2022年7月30日土曜日

胎児発育不全の現状、病理(マウス)、治療機会

女性にとって妊娠、出産という
人生の大切なイベントを健やかに行いたい
と考えるのは本人だけではなく
親御さんやご家族の方も同じです。
その健やかな妊娠と出産のためには
-
〇日常生活
〇健康診断や専門家の保健指導をうける
〇たばこ・お酒の害から赤ちゃんを守る
〇妊娠中の感染症予防
-
これらが重要であるとされています(2)。
-
特に新型コロナウィルスが広がりを見せていて
今の時期、妊娠されている方は
感染症の予防は重要です。
しかし、今の日本のオミクロン株の流行を見ると
感染予防もある程度は限界があります。
その中で、筆者が重要だと考えるのは2つです。
〇ワクチン接種を積極的に検討する
〇ウィルス量について考える
特に後者のウィルス量については
3密と関係することです。
密室(閉空間)で多くの人数が集まる会場で
長時間、マスクを外している事は
ウィルスに長く暴露するリスクが高まります。
そうするとその空間にウィルスがいれば
体に多くのウィルスが入ることになります。
このような事は普段一緒に生活する
家族もできるだけ避ける必要があります。
どういったところにウィルスが多くいそうか?
その様な事を考慮しながら、
メリハリをつけて行動を考えていく事が大切だと思います。
-
妊娠、出産というのは
お子さんを授かるということなので
とても幸福なことですが、
妊娠、出産そのものが、
その女性の人生を考えた時に
大切なイベントであると考えられます。
あまり詳細は割愛しますが、
月経(回数)やホルモンが一定期間変わる事が
生涯の女性の健康に(一部よい)影響を与えるかもしれない
と考えられています。
しかし、妊娠、出産中は
人生の中の過渡期であるので、
上述したように健やかに過ごすために
より注意深くなる必要があります。
妊娠時の心理的な事を考えると、
妊娠女性自身があまり色んな病気を意識しすぎる事は
逆効果である可能性はありますが、
少なくとも医療スタッフ、研究者、開発者は
様々なリスクについて理解し、
未然に防ぐ、治療する手段を多く見つけていく必要があります。
-
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)ら
医療研究グループは
胎児発育不全(fetal growth restriction;FGR)について
その背景とマウスによる
病理の理解につながる免疫細胞を含む
細胞生物学的な観点での研究成果を発表しています(1)。
その内容の一部と独自の調査、観点、考察を加え
大切な読者の方々と情報共有いたします。

//胎児発育不全(FGR)について(5)//ー
胎児発育不全(FGR)とは、「何らかの理由で(*1)」
子宮内で胎児の発育遅延、停止が起こり
在胎週数に相当する胎児の発育が見られない状態をいいます。
-
(*1)
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らは
この理由をマウスによって精緻な様式で明らかにしようと
細胞や分子生物学的観点で努めています。
人での理解が進まない理由は
妊娠の初期の非常にデリケートな時期に
重要な病理が存在するので、
その分析のための組織取得は難しいためです(1)。
従って、マウスによって病理の真にできるだけ漸近させ
実際に5-10%のお子さんに
少なくとも少しの影響があると考えられる
発育不全の治療や
在胎期間、出生後のマネイジメントにつなげるという事です。
-
その胎児発育不全の判断基準は
基準からー1.5SD(標準偏差)以下
を目安に診断します。
アメリカの基準ではその在胎週数に相当する
体重が下位10%を下回るとされています。
従って、疫学的にはそれに近い
5-10%程度のお子さんにおいて生じるとされています(6-8)。
しかしながら、胎児の体重測定は
当然子宮の中にいますから正確に測るのは困難です。
超音波計測によって推定されますが、
検査する術者、胎児の向きによって誤差が生じます。
その他の所見である
〇羊水過少の有無
〇胎児の腹囲
〇胎盤や臍帯の位置
〇経時的変化の検討
これらから総合的に発育不全が生じているかどうかを
臨床診断することが推奨されています。
このように発育不全が生じると
命を落としたり、疾患に繋がることがあります(9-14)。
心臓病、高血圧、Ⅱ型糖尿病、脳卒中など
成長後の罹患率が高まる事も報告されています(15-21)。
一方で、胎児発育不全は予測するのは難しく
また診断されないまま経過することがあります(37-39)。
-
現在指摘されている原因は
〇母体要因
〇胎児要因
〇胎盤、臍帯因子
これらなどがあります。
それらの複数の要因が絡み合って
赤ちゃんの発育が不良になっていると考えられています。
母体要因としては母体の疾患、タバコによるものなどが
あります。しかし、それだけでは説明できない
原因不明のことも少なくありません。
治療のしようがない場合や、
原因がわかっても胎内では治療できない事も多くあります。
限られたエビデンスでは
胎児発育不全の病理は胎盤の形成初期に起こり
その胎盤の不全などが原因の事があるとされています。
特性としては例えば
子宮への血流の抵抗性などが挙げられています(22-25)。
-
治療方法においては、
原因を取り除く以外にはっきりしたものがありません。
唯一「安静に過ごす事」は効果が認められます。
母体管理、治療の為に入院して経過を見ていく場合も多くあります。
上述した原因、病理、子癇(*2)前兆との関係性などにおいては
世界的にまだ未理解な部分が大きく、
効果的な予防策、治療戦略はありません(26-28)。
(*2)明らかな原因のない妊娠中のけいれん発作
しかしながら、
本重要な報告(1)を含む
過去から累積された学術報告、臨床報告、企業知見や
産婦人科に関わる医療スタッフの経験
それらをつなぐ方式があれば、
なんらかの道筋を切り開く("pave the way")事が
できると考えられます。
本記事がそのつなぎ役としての一翼を担えればと考えます。
昨日一気に動かされた気持ちが本日の私の動力になっている事は
ほぼ間違いありません。
-
分娩方法は胎児発育不全の重症度と早産による未熟性との
バランスで決定されます。自然分娩に耐えられる体力
が胎児にないと考えられる時には
胎児に負担の少ない帝王切開で分娩する場合が多くあります。
-
胎児発育不全は慎重な管理が必要になります。
胎児の予備能力が決定的に低下する前に予測し、
適切な分娩時期を決定する事が大切です。
(おそらく)分娩時期判断が重要なのは
胎内と胎外で出来る治療が大きく異なるからです。
胎外に出て初めてできる処置もあるため
タイミングを慎重に見極める必要があるのではないか
と理解しています。
外来などで「赤ちゃんが少し小さいようです」と
言われたときには基準値内での小ささなのか、
そうでないのかを確認する必要があります。
状況に応じては新生児集中治療室(NICU)を併用する
高次治療施設での妊娠管理が必要になります。

//子宮NK細胞について//ー
子宮NK細胞と胎盤でサボテンのように伸びる
胎盤繊毛の内皮細胞である栄養膜細胞において
子宮NK細胞の受容体と栄養膜細胞のリガンドが
結合する事が胎盤形成を制御する上で重要である
と考えられています(1)。
従って、
子宮NK細胞についての概要について調査する事は
少なくとも本記事において一定の意義を見出す
ことができます。
妊娠の間の母親のリンパ球のおおよそ70%は
子宮(特異的な表現型を持つ)NK細胞である
とされています。
ゆえに、子供の栄養の供給元である血中に存在する
リンパ球のうち7割がNK細胞ですから
このNK細胞の生理機序を理解する事は極めて重要です。
この子宮NK細胞は基底脱落膜,
Mesometrial lymphoid aggregate of pregnancy (MLAp)
これら胎盤に供給する血管に存在します。
この子宮NK細胞の数は妊娠初期にピークを迎え
出産で減少します。
従って、Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らが
マウスのケースにおいて示した
子宮NK細胞と栄養膜の特定の(白血球、遺伝子)型のペアが
統計的にみて有意に高い確率で胎児発育不全が生じた事実は
妊娠初期から胎盤の不良が原因であるとされていた
従来の認識を裏付けるものかもしれません。
なぜなら、NK細胞は妊娠初期でピークになるからです。
よりNK細胞の影響を色濃く受けることになります。
--
子宮NK細胞は通常のNK細胞のようにパーフォリンなど
による細胞傷害性を有していません(29)。
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らの
報告のように母体血管から胎児へとつながる
胎盤繊毛内へ血液を供給するために連結させる
螺旋動脈があります。
NK細胞はこの螺旋動脈をリモデリング、成長させる
上で重要な役割を果たします。
後にも記述しますが、
この螺旋動脈が細くて狭いと
栄養供給の容量が制限されるために
胎児の発育不全につながると考えられます。
胎盤繊毛には栄養膜が発達しますが、
この栄養膜の量と螺旋動脈の「長さ、太さ」の
バランスが適性に保たれると
妊娠初期での胎児の成長が順調に行くケースが
少なくとも多いと考えられるのではないか?
現時点で明確なエビデンスが十分にないですが、
総合的にそのように仮に理解しています。
このようなNK細胞による胎盤内での
胎盤繊毛と母体血管をつなぐ螺旋動脈の形成は
流産や子癇前兆にも関わると考えられます(30)。

//従来の知見//ー
遺伝子的な研究では
KIR-Aハロタイプの2コピー(KIR抑制遺伝子)を持つ妊娠女性は
この胎児成長不全、子癇前兆、反復流産のような
妊娠の合併症のリスクが高く
特に胎児が2 HLA-C アレル(白血球型)を
父親から遺伝した場合、
そのリスクは2.02(オッズ比)となります(31-33)。
一方で
母親がKIR Bハロタイプを持つ場合には
妊娠に関わる病気のリスクが低い事が示されています(31-33)。
しかしながら、
今示したKIRとHLA遺伝子は程度が高く多型で
それを仕分けて、指定するのは複雑です(34-36)。
例えば、
Group 1 HLA-C alleles include HLA-C*01, C*03, C*07, C*08, 
among others,
Group 2 HLA-C alleles include HLA-C*02, C*04, C*05, C*06,
C*0707/9, C*1204/5, C*15, C*1602, C*17 and C*18 3

//概略 Ref.(1)//ーー
(母親)
抑制型KIR2DL1受容体(KIR A ハロタイプ遺伝子)
(父親)
HLA-C*0501—an HLA-C group 2 アロタイプ
これらは
母親から主要に供給される上述した遺伝子を持つ
子宮NK細胞と、父親の白血球血液型を反映した
胎児栄養膜細胞との受容体-リガンドの結合性の中で
統計的にみて「マウスのケース」で
胎児発育不全の割合が有意に上昇しています。
(参考文献(1) Fig.3bより)

//内容の概略(1)//ーー
子宮NK細胞は細胞傷害性を持たないなど
特徴的な機能を持っていますが、
それらは大きく分けて2つのサブタイプに分けられています。
trNK(CD49a+)、cNK(DX5+)
これらです。
これらにさらに亜型が存在し
ミックスタイプと分けると6種類確認されています。
しかし、
これらのGenotype(遺伝子的な特徴)は
胎児発育不全が生じている群と
そうではない群で大きく変わらないとされています。
少なくとも子宮NK細胞においては
上述したように抑制型KIR2DL1受容体が
発現されている。
そしてそれが、HLA-Cと交配されたときに
NK細胞と栄養膜細胞の受容体-リガンド結合を通して
胎児発育不全のリスクが高くなることが示されています。
--
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らは
NK細胞やその他の免疫細胞、繊維芽細胞、栄養膜細胞
これらのネットワークの中で
リンパ球の大部分を占めるNK細胞自身や
その他免疫系とのネットワークにおいて
様々な遺伝子が関わっている事を明らかにしています(1)。
(個別の遺伝子とその機能の詳細については割愛します。)
これらは
〇血管生成
〇NK細胞の吸着
〇胎児の成長
〇反復流産
〇酸化還元恒常性
〇JAK/STAT信号
〇Wnt信号
〇細胞の成長の制御(栄養膜細胞など)
〇リンパ球の引き寄せ(特に妊娠初期は主にNK細胞)
〇アポトーシス
〇NF-κB信号
〇細胞外マトリックスの減少
〇組織のリモデリング(胎盤繊毛など)
〇酸化ストレスからの防御
これらの機能に関わっているとされています(1)。
これらが発育不全が生じている場合に
機能として複雑に改変されている可能性が考えられます。

//考察1//ー
胎児には子宮内に血液を通じて
母親から子供に栄養を随時供給する必要があります。
胎児の発育不全が起きるという事は
1つの大きな原因として
この血液の供給がうまくいっていない
ことが考えられます。
子宮を含む母親のNK細胞と胎児の栄養膜の
相互作用はこの血液の供給に影響を与える事が
以前から知られています(3)。
Peter ParhamがFigure.1で示しているように(3)
NK細胞と栄養膜の結合によって栄養膜組織が形成され
母親から胎児への血液ルートが十分開放されます。
従って、
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らが
示した胎児発育不全とNK細胞と栄養膜の関係については
臍帯血を通じた栄養供給の観点で考えると
論理的根拠があります。

//考察2//ー
参考文献(1)Fig.4 血管が細い
血管が細いことは
脱落膜のNK細胞に誘発された
平滑筋と内皮細胞のアポトーシス機序の
変化が関係しているかもしれません(4)。
Peter Parhamが示しているように
子宮筋層のらせん状の動脈は
栄養膜が十分に形成されることによって
短くなり、その分、太くなることが考えられます
(参考文献(3) Figure.1)。
脱落膜に分布する
結合状態にあって、組織形成の準備ができている
NK細胞と栄養膜の数、分布が一つ影響を
与えているかもしれません。
もしくは因果関係が逆で
らせん動脈が細く、長く成長するから
栄養内膜組織が成長する機会が奪われる
という事も考えられます。
その因果関係を明らかにするには
栄養膜組織とらせん動脈のどちらが先に
成長するか?ということが重要になります。

//考察3//ー
HLAに付随してNK細胞において
非常に多岐にわたる遺伝子が関わっている可能性があります。
従って、特定の遺伝子を標的にすることは
非常に難しい事が推測されます。
今は、マウスの段階で、治療までの道のりは
長く険しいと考えられますが、
NK細胞の補充が挙げられます。
KIR×C*05は一番リスクが高いですが、
WT×C*05は一番リスクが低くなっています。
従って、母親側の子宮特異的な表現型を持つNK細胞を
WTに変えて、胎児の境界に届けることは
治療の選択肢になるかもしれません。
ただし、非常に重要な発達期において
異なる遺伝子を持つNK細胞を作用させる事の
リスクは当然伴う可能性があります。
また特に骨髄系など他の免疫細胞の作用もあるので
NK細胞だけで十分かという議論もあります。

//意見(Opinion)//ー
もし、途中で胎内の分析ができるということであれば、
今回示された成長不全リスクの高い条件で
成長に問題がなかったマウスと
発育不全が生じたマウスの
子宮NK細胞の表現型の違いや
螺旋動脈や栄養膜組織の形成などの
組織学的な違いを分析する事で
そこから重要な科学的事実が得られるかもしれません。

//治療の提案//ー
現状、人への治療を考えたときには
基礎医学を元にした薬物を含む生物学的な治療の
道のりは非常に長いものになることが考えられます。
どのように人のモデルで確かめるか?
といったところにもハードルがあるからです。
できるだけ早く、安全な様式で
1人でも多くのお子さんを健康にしたい
という社会的な需要は当然あります。
例えば、
上述したように安静にするといった基本的な事がありますが
子供の成長を「少しでも」助けるように
管理栄養士がついて食事のメニューを考える
といったことは選択肢としてあるかもしれません。
不足しがちなビタミンD、葉酸、脂肪酸や
成長に重要だと考えられている鉄の適正な摂取を
成長不全が起きている場合には特に気を付けることで
仮に組織学的には不利な条件でも
お子さんの成長に貢献できる可能性があります。
このように今まで常識的に気を付けられてきた
妊娠時期のマネイジメントをより高度にすることで
症状の緩和が実現される可能性もあります。

//細胞外小胞を使った治療//ー
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らは
NK細胞やその他の免疫細胞、繊維芽細胞、栄養膜細胞
これらのネットワークの中で
リンパ球の大部分を占めるNK細胞自身や
その他免疫系とのネットワークの中で
様々な遺伝子が関わっている事を明らかにしています(1)。
従って、特定の遺伝子が
多くのケースで排他的に関わっている可能性は
低いと考えられます。
父親と母親の遺伝子や白血球型を変えるのは
困難であるとすれば、その運命を受け入れる中で
確率的に成長不全という問題が生じた時に
どのように対処するか考える必要性が出てきます。
遺伝子を書き換えるという事も考えられますが、
それよりも遺伝子の「スイッチ」を
その発現経路の中で(時には程度を持たせて)
変える事が現実的である可能性があります。
その点においてmRNAに作用する
miRNAを使った治療は有望であると見ています。
上述したように複雑に遺伝子が関わっていますから
miRNAも複雑に変わっている可能性があります。
もちろんmiRNAで全ての遺伝子を正せるわけではないですが、
「同時に」「多面的に」「程度を持たせて」
改変するには直接的に遺伝子を書き換えるよりも
適している可能性を想定しています。
そのためには「"mi" in omics」と呼ばれる
miRNAのオミックス解析を行う事が大切です(40)。
それを妊娠女性の人のケースで血液採取で
行うことができるか?ということです。
もし、在胎期間を揃えた状態で
胎児体重と胎盤関連のmiRNAの関係が明らかになって、
下位5%以下の成長不全のお子さんに
特徴的なmiRNAの異常がわかれば、
それを「多面的に」正すことを検討することができます。
-
このmiRNAを使ったものは
精密医療(precision medicine)と言われますが、
そのmiRNAを子宮、胎盤に特異的に輸送することができれば、
さらにその「精密性」は向上します。
それを実現するのが
「細胞外小胞(Extracellular vesicles)」です。
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らは
参考文献(1) Fig.7d, 7eに
細胞腫ごとのネットワークを示しています。
このような細胞腫ごとのネットワークは
リガンドベースで見積もられていますが、
おそらく細胞間のコミュニケーションに関わる
細胞外小胞も連携性に強く関与していると考えられます。
その細胞外小胞は様々な物質を輸送しますが
遺伝子発現に関わるmiRNAも輸送している
可能性は高いと考えられます。
身体が備える自然の機序としてmiRNAを
細胞外小胞が輸送する仕組みがありますから、
それを巧みに利用して治療につなげようと試みます。
そのときに例えば、
子宮NK細胞では特徴的なリガンド
trNK(CD49a+)、cNK(DX5+)。
これらなどがあります。
特に初期において重要である子宮NK細胞特異的な
様々な受容体、リガンドを見つけることで
それに結合するリガンドを
細胞外小胞に豊富に装飾します。
その時に特異的なリガンド、装飾因子を
ゼロベースで見つけることが難しければ、
近い環境にある細胞種を集めて
その表面リガンドや
そこから放出される細胞外小胞の利用可能性
について検討することもできます。
そのようなメソッドも考えられます。
このような可能性があることや
miRNAは低分子量であり輸送負荷が小さいことから
miRNAが遺伝子の適正な調整において
どれくらい有効であるか?
また直面している課題は何なのか?
潜在的にある制限要因は何なのか?
そういったことを確かめていく事は
今後、非常に重要になると見ています。
細胞外小胞を使った治療は
複数のmiRNAを封入したら
「同時に」輸送する事が可能です。
もし、その小胞の輸送向性が非常に高ければ
同時に封入した場合の相乗効果を見込むことができます。
一方で
細胞外小胞もエクソソーム、アポトーシス小体
マイクロベシクルなど大きさ、機序の異なる小胞があり、
それらの分類が困難で
かつ表面状態もナノ粒子に比べると
非常に複雑なので、独自に持つ課題が多くあります。
しかし、
「複雑な生産に慣れている風土、実績」があれば、
そういった課題の一部は乗り越えられる可能性があります。
Chengyin Li, Rhea E. Sullivan, Dongxiao Zhu & Steven D. Hicks
(敬称略)が提唱しているmiRNAのマルチオミックスによって(40)
現状では有効な治療方法がない
この胎児発育不全を含めた
様々な疾患のmiRNA由来の原因の一部が明らかになれば、
法整備なども含めて課題が山積みである
細胞外小胞を使った医療工学技術の推進力が
私を含めた関わる人々の情熱によって
大きく変わってくると考えられます。

//iPS細胞の実績について//ー
胎盤の研究は難しいとされていますが、
ヒトナイーブ型のiPS細胞から初めて
栄養外胚葉の作製に成功し、
さらにその先の胎盤細胞へ続く細胞群への分化も確認されました(41)。
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)ら
が指摘するように(1)、
妊娠初期の研究は人のケースでは
なかなか進みにくいことが挙げられています。
今回の研究から明らかになったように
胎盤の細胞、組織は健やかな妊娠、出産を実現する上で
非常に重要なので、
その機序を研究するツールが一つ生まれるかもしれない
ことが示されたと考えられます。
また、細胞外小胞のリソースとして
iPS細胞から作った胎盤細胞群を使える
可能性もあります。

(参考文献)
(1)
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter, Orr Ashenberg, Jack Lee, Samantha J. Riesenfeld, Matan Hofree, Maria Aggelakopoulou, Ayshwarya Subramanian, Subita Balaram Kuttikkatte, Kathrine E. Attfield, Christiane A. E. Desel, Jessica L. Davies, Hayley G. Evans, Inbal Avraham-Davidi, Lan T. Nguyen, Danielle A. Dionne, Anna E. Neumann, Lise Torp Jensen, Thomas R. Barber, Elizabeth Soilleux, Mary Carrington, Gil McVean, Orit Rozenblatt-Rosen, Aviv Regev & Lars Fugger 
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Capturing human trophoblast development with naive pluripotent stem cells in vitro
Cell Stem Cell. 2021 Jun 3;28(6):1023-1039.e13
 

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