私は以前にこんな文章をここに上梓したことがあります。
-
The important aim of cancer treatment is that we can increase five year survival rate of cancer patient in which cancer relapse rate is significantly reduced. My roadmap is not only increasing this five year survivals rate, but also improving quality of life up to healthy person level after cancer treatment. Furthermore, it is that any pain and suffering during cancer treatment are removed.
When I decide to cope with the cancer treatment, I set up my ultimate target, which is “the cancer treatment without any pain and suffering”.
-
医療の分野に初めに関わろうとしたときの目標は
「痛みのない癌治療」です。
そういったことは当然、
治療に当たる医療スタッフも考えていて、
モルヒネや神経系を遮断することによる
痛みの軽減(緩和ケア)などを
治療の初期から段階的に導入していこうという
試みもあります。
あるいは癌特有の悪液質の
治療薬を併用するという方法もあります。
そういった痛みの理解、その除去も大切ですが、
もう一方の視点として、
「よりよい状態で寛解させる。」
という考えがあります。
癌治療では5年生存率をどうやって高めるか?
その生存率が治療の効果を評価するときに
指標となることが多くあります。
しかし、仮に生存率がほぼ100%になったとしても
そこで治療の開発は終わりではないと考えています。
癌を治療すると少なくとも身体にはダメージが入りますから、
そのダメージを最低限にする余地が残されています。
特に小児がんの場合、
脳腫瘍の特定の型などを除いて
比較的生存率は高いとされており、
血液性の癌では抗がん剤が一般的によく効くと
いわれています(3)。
しかし、懸命の治療があって生存出来た後、
そのお子さんには残された人生が長くあります。
その残された人生をより良くするためには
ベースとして治療した時の身体のダメージを
最小限にすることが求められます。
ここに焦点を当てると、
小児癌のための薬剤開発にゴールはない。
改善の余地がなくなることはないと想定できます。
このような癌治療の予後について考える事を
がんサバイバーシップと呼ばれます。
しかし、このような予後について考える事は
がんに限らず、極めて軽度なものを除き
あらゆる疾患に当てはまることです。
例えば、
今流行している新型コロナウィルス感染症においても
数か月を超えて、味覚嗅覚障害、倦怠感などを始め
様々な後遺症があることが報告されています(4)。
急性期の治療だけで十分ではないことが
示されています。
また、予後においては
パートナー(配偶者)がいれば、
その人に対するケアも含まれます。
若い人であれば、親御さんなど家族の方も含まれます。
このような包括的な視点が
個々の罹患に対して必要になります。
そして、
治療に成功し、その残りの人生の中で
より多くの時間、病気の事を忘れて
生活を楽しむことができる、
あるいは意義ある事に取り組むことができる
といったことが指針の一つになるのではないか?
と考えられます。
小児がんに罹ったことのあるお子さんに
「あなたの夢、目標は何ですか?」
と社会が問いかける事には
少なくとも一定の意義があります。
しかし、
1人の患者さんに対して、
医療、社会がするケアが長く、多くなれば、
当然、労働力の負担も増えることになります。
そうした背景の中で
近年、目覚ましい進展を遂げている
機会学習を含む人工知能の導入が検討されます。
James J. Ashton, Aneurin Young, Mark J. Johnson & R. Mark Beattie
(敬称略)からなる医療研究グループは
子供の長期間の臨床的なケアにおいての
機械学習の利用可能性について総括されてます(1)。
〇Logistic regression
〇Random forest
〇Support vector machine
〇Neural networks
〇Hierarchial clustering
〇Principal component analysis
(参考文献(1) Fig.2参照)
これらのようなアルゴリズムの中で
個別に症状や体質が異なり複雑に絡み合う中で
どのようにグループ分けするか?
その集団ごとに適切な治療を行うか?
そういったことを機械学習で見積もります。
この正確性、導入実績が高まってくると
〇医療機関を有効に利用できる。
(専門病院以外でも対応可能になる。)
〇適正な検査につながる。
(検査数、項目の最適化)
〇医師診察時間の有効化。
(多くの患者さんを診れるようになる。)
〇他の医療スタッフを有効に使える。
〇データの管理の次元が上がる。
これらなど、考えられるメリットがあります。
長期的ケアを充実させるにあたって
増える負担をどのように軽減させるかは
James J. Ashton(敬称略)らが述べている様に
機械学習の導入は有効です。
また、医療的な観点だけではなく、
社会的な観点も重要になると考えられます。
自治体や民間団体(NGO/NPOなど)の理解、協力も必要になります。
-
上述した広義でのサバイバーシップにおいて
特に先進的であるがんのサバイバーシップ(5,6)について
独自の意見、考察、調査を加えながら、
本日は読者の方々と情報共有したいと思います。
その中で
「治療により命を救う。」という所を超えて
その後の患者さんの幸せをどう構築すればいいか?
について考えるきっかけになればと思います。
//がんサバイバーシップの指針//ー
がんの診断を受けた人々がその後の生活で抱える
身体的、心理的、社会的な課題を
「社会全体が協力して」乗り越えていく
という概念です。
言い換えれば、課題が
身体的、心理的、社会的な側面があるため
様々な方面からサポートしていく必要がある
ということです。
//がんサバイバーシップの歴史//ー
はじめて「がん」と「サバイバーシップ」を関連付けたのは
1985年にFitzhugh Mullan(敬称略)です(6)。
彼は男性医師でありましたが、
32歳の時に縦隔胚細胞腫と診断されました。
その中で
「がんを治癒したか/否かどうかの二分法よりも
本人が診断後をどう生きるかプロセスを捉えるほうが
(ケア、治療として)適切である。」
と述べられています。
但し、とりわけ薬学の観点から
医療を改善させると考えてる私の観点は
治癒したか否かを決して軽くみるのではなく、
より良く治癒した状態で「かつ」
患者さんやその大切な周囲の人たちの
その後の人生のウェルビーイングについて
協同的に考えるということです。
-
2006年に米国医学研究所(IOM)が発表した、
がんサバイバー支援の方針を示したレポートでは
〇がんやその治療が、医学的・機能的・心理社会的に
患者さんにもたらす結果について、より意識を向けるようにすること
〇がんサバイバーへの有効な健康管理方法を決定し、
それを実現するための計画を立てること
〇心理社会面のサポートや公平な就労制度、健康保険制度に
関する政策を通して、がんサバイバーのQOLを高めること
これらが目的として示されています。
この時にすでに上述したように
本人だけではなく、周辺の人々や社会全体に向けられて
いました。
//日本の現状//ー
2012年6月から始まった第2期がん対策推進基本計画では、重点的に取り組むべき課題として、
〇放射線療法、化学療法、手術療法の更なる充実とこれらを専門的に行う医療従事者の育成
〇がんと診断されたときからの緩和ケアの推進
〇がん登録の推進
〇働く世代や小児へのがん対策の充実
特に4番目においては
若い時期にがんに罹患した人を対象にしており
就労、就学、それに伴う経済的な問題
家族、学校、職場での人間関係の問題
に焦点が当てられています。
〇がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率の20%減少)
〇全てのがん患者及び家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上
〇がんになっても安心して暮らせる社会の構築
これらの背景、その目的において
社会全体で解決するように努力するべきであるという
がんサバイバーシップの考え方が盛り込まれています。
//がんサバイバーシップの研究//ー
がんの患者さんは
治療中は家族や医療スタッフなど周囲の人の支えを強く実感しますが、
ひとたび治療が終了すると、その支えは少なくなります。
その中で生活に順応していく事に苦労することが
多いとされています。
治療期間よりもその後の人生、生活の方が
圧倒的に長いわけですから、
その後の人生に焦点を当てる事は
治療と同様に必要なことです。
地域で社会生活を送る本人やとりまく人々が直面する困難を
明らかにしてその改善・解決に努めるのが、
がんサバイバーシップ研究です。
-
サバイバーシップ研究の扱う課題は以下です。
〇長期的合併症
〇再発への恐怖
〇周囲との人間関係
〇ライフスタイル
〇恋愛・結婚
〇性生活
〇子どもを持つこと・育児、介護、就学・就労の問題
〇経済的問題
〇がんへの偏見
〇がんリハビリテーション
〇生きる意味を含めた実存的問題
これらなど多岐にわたります。
//最新研究の概要(2)//ー
Sarah E. Piombo, Kimberly A. Miller, David R. Freyer, Joel E. Milam, Anamara Ritt-Olson, Gino K. In & Thomas W. Valente
(敬称略)ら医療研究グループは
サバイバーシップを扱う診療所への紹介、利用を
向上させるための重要な要因について
社会ネットワーク分析を用いて示しています(2)。
サバイバーシップの背景、従来知見と
この報告による結果概要について紹介いたします。
-
アメリカでは近年の診断、治療の発展により
〇84.6% (19-39歳)
〇72.7% (40-64歳)
この5年以上生存となっています(7)。
多くの命が助かった方は
がんの治療の結果として
臨床的に重大な健康問題を抱えます。
例えば、
〇機能障害
〇早くに亡くなる
〇生活の質の低下
〇心の問題(ストレス)
〇学校、仕事の障害
〇経済的な問題
これらです(8)。
これらの問題に立ち向かうため
特定のサバイバーシップ診療所を設ける
ことが推奨されています。
そこでは
〇モニタリング
〇慢性的な副作用の管理
〇心理的サポート
〇生殖能力維持の支援
〇ケアプランの作成
〇健康向上のためのアドバイス
これらなどが行われます(9-13)。
しかしながら、新しい分野であり、
これらのサバイバーシップに特化した
診療所の利用はまだ十分に普及していません。
一方で、
アメリカでは小児がんにおける
サバイバーシップ診療所による
包括的な支援は大人に比べて普遍的です(14-18)。
小児だけではなく、青年や大人において
治療後の包括的な支援を得るために
サバイバーシップ診療所への紹介の
効果的な戦略が非常に大切になります(12)。
そのためには
どの様な経路で紹介に至っているか?
その社会ネットワーク分析が重要になります。
社会的なつながりにおいて
「Homophily effects」というものがあります。
社会ネットワークの中で
同じ職業種を持つ人たちとコミュニケーションを
とる傾向にあるということです
そうした傾向の中で、ややもすれば
がんの予後の治療の定期的なチェックにおいて
例えば、医師だけといった
限られた職種の人たちだけとの
コミュニケーションに限られているケースも
散見されるかもしれません。
実際にSarah E. Piombo(敬称略)らが行った調査では
サバイバーシップ診療所の存在は78%が
知っていたけど、
実際に紹介された人は30.4%に留まる
とされています。
従って、あるとわかっていても
少なくとも利用できている人は半分にも満たない
ということが明らかになっています(2)。
利用できているかどうかは
患者さんが社会的にどのようにつながっているか?
それによるとされています。
行われたランダムグラフモデルでは
特に医療スタッフの中で重要な役割を果たすのは
「ソーシャルワーカー」です。
(参考文献(2) Fig.1参照)
このソーシャルワーカーは
〇社会の中で生活する上で困っている人
〇生活に不安を抱えている人
〇社会的に疎外されている人
これらの人々と関係を構築して
様々な課題にともに取り組み援助を支援します。
その背景にある家族、友人、その他の関係機関や
環境にも働きかけるとされています。
従って、
がんサバイバーシップの中で
医療と地域社会との懸け橋として
1つ重要なポジションであると考えられます。
//まとめ//ー
医療技術が進歩して、がんを含め
様々な疾患の治療による生存率が高まると
より患者さんのその後の人生を包括的に考える
サバイバーシップの視点が重要になります。
国際連合が掲げる持続可能な開発目標の指針の中で
「誰一人取り残すことのない社会。」
というのがあります。
それを実現するためには
新型コロナウィルス感染症の後遺症のケアで
顕在化したように、
病気に罹患した予後をどのように改善させるか
というベクトルも大切になります。
一方で、
冒頭で述べた様に初期の治療においても
生存率が最終目標ではなく、
如何に身体や心へのダメージが少ない中での
治療を行えるか?
これが指針になると考えられます。
その中でこれまで以上の
高度な科学技術の理解、発展が求められます。
細胞腫特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)は
1つこの考えに基づきます。
(参考文献)
(1)
James J. Ashton, Aneurin Young, Mark J. Johnson & R. Mark Beattie
Using machine learning to impact on long-term clinical care: principles, challenges, and practicalities
Pediatric Research (2022)
(2)
Sarah E. Piombo, Kimberly A. Miller, David R. Freyer, Joel E. Milam, Anamara Ritt-Olson, Gino K. In & Thomas W. Valente
Social networks of oncology clinicians as a means for increasing survivorship clinic referral
Communications Medicine volume 2, Article number: 89 (2022)
(3)
キャット・アーニー (著), 矢野真千子 (翻訳)
ヒトはなぜ「がん」になるのか 進化が生んだ怪物
河出書房新社
(4)
Anuradhaa Subramanian, Krishnarajah Nirantharakumar, Sarah Hughes, Puja Myles, Tim Williams, Krishna M. Gokhale, Tom Taverner, Joht Singh Chandan, Kirsty Brown, Nikita Simms-Williams, Anoop D. Shah, Megha Singh, Farah Kidy, Kelvin Okoth, Richard Hotham, Nasir Bashir, Neil Cockburn, Siang Ing Lee, Grace M. Turner, Georgios V. Gkoutos, Olalekan Lee Aiyegbusi, Christel McMullan, Alastair K. Denniston, Elizabeth Sapey, Janet M. Lord, David C. Wraith, Edward Leggett, Clare Iles, Tom Marshall, Malcolm J. Price, Steven Marwaha, Elin Haf Davies, Louise J. Jackson, Karen L. Matthews, Jenny Camaradou, Melanie Calvert & Shamil Haroon
Symptoms and risk factors for long COVID in non-hospitalized adults
Nature Medicine (2022)
(5)
がんサバイバーシップ
Wikipedia
(6)
Fitzhugh Mullan, M.D.
Seasons of Survival: Reflections of a Physician with Cancer
The New England Journal of Medicine 1985; 313:270-273
(7)
Surveillance Epidemiology and End Results (SEER) Program. Cancer Stat
Facts: Cancer Among Adolescents and Young Adults (AYAs) (Ages 15–39)
(National Cancer Institute, DCCPS, Surveillance Research Program, 2020).
(8)
Jacobs, L. A. & Shulman, L. N. Follow-up care of cancer survivors: challenges
and solutions. Lancet Oncol. 18, e19–e29 (2017).
(9)
Hewitt M. E., Ganz P. A., Institute of Medicine (U.S.), American Society of
Clinical Oncology (U.S.). From cancer patient to cancer survivor: lost in
transition. vi, 189 (National Academies Press, 2006).
(10)
Health and Medicine Division, National Academies of Sciences Engineering
and Medicine, National Cancer Policy Forum, Board on Health Care Services.
Long-Term Survivorship Care After Cancer Treatment: Proceedings of a
Workshop (National Academies Press, 2018).
(11)
Nekhlyudov, L. et al. Developing a quality of cancer survivorship care
framework: implications for clinical care, research, and policy. J. Natl Cancer
Inst. 111, 1120–1130 (2019).
(12)
Shapiro, C. L. Cancer survivorship. N. Engl. J. Med. 379, 2438–2450 (2018).
(13)
Blaes, A. H., Adamson, P. C., Foxhall, L. & Bhatia, S. Survivorship care plans
and the commission on cancer standards: the increasing need for better
strategies to improve the outcome for survivors of cancer. JCO Oncol Pract. 16,
447–450 (2020).
(14)
Children’s Oncology Group. Long-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of
Childhood, Adolescent and Young Adult Cancers (2018).
(15)
Eshelman-Kent, D. et al. Cancer survivorship practices, services, and delivery:
a report from the Children’s Oncology Group (COG) nursing discipline,
adolescent/young adult, and late effects committees. J. Cancer Surviv. 5,
345–357 (2011).
(16)
Oeffinger, K. C. et al. Chronic health conditions in adult survivors of
childhood cancer. N. Engl. J. Med. 355, 1572–1582 (2006).
(17)
Robison, L. L. et al. The childhood cancer survivor study: a National Cancer
Institute–supported resource for outcome and intervention research. J. Clin.
Oncol. 27, 2308–2318 (2009).
(18)
Landier, W., Armenian, S. & Bhatia, S. Late effects of childhood cancer and its
treatment. Pediatr. Clin. North Am. 62, 275–300 (2015).
胎児発育不全の現状、病理(マウス)、治療機会
人生の大切なイベントを健やかに行いたい
と考えるのは本人だけではなく
親御さんやご家族の方も同じです。
その健やかな妊娠と出産のためには
-
〇日常生活
〇健康診断や専門家の保健指導をうける
〇たばこ・お酒の害から赤ちゃんを守る
〇妊娠中の感染症予防
-
これらが重要であるとされています(2)。
-
特に新型コロナウィルスが広がりを見せていて
今の時期、妊娠されている方は
感染症の予防は重要です。
しかし、今の日本のオミクロン株の流行を見ると
感染予防もある程度は限界があります。
その中で、筆者が重要だと考えるのは2つです。
〇ワクチン接種を積極的に検討する
〇ウィルス量について考える
特に後者のウィルス量については
3密と関係することです。
密室(閉空間)で多くの人数が集まる会場で
長時間、マスクを外している事は
ウィルスに長く暴露するリスクが高まります。
そうするとその空間にウィルスがいれば
体に多くのウィルスが入ることになります。
このような事は普段一緒に生活する
家族もできるだけ避ける必要があります。
どういったところにウィルスが多くいそうか?
その様な事を考慮しながら、
メリハリをつけて行動を考えていく事が大切だと思います。
-
妊娠、出産というのは
お子さんを授かるということなので
とても幸福なことですが、
妊娠、出産そのものが、
その女性の人生を考えた時に
大切なイベントであると考えられます。
あまり詳細は割愛しますが、
月経(回数)やホルモンが一定期間変わる事が
生涯の女性の健康に(一部よい)影響を与えるかもしれない
と考えられています。
しかし、妊娠、出産中は
人生の中の過渡期であるので、
上述したように健やかに過ごすために
より注意深くなる必要があります。
妊娠時の心理的な事を考えると、
妊娠女性自身があまり色んな病気を意識しすぎる事は
逆効果である可能性はありますが、
少なくとも医療スタッフ、研究者、開発者は
様々なリスクについて理解し、
未然に防ぐ、治療する手段を多く見つけていく必要があります。
-
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)ら
医療研究グループは
胎児発育不全(fetal growth restriction;FGR)について
その背景とマウスによる
病理の理解につながる免疫細胞を含む
細胞生物学的な観点での研究成果を発表しています(1)。
その内容の一部と独自の調査、観点、考察を加え
大切な読者の方々と情報共有いたします。
//胎児発育不全(FGR)について(5)//ー
胎児発育不全(FGR)とは、「何らかの理由で(*1)」
子宮内で胎児の発育遅延、停止が起こり
在胎週数に相当する胎児の発育が見られない状態をいいます。
-
(*1)
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らは
この理由をマウスによって精緻な様式で明らかにしようと
細胞や分子生物学的観点で努めています。
人での理解が進まない理由は
妊娠の初期の非常にデリケートな時期に
重要な病理が存在するので、
その分析のための組織取得は難しいためです(1)。
従って、マウスによって病理の真にできるだけ漸近させ
実際に5-10%のお子さんに
少なくとも少しの影響があると考えられる
発育不全の治療や
在胎期間、出生後のマネイジメントにつなげるという事です。
-
その胎児発育不全の判断基準は
基準からー1.5SD(標準偏差)以下
を目安に診断します。
アメリカの基準ではその在胎週数に相当する
体重が下位10%を下回るとされています。
従って、疫学的にはそれに近い
5-10%程度のお子さんにおいて生じるとされています(6-8)。
しかしながら、胎児の体重測定は
当然子宮の中にいますから正確に測るのは困難です。
超音波計測によって推定されますが、
検査する術者、胎児の向きによって誤差が生じます。
その他の所見である
〇羊水過少の有無
〇胎児の腹囲
〇胎盤や臍帯の位置
〇経時的変化の検討
これらから総合的に発育不全が生じているかどうかを
臨床診断することが推奨されています。
このように発育不全が生じると
命を落としたり、疾患に繋がることがあります(9-14)。
心臓病、高血圧、Ⅱ型糖尿病、脳卒中など
成長後の罹患率が高まる事も報告されています(15-21)。
一方で、胎児発育不全は予測するのは難しく
また診断されないまま経過することがあります(37-39)。
-
現在指摘されている原因は
〇母体要因
〇胎児要因
〇胎盤、臍帯因子
これらなどがあります。
それらの複数の要因が絡み合って
赤ちゃんの発育が不良になっていると考えられています。
母体要因としては母体の疾患、タバコによるものなどが
あります。しかし、それだけでは説明できない
原因不明のことも少なくありません。
治療のしようがない場合や、
原因がわかっても胎内では治療できない事も多くあります。
限られたエビデンスでは
胎児発育不全の病理は胎盤の形成初期に起こり
その胎盤の不全などが原因の事があるとされています。
特性としては例えば
子宮への血流の抵抗性などが挙げられています(22-25)。
-
治療方法においては、
原因を取り除く以外にはっきりしたものがありません。
唯一「安静に過ごす事」は効果が認められます。
母体管理、治療の為に入院して経過を見ていく場合も多くあります。
上述した原因、病理、子癇(*2)前兆との関係性などにおいては
世界的にまだ未理解な部分が大きく、
効果的な予防策、治療戦略はありません(26-28)。
(*2)明らかな原因のない妊娠中のけいれん発作
しかしながら、
本重要な報告(1)を含む
過去から累積された学術報告、臨床報告、企業知見や
産婦人科に関わる医療スタッフの経験
それらをつなぐ方式があれば、
なんらかの道筋を切り開く("pave the way")事が
できると考えられます。
本記事がそのつなぎ役としての一翼を担えればと考えます。
昨日一気に動かされた気持ちが本日の私の動力になっている事は
ほぼ間違いありません。
-
分娩方法は胎児発育不全の重症度と早産による未熟性との
バランスで決定されます。自然分娩に耐えられる体力
が胎児にないと考えられる時には
胎児に負担の少ない帝王切開で分娩する場合が多くあります。
-
胎児発育不全は慎重な管理が必要になります。
胎児の予備能力が決定的に低下する前に予測し、
適切な分娩時期を決定する事が大切です。
(おそらく)分娩時期判断が重要なのは
胎内と胎外で出来る治療が大きく異なるからです。
胎外に出て初めてできる処置もあるため
タイミングを慎重に見極める必要があるのではないか
と理解しています。
外来などで「赤ちゃんが少し小さいようです」と
言われたときには基準値内での小ささなのか、
そうでないのかを確認する必要があります。
状況に応じては新生児集中治療室(NICU)を併用する
高次治療施設での妊娠管理が必要になります。
//子宮NK細胞について//ー
子宮NK細胞と胎盤でサボテンのように伸びる
胎盤繊毛の内皮細胞である栄養膜細胞において
子宮NK細胞の受容体と栄養膜細胞のリガンドが
結合する事が胎盤形成を制御する上で重要である
と考えられています(1)。
従って、
子宮NK細胞についての概要について調査する事は
少なくとも本記事において一定の意義を見出す
ことができます。
妊娠の間の母親のリンパ球のおおよそ70%は
子宮(特異的な表現型を持つ)NK細胞である
とされています。
ゆえに、子供の栄養の供給元である血中に存在する
リンパ球のうち7割がNK細胞ですから
このNK細胞の生理機序を理解する事は極めて重要です。
この子宮NK細胞は基底脱落膜,
Mesometrial lymphoid aggregate of pregnancy (MLAp)
これら胎盤に供給する血管に存在します。
この子宮NK細胞の数は妊娠初期にピークを迎え
出産で減少します。
従って、Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らが
マウスのケースにおいて示した
子宮NK細胞と栄養膜の特定の(白血球、遺伝子)型のペアが
統計的にみて有意に高い確率で胎児発育不全が生じた事実は
妊娠初期から胎盤の不良が原因であるとされていた
従来の認識を裏付けるものかもしれません。
なぜなら、NK細胞は妊娠初期でピークになるからです。
よりNK細胞の影響を色濃く受けることになります。
--
子宮NK細胞は通常のNK細胞のようにパーフォリンなど
による細胞傷害性を有していません(29)。
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らの
報告のように母体血管から胎児へとつながる
胎盤繊毛内へ血液を供給するために連結させる
螺旋動脈があります。
NK細胞はこの螺旋動脈をリモデリング、成長させる
上で重要な役割を果たします。
後にも記述しますが、
この螺旋動脈が細くて狭いと
栄養供給の容量が制限されるために
胎児の発育不全につながると考えられます。
胎盤繊毛には栄養膜が発達しますが、
この栄養膜の量と螺旋動脈の「長さ、太さ」の
バランスが適性に保たれると
妊娠初期での胎児の成長が順調に行くケースが
少なくとも多いと考えられるのではないか?
現時点で明確なエビデンスが十分にないですが、
総合的にそのように仮に理解しています。
このようなNK細胞による胎盤内での
胎盤繊毛と母体血管をつなぐ螺旋動脈の形成は
流産や子癇前兆にも関わると考えられます(30)。
//従来の知見//ー
遺伝子的な研究では
KIR-Aハロタイプの2コピー(KIR抑制遺伝子)を持つ妊娠女性は
この胎児成長不全、子癇前兆、反復流産のような
妊娠の合併症のリスクが高く
特に胎児が2 HLA-C アレル(白血球型)を
父親から遺伝した場合、
そのリスクは2.02(オッズ比)となります(31-33)。
一方で
母親がKIR Bハロタイプを持つ場合には
妊娠に関わる病気のリスクが低い事が示されています(31-33)。
しかしながら、
今示したKIRとHLA遺伝子は程度が高く多型で
それを仕分けて、指定するのは複雑です(34-36)。
例えば、
Group 1 HLA-C alleles include HLA-C*01, C*03, C*07, C*08,
among others,
Group 2 HLA-C alleles include HLA-C*02, C*04, C*05, C*06,
C*0707/9, C*1204/5, C*15, C*1602, C*17 and C*18 3
//概略 Ref.(1)//ーー
(母親)
抑制型KIR2DL1受容体(KIR A ハロタイプ遺伝子)
(父親)
HLA-C*0501—an HLA-C group 2 アロタイプ
これらは
母親から主要に供給される上述した遺伝子を持つ
子宮NK細胞と、父親の白血球血液型を反映した
胎児栄養膜細胞との受容体-リガンドの結合性の中で
統計的にみて「マウスのケース」で
胎児発育不全の割合が有意に上昇しています。
(参考文献(1) Fig.3bより)
//内容の概略(1)//ーー
子宮NK細胞は細胞傷害性を持たないなど
特徴的な機能を持っていますが、
それらは大きく分けて2つのサブタイプに分けられています。
trNK(CD49a+)、cNK(DX5+)
これらです。
これらにさらに亜型が存在し
ミックスタイプと分けると6種類確認されています。
しかし、
これらのGenotype(遺伝子的な特徴)は
胎児発育不全が生じている群と
そうではない群で大きく変わらないとされています。
少なくとも子宮NK細胞においては
上述したように抑制型KIR2DL1受容体が
発現されている。
そしてそれが、HLA-Cと交配されたときに
NK細胞と栄養膜細胞の受容体-リガンド結合を通して
胎児発育不全のリスクが高くなることが示されています。
--
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らは
NK細胞やその他の免疫細胞、繊維芽細胞、栄養膜細胞
これらのネットワークの中で
リンパ球の大部分を占めるNK細胞自身や
その他免疫系とのネットワークにおいて
様々な遺伝子が関わっている事を明らかにしています(1)。
(個別の遺伝子とその機能の詳細については割愛します。)
これらは
〇血管生成
〇NK細胞の吸着
〇胎児の成長
〇反復流産
〇酸化還元恒常性
〇JAK/STAT信号
〇Wnt信号
〇細胞の成長の制御(栄養膜細胞など)
〇リンパ球の引き寄せ(特に妊娠初期は主にNK細胞)
〇アポトーシス
〇NF-κB信号
〇細胞外マトリックスの減少
〇組織のリモデリング(胎盤繊毛など)
〇酸化ストレスからの防御
これらの機能に関わっているとされています(1)。
これらが発育不全が生じている場合に
機能として複雑に改変されている可能性が考えられます。
//考察1//ー
胎児には子宮内に血液を通じて
母親から子供に栄養を随時供給する必要があります。
胎児の発育不全が起きるという事は
1つの大きな原因として
この血液の供給がうまくいっていない
ことが考えられます。
子宮を含む母親のNK細胞と胎児の栄養膜の
相互作用はこの血液の供給に影響を与える事が
以前から知られています(3)。
Peter ParhamがFigure.1で示しているように(3)
NK細胞と栄養膜の結合によって栄養膜組織が形成され
母親から胎児への血液ルートが十分開放されます。
従って、
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らが
示した胎児発育不全とNK細胞と栄養膜の関係については
臍帯血を通じた栄養供給の観点で考えると
論理的根拠があります。
//考察2//ー
参考文献(1)Fig.4 血管が細い
血管が細いことは
脱落膜のNK細胞に誘発された
平滑筋と内皮細胞のアポトーシス機序の
変化が関係しているかもしれません(4)。
Peter Parhamが示しているように
子宮筋層のらせん状の動脈は
栄養膜が十分に形成されることによって
短くなり、その分、太くなることが考えられます
(参考文献(3) Figure.1)。
脱落膜に分布する
結合状態にあって、組織形成の準備ができている
NK細胞と栄養膜の数、分布が一つ影響を
与えているかもしれません。
もしくは因果関係が逆で
らせん動脈が細く、長く成長するから
栄養内膜組織が成長する機会が奪われる
という事も考えられます。
その因果関係を明らかにするには
栄養膜組織とらせん動脈のどちらが先に
成長するか?ということが重要になります。
//考察3//ー
HLAに付随してNK細胞において
非常に多岐にわたる遺伝子が関わっている可能性があります。
従って、特定の遺伝子を標的にすることは
非常に難しい事が推測されます。
今は、マウスの段階で、治療までの道のりは
長く険しいと考えられますが、
NK細胞の補充が挙げられます。
KIR×C*05は一番リスクが高いですが、
WT×C*05は一番リスクが低くなっています。
従って、母親側の子宮特異的な表現型を持つNK細胞を
WTに変えて、胎児の境界に届けることは
治療の選択肢になるかもしれません。
ただし、非常に重要な発達期において
異なる遺伝子を持つNK細胞を作用させる事の
リスクは当然伴う可能性があります。
また特に骨髄系など他の免疫細胞の作用もあるので
NK細胞だけで十分かという議論もあります。
//意見(Opinion)//ー
もし、途中で胎内の分析ができるということであれば、
今回示された成長不全リスクの高い条件で
成長に問題がなかったマウスと
発育不全が生じたマウスの
子宮NK細胞の表現型の違いや
螺旋動脈や栄養膜組織の形成などの
組織学的な違いを分析する事で
そこから重要な科学的事実が得られるかもしれません。
//治療の提案//ー
現状、人への治療を考えたときには
基礎医学を元にした薬物を含む生物学的な治療の
道のりは非常に長いものになることが考えられます。
どのように人のモデルで確かめるか?
といったところにもハードルがあるからです。
できるだけ早く、安全な様式で
1人でも多くのお子さんを健康にしたい
という社会的な需要は当然あります。
例えば、
上述したように安静にするといった基本的な事がありますが
子供の成長を「少しでも」助けるように
管理栄養士がついて食事のメニューを考える
といったことは選択肢としてあるかもしれません。
不足しがちなビタミンD、葉酸、脂肪酸や
成長に重要だと考えられている鉄の適正な摂取を
成長不全が起きている場合には特に気を付けることで
仮に組織学的には不利な条件でも
お子さんの成長に貢献できる可能性があります。
このように今まで常識的に気を付けられてきた
妊娠時期のマネイジメントをより高度にすることで
症状の緩和が実現される可能性もあります。
//細胞外小胞を使った治療//ー
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らは
NK細胞やその他の免疫細胞、繊維芽細胞、栄養膜細胞
これらのネットワークの中で
リンパ球の大部分を占めるNK細胞自身や
その他免疫系とのネットワークの中で
様々な遺伝子が関わっている事を明らかにしています(1)。
従って、特定の遺伝子が
多くのケースで排他的に関わっている可能性は
低いと考えられます。
父親と母親の遺伝子や白血球型を変えるのは
困難であるとすれば、その運命を受け入れる中で
確率的に成長不全という問題が生じた時に
どのように対処するか考える必要性が出てきます。
遺伝子を書き換えるという事も考えられますが、
それよりも遺伝子の「スイッチ」を
その発現経路の中で(時には程度を持たせて)
変える事が現実的である可能性があります。
その点においてmRNAに作用する
miRNAを使った治療は有望であると見ています。
上述したように複雑に遺伝子が関わっていますから
miRNAも複雑に変わっている可能性があります。
もちろんmiRNAで全ての遺伝子を正せるわけではないですが、
「同時に」「多面的に」「程度を持たせて」
改変するには直接的に遺伝子を書き換えるよりも
適している可能性を想定しています。
そのためには「"mi" in omics」と呼ばれる
miRNAのオミックス解析を行う事が大切です(40)。
それを妊娠女性の人のケースで血液採取で
行うことができるか?ということです。
もし、在胎期間を揃えた状態で
胎児体重と胎盤関連のmiRNAの関係が明らかになって、
下位5%以下の成長不全のお子さんに
特徴的なmiRNAの異常がわかれば、
それを「多面的に」正すことを検討することができます。
-
このmiRNAを使ったものは
精密医療(precision medicine)と言われますが、
そのmiRNAを子宮、胎盤に特異的に輸送することができれば、
さらにその「精密性」は向上します。
それを実現するのが
「細胞外小胞(Extracellular vesicles)」です。
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)らは
参考文献(1) Fig.7d, 7eに
細胞腫ごとのネットワークを示しています。
このような細胞腫ごとのネットワークは
リガンドベースで見積もられていますが、
おそらく細胞間のコミュニケーションに関わる
細胞外小胞も連携性に強く関与していると考えられます。
その細胞外小胞は様々な物質を輸送しますが
遺伝子発現に関わるmiRNAも輸送している
可能性は高いと考えられます。
身体が備える自然の機序としてmiRNAを
細胞外小胞が輸送する仕組みがありますから、
それを巧みに利用して治療につなげようと試みます。
そのときに例えば、
子宮NK細胞では特徴的なリガンド
trNK(CD49a+)、cNK(DX5+)。
これらなどがあります。
特に初期において重要である子宮NK細胞特異的な
様々な受容体、リガンドを見つけることで
それに結合するリガンドを
細胞外小胞に豊富に装飾します。
その時に特異的なリガンド、装飾因子を
ゼロベースで見つけることが難しければ、
近い環境にある細胞種を集めて
その表面リガンドや
そこから放出される細胞外小胞の利用可能性
について検討することもできます。
そのようなメソッドも考えられます。
このような可能性があることや
miRNAは低分子量であり輸送負荷が小さいことから
miRNAが遺伝子の適正な調整において
どれくらい有効であるか?
また直面している課題は何なのか?
潜在的にある制限要因は何なのか?
そういったことを確かめていく事は
今後、非常に重要になると見ています。
細胞外小胞を使った治療は
複数のmiRNAを封入したら
「同時に」輸送する事が可能です。
もし、その小胞の輸送向性が非常に高ければ
同時に封入した場合の相乗効果を見込むことができます。
一方で
細胞外小胞もエクソソーム、アポトーシス小体
マイクロベシクルなど大きさ、機序の異なる小胞があり、
それらの分類が困難で
かつ表面状態もナノ粒子に比べると
非常に複雑なので、独自に持つ課題が多くあります。
しかし、
「複雑な生産に慣れている風土、実績」があれば、
そういった課題の一部は乗り越えられる可能性があります。
Chengyin Li, Rhea E. Sullivan, Dongxiao Zhu & Steven D. Hicks
(敬称略)が提唱しているmiRNAのマルチオミックスによって(40)
現状では有効な治療方法がない
この胎児発育不全を含めた
様々な疾患のmiRNA由来の原因の一部が明らかになれば、
法整備なども含めて課題が山積みである
細胞外小胞を使った医療工学技術の推進力が
私を含めた関わる人々の情熱によって
大きく変わってくると考えられます。
//iPS細胞の実績について//ー
胎盤の研究は難しいとされていますが、
ヒトナイーブ型のiPS細胞から初めて
栄養外胚葉の作製に成功し、
さらにその先の胎盤細胞へ続く細胞群への分化も確認されました(41)。
Gurman Kaur, Caroline B. M. Porter(敬称略)ら
が指摘するように(1)、
妊娠初期の研究は人のケースでは
なかなか進みにくいことが挙げられています。
今回の研究から明らかになったように
胎盤の細胞、組織は健やかな妊娠、出産を実現する上で
非常に重要なので、
その機序を研究するツールが一つ生まれるかもしれない
ことが示されたと考えられます。
また、細胞外小胞のリソースとして
iPS細胞から作った胎盤細胞群を使える
可能性もあります。
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Capturing human trophoblast development with naive pluripotent stem cells in vitro
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胎児性腫瘍、小児髄芽(細胞)腫とその治療
お子さんや最愛の人など
自分にとって大切な人が難しい病気に罹ったら
当人は当然、苦しみや不安などを含み
その後の人生はより難しくなります。
医師を含めた医療スタッフ、家族を含めて
周りの方の継続的な支援が必要になります。
しかし、支援が必要なのは当人だけではなく、
周りの家族も同様です。
特にメンタルケア、心の健康について
患者さん、家族も含めて総合的に考える必要があります。
そういったことはすでに指摘されており、
家族は「第二の患者」と呼ばれています(2)。
時には不安や抑うつなど精神的なストレスが認められる
場合があることが研究より明らかになっています。
その背景には
大きくは不確定な将来に対する
不安、恐怖、無力感が挙げられています。
良い薬ができるかどうかにおいては任せるしかありません。
そうした中で、できる事に制限がある
と感じてしまう事もあると推察します。
また、大切な人が難しい病気を抱える事で
生活スタイルが変わる事もあります。
しかし、そうした中においても
医療従事者の中は様々な職種あり、
自分が思っているよりも多くの対処法がある事に
気付くこともあると考えられます。
-
現在の医療では治すことが難しい病も多く存在します。
しかし、そういった疾患を一つでも減らすため
日々鋭意取り組んでいる方々は世界で多くいます。
それは研究者だけに限りません。
本記事がその取り組みの一助になれば幸いです。
特に小児医療は様々な難しさがあり、
大人の医療に比べて遅れていると言われます。
そうしたギャップを埋めるために読者の方々の気持ちを含めて情勢を
少し動かすことができるか?
ということがあります。
-
この記事の基軸として
Alan R. Cohen(敬称略)が総括した
子供の脳腫瘍の報告の一部を参照させていただきました(1)。
miRNA治療や細胞腫特異的輸送系統を含めた
独自の調査、考察をそれに追記しています。
//中枢神経系胎児性腫瘍(胚芽腫)(*1)の概要//ー
(*1)CNS Embryonal tumors
胎児性腫瘍は悪性の中枢神経系の腫瘍の
異種性がある群です。
主に年少の子供での発生頻度が高く
小児の脳腫瘍の約20%です(3)。
これらの腫瘍は小さく、円形で有り、
密度が高い青色細胞(blue cell)を持ちます。
この青色細胞は小さいので
わずかな細胞質しかもちません。
また分化の程度も異なります。
これは初期の神経上皮腫瘍(*2)として分類されます(4)。
(*2)primitive neuroepithelial tumors(PNETs)
後頭蓋窩に生じるのは髄芽(細胞)腫
Medulloblastomas
松果体部に生じるのは松果体芽細胞腫
Pineoblastomas
天幕より上部に生じるのは
小脳テント上の中枢神経系胎児性腫瘍
Supratentorial PNETs
これらのように分類されます(4,5)。
-
分子プロファイリングは
組織学的な特徴とドライバー変異の関係性を明かにし
それを基礎とした腫瘍の再分類化に貢献します(6)。
WHO CNS5によれば
小児性腫瘍の2つのタイプは
髄芽(細胞)腫とその他の中枢神経系胎児性腫瘍
というように分類されています。
//髄芽(細胞)腫の概要//ー
低グレードの神経膠腫は子供において
最も共通的な脳腫瘍であり、
髄芽(細胞)腫は子供の最も共通的な
悪性の脳腫瘍であるとされています(7)。
その腫瘍は通常は小脳に生じ、
その腫瘍の影響を受けたお子さんは
頭蓋内の圧力が高まるか
小脳の機能不全が生じます。
髄芽(細胞)腫は小児性腫瘍の60%以上であり、
その70%は10歳以下で罹患します。
女性よりも男性が多く
発症年齢や性差はこの腫瘍のサブタイプによって
傾向が異なります(8,9)。
また、発症事例の33%は3歳以下です(10)。
-
髄芽(細胞)腫を持つ子供に対する
低い臨床効果に関係する要因は
〇腫瘍が大きい
〇播種、散在性が高い
〇年齢が若い(3歳以下)
〇術後の残存腫瘍が1.5cm^2(画像診断)以上
これらが挙げられています(7)。
従来の形態的な分類は
①Classic medulloblastoma
②Large-cell anaplastic medulloblastoma(大細胞、未分化)
③Desmoplastic–nodular medulloblastoma(癒着、結節性)
④Medulloblastoma with extensive nodularity(広範な結節)
これら4分類です(11)。
③、④の組織学的な特徴があるタイプは
最初の①、②の分類よりも予後は良いとされています(10)。
-
WHOのCNS5のシステムは
髄芽(細胞)腫の2つのタイプを認識しています。
分子的に定義されたものと
組織学的に定義されたものです。
分子的に定義された髄芽(細胞)腫は
4つのサブタイプがあり
それぞれ特徴的なメチル基(methylomic)
転写因子(Transcriptomic)
それに伴う臨床的な反応があります
(詳細は後述)。
遺伝子的な分析によりサブタイプを
さらに詳細に分類する事が出来るため、
それに合わせた分子標的型を含めた
新しい治療戦略が提案されています(12)。
//分子的に定義された髄芽(細胞)腫の分類//ー
(参考文献1) Table.4参照
-----
①WNT活性髄芽(細胞)腫
頻度:10%
年齢:年長の子供、青年
男女比:1:1
場所:正中線、小脳脚、脳幹
転移の確率:10%
組織学的特徴:従来型、大型細胞-未分化は希少
-
遺伝子変異
CTNNB1 (β-catenin), DDX3X, SMARCA4, TP53, APC
ゲノム増幅:なし
⇒
β-cateninが蓄積するCTNNB1変異は
全体のおおよそ90%を占めます。
この変異は腫瘍形成に関わります(13,14)。
β-cateninが蓄積すると
脳血管が有窓(fenestrated)になり(穴が形成し)
血液脳関門の機能不全につながります。
一方で、血液脳関門がリーキーになることで
化学療法のアクセス性が向上するかもしれない
といわれています(1)。
このように脳血管に穴が生じることが
一部の患者さんで脳出血がみられることと
関係があるとされています(16,17)。
-
予後:かなり良い(5年全生存95%)(15)
WNT腫瘍は生存率が高いので
放射線治療と化学療法の負担を下げるための
治療戦略が現在調べられています(13,18)。
癌抑制遺伝子であるTP53変異は
臨床的症状に影響を与えないとされています(13,19)。
-----
②SHH活性髄芽(細胞)腫、
TP53ワイルドタイプもしくは変異型
頻度:30%
年齢:幼児、子供、大人(範囲は広い)
男女比:1:1
場所:外側小脳
小脳の外部顆粒細胞層の前駆物質から
生じると考えられています。
①のWNT活性の髄芽(細胞)腫とは対照的に
生物学的(遺伝子的)、臨床的に
比較的、異種性は高いとされています。
転移の確率:15-20%
組織学的特徴
〇癒着、結節性
〇拡張型結節
〇従来(非共通的)
〇大型細胞-未分化は稀
-
遺伝子変異
TP53, PTCH1, SUFU, TERT
ゲノム増幅
GLI1/2, MYCN, OTX2
⇒
生物学的には共通的に
SHH–PTCH–SMO–GLI信号経路の
生殖細胞、体細胞系列の異常によって
生じるとされています。
PTCH1:deletions or loss-of-function変異
これが43%。
SMO:Proto-oncogeneのactivating変異
これが9%
GLI1, GLI2:oncogeneのamplifications
これが9%。
これらであるとされています(13,15,16)。
SHH活性髄芽(細胞)腫は
癌抑制遺伝子であるTP53の有無によって
分類されます。
これに変異があると下述するように
予後はかなり不良になります。
TERTpromoter変異はテロメアの構造的な
修復不良に影響を与えます。
これはSHH活性髄芽(細胞)腫の40%に当たりますが、
ほとんどのケースが大人であるとされています(14)。
-
予後
〇MYCN増幅:不良
〇TP53変異:かなり不良
〇OTX2増幅:中程度
-
治療
共通的な生理経路の一つであるSMOを抑制する
〇vismodegib
〇sonidegib
これらが難治性、再発性
SHH活性髄芽(細胞)腫に対する
分子標的薬の臨床研究が行われています(15,16,20-23)。
sonidegibの効果はvismodegibよりも
3.67倍高いという報告があります(25)。
-----
③Non-WNT、Non-SHH髄芽(細胞)腫
頻度:60%
年齢:幼児、子供
男女比:2:1. 3:1(男性多い)
場所:正中線
転移の確率:35-45%
組織学的特徴
〇従来(22)
〇大型細胞-未分化は稀(22)
-
遺伝子変異
KBTBD4, SMARCA4
ゲノム増幅
MYC, MYCN, OTX2, CDK6
但し
ドライバー変異は未確認です(8)。
⇒
一方でClaudio Ballabio(敬称略)らの
人の小脳のオルガノイドの研究によれば
Otx2とc-MYCがNon-WNT(Group3)の
新たなドライバー遺伝子であるとされています。
これは通常上述したSMARCA4によって
その働きが抑えられています(27)。
従って、SMARCA4が変異する事によって
癌ドライバー遺伝子の作用が強まると考えることができます。
(Non-WNT:Group 3)
細胞遺伝子の異常は共通的で
染色体のアームが互いの鏡像である、
アンバランスな構造異常である
同腕染色体17qはおおよそ半分の頻度です(13,14,20)。
MYCのamplificationは17%。
GFI1B oncogeneのhyper activation15-20%。
これらです(29)。
(Non-SHH:Group 4)
MYCN癌遺伝子のamplificationsは6%。
CDK6のamplificationsは5-10%。
これらです(20,24)24。
-
予後
一般的に不良で5年全生存率は50%です(15)。
〇幼児(年少):不良
〇転移性:不良
〇MYC増幅:不良
〇他の組織学的特徴:中程度
-
<治療>
外科的な切除の後
自家移植の幹細胞移植を含む
高用量の化学療法を含みます。
3歳以下の場合は放射線治療が適用ではないため
それを遅らせる事と、
骨髄除去を避ける必要があります(22)。
-
<治療2>
肺癌のケースですが
SMARCA4が欠損したがん細胞ではDNA複製のときのストレスが強く、
ストレスに対処する役割を持つATRタンパク質を阻害すると
癌細胞死が起きるとされています(28)。
従って、ATR阻害薬が効果があるかどうか?
今後、検討、議論の価値があります。
ATR阻害薬はSMARCA4が欠損したがん細胞で
ワイルドタイプよりも感受性が高いことが示されています(28)。
従って、特異性を持たせる事ができる可能性がありますが
より少ない量でお子さんに対する副作用が少ない形で
治療するためには効果の可能性がある薬において
髄芽(細胞)腫である神経幹細胞、前駆細胞に
より有効に輸送する必要があります。
そうした場合、下述する細胞外小胞やナノ粒子を使って
細胞腫特異的に輸送する事を考える必要があります。
-----
④その他
・Atypical teratoid-rhabdoid tumors;非定型奇形腫様腫瘍
・Embryonal tumors with multilayered rosettes
・CNS neuroblastomas 中枢神経系神経芽細胞腫
・CNS tumors with BCOR internal tandem duplication.
//神経発達におけるmiRNAsの役割//ー
特に3歳以下のお子さんにおいては
放射線治療が適用外であることや
一般的に予後が不良であるケースが多いことから
その治療についての改善余地は大きいと考えられます。
特に化学療法における役割が大きくなります。
miRNAsをベースとした癌治療は
すでに有望な一つとして挙げられています(44)。
その中で、基礎として特に脳神経発達期の小児に対する
脳腫瘍の治療を考える上で
miRNAsによる神経発達を考える事が重要です。
-
miRNAsは環境需要、損傷、ストレス
それに付随した精神疾患に反応します。
それらを含めて中枢神経系の発達に関連します。
miRNAsは遺伝子発現を多元的に制御する機能があるからです。
これらは神経連結性、活性に関わる
シナプス活性において重要な役割を果たします。
特に発達期においては
多くの事を周辺の人や環境から学びます。
それらの学び、記憶は
このようなシナプス活性に関わり(45)、
その元としてmiRNAsが関与していると考えられます。
神経軸の異なる場所ごと
特異的なmiRNAsが存在し、発現しています。
従って、子供の脳内のmiRNAsマップを作成する事が
できる可能性があります。
それによって例えば、脳幹の特定の部位の異常がある場合において
その特異的なmiRNAsを同定し、
そこに異常があれば、それを正常化させることで
特に発達期における様々な病気の進行を抑える事ができる
可能性があります。
例えば、髄芽(細胞)腫で問題となる
未成熟の神経幹細胞や神経前駆細胞から
成熟化する過程においてはmiR-9, miR-124が
関わっているとされています(29)。
従って、これらのmiRNAsは
発達期のおける子供や脳腫瘍を抱えるお子さんにおいて
重要な型である可能性があります。
miR-9は神経軸に関わり(46)、
miR-124は神経細胞特異的なスプライシングパターン抑制
に関わる(47)とされています。
//髄芽(細胞)腫におけるmiRNAsの臨床応用//ー
miRNAsによる治療は筆者が実現を目指す
細胞種特異的輸送系統との親和性が高いため、
これによる治療機会を探っていきたいと考えています。
特に悪性度の高い上述した②、③のタイプの
髄芽(細胞)腫に対しての具体的なmiRNAsの標的については
下に詳しく掲載いたします。
-
髄芽(細胞)腫におけるmiRNAsの分析は
組織、脳脊髄液、血液から行うことができます(39,40)。
しかしながら、
サンプル(原発の細胞、細胞株、患者さん)ごとに
miRNAsの発現は顕著な変化があるため、
問題のあるmiRNAsを特定し、
それによってお子さんの髄芽(細胞)腫の診断、治療に
役立てる事は難しいとされています(29)。
しかしながら、近年
髄芽(細胞)腫のサンプルの分析の向上させる
新しい技術が登場しました(ref.(29)どんな技術?)。
例えば
①BioVLAB-MMIA-NGS
②CAP-miRSeq
③CPSS
④DARIO
⑤deepSOM
⑥eRNA
⑦HHMMIR
⑧HuntMi
⑨iMir
⑩LeARN/smallA
⑪MAGI
、、、
これらなど多数です(41)。
miRNAsを使った小児脳腫瘍(髄芽(細胞)腫)における
治療は有望ですが、その輸送において
血液脳関門をどのように超えるかが
1つの問題点となっています。
しかし、下述する細胞外小胞は輸送キャリアとして
利用できる可能性がありますが、
血液脳関門を超えることが知られています。
それはトランスサイトーシスによります。
例えば、
Wheatgerm agglutinin(WGA)が
その輸送に影響を与えるとされています(43)。
細胞外小胞の条件によってトランスサイトーシスの
効率は変わるので(43)、
適切な輸送キャリアの選択が重要になります。
//細胞種特異的輸送系統(*)//ー
(*)Cell-type-specific delivery system
より予後が不良である小児脳腫瘍の治療において
細胞種特異的輸送系統が手を差し伸べる必要があります。
上述したように②、③のタイプの予後が悪い
髄芽(細胞)腫においての治療機会を探ります。
-----
<miRNAに着目した治療>
②のSHH活性髄芽(細胞)腫では
Sony Hedgehog pathwayのmiRNAsの制御が
乱れているといわれています。
(SMO)では
miR-324-5p低下
miR-326低下
miR-125b低下
(SUFU-Gli)
miR-214上昇
(Gli)
miR-324-5p低下
(MYC)
miR-17/92上昇
これらが挙げられています(26)。
-
③Non-WNT(Group 3)においては
miR-183-96-182 clusterが上昇。
⇒DNA損傷修復の不全、マイグレーション(移動)
上皮間葉転換、転位に関わっています(30)。
miR-30aファミリー不足(31)
⇒オートファジーを抑制するmiRNAです。
抑制する事によって髄芽(細胞)腫を抑制する
ことが期待できます(29)。
miR-1253発現の回復
⇒アポトーシス経路を活性化させ
癌細胞の悪性度を下げる事ができます(29)。
miR-4521の低レベル発現
(これはGroup 3特異的です。)
⇒FOXM1を亢進。FOXM1は癌の進行に関わります(32)。
let-7 miRNAの低下(37)。
-
③Non-SHH(Group 4)
miR-181a-2-3pの低レベル発現(不足)
⇒不足する事でグリオーマにおける抑制因子となります(33,34)。
miR-187-3pの上昇
⇒予後不良と関係があります(35)。
miR-206の低レベル発現(不足)
⇒不足する事で癌遺伝子OTX2の上昇に関わり癌細胞の成長を促進します(36)。
let-7 miRNAの低下(37)。
miRNA-4521の不足。
⇒chromosome 17p13.1上に配置。
発がん性転写因子FOXM1を抑える効果があり、
miRNA-4521は異常なFOXM1発現を抑える効果がある
ことが示唆されています(38)。
FOXM1の発現レベルは個人差がありますが、
高レベルのグループは予後が悪いことが示されています。
(参考文献(38)Fig.2A 2F参照)
chromosome 17pの欠損はGroup 3, Group4と関連があります
-
これらmiRNAsの輸送はエクソソームを含む
細胞外小胞が適しています。
すでに癌治療におけるmiRNAベース治療における
miRNAsの輸送において幅広く考えられており、
その中にエクソソームを含む
細胞外小胞が挙げられています(42)。
その中で、
不足しているものはそのまま搭載する事が可能です。
一方で、上昇しているものは
miRNA inhibitorによって
特異的に結合し、その活性を抑制する事ができます。
もし、細胞外小胞で不足と過剰を
複数のmiRNA, miRNA inhibitorで
細胞外小胞などの輸送キャリアによって
「同時に」かつ
「多面的に」
制御することができたら、
遺伝子の発現のコントロール異常を正すことができ
子供の髄芽腫の治療の発展に大きく貢献する
可能性があります。
-----
<iPS細胞技術による細胞腫特異的な標的性について>
髄芽腫は神経幹細胞や神経前駆細胞です。
小脳を含む脳幹の神経幹細胞や前駆細胞を
iPS細胞技術などを用いて分化、増殖させ
表面リガンドの特徴を詳細に分析する事によって
治療の難しい難治性の脳腫瘍を抱える
お子さんの脳幹の神経幹細胞、前駆細胞に
上述した不足のmiRNAを内包した細胞外小胞を
有効に輸送する事を考えます。
ここで考える必要があるのが
iPS細胞技術によって
リプログラミングした神経幹細胞や前駆細胞の
表面リガンドが実態と整合するか?
という点です。
もし、この整合性がある程度あれば、
iPS細胞技術の創薬としての可能性は
さらに大きくなると考えられます。
もう1つ考えないといけないのが
標的となる表面リガンドが見つかったら
それに特異的かつ強く結合する表面リガンドを探し、
その遺伝子を同定する必要があります。
それは細胞外小胞などの輸送キャリアの
膜表面に人為的に装飾させます。
それは環境的側面から探せる可能性があるかもしれません。
つまり、神経幹細胞や前駆細胞に
お子さんの頭蓋内で作用する細胞、小胞などを特定し
それらもiPS細胞で生み出すことによって
両者の結合状態を培養環境内で分析する事によって
鍵と鍵穴の両者を導き出すという手法です。
あるいは、脳の脊髄液などから取り出した
タンパク質を作用させて、結合状態を調べる事で
そのたんぱく質の構造を分析することもできます。
そうしたスクリーニング手法です。
このようにして
難しい病を抱える子供の小脳の髄芽腫に
足りないmiRNAを搭載し、
(過剰なmiRNAを抑える薬を搭載し)
そこに特異的に輸送されるように設計された
細胞外小胞を輸送します。
またiPS細胞技術の高純度での分化、培養によって
細胞外小胞においてどの細胞から放出されたものを
選ぶかを任意に決めることができます。
より近い環境内にあり、相互作用が高い細胞の
細胞外小胞を選べば、輸送効率が
自然と高まる可能性もあります。
このようなiPS細胞を使った
表面リガンドや結合状態の生体外での再現は
小児脳腫瘍だけではなく、
細胞種特異的輸送系統の標的化において
広範に利用できるメソッド、プロトコルです。
しかし、前提として
リプログラミングした際に
細胞表面に出るリガンド、受容体が
どれくらい実態と合うか?というのがあります。
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今日は七夕です。
大人になると特別な日ではなくなりますが、
お子さん、学生さんにとっては願いを込める特別な日です。
新型コロナウィルスも
オミクロン株がBA.5に進化して
感染力がさらに高まっています(2,3)。
現在の所、BA.5と下気道の肺への感染性を高める
TMPRSS2との親和性が高まって
呼吸器への重症化のリスクが高まっているか?
これに対する報告は
私の調べる限りは出ていませんが、
今、調べられてるところだと思います。
世界情勢の極化、気候変動のリスク、
燃料費、食材の高騰、
新型コロナウィルスを含む感染症のリスク、、、
自分の悩みを脇においても
社会的な不安要素は枚挙にいとまがありません。
そういう中においても
七夕の日には希望的な言葉が空に託されます。
最終的に不安要素をどう捉えるかは
内的に変える事もできます。
それは海外では「マインドセット」と呼ばれます。
自分の成長、ストレスの良い作用に
着目する考え方、マインドセットは
学生さんを含めた若い人のストレスを
遠ざけるという報告もあります(4)。
例えば、
燃料費、食材の高騰も
豊かな国にとっては特に「やるべきこと」
「世界を変える事」の指針になるかもしれません。
それは「余暇」「退屈」を遠ざける
大切な課題というマインドセットになりうることです。
他の課題でも同様に当てはまります。
-
上述した世界的な課題に加えて、
自分自身、何らかの難しい病を抱えていれば、
それに対する「不安」は当然伴います。
そういった不安は
「それが忘れられた」時に遠ざけられると言われます。
言い換えれば、
その不安に執着することなく、
何か他の対象に「没頭する」事です。
入院して生活に制限が出る場合においても
その病室内で何か没頭することができれば、
そうした不安は
「少なくとも没頭している時間は」
忘れることができます。
そうした没頭は必ずしも
「好きな事」である必要はありません。
例えば、
自分の呼吸に「没頭」します。
いわゆる「瞑想」「マインドフルネス」です。
鼻から息を吸って、ゆっくり吐きます。
これを意識的に行います。
そうすると不安は遠ざかるばかりか、
脳幹の構造も変わると報告されてます(5)。
その中でストレスで萎縮しやすい海馬の回復もある
と考えられています。
-
現状ではお子さんの脳腫瘍において
マインドフルネスによる脳の変化が
治療におけるアドジュバント(補助的療法)として
どのように影響があるかはわかりませんが、
少なくとも(ある程度年長の)患児自身が
瞑想による呼吸の没頭、
深呼吸における脳への十分な酸素の供給によって
「気持ちがよい」「不安が和らぐ」
このようであれば、
心理的な事が作用して治療効果を高める可能性はあります。
-
若い頃から病気を抱えるということは
その後の人生を考えるととても大変なことです。
健康な人も、障がいを抱えている人も
同様に「毎日」があるからです。
「医療は必ず発展する」という希望、
「日々自分自身できる事がある」という具体性、
それらが明らかになれば、
患者さんの心の負担も少しは軽くなると思います。
今日の記事は、
世界の方への日々の感謝、
それに対する返報として若い人へ還元する
という想いを込めて、
自分の限りある知的資源を
大切な報告(1)を参照し、提供したいと思います。
//上衣腫瘍(*1)//ー
(*1)Ependymal Tumors
上衣細胞腫は子供の脳腫瘍の3番目に共通的なものです。
子供の中枢神経系の腫瘍の5-10%に当たり、
90%は頭蓋内に生じます。
最も生じやすい脳の部位は
〇後方窩(posterior fossa)
〇脊椎
これらです(6,7)。
上衣腫瘍は異種性に富み
〇組織学的特徴
〇分子学的特徴
〇発生部位
これらにおいて
少なくとも9種類の分子サブタイプがある
といわれています(8,9)。
従来のWHOの組織学的な分類では
予後をクリアに予測することは難しく
改変されてきました。
上衣腫瘍は
グレード1, 2, 3
これらの分類されます。
グレードは退形成の程度によります。
退形成とは胎生期の状態に戻ったような変化を示した状態で
これが強いほど胎生期状態を反映し、
未熟で悪性度が高いと考えられます。
まれな上衣下腫はグレード1です。
粘液乳頭状上衣腫は今、グレード2とされています。
再発の可能性は脊柱の上衣腫と
近いとされています(8)。
-
グレード2,3の上衣腫は
小脳テント上、もしくはテント下の場所に生じます。
-----
Alan R. CohenがTable.3に示しているように
小脳テント上の上衣腫は
①ZFTA Fusion–Positive YAP1関与
②YAP1 Fusion–Positive
これらがあります。
-
①の頻度は70%で年齢中央値が8歳です。
女性に多く、大脳半球に生じやすいです。
分子的な改変では
ZFTA Fusionで染色体粉砕であります。
予後は一般的に不良であるとされています。
-
②の頻度は30%で年齢中央値は1歳です。
男性に多く、大脳半球に生じやすいです。
分子的な改変では
YAP1–MAMLD1 Fusionであります。
予後は一般的に良好であるとされています。
-
脳幹を含む小脳テント下の上衣腫は
③Posterior Fossa A(後方窩 A)
④Posterior Fossa B(後方窩 B)
これらに分類されます。
-
③の頻度は90%で年齢中央値は3歳です。
女性に多く、側部に生じやすいとされています。
分子的改変では
H3K27 trimethylationは低く、
予後は一般的に不良であるとされています。
-
④の頻度は90%で年齢中央値は20歳です。
女性に多く、脳幹を含む正中線に生じやすい
とされています。
H3K27 trimethylationは高く、
予後は一般的に良好であるとされています。
-----
転移性のない上衣腫を持つお子さんに対しては
最大限、安全な外科的な切除を行い、
その後、放射線治療が行われます。
しかし、幼児は対象外となります(6,13)
化学療法の役割は現在調べられているところです。
外科手術や放射線療法の発展に関わらず
子供の上衣腫の長期的な治療効果は
以前として低いままです。
10年全生存率は50%、
10年無進行生存は30%です(6)。
//上衣腫の概略(10)//ー
上皮細胞は脳の野を区分する脳室系の壁を
構成する上皮細胞の一種です。
その上皮細胞が腫瘍化したものと考えられています。
大脳半球、および小脳、脳幹部、脊髄に
発生する腫瘍です。
脊髄を除くと
小脳や脳幹部付近の発生が60%、
大脳に30%、脊髄に10%程度発生します。
//上衣腫の症状(10)//ー
テント上の上衣腫の場合、
腫瘍のできた場所に応じた症状
(身体の運動麻痺やしびれなど)がみられることがあります。
腫瘍が大きい場合には脳脊髄液の循環に影響を与え
その液圧が局所的に高まり、
頭痛、嘔吐、意識障害がみられることがあります。
テント下で生じる事が多いとされています。
頭囲が大きくなる原因となることがあります。
てんかん発作の原因となる事もあります。
//上衣腫の検査と診断(10)//ー
CT検査やMRI検査といった画像検査を行い、
どのような腫瘍であるかを推測します。
一般的に画像診断だけで
上衣腫を含めた脳腫瘍の種類を断定する事は
難しいとされています。
手術により摘出した後
病理組織診断を行う必要があるとされています。
//上衣腫の治療(10)//ー
<外科療法>
肉眼的全摘出を得ることで生命予後を有意に改善される
ことが証明されています。
しかし、特に後頭蓋窩発生の上衣腫では、
発生母地や伸展部、脳実質への浸潤の程度によっては
全摘出が困難であることが少なくないと言われています。
全摘出できる割合は54%に留まり、
全摘出できない多くは周囲の脳組織に浸潤したり、
下位脳神経や主要血管を書き込んでいる場合であり
これらは若いお子さんに多いとされています
化学療法や放射線療法を含めて
再摘出も検討されます。
-
<放射線療法>
上述したように(1)
術後の放射線治療が予後の延長について有効であり、
局所照射が推奨されます。
54Gy~59.4Gy程度の線量が採用されています。
手術後の予防効果を期待する場合には50Gy、
治癒を目的とした治療では60~70Gyですから
その間の線量が選択されます。
その線量の最適値は議論の余地があるとされています。
しかし、放射線療法の適用年齢は3歳以上です。
3歳未満のお子さんの場合には
晩期障害を考慮して放射線開始を3歳まで待ち
それまでは化学療法で腫瘍組織量を制御することを
検証する臨床試験を行われています。
-
<化学療法>
〇シスプラチン
〇カルボプラチン
これらの単剤。
ともに白金製剤。
細胞増殖に必要なDNAに結合することで
DNA複製阻害やがん細胞の自滅を誘導し
抗腫瘍効果をあらわす薬。
〇ビンクリスチン
細胞の有糸分裂を阻害する。
〇エトポシド
DNAの複製阻害を引き起こす。
細胞周期をG2/M期で停止させる作用がある。
〇シクロホスファミド
DNA合成を阻害する。
これらの多剤併用療法が検討されています。
シスプラチンが加えられることもあります。
//考察//ー
現状では上衣腫の遺伝子的特徴を標的とした
分子標的薬剤による治療は実現していないと
考えられています(11)。
手術や放射線治療で完全な切除ができなかった場合には
50%以上の確率で再発するとも言われています(11)。
従って、より癌の特徴に則した
標的性の高い薬剤の開発が重要になります。
元々、上衣腫は動物モデルで再現することが
難しいとされていましたが、
Alan R. Cohen氏が示すように
組織学的、遺伝子的な特徴も明らかになってきています(1)。
従って、今後、分子標的薬剤が開発される可能性があります。
--
〇分子標的薬剤の開発
〇免疫的な治療の探索(12)
〇細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)による
病変部位への有効な薬剤輸送
〇従来の化学療法
これらの組み合わせの中で
より高い奏功を探る事ができる可能性があります。
こうした薬剤による治療効果の進展は
外科手術、放射線療法の効果を高めるものである
と考えられます。
--
上衣細胞は脳室の周りに形成され
その中は脳脊髄液に満たされているといわれます。
従って、直接脳脊髄液に投入する髄腔内投与によって
有効に上衣細胞に薬剤が輸送される可能性があります。
--
癌化した上衣細胞と通常の上衣細胞が
繊毛も含めてどのように細胞生物学的に異なるか?
それによって薬剤をどのように
効率的に輸送するかのヒントが得られる可能性があります。
(参考文献)
(1)
Alan R. Cohen, M.D.
Brain Tumors in Children
The New England Journal of Medicine 2022; 386:1922-1931
(2)
Houriiyah Tegally, Monika Moir, Josie Everatt, Marta Giovanetti, Cathrine Scheepers, Eduan Wilkinson, Kathleen Subramoney, Zinhle Makatini, Sikhulile Moyo, Daniel G. Amoako, Cheryl Baxter, Christian L. Althaus, Ugochukwu J. Anyaneji, Dikeledi Kekana, Raquel Viana, Jennifer Giandhari, Richard J. Lessells, Tongai Maponga, Dorcas Maruapula, Wonderful Choga, Mogomotsi Matshaba, Mpaphi B. Mbulawa, Nokukhanya Msomi, NGS-SA consortium, Yeshnee Naidoo, Sureshnee Pillay, Tomasz Janusz Sanko, James E. San, Lesley Scott, Lavanya Singh, Nonkululeko A. Magini, Pamela Smith-Lawrence, Wendy Stevens, Graeme Dor, Derek Tshiabuila, Nicole Wolter, Wolfgang Preiser, Florette K. Treurnicht, Marietjie Venter, Georginah Chiloane, Caitlyn McIntyre, Aine O’Toole, Christopher Ruis, Thomas P. Peacock, Cornelius Roemer, Sergei L. Kosakovsky Pond, Carolyn Williamson, Oliver G. Pybus, Jinal N. Bhiman, Allison Glass, Darren P. Martin, Ben Jackson, Andrew Rambaut, Oluwakemi Laguda-Akingba, Simani Gaseitsiwe, Anne von Gottberg & Tulio de Oliveira
Emergence of SARS-CoV-2 Omicron lineages BA.4 and BA.5 in South Africa
Nature Medicine (2022)
(3)
Qian Wang, Yicheng Guo, Sho Iketani, Manoj S. Nair, Zhiteng Li, Hiroshi Mohri, Maple Wang, Jian Yu, Anthony D. Bowen, Jennifer Y. Chang, Jayesh G. Shah, Nadia Nguyen, Zhiwei Chen, Kathrine Meyers, Michael T. Yin, Magdalena E. Sobieszczyk, Zizhang Sheng, Yaoxing Huang, Lihong Liu & David D. Ho
Antibody evasion by SARS-CoV-2 Omicron subvariants BA.2.12.1, BA.4, & BA.5
Nature (2022)
(4)
David S. Yeager, Christopher J. Bryan, James J. Gross, Jared S. Murray, Danielle Krettek Cobb, Pedro H. F. Santos, Hannah Gravelding, Meghann Johnson & Jeremy P. Jamieson
A synergistic mindsets intervention protects adolescents from stress
Nature (2022)
(5)
Omar Singleton, Britta K. Hölzel, Mark Vangel, Narayan Brach, James Carmody and imageSara W. Lazar
Change in brainstem gray matter concentration following a mindfulness-based intervention is correlated with improvement in psychological well-being
Frontiers in Humaan Neuroscience vol.8 article 33 (2014) February
(6)
Marinoff AE, Ma C, Guo D, et al. Re-
thinking childhood ependymoma: a retro-
spective, multi-center analysis reveals poor
long-term overall survival. J Neurooncol
2017; 135: 201-11.
(7)
Paulino AC, Wen BC, Buatti JM, et al.
Intracranial ependymomas: an analysis of
prognostic factors and patterns of failure.
Am J Clin Oncol 2002; 25: 117-22.
(8)
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(9)
Ellison DW, Aldape KD, Capper D,
et al. cIMPACT-NOW update 7: advancing
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tumors. Brain Pathol 2020; 30: 863-6.
(10)
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http://jpn-spn.umin.jp/sick/h6.html#:~:text
(11)
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(12)
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