2023年5月13日土曜日 0 コメント

薬剤キャリアを使った薬物の有効な普及について

発展途上国の患者さんも含めて
最先端の安全性の高い薬剤を安価で届けるためには
薬剤にかかる費用を劇的に抑える必要があります。
ここ10年で薬剤開発にかかる必要は莫大に増えており、
その中で限られた薬剤しか承認されない事は
大きな課題となっています(1)。
--
その背景にあるのが、
動物モデルと人のモデルで整合しない事や(1)、
人同士も個人差があることが挙げられます。
一般的に
共通的に人に対して一定の効果があり
安全性において許容範囲に含まれる薬剤を開発する事は
容易ではありません。
--
過去、試験管や動物モデルで
積み重ねられた基礎医学に基づいた効果的な薬剤も多く、
その中で承認に至らなかったものも多くあると思います。
しかし、その財産は完全には捨てず
利用価値はあると思っています。
例えば、
薬剤送達のモデル、評価、効率が人のケースで上がることで
そうした薬剤の整合性、効果、適用可能性も
変わってくる可能性があります。
従って、
薬剤送達学をより臨床応用につながるように
実用的に生かせるようにする事は
過去開発された薬剤や
近年の(mRNAなどの)技術(2)を生かすうえで
非常に重要になります。
--
しかしながら、
複雑な人の身体、自然相手に行う事ですから
コンピューターモデルだけで予測する事は難しく、
発見的問題解決的なアプローチも重要になります。
例えば、
薬剤スクリーニングは一般的に行われますが、
Luke H. Rhym(敬称略)らが示すような
ナノ粒子の生体内の薬剤キャリアスクリーニングは
薬物送達学の発展で欠かせない事です(2)。
結果から新たな理論構築へつながる事も多くあるからです。
治験のルールを改定する必要があるかもしれないですが、
こうした薬剤キャリアスクリーニングを
薬剤を入れないで行う安全な形で
人の体内で行う事が将来的にできるか?
このような視点があります。
あるいは
動物に対する人遺伝子改変技術、
人由来のiPS細胞などを使ったオルガノイド(1)、
これらで薬剤キャリアスクリーニングを行う事ができるか?
そのような事も
Luke H. Rhym(敬称略)らの研究、報告(2)の
延長線上にあると考えられます。
--
薬剤開発は薬剤キャリアを含めて考えると
開発する要素が増える為、
さらなる開発資金が必要になります。
従って、一つの団体で行う事が難しく、
近年進められている治験プログラムを有効に進める
取り組みもを含めて、
役割分担と共同研究開発、協業が大切になると思われます。

(参考文献)
(1)
Anna Loewa, James J. Feng & Sarah Hedtrich
Human disease models in drug development
Nature Reviews Bioengineering (2023)
(2)
Luke H. Rhym, Rajith S. Manan, Antonius Koller, Georgina Stephanie & Daniel G. Anderson
Peptide-encoding mRNA barcodes for the high-throughput in vivo screening of libraries of lipid nanoparticles for mRNA delivery
Nature Biomedical Engineering (2023)

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薬剤送達キャリアとしての超分子技術の利用可能性

炭素の六角形の構造からなる物質は
様々な形状をとることができますが、
シート状のものがグラフェン、
球状のものがフラーレン、
管上のものがカーボンナノチューブと言われます。
材料開発において
このように結晶構造は同じでも
その形状を制御できるようにする事は重要です。
それは、薬物送達のための薬剤キャリアでも同様です。
同じ球でも、楕円形や球で
生体内に与える影響は異なると考えられます。
--
上述したカーボンの材料では
六角形の分子構造を取ることが骨格としての基本です。
構造単位としては六角形になりますが、
その構造単位をもっと拡張した形で
材料開発するためには
プラモデルのパーツを組み立てるように
それらを糊付けする結合様式を開発する必要があります。
超分子ポリマーという技術があり、
その一つのポイントは
ポリマーを共有結合以外の
様々な結合でつなぐことができるということがあります。
ポリマーのケースで
結合力を弱くとれば、分解性があがり、
それによるリサイクル性能があがることから
環境への負荷が下がるとも考えられます。
そのような超分子の技術は
結合性の選択性をあげる技術でもあるので
生体内にある自然な構造単位を選び出し、
それらを超分子技術によって糊付けし、
1つの物質を作る事は自然界には存在しませんが、
それらを構成する物質は
全て人の身体にあるものであれば
生体適合性が高い可能性があります。
自然ベースの生体工学の
極みの一つと言えるかもしれません(1-5)。
この超分子の技術(1-5)は
このようなシート、チューブ、胞などのような
形状に留まらず、もっと自由度の高い材料開発に
繋がると考えられます。
--
薬物送達を考える際には
薬物の血液中で動態を考える事が一つの中心ごとです。
そうした場合、異物を入れるのには変わりないですが、
元々、血液中に自然に存在している
細胞や分泌物の性質をよく理解して
それを設計に生かす事が大切になります。
例えば
血小板、赤血球の一部は
アスペクト比の大きな回転楕円体の構造をとります。
血小板は創傷部に集まり、塊をつくり
止血する作用があります。
赤血球は各組織、細胞に酸素を運ぶ働きがあります。
従って、下述するような特性である
長寿命、高密着性、高浸透性の機能は必須であり、
そうした機能が高いと考えるのが自然です。
従って、
少なくとも形状を模倣できる可能性のある
超分子技術を使って薬剤キャリアを開発する際には
それらの形状を模倣することが大切です。
形状だけではなく大きさや
できれば詳細なトポロジーもそうです。
さらに付加的な機能化として
必要な特性を決める重要な表面リガンドなどもそうです。
加えて、
Noriyuki Uchida(敬称略)は
上述したような
平板様の形は血液中での寿命を向上させ
数ナノメートルの皮膚細胞の小さなギャップを超える
ことができる高い浸透性から、
経皮投与にも適していると言われています(1)。
経皮投与ができるということは
薬剤送達距離を下げる事に大きく貢献します。
なぜなら、特定の臓器、器官の位置に近い皮膚から
薬剤を経皮で投入できる事を意味するからです。
注射でも当然、アクセスできますが、
投与方法が注射か、貼るタイプかどちらにしても
成分として浸透性が高ければ、
循環器の分散をよく理解して投与すれば、
潜在的に薬剤送達距離を下げる事につながり、
組織、細胞種特異的な薬物送達に貢献します。
--
一方、シート状の形状を
超分子の技術を使って構造単位を組み立てる事によって
数百ナノメートル程度まで大きくすれば、
それを皮膚、組織などに貼ることができます。
それを基板として
細胞などを貼り付ければ、
その細胞の機能を長く持続させたり、生着する事ができます(2)。
細胞は動くので、特定の細胞を任意の位置に
長い間、定着させる事ができる事による
医療介入は多岐に及びます。
--
そうした薬剤キャリアに対して
どのように作用させたい薬剤を収納させるか、
あるいは複合体化させるか
というのは胞のような包むタイプの形状ではない場合
考える必要があります。
また、一方で特定の薬剤の放出過程を
どのように任意に組み込むかも同時に考える必要があります。

(参考文献)
(1)
Noriyuki Uchida
Design of supramolecular nanosheets for drug delivery applications
Polymer Journal (2023)
(2)
Hisato Nagano, Yoshitaka Suematsu, Megumi Takuma, Shimpo Aoki, Ayano Satoh, Eiji Takayama, Manabu Kinoshita, Yuji Morimoto, Shinji Takeoka, Toshinori Fujie & Tomoharu Kiyosawa
Enhanced cellular engraftment of adipose-derived mesenchymal stem cell spheroids by using nanosheets as scaffolds
Scientific Reports volume 11, Article number: 14500 (2021) 
(3)
Shane Gonen, Frank DiMaio, Tamir Gonen, David Baker
Design of ordered two-dimensional arrays mediated by noncovalent protein-protein interfaces
Science. 2015 Jun 19;348(6241):1365-8.
(4)
John C. Sinclair, Karen M. Davies, Catherine Vénien-Bryan & Martin E. M. Noble
Generation of protein lattices by fusing proteins with matching rotational symmetry
Nature Nanotechnology volume 6, pages558–562 (2011)
(5)
Yuta Suzuki, Giovanni Cardone, David Restrepo, Pablo D. Zavattieri, Timothy S. Baker & F. Akif Tezcan
Self-assembly of coherently dynamic, auxetic, two-dimensional protein crystals
Nature volume 533, pages369–373 (2016)

2023年5月9日火曜日 0 コメント

薬物送達距離を小さくする一つの方向性

薬物送達学では、
薬物を各臓器、組織、あるいは細胞種特異的に送達させる
という一つの目標があります。
その背景にあるのは、
そのように生体内の薬物動態、経路、目的地、時間を
制御する事が出来たら、
より少ない量で薬効を発揮させる事が出来たり、
今まで難しかった遺伝子治療ができたり(1)、
組織特異的に作用させる事により
薬物による生体への影響をより細かく分析できるようになります。
最後の要因に関して、例えば、
人の脳についてわかっていないことが多いです。
脳は様々な野によって機能が分かれており、
連携性が強いことから
その機能を紐解くのは容易ではありません。
しかし、それぞれの野への送達効率が高まる事によって
相互作用を含めて、どのような機能と関連しているか?
画像診断とも合わせて行うことで
より細かくわかるようになる可能性があります。
--
このような背景があり、
薬物送達学を発展させる事が意義がある事ですが、
特に人の身体においては
身体が大きく、様々な相互作用がある事から
高い標的性を持った送達システムを構築する事は容易ではありません。
実際にマウスのケースでもそれは難しく、
脳への送達であれば、
第一の投与選択肢としては
頭蓋内へ直接注入することです。
それによって送達の距離を小さくする事ができるからです。
しかし、人のケースで頭蓋内へ侵襲させる事は
明白ですが、様々な副作用がある事から、
鼻腔からなど、より侵襲性の低いルートで
薬物を送達させたいという需要があります。
ただ、そうすると鼻腔から頭蓋内を含め
体の中には様々な障害となるバリア組織がありますから、
その一つ一つの壁は大きく送達効率を落とすことになります。
それらの点から、
より低侵襲で、送達距離を如何に下げられるか?
あるいは送達ルートでの組織的な障壁を減らせるか?
これらの事が考慮する因子となります。
--
その送達距離という点では、
実は少し異なる視点で
知恵を働かせる余地があります。
Jessie R. Davis(敬称略)らが採用している
intein-split AAV(インテインスピリットアデノウィルス)
というものがあります(1)。
インテインはタンパク質断片を架橋して
タンパク質としての機能の完全性を決める
スイッチのような働きをする物質ですが、
タンパク質とインテイン発現遺伝子を持つ
アデノウィルスを別々に作製し、
それらが合わさった時に初めて完成形になるような
送達モデルがあります。
これは論理回路のANDゲートのようなもので
両方が存在する事によってはじめて機能します。
--
このような考え方は薬物送達学を考える上で
1つのヒントになると思われます。
先ほど、送達距離の話をしました。
その距離を下げるためには
例えば、膝の関節の治療で有れば、
その関節に注射して薬物を送達する事が
誰もが考える選択肢になります。
それとは異なる視点で
intein-split AAVの構想を参考にします。
すなわち、
薬剤としていくつものパーツに分類して
そのパーツが揃ったときにのみ薬効を働かせるような
システムにします。
そのパーツの一つ一つはできれば
体内に入っても不活性な物質にします。
加えて、そのパーツそれぞれは
ある程度、目的となる組織に走化性を有しています。
そうして、それらが膝の関節に集まった時、
それらが合体し、あるいは相互作用し、
初めて薬として完成します。
そうすると、送達距離は
全身投与であっても顕著に下がる事になります。
なぜなら、合体した時、相互作用した時が
スタートラインになるからです。
例えば、
それぞれのパーツを侵襲性の少ない
異なるルートで入れて、
互いが途中で出会いにくいようにして、
最終的に目的地で収束するようにさせます。

(参考文献)
(1)
Jessie R. Davis, Samagya Banskota, Jonathan M. Levy, Gregory A. Newby, Xiao Wang, Andrew V. Anzalone, Andrew T. Nelson, Peter J. Chen, Andrew D. Hennes, Meirui An, Heejin Roh, Peyton B. Randolph, Kiran Musunuru & David R. Liu
Efficient prime editing in mouse brain, liver and heart with dual AAVs
Nature Biotechnology (2023)

2023年5月5日金曜日 0 コメント

訂正:細胞外マトリックスを細胞種特異的送達させる為の草案

薬物送達学は、人の身体の中に投与する薬剤を
効率よく、標的となる組織に送達させる事を目標とします。
その効率が全身非特異的投与に比べて、
10倍、100倍程度高くなれば、
薬の量を減らす事によって、
急性期の治療の改善、
それによる慢性期の患者さんの生活の質を
改善できる可能性があるからです。
--
その為には薬剤を機能化させて
標的となる組織、細胞種に強く誘導させる必要があります。
このような構想はすでに提案されています。
例えば、
抗体薬物複合体では、
毒性の強い薬物に対して、
癌細胞特異的なモノクローナル抗体を結合させて
その送達効率を高めようとするものです。
しかし、
評価手法が確立していない事から
本当に劇的に薬物の送達効率が高まっているか?
それについては未知の状態です。
従って、
(この記事の趣旨とは少し離れますが)
薬物送達学の実現化のためには、
薬物の送達効率を比較的に評価する手法が
動物モデル、臨床モデルで必要になります。
これは不可欠なことです。
それによって抗体薬物複合体の未知の課題が
明らかになる可能性もあるからです。
--
抗体薬物複合体は薬物を遊離させた状態で送達させます。
つまり、薬物自身が環境に対して暴露された状態です。
それに対して
薬物をナノ粒子などの胞で包む方式が提案されています。
この場合、送達に関わる薬物動態は
最外周にあるナノ粒子の機能に色濃く反映されます。
その作用機序は想定しているよりも複雑であると考えられます。
通常、ナノ粒子表面に突出したタンパク質、
その中にある活性な結合サイトが影響を与えますが、
結合サイトが水に覆われている可能性(2)や
そのサイトがコロナなどの付着物によって遮蔽される事など
送達経路での環境からの影響を受ける事があるため
設計した通りの特性が反映されない事もあります。
また、ナノ粒子のエンベロープ膜も送達効率に
影響を与えるかもしれません。
--
薬物送達学の設計では、
できるだけ当初の設計が反映されるようにしたいため
送達効率に関わる重要な部分の機能を除いては
その経路ではできるだけ多くの割合において
不活性にしておきたいという需要があります。
もし、様々な部分で活性であれば、
その経路では血液中が一つのメインであるため
免疫的な監視機能を逃れることができません。
それで薬物が取り込まれるだけではなく、
当初の副作用を減らすという目的を果たせず、
強い免疫拒絶的なそれを引き起こしてしまう可能性があります。
--
このような観点で考えると
できるだけ人の身体に共通的に存在する物質を
分子スケールで模倣して
それを薬剤送達システムの最外周に設置したいという
アイデアに繋がります。
では、身体に最も共通的に存在する物質は何でしょうか?
それは、水です。
ナノ粒子の材料として利用される脂質もそうなのですが、
最も含有量が多い材料は水です。
送達経路の血液中に最も多く含まれる成分は水です。
--
敗血症という致死性の重度の疾患があります。
細菌が血液中に侵入し、
その炎症反応が多くの組織、臓器に及び、
非常に重い症状を雪崩様にもたらします。
血液は非常に敏感であり
できれば、細菌もウィルスも
もっといえば体にない薬剤などの物質もいれたくない
という事があります。
しかしながら、
疾患を抱える患者さんの治療の為には
そうした薬剤となる物質をいれざるを得ません。
そうした中で効率的に治療を行うためには
できるだけ血中で異種の物質を隠して、
病変部位の近くで露出させて、
特異的に作用させることが必要です。
その観点で考えると
薬剤を隠すための包材料は
理想的には水ということになります。
しかし、水は液体の為、
それを分子的に固定した状態で
最外周で安定化させる事は容易ではありません。
そのため、
タンパク質などを骨格として
それによって固定される形で水分子を安定化させる
ヒドロゲルが一つの候補になります。
そのヒドロゲルにおいて
最外周をどのように水にするか?
それが設計の理想像の一つになりうると考えられます。
--
ヒドロゲルのもう一つの可能性があります。
それは、内容物が細胞外マトリックス様である
ということです。
通常、ナノ粒子では
内容物としては核酸を含む薬剤が封入され
それを標的となる部位で送達させる事を考えます。
ヒドロゲルは
もちろんそういった可能性もあります(3,4)。
一方で
ヒドロゲルが持つ特有の利用メリットがあります。
それは
細胞外マトリックス自体を送達できる可能性があることです。
しかし、
これを実現する事は容易ではありません。
なぜなら、水そのものに
血液中で不活性な特性を維持させながら
組織特異的な送達機能を持たせる事が困難だからです。
しかし、ここで何らかの
付加的に考える価値のある創案(草案)が生まれれば、
細胞外マトリックス自体を送達できることになります。
これはヒドロゲルを使った
薬剤送達(3,4)の実現にも寄与しますが、
Cosimo Ligorio(敬称略)らが総括するように
細胞外マトリックスが持つ様々な機能(1)を
目的とする組織近くに設置できることを意味します。
細胞外マトリックスは
その表面リガンドによって(1)、
細胞の形の変形、細胞移動、細胞増殖、細胞分化、細胞死
細胞接着(1)、免疫修正(1)など
様々な機能を誘導させる事ができます。
このような多彩な機能を組織の中につくれるということです。
つまり、任意の組織の周りの環境を
自由度に富んだ形でデザインできるということです。
これは、従来型の治療だけではなく
生体内の再生医療にも応用できると考えられます。
薬剤では作用できる機能の幅が限られます。
しかし、細胞外マトリックスを送達できれば、
その幅が相当なレベルで広がる事が期待できます。
その様な可能性を視野に入れると
細胞外マトリックス自身を薬物送達学の貢献によって
組織特異的に送達させたいという強い需要が生まれます。
しかし、それぞれの環境には
すでに細胞外マトリックスが存在するため
少なくとも一定の競合があります。
そうしたことは仮に実現したとしても
付加的に考慮する必要のある事です。
--
では、どのように水で特異的送達が可能になるでしょうか?
おそらく一つの主要な選択肢となるのは
イオンの種類、濃度、組み合わせです。
身体の水にはイオンが含まれます。
そのイオンはMg、Ca、K、H、Cl、PO4、HCO、SO4などがあります。
これらのイオンの種類、濃度、組み合わせによって
水がどの組織に送達されやすいか?
それを制御できる可能性があります。
--
イオンチャンネルは細胞内にイオンを取り込む性質がありますが、
それによって引き付けられる可能性があります。
細胞種によって異なる可能性から
細胞種特異的な送達の機会が生まれます。
また、ケモカインが免疫細胞を引き付けるような
特定のイオン水を周辺環境が好む性質も見つかるかもしれません。
--
なぜ、イオンに着目したか?
それは水の蒸発係数を下げて、
ヒドロゲルとしての安定性を高めるためには
むしろ水にはイオンを入れたほうが良いと
一般的に考えられているからです。
それを支持する理論として
Laplace's theoryから
温度が一定の状態で
(分子の表面エネルギーの総量)/(分子の内部蓄熱)=(一定)
という法則があります(5)。
蓄熱は水が液体から気体に変わるときに
必要とされる熱エネルギーなので
この熱エネルギーが大きくなれば、
液体から気体への相転換が起きにくいと考えられます。
従って、
水分子の表面エネルギーの量を大きくすれば、
蒸発しにくいということになります。
水はイオンの種類やイオン濃度などによって
物理化学的な特性が変わります。
そのような不純物を含むと表面張力が上がるといわれており、
この表面張力は単位面積当たりの表面エネルギーなので
水のイオン濃度が上がると
蒸発しにくいという事が示されます。
従って、イオンにより不規則性を上げて、
蒸発の経路を塞ぐことが重要です。
これは物理化学的な観点です。
もう1つは、
水の不活性性を維持するためには
必然的に選択肢が限られるということです。
ナノ粒子と同じように表面タンパク質を露出させるという
アイデアもありますが、
最も合理的な選択肢の一つは
水の性質を生体に似せた形でどうやって動かすか?
ということです。
その選択肢において設計の自由度が大きいのが
イオンということです。

(参考文献)
(1)
Cosimo Ligorio & Alvaro Mata
Synthetic extracellular matrices with function-encoding peptides
Nature Reviews Bioengineering (2023)
(2)
Song-Ho Chong & Sihyun Ham
Dynamics of Hydration Water Plays a Key Role in Determining the Binding Thermodynamics of Protein Complexes
Scientific Reports volume 7, Article number: 8744 (2017)
(3)
Ruibo Zhong, Sepehr Talebian, Bárbara B. Mendes, Gordon Wallace, Robert Langer, João Conde & Jinjun Shi
Hydrogels for RNA delivery
Nature Materials (2023)
(4)
Jianyu Li & David J. Mooney
Designing hydrogels for controlled drug delivery
Nature Reviews Materials volume 1, Article number: 16071 (2016)
(5)
D. C. Agrawal and V. J. Menon
Surface tension and evaporation: An empirical relation for water
Physical Review A  46, 2166 – Published 1 August 1992


 
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