)としての働きがあります。これにより、離れた位置から安あ定して最適な結合サイトで結合し、鉱物化が促進されることになります。
骨の生体鉱化に関して、最近の研究では、骨構造の最も基本的なレベルである相互に貫通するナノ構造を、比較的簡単なアニオン性ポリペプチドを使用して複製できることが分かっています(1)。バルク構造(固相)を構築するためには気相から化学反応によって構築する方法と、液相から形成させる方法があります。Polymer-induced liquid-precursor(PILP)は液相鉱物前駆体からバルク(一定の大きさを持つ塊)の骨を成長させることを考えます。気相よりも液相の方が固相へ相転換させるときの化学ポテンシャルの変化が穏やかであり、気体のように自由に動き回っている分子の状態ではなく、液相として比較的束縛された状態から固相へ相転換し、骨が得られるため、骨に限らず様々な結晶成長において元来の結晶構造の安定性に準じた格子欠陥の少ない規則性の高い結晶が得られるということがあります。一般的には相転換させてバルクの結晶を得るときには、揮発しない程度に成長速度をゆっくりにすることが求められます。エネルギー的に安定になるような分子の動きには一定の時定数が必要であり、その時間に応じて(十分な形成時間によって)適切な結晶配置が整えられるからです。骨を作るときには、自然/人工のポリマーいずれにしてもコラーゲンのようならせん構造を持つ単位構造体が必要ですが、バルク結晶を得る前の前駆体の状態において、このポリマーの分子自体が液体のように動き回るわけではありません。このポリマーは多糖のように陰イオン性があり、その電荷密度によって水分子をひきつける性質があります。前駆体が液体様の振る舞いをするのは、ポリマーと複合体化された水分子に依存します。ヒドロキシアパタイトもCa陽イオン/PO陰イオンがあり、極性を持ち、水分子をひきつけます。従って、水分子を豊富に含む溶液中にポリマーとヒドロキシアパタイトを混合させたときには、微視的には元来ポリマーに結合する最もヒドロキシアパタイトの結合において安定性(結合性)が高い電荷の高い部分は水和します。ヒドロキシアパタイトも水和します。その水和とは微視的な空間的広がりを見れば、水分子が液晶のように配向することになることですから、それらの水分子の配向性に誘導されるようにヒドロキシアパタイトはコラーゲンなどのポリマーの結合サイトに誘導されることになります。水分子は液体として流動的(適度に動的)で、ヒドロキシアパタイトのコラーゲンに対する近接場において緩衝分子(バッファー分子)のような役割とシャトル(輸送媒体)としての働きがあります。これにより、離れた位置から安あ定して最適な結合サイトで結合し、鉱物化が促進されることになります。
骨が実際にどのようにヒドロキシアパタイトで鉱物化されるか?七面鳥(turkey)の腱はラーゲンの鉱物化の研究において、モデル組織としてよく使用される材料の一つです。コラーゲン繊維が規則正しく配列しており、ミネラリゼーションの進行を観察しやすく、骨と類似したヒドロキシアパタイトの沈着を示します。コラーゲンの繊維構造の切れ目に誘導され、そこで核形成し、そこから一定の大きさまで結晶成長していく様子が示されます(1:Fig.2)。この時に温度、湿度(水分量)、細胞外マトリックスなどの影響によってヒドロキシアパタイトの結晶性が決定されると推定されます。具体的にどういう条件が良い結晶を得るためにいいかはわかりませんが、少なくとも核形成部位にヒドロキシアパタイトの前駆物質を有効に誘導するために細胞外マトリックスや水分子は重要な役割を担っていると考えられます。実際にヒドロキシアパタイトが合成される化学反応式は(10Ca^2+)+(6PO4^3-)+(2OH)- → Ca10(PO4)6(OH)2であり、この反応式が成立するのは細胞内ではなくコラーゲン繊維近傍です。コラーゲン付近でカルシウムやリン酸を局所的に濃縮し、過飽和になることで反応が進行します。水も一定電離している必要があります。このカルシウムイオンやリン酸イオンの濃縮/過飽和による静電気力によって水が強く極性化/電離し、ヒドロキシアパタイトが形成されると考えられます。ここからは完全に専門的な話でありますが、分かりやすく説明するのでついてきてください。結晶成長は化学反応によって結晶化しますから、複数のイオンなどの分子を集めて合成させます。例えば、窒化ガリウムなどではトリメチルガリウム(有機金属)とアンモニアを反応させます。平衡分圧の問題でアンモニアをトリメチルガリウムの100倍以上のモル比で供給する必要があり、結晶を得る為の結晶化の成長速度はほぼ、トリメチルガリウムの供給量で律速します。すなわちアンモニアを十分に供給している状態で有機金属であるトリメチルガリウムの供給量を微調整しながら成長速度を調整します。ヒドロキシアパタイトではカルシウムイオン、リン酸イオン、水が合成の為の前駆物質になりますが、どれが不足しやすいか?水とカルシウムは体内に豊富にありますから、水溶性の低いリン酸イオンが少なくなる傾向にあります。従って、ヒドロキシアパタイトのコラーゲン上の成長ではリン酸イオンの供給量によって結晶成長速度が律速する可能性があります。実際に、低リン酸血症になり、リン酸が不足すると鉱物化が阻害され骨軟化症(osteomalacia)が生じます。重要なところですが、複雑なので詳細な説明が必要です。体の骨の形成において現代の生活で不足しやすいのは吸収を考慮したビタミンDなどの影響も含めてカルシウムです。むしろ動物肉などの消費が増え、リン酸は腸管での吸収率が高いことも含めるとむしろやや過剰気味です。従って、骨の恒常性の観点から全体的な材料として不足するのは水/カルシウム/リン酸でいえばカルシウムです。しかし、ヒドロキシアパタイトの鉱物化はアモルファス状態を介するという見解もありますが、水を豊富に含む溶液プロセスであるという見解もあります。リン酸の前駆物質であるリン酸二水素カルシウム(CaHPO4)とリン酸水素カルシウム(CaH2PO4)はカルシウムクエン酸塩に比べて水溶性が約10,000倍低いです。。従って、骨の鉱物化/結晶成長が水を介する溶液プロセスであるとするとリン酸前駆物質は飽和状態で量がカルシウムに比べて4桁以上低いですから、リン酸前駆物質の量によって鉱物化の速度がほとんど律速するということです。また、リン酸二水素カルシウムにはカルシウムを含むことから、鉱物化においては明らかにリン酸モル分量が成長を律速すると考えていいと思われます。良い結晶を得るためにはイオンの移動速度が小さく、成長速度を律速するイオンの供給量が平衡状態に近い少なめの方が欠陥の少ない結晶が得られる可能性があります。ただ、これらイオンの挙動は体の中は空洞はほとんどないので、細胞外マトリックスに捕獲されたり、水分子が豊富にあることから液相に近い分子の挙動で供給されると考えられるため、液相成長、もっといえばゲル特性のような環境での成長の為、気相成長などに比べて非常に高い結晶性が得られる可能性があり、一気に速く合成したとしたとしてもほとんど結晶欠陥は入らない可能性があります。こうした動きを律速する一つの条件は細胞外マトリックスと水分子なので、これらの適切なバランスが鉱物化の特性を決定する重要な因子であると推定されます。
ここから人工骨の合成において重要な発見があります。コラーゲンなど細胞外マトリックスの線維構造を一定構築し、それを水を溶液中に浸し、カルシウムやリン酸イオンを供給し、温度、圧力などの成長条件を制御することで、一気に骨の結晶をバルクで得るような現在のイメージがあります。少なくもと有機金属気相成長法のように基板上に薄くゆっくり成長させる気相成長は適していません。非常に大きな結晶が必要なことから、液体から一気に固めるようなイメージです。この時、溶液は完全に液体状の水よりもヒドロゲルのような固体に近い状態で細胞外マトリックスを揃えて構築した後、カルシウムやリン酸イオンを均等に供給して、成長させると、より分子の移動をゆっくりにしながら成長させることができるため良い結晶が得られる可能性があります。ゲルといっても完全なゼリーではなく、かなり液体に近いイメージですが、ここも結晶成長を決める重要な要素です。結晶成長は気相成長、液相成長とありますが、液相成長からさらに固相に近いゲル状の条件で前駆状態を形成し、そこから一気に骨の組織をバルクで得るということです。ゲルにすることで母体となるコラーゲンなどの細胞外マトリックスの線維構造の位置も一定固定することができます。この構想はゾル・ゲル法と類似します。結晶成長の基本的な原理を考えると非常に合理的な技術戦略であると評価できます。ゲルという相を結晶成長に認めると色んな視点が見えてきます。液体に近い状態から固体を得るまでの相の連続的な制御という視点もあります。すなわち、液相から固相を得るまでの相転換が閾値的ではなく、中間のゲル相をとり、そのゲル相の遷移時間を制御することによって、非常に大きなバルク結晶でありながら、結晶として非常に高い秩序を持った欠陥の少ない結晶が得られるという可能性です。ゾル・ゲル法を含めて結晶成長の専門家としては非常に興味深いです。
実際にコラーゲン繊維や他のプロテオグリカンなどの細胞外マトリックスなどの有機成分に対して、無機成分であるヒドロキシアパタイトがどのような大きさ/分布で形成しているかははっきりわかっていません(私が調べる限り詳細な解釈ができる報告が存在しない)。従って、コラーゲン繊維(内部)でヒドロキシアパタイトが核形成するかどうかもわかりませんし、コラーゲン繊維は鉱物化する土台としては狭すぎるという見解もあります(3)。従って、実際に人工骨をバルクで合成するときには、モデルとなる骨の詳細な解析と明確な形成モデルを構築する必要があります。ただ、バルクで人工骨を合成する場合には、自然に軟骨にある細胞から骨が形成されるよりも顕著に速いスピードで合成することになるため、体の中の自然のプロセスから速度の観点で必ず逸脱するため、ゲル相成長をするにしてもある程度、手探りの状態で草を分けて未知の道を切り開いていく必要があります。
骨の材料(細胞外マトリックス/カルシウム/リン酸/水)や形成プロセスを考慮すると、おそらくゾル・ゲル法のようなゲルという段階を経て、バルク結晶を得るプロセスは適合性/合理性のあるプロセスであると推定されます。ただ、ゆっくりすぎる成長が過剰な離脱を生む可能性は否定できません。ゾル・ゲル法のような構想で骨を作ることはおそらくまだ研究レベルでも調べる限り、世界で見当たらないので完全な草分けとして研究開発していくことが求められます。下述するようにゾルゲル法では比較的液性の高いゾル(コロイド)の状態を前駆状態としますが、骨の場合はⅠ型コラーゲンを中心とした細胞外マトリックスの配向特性が重要となる為、形成プロセスんにおいてどのようにそのような配置を駆動するかは考える必要があります。ゾルの状態から成長を駆動するのであれば、パターン化された型が必要ですが、型から抜くときにその型の部分が空洞化するため、その型そのものが生分解性であり鉱物化の中で材料に溶け込んでいくようなシステムが必要になります。あるいは一定の流れを作りながら配向特性を誘導するようなプロセスも考えられます。
ゾルゲル法は、実際に液相と固相の相転換をゲル相という間の相を設けて段階的に進行させていく方法であり、私の構想と一致します。結晶性の高いバルク結晶を得る方法としては理想的な方法と定義することができます。水やエタノールなど溶媒の中に前駆物質となる粒子が溶解または懸濁している状態をゾルと呼びます。この状態から徐々にゲル状態に温度/pHなど周りの環境を変化させていくことで変化させていきます。ゾルゲル法はセラミックの合成などで利用され、セラミックは酸化アルミニウムやシリカなどの合成プロセスで反応式に骨のように水を含みません。従って、最終的な材料の中にはほとんど水を含まないため、相転換の合成プロセスの中で必ず水を蒸発させる乾燥プロセスが必要となります。しかし、骨の場合には上述した様に反応式に水を含み、実際の骨の含水率は20-25%程度と約1/4程度と高いことから、従来のゾル・ゲル法の乾燥プロセスは必要かもしれないですが、水を一定残しながら相転換させることができるため、より理想に近い漸次的な変化を伴う液相/ゲル相/固相変換が可能かもしれません。少なくとも高温では水が蒸発するため、一般的なセラミック合成で利用されるゾル・ゲル法の温度300-1,500℃よりは低い温度でプロセスを完結させる必要があります。骨の合成の時間はバルク結晶を得るときには通常のセラミック焼成のプロセスよりは顕著に長い時間がかかるかもしれないし、むしろできるだけ長い時間をかけてゆっくり形成していく方が結晶性の良いものができるかもしれません。実際に骨の形成においては上述した様に液体から始めるためには細胞外マトリックスの配向特性をどうやって駆動するかを付加的に考える必要があります。ヒドロゲルから開始するにしても、その前のヒドロゲル形成が必要なため、骨におけるゲル相成長の場合は、一般的なヒドロゲル形成法(加重重合/縮合反応/イオン交差リンク/光重合/テンプレート法)などと組み合わせて、骨を形成する前駆状態を最適化し、最終的に骨を形成していくことになります。その時に、骨形成のために付加的に必要なカルシウムやリン酸イオンをどういったタイミングで均一に分散させ、一定の最適な自由度を持った移動度をゲル内(溶液内)で実現するか考える必要があります。例えば、カルシウムやリン酸イオンを注入するときには少し温度を上げて、ヒドロゲル前駆状態を少し液性に戻して、反応させ、鉱物化させていくような若干の可逆的プロセスが必要かもしれません。いずれにしても人工骨のゲル相成長は従来のゾル・ゲル法の構想とは近いものと一定、異を放つ世界で未だ例を見ない先進的な合成方法の開発が必要となります。
骨の構造に関しては骨自体が他のソフトな組織に比べて寿命が長いですから、明らかになっていますが、体の中の形成プロセスについては謎に包まれています(1)。実際に試験管で最も基本的なナノレベルでの合成を試みても骨に近い構造を得ることには成功していないとされます(1)。実際に溶液プロセスでヒドロキシアパタイトを形成する場合にはアモルファス状態のリン酸カルシウムを経るという報告もあります(4)。
骨を鉱物化させるうえで最も本質的で重要な事はカルシウム/リン酸/水の前駆物質であるカルシウム/リン酸の塩の水分子中の溶解度(飽和分子量)の差異に帰結します。CaHPO4(リン酸二水素カルシウム)は、水の溶解度が0.2g/L、CaCl2の水の溶解度が811 g/Lでありモル比はCaHPO4/CaCl2 = 2.0×10^-5です。従って、リン酸分子の飽和分子量が5桁程度カルシウム分子に比べて少ないことから、糖たんぱく質と水分子で生じたゲルからゲル相成長させるときに鉱物化において一番律速する因子は反応サイトでのリン酸分子量であり、水分子を含むコラーゲンの間の領域においてどのようにリン酸分子を反応サイトに効率よく誘導するかを考える事です。一番基本的なパラメータ(因子)としてはゲル化した粘性の高い水分子中のリン酸分子の移動度です。質量が小さいことが移動度を上げるので、何かと複合体化する事は質量を大きくすることにつながり、全体的なリン酸分子の核酸においては好ましくないかもしれません。後は温度です。温度が高ければ移動度が上がります。攪拌、すなわち流れを作ることも移動度を向上させます。pH、水分子領域をややアルカリにすることでリン酸イオン濃度を高まります(反応性が高まります)。圧力も変更させます。水分子がやや電荷によって束縛されている状態では、一定、分子量を維持したまま系の体積を変えられるはずなので、反応段階では体積を上げて、系の圧力を下げて、分子の移動を促進し、反応が進んで固まってきたら、今度は体積を下げて(やや高程度に)圧縮し、そのタイミングで同時に水分を抜くことを考えます。このリン酸供給の効率を上げないとバルクで骨を通常の軟骨から形成される骨よりも場合によれば10,000倍(10年⇒0.001年:約9時間)程度の高い速度で高い結晶性で成長するのは基本的に困難です。質の良い豆腐を作るように液相から固相までの連続したゲル相の相転換の制御をプロセス中の条件(温度/流れ/pH/圧力/脱水率)を最適な程度/タイミングで変えながら行う必要が(おそらく)あります。
<加工食品製造過程からの着想>
体の中のコラーゲンはたんぱく質であり、人の身体の中の物質を使って骨を液体/ゲルを経て固体として成長させるというプロセスは無機物質を含むという観点では人工的にセラミックなどのゾル・ゲル法を上述した様に参考にできますが、一方で、生物のタンパク質から(加工)食品を作る工程を着想にプロセスを考える事もできます。例えば、液体/ゲルから固体を得る食品加工プロセスで代表的なのは豆腐とチーズがあります。豆腐は豆乳からゲル状の寄せ豆腐となります。この時ににがりとなる塩化マグネシウムを入れることでゲル化するといわれています。最後に圧縮して水分を抜くことで豆腐になります。実際にこの塩化マグネシウムを入れるような工程が、コラーゲンに対してカルシウム/マグネシウム/ナトリウム(化合物:塩類)、リン酸(化合物:塩類)を入れて、ヒドロキシアパタイトを形成し、相を固体に近づけていくプロセスを一定類似します。参考にできるところは圧力を変えることです。骨の形成過程においても固相を得るプロセスで系を圧縮して、水分を適量抜くことが適用できる可能性があります。
<研究開発/実用化の意義>
もう気づかれている方は日本/世界にいると思いますが、この研究開発/臨床応用実現は極めて臨床医療の発展において重要な問題を内在しています。日本/韓国/スイスなどの長寿国を先頭にこれから世界は高齢化の時代に入り、シニアヘルスの考え方が世界的に勃興してくると思われます。すなわち、高齢期をどのように心身共に健やかに過ごすかを考える事です。その中で例えば女性でいえば、50代以降で閉経を経験するわけですから、エストロゲン補充を含めて閉経後の変化を円滑にする医療は間違いなく10年/20年後には臨床現場で広く一般的に適用されると思います。男性は女性ほど閾値的な変化はありませんが、健康寿命をどう上げていくかにおいて医療そのものが病気を治すだけではなく、健康問題に積極的に関与していく時代が来ると思います。すなわち、病院は病気を治すところの他、健康を手に入れるところという認識が加わるという事です。私はそうなると思っていますし、病院は辛いところではなく、幸せを手に入れるところに一定変わればいいなと思っています。そういう思いを一部で持って、小児がんサバイバーシップで健康、持続的幸福の問題と今、まさに対峙しています。だからこそ、呼吸法や臥位筋緩和は医療機関で実施してほしいと思っています。記事の中でも、そのような事を想定してすでにそのように明記しています。それは背景には病院は健康、幸せを手に入れるところにしたいという思いがあるからです。今、クリニックレベルではすでに健康に対する介入を専門的に実際に行っているところがあると思いますが、こういったことをわざわざ病院で実施する私が描く狙い一つは、介入を受ける人のデータを承諾を得て取るという事です。すなわち、臨床研究報告につなげるということです。例えば私が提案するものであれば、呼吸法/運動/ストレッチ/臥位筋緩和などがありますが、こうした誰でも当たり前のできることをもう少しやり方、個別性などを工夫して、科学的にしっかりデータを取ってエビデンスを構築していくことで、将来の世代の持続的な健康へ貢献するという事を両立させるという事です。これならクリニックレベルから設備が整っている病院レベルまで役割分担しながら実施する価値が出てきます。
筋肉と骨はすごく重要です。適切な脂肪組織もそうです。これらの組織は非常に大きいからです。例えば、それまで健やかに生活していた高齢の方が階段から転倒するなどして骨折するとそこから一気に健康寿命が下がることがあります。骨折は単に体の支持基盤が脆弱化するだけではなく、筋肉や脳(2)にも影響を与えます。メンタルの問題にも発展します。骨を高齢期まで健全に保つ重要性は健康寿命のため、筋組織と同様に高いと思いますし、骨は特に整形外科による医療介入の余地が大きく、骨は一定無機物質を含むことから科学技術/バイオエンジニアリングが介入し、価値を生み出しやすい領域だと思います。逆に言うとソフト材料や細胞は少なくとも骨よりは複雑で/変化するので難易度が高いです。
この研究は骨をバルク(一定の塊)で作ることを試みます。私の中での主要な目的は小児脳腫瘍の治療に必須となる磁気共鳴/経頭蓋集束超音波装置開発の為の頭部模型の為の骨の形成にあります。従って、音響特性が実際に近ければ、結晶の質自体は多少悪くても構わないというところがあります。でも、上の方法では液相と固相の間の相を考慮しながらバルクの結晶成長を考える構想ですから、極めて理想に近い条件で結晶成長できることにあります。そうであるなら、この機会を利用して非常に特性のよい、結晶性の良い、(埋め込む骨の領域を考慮し)特性を可変に制御できる骨を作りたい、骨結晶成長技術を確立したいという気持ちが芽生えてきました。その背後にある気持ちは、日本/世界の整形外科に対する貢献です。バルクで人工骨を作り、任意の大きさ、形に加工できる技術を手に入れることで、骨折や重度の骨粗鬆症を抱えた患者さん対して移植(インプラント)できるようにしたいということです。骨に海綿骨があるのは、骨芽細胞/破骨細胞などによるリモデリング機能や造血幹細胞の収納などの機能が前提としてある中で適応的に形成されたものと考えられ、リモデリングがない、固定的な骨においてはむしろ海綿骨がなく、すべて緻密骨であるほうが機械的強度という観点では好ましいです。非常に優良なインプラントできる骨の材料に対して、ゲル相成長は将来的に基幹技術の一つとなる可能性があるので、それも視野に入れて、頭部模型や体の模型の骨格を集束超音波装置開発、特性確認のために作っていくことを考えます。これはゲル相から成長しますから、当然、実質のヒドロゲルの技術も必要となります。身体をできるだけ再現するというのはこうしたつながり(医療価値連鎖)を生むという事の一つの証明です。従って、できるだけ材料を人の生体内に近づけて技術を構築していくことを考えます。日本の医療プロジェクトの中で実施するヒドロゲルの技術は多くの付加価値を生む極めて重要な技術です。集束超音波の実験環境の整備を体の模型を作って行うことはこれだけに収束しない、整形外科を含めた医療における価値連鎖を生む潜在性があります。
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