2020年6月27日土曜日

COVID-19:RNAウィルス増殖に影響を与えるメチル化因子

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

SARS-CoV-2:新型コロナウィルスの大枠としての定義は
「RNAウィルス」ということになります。
RNAウィルスは、
ポリオウィルス、MARS、ノロウィルス、デング熱ウィルス
ジカウィルス、日本脳炎ウィルス、インフルエンザウィルス
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、、、、
のようにいくつかの分類があるものの
人にとって脅威となるウィスルはいろいろ存在ます。
新型コロナウィルスの予防、治療を
ワクチン、薬剤、あるいは食事、運動などの日常生活
を含めて考えるときに、
RNAウィルスが持つ共通性を理解することは大事です。
例えば、
レムデシビルという薬剤のように
いくつかのRNAウィルスに対して抗ウィルス性の薬効を示す
ものがあります。
このレムデシビルはRNAと結びつくRNA酵素の活性を抑える
働きがあります。
ウィルスが細胞内に入ってRNAが覆われている膜から放出され
それが複製するときに使われる酵素が
宿主から取り込まれる時に構造的、機能的に
「共通性」があれば、抗ウィルス性の普遍性が生まれます。
つまり、過去開発された薬剤を使うことができます。
実際にレムデシビルは新型コロナウィルスに
一定の薬効を示したとされています。

このRNAウィルスが細胞内に入って、
様々な段階を経て、複製して細胞外に放出されます。
それで数が増える、
あるいは生物の中に一定量残って、
社会に存在し続けるということが起こり得ます。
インフルエンザが毎年のように流行するのも
体内にRNAウィルスが残っていて、
それが冬になると活性化するという現象が起こっている
可能性もあります。
あるいは何らかの生物に寄生して
残っているという可能性もあります。

そのRNAウィルスが今少し述べた様に
どのような経路で複製しているかというのを
詳細に紐解いていくことは病理を理解する上で非常に重要です。
以前からRNAウィルスに関する研究は進んでいて、
それが一般的に持つ特徴はわかっている部分があります。
その複製の経路の中で
エピトランスクリトーム(Epi-transcriptome)
つまり「塩基配列の変化を伴わない機能的な変化」
が複製を制御している可能性を示唆されています。
トランスクリトームは
RNAの設計図に従って特定のタンパク質を作り出すため
のプロセスのことです。
RNAウィルスはたんぱく質や脂質などとの複合作用によって
複製することがわかっていますから、
この経路は大事です。
それが機能的な変化をすることで
複製を強めることがあると考えられています。
その機能的な変化は、
RNA構造のメチル化といわれています。
そのメチル化する物質の代表的な一つとして、
N6-methyladenosine (m6A)
というのがあります。

そのm6Aの詳細な機序について
人メタ肺炎ウィルス(HMPV)に対して行われた
研究の情報を共有いたします。
ただし、これは人の体内で行われた研究ではなく
ラットによるものです。
このウィルスは一本鎖マイナス鎖ウィルスです。
新型コロナウィルスは一本鎖プラス鎖ウィルスです。

m6AはHMPVの複製を促進する役割を示します。
逆にm6Aを不活性化すると
抗ウィルス作用をもつサイトカインである
タイプIインターフェロンの分泌を増加させます。
それは細胞質のRNAの検知の役割を持つRIG-Iの機能が
高まることに依ります。
そのRIG-Iは機能が高まる中で
3次元的な構造(配座)を変化させることがわかっています。
それによってRNAとRIG-1の結合における親和性があがる
と考えられます。
それによってタイプIインターフェロン分泌が増加します。
このRIG-Iの機序は
京都大学ウイルス研究所藤田 尚志教授によって
明らかにされました。
またRIG-IはNF-κBを活性化するとされています。
NF-κBは転写因子として働くタンパク質複合体であり
免疫応答、炎症、癌などに関わるとされています。

このタンパク質の設計図を持つ伝令RNAは、
糖の一種であるリボースの2'-O位置でメチル化される
と言われており、
その位置がメチル化酵素によってメチル基で装飾される
ことで宿主細胞が持つ免疫機能から逃れることができる
と一般的には言われています。
つまりRNAウィルスにあるRNAがメチル化されることは、
そのRNAが宿主の免疫機能によって攻撃され、
破壊されるのを防ぐ機能を持ちます。
RNAの機能変化は150種類以上知られていますが、
m6Aによるメチル化は最も普遍的な改変であると言われています。
従って、新型コロナウィルスでも確認される可能性はあります。
またリボースの2'-O位置でのメチル化は、
RIG-IがRNA鎖の中でオリゴマー化することで防がれることが
2本鎖RNAでは示されてきました。
※新型コロナウィルスは一本鎖RNAウィルス
m6AはRIG-IによるRNA鎖のオリゴマー化の
ブレーキ役として働いていると考えられています。

従って、ワクチン開発するときには
このメチル化因子であるm6Aを標的として
それを弱まるようにすることが
一つの戦略として考えられます。

ここからは私の考察、疑問です。
このメチル化は複製したRNAには引き継がれないのか?
ということが気になります。
メチル化するのは細胞内に限られるのか?
おそらくRNAが胞で覆われている時ではなく、
細胞内に入って露出した時にメチル化因子を取り込むと
考えられるので細胞内に限られると推測します。
このような疑問を持つ背景は、
メチル化したRNAを持つウィルスは
免疫機能が効きにくく複製機能が高いので
もしその状態を「維持」したウィルスが増えると
一気に数が増えて重要化する要因になるかもしれない
と考えたからです。
例えば、細胞内で複製されたRNAが
細胞内で出る前にメチル化されて
その状態でスパイクを含む膜につつまれて
細胞外に出たとします。
そうするとそのウィルスは免疫に対して強い
増殖能力の高い状態になります。
そのような危惧があるので、
患者さんの血液から取り出した新型コロナウィルスの
RNA解析をしたときに
そのメチル化、あるいは装飾因子を
統計的に調べることは重要ではないか
と考えました。
その割合によってリスク評価できる可能性があります。

以上です。

(参考文献)
Mijia Lu, Zijie Zhang, Miaoge Xue, Boxuan Simen Zhao, Olivia Harder, Anzhong Li, Xueya Liang, Thomas Z. Gao, Yunsheng Xu, Jiyong Zhou, Zongdi Feng, Stefan Niewiesk, Mark E. Peeples, Chuan He & Jianrong Li 
N6-methyladenosine modification enables viral RNA to escape recognition by RNA sensor RIG-I
Nature Microbiology volume 5, pages584–598(2020)
https://doi.org/10.1038/s41564-019-0653-9


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