//背景//ー
南アフリカでデルタ株からオミクロン株に入れ替わるという事は
進化における自然選択説から考えると、
オミクロン株の方が感染力が強いと考えられます。
実際に新型コロナウィルスが発生してから
主要な蔓延株(VOC)をトレースすると大きくは
①アルファ株⇒②デルタ株⇒③オミクロン株
このようになっています。
ー
今までアルファ株やデルタ株の専門家の注目は
ACE2エントリー受容体に結合する
新型コロナウィルスエンベロープ上にある
Sタンパク質の構造(変異)についてでした。
例えば、アルファ株であればD614G、
オミクロン株であれば
N501Y, D614G, K417N、T478K
これらが挙げられています。
これらによりACE2との結合親和性が高まったり、
あるいは細胞膜融合が効率的に行われたり、
もしくはワクチンの抗体に対して逃避効果が生まれます。
ー
しかしながらウィルスのサイクルを概観すると
ウィルスの増殖性や毒性は
細胞に侵入する以外にも、
細胞内でどのように働くかというのが関係します。
例えば、ウィルスが細胞内に侵入した時には
身体の自然な反応として、それを除外しようと
免疫機能が働きます。
その免疫機能がウィルスの働きによって弱められれば、
ウィルスの増殖性はSタンパク質のエントリー機能に関わらず
上昇する事になります。
ー
Lucy G. Thorne, Mehdi Bouhaddou, Ann-Kathrin Reuschl, Lorena Zuliani-Alvarez
(敬称略)ら医療研究グループは
細胞内の免疫機能に関わる新型コロナウィルスが持つたんぱく質と
その作用について調べています(1)。
初期に流行した株(Wave-one)と
感染力が強いアルファ株を比較して、
試験管内で細胞内の免疫機能は働きがどのように変わったか?
それに関わるウィルスが持つたんぱく質の種類と量はどうか?
これらの両方の分析を行っています。
本日は報告されている内容の一部を引用させていただき
読者の方と情報共有したいと考えています。
//結果//ー
(アルファ株によって弱まった細胞内免疫作用)
IFNa/β、サイトカイン、ケモカイン信号
※サイトカイン/ケモカイン
CXCL10, IL6、 CCL5など
※関連遺伝子
CXCL10, IFIT2, MX1, IFIT1, RSAD2
ー
(アルファ株で強化されている遺伝子、タンパク質)
←これらは上述した免疫機能を弱める事に関連します。
核酸:Subgenomic RNA
タンパク質:N, Orf9b(with TOM70), Orf6
ー
//考察//ー
インターフェロンは新型コロナウィルスの重症化に関わる
重要な免疫機能であることが示されています。
ウィルスに感染した時にいち早く抗ウィルス性の信号を
出すのがインターフェロンで、
このインターフェロンの反応が遅れることが
感染症の重症化に関わると指摘されています(2,3)。
従って、インターフェロンの反応が弱まることは、
アルファ株における重症化の
一つの制御因子になっている可能性があります。
ー
Lucy G. Thorne氏らが指摘しているように
デルタ株や現在蔓延しているオミクロン株においても
Sタンパク質とACE2受容体、細胞膜融合など
細胞への侵入の分析だけではなく、
細胞に侵入後の増殖性や毒性について
上述した宿主細胞との免疫系の相互作用を含めて
分析する必要性があると考えられます。
上述したウィルスが持つたんぱく質や
それと作用する免疫機能の種類は
いくつかは後発のVOC株に引き継がれている可能性があります。
従って、ワイルドタイプ、アルファ株、
デルタ株、オミクロン株の
細胞内外の作用について総括する事で
初めて見えてくる事実もあると考えられます。
(参考文献)
(1)
Lucy G. Thorne, Mehdi Bouhaddou, Ann-Kathrin Reuschl, Lorena Zuliani-Alvarez, Ben Polacco, Adrian Pelin, Jyoti Batra, Matthew V. X. Whelan, Myra Hosmillo, Andrea Fossati, Roberta Ragazzini, Irwin Jungreis, Manisha Ummadi, Ajda Rojc, Jane Turner, Marie L. Bischof, Kirsten Obernier, Hannes Braberg, Margaret Soucheray, Alicia Richards, Kuei-Ho Chen, Bhavya Harjai, Danish Memon, Joseph Hiatt, Romel Rosales, Briana L. McGovern, Aminu Jahun, Jacqueline M. Fabius, Kris White, Ian G. Goodfellow, Yasu Takeuchi, Paola Bonfanti, Kevan Shokat, Natalia Jura, Klim Verba, Mahdad Noursadeghi, Pedro Beltrao, Manolis Kellis, Danielle L. Swaney, Adolfo García-Sastre, Clare Jolly, Greg J. Towers & Nevan J. Krogan
Evolution of enhanced innate immune evasion by SARS-CoV-2
Nature (2021)
(2)
Thiago Carvalho, Florian Krammer & Akiko Iwasaki
The first 12 months of COVID-19: a timeline of immunological insights
Nature Reviews Immunology volume 21, pages245–256 (2021)
(3)
Melissa Saichi, Maha Zohra Ladjemi, Sarantis Korniotis, Christophe Rousseau, Zakaria Ait Hamou, Lucile Massenet-Regad, Elise Amblard, Floriane Noel, Yannick Marie, Delphine Bouteiller, Jasna Medvedovic, Frédéric Pène & Vassili Soumelis
Single-cell RNA sequencing of blood antigen-presenting cells in severe COVID-19 reveals multi-process defects in antiviral immunity
Nature Cell Biology (2021)
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