2023年5月13日土曜日

薬剤送達キャリアとしての超分子技術の利用可能性

炭素の六角形の構造からなる物質は
様々な形状をとることができますが、
シート状のものがグラフェン、
球状のものがフラーレン、
管上のものがカーボンナノチューブと言われます。
材料開発において
このように結晶構造は同じでも
その形状を制御できるようにする事は重要です。
それは、薬物送達のための薬剤キャリアでも同様です。
同じ球でも、楕円形や球で
生体内に与える影響は異なると考えられます。
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上述したカーボンの材料では
六角形の分子構造を取ることが骨格としての基本です。
構造単位としては六角形になりますが、
その構造単位をもっと拡張した形で
材料開発するためには
プラモデルのパーツを組み立てるように
それらを糊付けする結合様式を開発する必要があります。
超分子ポリマーという技術があり、
その一つのポイントは
ポリマーを共有結合以外の
様々な結合でつなぐことができるということがあります。
ポリマーのケースで
結合力を弱くとれば、分解性があがり、
それによるリサイクル性能があがることから
環境への負荷が下がるとも考えられます。
そのような超分子の技術は
結合性の選択性をあげる技術でもあるので
生体内にある自然な構造単位を選び出し、
それらを超分子技術によって糊付けし、
1つの物質を作る事は自然界には存在しませんが、
それらを構成する物質は
全て人の身体にあるものであれば
生体適合性が高い可能性があります。
自然ベースの生体工学の
極みの一つと言えるかもしれません(1-5)。
この超分子の技術(1-5)は
このようなシート、チューブ、胞などのような
形状に留まらず、もっと自由度の高い材料開発に
繋がると考えられます。
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薬物送達を考える際には
薬物の血液中で動態を考える事が一つの中心ごとです。
そうした場合、異物を入れるのには変わりないですが、
元々、血液中に自然に存在している
細胞や分泌物の性質をよく理解して
それを設計に生かす事が大切になります。
例えば
血小板、赤血球の一部は
アスペクト比の大きな回転楕円体の構造をとります。
血小板は創傷部に集まり、塊をつくり
止血する作用があります。
赤血球は各組織、細胞に酸素を運ぶ働きがあります。
従って、下述するような特性である
長寿命、高密着性、高浸透性の機能は必須であり、
そうした機能が高いと考えるのが自然です。
従って、
少なくとも形状を模倣できる可能性のある
超分子技術を使って薬剤キャリアを開発する際には
それらの形状を模倣することが大切です。
形状だけではなく大きさや
できれば詳細なトポロジーもそうです。
さらに付加的な機能化として
必要な特性を決める重要な表面リガンドなどもそうです。
加えて、
Noriyuki Uchida(敬称略)は
上述したような
平板様の形は血液中での寿命を向上させ
数ナノメートルの皮膚細胞の小さなギャップを超える
ことができる高い浸透性から、
経皮投与にも適していると言われています(1)。
経皮投与ができるということは
薬剤送達距離を下げる事に大きく貢献します。
なぜなら、特定の臓器、器官の位置に近い皮膚から
薬剤を経皮で投入できる事を意味するからです。
注射でも当然、アクセスできますが、
投与方法が注射か、貼るタイプかどちらにしても
成分として浸透性が高ければ、
循環器の分散をよく理解して投与すれば、
潜在的に薬剤送達距離を下げる事につながり、
組織、細胞種特異的な薬物送達に貢献します。
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一方、シート状の形状を
超分子の技術を使って構造単位を組み立てる事によって
数百ナノメートル程度まで大きくすれば、
それを皮膚、組織などに貼ることができます。
それを基板として
細胞などを貼り付ければ、
その細胞の機能を長く持続させたり、生着する事ができます(2)。
細胞は動くので、特定の細胞を任意の位置に
長い間、定着させる事ができる事による
医療介入は多岐に及びます。
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そうした薬剤キャリアに対して
どのように作用させたい薬剤を収納させるか、
あるいは複合体化させるか
というのは胞のような包むタイプの形状ではない場合
考える必要があります。
また、一方で特定の薬剤の放出過程を
どのように任意に組み込むかも同時に考える必要があります。

(参考文献)
(1)
Noriyuki Uchida
Design of supramolecular nanosheets for drug delivery applications
Polymer Journal (2023)
(2)
Hisato Nagano, Yoshitaka Suematsu, Megumi Takuma, Shimpo Aoki, Ayano Satoh, Eiji Takayama, Manabu Kinoshita, Yuji Morimoto, Shinji Takeoka, Toshinori Fujie & Tomoharu Kiyosawa
Enhanced cellular engraftment of adipose-derived mesenchymal stem cell spheroids by using nanosheets as scaffolds
Scientific Reports volume 11, Article number: 14500 (2021) 
(3)
Shane Gonen, Frank DiMaio, Tamir Gonen, David Baker
Design of ordered two-dimensional arrays mediated by noncovalent protein-protein interfaces
Science. 2015 Jun 19;348(6241):1365-8.
(4)
John C. Sinclair, Karen M. Davies, Catherine Vénien-Bryan & Martin E. M. Noble
Generation of protein lattices by fusing proteins with matching rotational symmetry
Nature Nanotechnology volume 6, pages558–562 (2011)
(5)
Yuta Suzuki, Giovanni Cardone, David Restrepo, Pablo D. Zavattieri, Timothy S. Baker & F. Akif Tezcan
Self-assembly of coherently dynamic, auxetic, two-dimensional protein crystals
Nature volume 533, pages369–373 (2016)

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