2023年3月30日木曜日 0 コメント

特異的薬剤送達におけるヒドロゲルの可能性

身体を構成するタンパク質は、おおよそ10万種類あるといわれています。
身体の60-70%は水分ですが、残りの30-40%のうち
半分以上、あるいは半分近くがタンパク質となります。
従って、20%近くが少なくともタンパク質になります。
人の組織は、主に細胞で出来ており、
それに加えて、
水分や間質にあるタンパク質などで埋められています。
タンパク質は体外から摂食によって取得する事もできますが、
上述した細胞でもタンパク質を生み出すことができます。
植物、人を含めた動物、
腸や肺に共生する菌類は真核生物であり、
その真核生物を構成する細胞のタンパク質需要は
非常に高いと言われています(2)。
そのたんぱく質は主にリボソームで作られ、
リボソーム核酸を通じて設計され、
それぞれの種、細胞にあったタンパク質が作られる
と考えられます。
従って、このタンパク質を作る遺伝子に異常、不安定性があると
癌などを初め(3)、
様々な疾患と関わると言われています(4-8)。
--
このような細胞内のタンパク質の生成の運命を変える方法は
遺伝子からタンパク質が作られるまでに複数のプロセスがあることから
改変のためアクセスできるアプローチはいくつかあります。
DNA、ASOs、siRNA、mRNA、
miRNA(or other non-coding RNAs)を外因的に
細胞内に送達させる事によっても
特定のタンパク質に標的を合わせ、
その発現量を制御できる可能性があります。
--
新型コロナウィルスのmRNAワクチンのように
ナノ粒子に封入して特定のタンパク質(抗原)を発現させて
免疫機能を誘発させる場合においては
筋肉注射によって、リンパ節に侵入させて
そこから胚中心で液性免疫の機序で
特定の抗体を発現させて、
ウィルスの細胞内感染を防ぐという事が可能です。
この場合、mRNAの送達細胞として
樹状細胞などが挙げられますが、
これは循環器に非特異的に存在するため
とりわけ強く標的化する必要はありませんでした。
しかし、
上述した核酸群を使った治療を
より幅広く、効率的に実現させていくには
特定の組織、病変部位、細胞への標的化(9)が
欠かせないと言っても言い過ぎではないかもしれません。
その為には
いくつか考えらえるアプローチがあります。
免疫機能、免疫細胞を利用する方法(10)、
特異的な表面リガンドとの結合を利用する方法もあります。
しかし、いずれにしても
核酸を放出タイミングを制御して
特定の場所で作用させるためには
遊離した形では難しく、
何らかの保護膜、胞で包む必要があります。
そうすると、
核酸以外の余分な物質が必要になるため、
系が複雑になり、生体内で作用を受ける要因も多くなります。
考えないといけない要因はいくつかありますが(1)、
その一つの要因は
免疫監視をどのように逃れるか?です。
--
Ruibo Zhong(敬称略)らは
核酸送達におけるヒドロゲルの可能性について
総括しています(1)。
--
ヒドロゲルは定義としては
固体材料と液体材料の混合成分で
液体材料を10%以上含むとあります。
一般的に液体材料は水であるとされています。
体内の送達で利用されるヒドロゲルは
細胞外マトリックスに似せて構成されることがあります(10)。
それが体内に自然に含む物質であるから
身体に優しいということです。
--
上述したように
核酸の時間、場所での任意放出を
実現するためには、
保護膜、ナノ粒子などの胞などいずれにおいても
核酸を何らかの物質で覆う事が
少なくとも現在まで考えられている
1つのアプローチです。
薬剤送達学における送達経路は
いくつか考えられます。
その入り口として、
経皮、循環器、肛門、経口、鼻腔などが挙げられます。
鼻腔などは、肺や脳など
循環器に入る時間が極めて短い場合も
想定されますが、
その他の経路については
局所投与を除いては
その薬剤の任意性を高めるためには
血液内などの循環器での薬剤動態について
詳しく考える必要が出てきます。
--
通常、血液内と薬物の相互作用を考える場合には
もちろん間接的に空間を超えて作用する事もあると思いますが、
主に直接的な接触による物理化学的な作用になります。
そうすると、
核酸を覆う物質の、細かくは最外周部、最先端部と
血液成分の相互作用を考える事が重要になると想定されます。
ヒドロゲルの最も優れていて、
活かせると考えられる特性の一つは
成分の一部が水であるということです。
そして、その液体成分において
最外周部を如何に水にできるかどうか?だと考えます。
なぜなら、血液の90%は水分だからです。
細かくは水にも色んな特性がありますから
体内の水と極めて類似した水を使う事が求められます。
繊細な体内に侵入させる時には
如何に身体の中の物質を再現できるか?
また、それが大量に含む物質であればなお好ましい
ということです。
そういう観点において、
表面を水にできる可能性は大きな利点です。
水は液体ですから、
どのようにジェル状に安定させて
かつ、表面積割合を上げるか?
それがとても重要になると考えられます。
少なくともヒドロゲルにおける
表面構造を考える事は
薬剤送達媒体として利用する際にも重要です(13)。
但し、ヒドロゲル内に樹状細胞などが浸入して
中の薬物を食作用で除去する事もあるとされています(1)。
少なくとも固体と液体の複合体であり、
隙間なく形成されているかどうかもわかりません。
そのような隙間による浸入なのか?
液体成分にそのまま浸入するのか?
そうしたことを考える必要もあります。
液体と固体が分子レベルで見た時にどのように異なるか?
それを考えることは液体と固体の間にある
ゲル状態の基礎物理を理解する上で重要です。
分子の存在位置の濃度分布を見た時に
固体の場合は結合によって位置の特定性が高いため
コントラストが明確にでますが、
液体の場合はそのコントラストが不明瞭になります。
おそらくゲルはその間にあるということです。
加えて、
標的性を上げていくためには付加的に考えないといけない
要素は多くあります。
ヒドロゲルにナノ粒子を封入して
その中に核酸を入れる場合、
リリース過程を2つ考える必要があります。
これの利点としては
1つ目の過程と2つ目の過程の目的を変えられる事によって
制御できる物理的特性の自由度が上がる事です。
しかし、うまく制御してリリースするためには
光、酵素、pHなどをうまく利用する必要がある
かもしれません(1)。
このリリース過程がどのような物理化学的な特性に
感受性を持つかは積載した核酸などの
薬剤成分をどのような機序でヒドロゲル構造と
結合させたかが一つ重要な要因です。
様々な結合様式が示されています(1)。
--
Ruibo Zhong(敬称略)らが示している様に(1)、
ヒドロゲルは主に水であり、
固体と液体の複合体であることから
固体よりも顕著に軟らかい性質があります。
形を変えられるし、
上述したように表面の一部は水ですから
注入利便性が高い(high injectability)と言えます。
薬剤を注入するときには
少なくとも一定割合は侵襲による影響を考える必要があるし、
その侵襲に対する体の感受性が低ければ、
色んな局所投与が可能であるともいえます。
例えば、
関節などにある局所的な疾患は
局所投与が有効な場合も多くあると思います。
薬剤送達において
事前に標的までの距離を下げられる事は
ほぼ間違いなく標的容易性を上げるので、
注入における利便性が高いことはメリットがある
と考えられます。
従って、その特性を生かすように
注入する器具の空間的、機械的特性を
良く考える必要があります。

(参考文献)
(1)
Ruibo Zhong, Sepehr Talebian, Bárbara B. Mendes, Gordon Wallace, Robert Langer, João Conde & Jinjun Shi
Hydrogels for RNA delivery
Nature Materials (2023)
(2)
Yutaro Hori, Christoph Engel & Takehiko Kobayashi
Regulation of ribosomal RNA gene copy number, transcription and nucleolus organization in eukaryotes
Nature Reviews Molecular Cell Biology (2023)
(3)
Evgeny Smirnov, Nikola Chmúrˇciaková, Dušan Cmarko
Human rDNA and Cancer
Cells 2021, 10, 3452
(4)
Bülent Kara, Çiğdem Köroğlu, Karita Peltonen, Ruchama C Steinberg, Hülya Maraş Genç, Maarit Hölttä-Vuori, Ayşe Güven, Kristiina Kanerva, Tuğba Kotil, Seyhun Solakoğlu, You Zhou, Vesa M Olkkonen, Elina Ikonen, Marikki Laiho & Aslıhan Tolun
Severe neurodegenerative disease in brothers with homozygous mutation in POLR1A
European Journal of Human Genetics volume 25, pages315–323 (2017)
(5)
Ide, S., Imai, R., Ochi, H. & Maeshima, K. Transcriptional suppression of ribosomal DNA 
with phase separation. Sci. Adv. 6, 1–16 (2020).
(6)
Weaver, K. N. et al. Acrofacial dysostosis, Cincinnati type, a mandibulofacial dysostosis 
syndrome with limb anomalies, is caused by POLR1A dysfunction. Am. J. Hum. Genet. 96, 
765–774 (2015).
(7)
Dauwerse, J. G. et al. Mutations in genes encoding subunits of RNA polymerases I and III 
cause Treacher Collins syndrome. Nat. Genet. 43, 20–22 (2011).
(8)
Sanchez, E. et al. POLR1B and neural crest cell anomalies in Treacher Collins syndrome 
type 4. Genet. Med. 22, 547–556 (2020).
(9)
Linda Berg Luecke, Matthew Waas, Jack Littrell, Melinda Wojtkiewicz, Chase Castro, Maria Burkovetskaya, Erin N. Schuette, Amanda Rae Buchberger, Jared M. Churko, Upendra Chalise, Michelle Waknitz, Shelby Konfrst, Roald Teuben, Justin Morrissette-McAlmon, Claudius Mahr, Daniel R. Anderson, Kenneth R. Boheler & Rebekah L. Gundry
Surfaceome mapping of primary human heart cells with CellSurfer uncovers cardiomyocyte surface protein LSMEM2 and proteome dynamics in failing hearts
Nature Cardiovascular Research volume 2, pages76–95 (2023)
(10)
Parisa Yousefpour, Kaiyuan Ni & Darrell J. Irvine
Targeted modulation of immune cells and tissues using engineered biomaterials
Nature Reviews Bioengineering (2023)
(11)
Jeongmin Hwang, Millicent O. Sullivan, Kristi L. Kiick
Targeted Drug Delivery via the Use of ECM-Mimetic Materials
Front. Bioeng. Biotechnol., 18 February 2020 Sec. Nanobiotechnology Volume 8 - 2020 |
(12)
R Barbucci, S Lamponi, A Borzacchiello, L Ambrosio, M Fini, P Torricelli, R Giardino
Hyaluronic acid hydrogel in the treatment of osteoarthritis
Biomaterials Volume 23, Issue 23, December 2002, Pages 4503-4513
(13)
Qifeng Mu, Kunpeng Cui, Zhi Jian Wang, Takahiro Matsuda, Wei Cui, Hinako Kato, Shotaro Namiki, Tomoko Yamazaki, Martin Frauenlob, Takayuki Nonoyama, Masumi Tsuda, Shinya Tanaka, Tasuku Nakajima & Jian Ping Gong
Force-triggered rapid microstructure growth on hydrogel surface for on-demand functions
Nature Communications volume 13, Article number: 6213 (2022) 

2023年3月26日日曜日 0 コメント

リボソーム核酸(rDNA,rRNA)の分子生物学と病理

身体を構成するタンパク質は、おおよそ10万種類あるといわれています。
身体の60-70%は水分ですが、残りの30-40%のうち
半分以上、あるいは半分近くがタンパク質となります。
人の組織は、主に細胞で出来ており、
水分や間質にあるタンパク質などで埋められています。
体の中で特定のタンパク質を生み出すのが細胞で
その細胞内のDNA遺伝子情報をmRNAに転写し、
それが翻訳されタンパク質が合成されます。
その後半の翻訳において、リボソームと呼ばれる
細胞内小器官がそれを担っています(2)。
このリボソームは
いくつかのリボソームRNA分子と
多くのリボソームタンパク質から作られています。
これは巨大な複合体分子であり、
無数の結合ドメインがあって
その複合体が形成されていると考えられますが、
その数あるリボソームRNA分子やリボソームタンパク質の
一部を別の生物の物と取り換えると
(おそらく)上述した結合ドメインが合わなくなり
全体として働かなくなることがあります。
もしくは、そうではなく、
リボソームは窪みを含めた立体構造を生かして
タンパク質生成するため、
構造が少しでも変わると(配座の変化)、
タンパク質生成能力に影響が出る可能性があります。
言い換えれば、
リボソームのトポロジーが維持される必要がある
ということです。
従って、
リボソームに関連した遺伝子セットは
細胞が分裂するときなども含めて、
非常に強固なシステムで守られているはずである(3)
という風に想定する事ができます。
なぜなら、それが不安定だと
人の場合で言うと、身体の20%を占める
タンパク質が上手く制御できなくなるからです。
これは、生命維持において重大な問題となります。
近年の研究では
このリボソームDNA、転写制御の完全性を
後天的機序、特異的な結合を含めて明らかにしています。
また、
高いrRNA遺伝子コピー数を安定的に維持するための
制御システムについても同様です。
--
Yutaro Hori, Christoph Engel & Takehiko Kobayashi(敬称略)らは
どのようにrRNA遺伝子コピー数が維持されるかについて
総括しています(1)。
--
全ての知られている動物、植物、細菌、原生生物などの有機体は
タンパク質生成のためにリボソームを利用します。
無数のドット上の構造物として存在するリボソームの
産生、維持ののため
細胞は献身的な努力をします。
リボソームは上述したように
rRNAとタンパク質の複合体からなります。
細胞のタンパク質需要に応えるために
核小体で作られるリボソームは大量であり、
そのためにはそれに応じたrRNAの複製が必要です。
この複製のためには
RNAを重合化させるポリメラーゼである
PolⅠが必要になります。
従って、
rRNAを合成するPolⅠによる転写速度は速く、
それによる機能不全を未然に防ぐいくつかのシステムがあります。
例えば、DNA複製とRNA転写の正面衝突を防ぐため
その方向が制御されていたりします(5)。
速い速度で構造的なミスマッチが起こった際には
へき開することでそのミスマッチが校正されます(6)。
このへき開機能は、真核生物の高いタンパク質需要に応えた
PolⅠの速い転写能力を支える一つの要素です。
また、PolⅠの重合効率を決める要因として
rDNAの剛性と可溶性が挙げられます。
これらはDNAが結合相手の凹凸構造に親和的に入り込めるか
どうかを決める物理特性であると考えられます(7,8)。
また、PolⅠは構造的に安定であると言われています(9)。
それが上述したrDNAのプロモーターへの結合親和性にも
(おそらく)関連するし、
リボソームのトンネルの出口のrRNA構造が安定な事により(10)、
そこで作られるたんぱく質合成の安定性に
影響を与えているかもしれません(11)。
また、rRNAの構造安定性は、
こうしたrDNAの取り込み、タンパク質合成の安定性を含めて
その高い転写能力に貢献している可能性があります(9)。
このように真核生物の細胞のタンパク質産生を担う
リボソームの機能を支えるリボソーム核酸(rDNA, rRNA)において
その遺伝子の活性を決める装飾の状態は重要です。
例えば、人のケースで
rDNAのメチル化の度合いが高い人と低い人で
10年間の生存確率の追跡調査を行った結果、
メチル化が低い人は生存確率が有意に高いことが示されています(12)。
このようなリボソームの機能は
クロマチンの形成過程、構造の改変にも同様に
影響を受けるかもしれません(13)。
人における疫学的な結果の一方で、
細胞レベルの観点でもrDNAは細胞の老化、寿命に影響を与える
と考えられています(14)。
また、より生物学的な特徴が人よりもシンプルな
酵母でもrDNAの安定性は
その寿命の主要な決定要因の一つである
と報告されています(14,15)。
この機能は病理にも密接に関わります。
例えば、細胞が癌化とrDNAの不安定性の上昇が
関わっている言われています(16)。
癌以外にも細胞のタンパク質生成に関わる機能ですから
rDNAの異常は様々な疾患と関連します。
〇四肢顔面骨形成不全症(18,19)
〇トリーチャー・コリンズ症候群(20,21)
〇先天性の神経学的疾患(17)
例えば、これらが報告されています。
--
PolⅠは同種のRNAポリメラーゼであるPolⅡ、PolⅢと
特にpre-rRNA合成の中でその機能を特化しています。
なぜ、PolⅠシステムは
多くの類似性を互いに示すPolⅡ、PolⅢと
構造的、機能的に異なり、独特の機能を持つのでしょうか?
直列に繰り返し構造を持つ
PolⅠによって産生されるリボソームRNA(rRNA)は
遺伝子配列の全てのユニットで
その配列が均一であると言われています(4)。
その遺伝子配列、それによるRNA構造は
種ごとに異なり、人であれば、
人特有の遺伝子配列、RNA構造を持つと言われています。
PolⅠによって合成されるrRNAは
体内のRNAのうち7割から8割を占め、
リボソームがタンパク質合成を行うための触媒として働きます。
一方、PolⅡはmRNAの前駆体、snRNA、miRNA、
PolⅢはrRNA、tRNA、その他の低分子RNAに関与すると言われています。
進化の過程で、これらの多様なRNA合成の機構において
PolⅡ、PolⅢを明確に区別するような特異的な機能を
持たせる必要ななかったけど、
PolⅠだけはそれらと区別して特異的な機能を持たせる必要があった
ということです。
そうでなければ淘汰されたと捉えることもできます。
細胞内で作られるたんぱく質は
その細胞の生物学的特徴(形質)を決める大きな要因です。
多細胞生物である種(植物、動物など)は
細胞内のタンパク質で特徴づけられた細胞の集まりです。
それらが連携する事によってその種の形質がまた決まると考えられます。
つまり、細胞はその種の形質を映す小さな鏡である
という風にも捉えることができます。
従って、細胞内のリボソームによって合成されたタンパク質は
種ごとに異なる必要があり、そのたんぱく質を合成する際に
機能的な働きをするrRNAの遺伝子配列、構造も
種ごとに異なる必要があったということです。
また、その機能維持のため他の多様な少量のRNA合成の機序とも
差別化を図る必要があったということかもしれません。
さらに、それぞれの種には様々な細胞種があります。
それぞれの細胞種は特異的な生理機能を有しています。
そのため、その中で産生されるたんぱく質も異なります。
そうした中でrRNAを細胞種ごとに調べる事は
少なくとも一定の意義があるかもしれません。

(参考文献)
(1)
Yutaro Hori, Christoph Engel & Takehiko Kobayashi
Regulation of ribosomal RNA gene copy number, transcription and nucleolus organization in eukaryotes
Nature Reviews Molecular Cell Biology (2023)
(2)
ヤクルト中央研究所
健康用語の基礎知識
リボソームRNA(rRNA)
(3)
長谷川政美
進化の歴史
ー時間と空間が織りなす生き物のタペストリー
(4)
Thomas H. Eickbush and Danna G. Eickbush
Finely Orchestrated Movements: Evolution of the Ribosomal RNA Genes
Genetics. 2007 Feb; 175(2): 477–485.
(5)
Richard T Pomerantz, Mike O'Donnell
What happens when replication and transcription complexes collide?
Cell Cycle. 2010 Jul 1;9(13):2537-43
(6)
Stephanie Pitts and Marikki Laiho
Regulation of RNA Polymerase I Stability and Function
Cancers 2022, 14, 5776
(7)
Michael Pilsl & Christoph Engel
Structural basis of RNA polymerase I pre-initiation complex formation and promoter melting
Nature Communications volume 11, Article number: 1206 (2020) 
(8)
Xin Liu, David A. Bushnell, and Roger D. Kornberg
Lock and Key to Transcription:s-DNA Interaction
Cell. 2011 Dec 9;147(6):1218-9
(9)
Agata D. Misiaszek, Mathias Girbig, Helga Grötsch, Florence Baudin, Brice Murciano, Aleix Lafita & Christoph W. Müller
Cryo-EM structures of human RNA polymerase I
Nature Structural & Molecular Biology volume 28, pages997–1008 (2021)
(10)
Mathias Girbig, Agata D. Misiaszek, Matthias K. Vorländer, Aleix Lafita, Helga Grötsch, Florence Baudin, Alex Bateman & Christoph W. Müller
Cryo-EM structures of human RNA polymerase III in its unbound and transcribing states
Nature Structural & Molecular Biology volume 28, pages210–219 (2021)
(11)
Yuhei Chadani, Nobuyuki Sugata, Tatsuya Niwa, Yosuke Ito, Shintaro Iwasaki, Hideki Taguchi
Nascent polypeptide within the exit tunnel stabilizes the ribosome to counteract risky translation
The EMBO Journal (2021)40:e108299
(12)
Patrizia D'Aquila, Alberto Montesanto, Maurizio Mandalà, Sabrina Garasto, Vincenzo Mari, Andrea Corsonello, Dina Bellizzi, and Giuseppe Passarino
Methylation of the ribosomal RNA gene promoter is associated with aging and age‐related decline
Aging Cell. 2017 Oct; 16(5): 966–975.
(13)
Ewa M. Michalak, Marian L. Burr, Andrew J. Bannister & Mark A. Dawson
The roles of DNA, RNA and histone methylation in ageing and cancer
Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 20, pages573–589 (2019)
(14)
Takehiko Kobayashi
Ribosomal RNA gene repeats, their stability and cellular senescence
Proceedings of the Japan Academy, Series B 2014 Volume 90 Issue 4 Pages 119-129
(15)
Kimiko Saka, Satoru Ide, Austen R.D. Ganley,and Takehiko Kobayashi
Cellular Senescence in Yeast Is Regulated by rDNA Noncoding Transcription
Current Biology Vol 23 No 18 1794-1798 (2013)
(16)
Evgeny Smirnov, Nikola Chmúrˇciaková, Dušan Cmarko
Human rDNA and Cancer
Cells 2021, 10, 3452
(17)
Bülent Kara, Çiğdem Köroğlu, Karita Peltonen, Ruchama C Steinberg, Hülya Maraş Genç, Maarit Hölttä-Vuori, Ayşe Güven, Kristiina Kanerva, Tuğba Kotil, Seyhun Solakoğlu, You Zhou, Vesa M Olkkonen, Elina Ikonen, Marikki Laiho & Aslıhan Tolun
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(18)
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with phase separation. Sci. Adv. 6, 1–16 (2020).
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Dauwerse, J. G. et al. Mutations in genes encoding subunits of RNA polymerases I and III 
cause Treacher Collins syndrome. Nat. Genet. 43, 20–22 (2011).
(21)
Sanchez, E. et al. POLR1B and neural crest cell anomalies in Treacher Collins syndrome 
type 4. Genet. Med. 22, 547–556 (2020).

2023年3月23日木曜日 0 コメント

FcRn受容体の生物学と応用

抗体、免疫グロブリンは
骨髄免疫系、ヘルパーT細胞、B細胞、形質細胞などを通じて
リンパ節、胚中心で生じる液性免疫の機序で生成され
脊柱動物固有の生理機能であるとされています。
免疫グロブリンはIgG抗体で言えばY字型の構造を取り、
枝分かれした2つがFabドメインで
茎側がFcドメインです。
新型コロナウィルス感染症などウィルス感染した場合には
この液性免疫が働き、ウィルス特異的なIgG抗体が発現され、
上述したFabドメインがウィルスのタンパク質に結合するようになり
ウィルスの細胞内感染を防ぐ役割を持ちます。
任意の結合部位、エピトープを認識し
抗原に応じた特異的な抗体として機能するのがFabドメインです。
一方、
Fcドメインは一定の(constant)な結晶構造を持ち、
Fc受容体として様々な分子と相互作用します。
Fc受容体はNK細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞など
様々な免疫細胞と結合し、
細胞性免疫に関与します(2)。
免疫グロブリンには様々なクラスがあり、
それぞれ特異的な構造を持っています。
IgG抗体は最も普遍的な抗体のタイプであり、
上述した茎側のFcドメインに対して
胎児性Fc受容体(FcRn)が結合する事が知られています(1)。
このFcRn受容体は
例えば細胞内のエンドソームに発現し、
IgG抗体と結合する事によって
可溶性を持つIgG抗体の構造安定性を高める性質があり
細胞内の通過(トランスサイトーシス)を含めて
IgG抗体の生体内可動性、寿命を高めます。
例えば、IgG抗体は
母乳を通じて新生児、小児に母親から伝搬されます。
子どもは口腔、消化器からIgG抗体を受け取るわけですから
それが血中を含めて、体内で機能するためには
腸の粘膜、血管壁などを含めて
様々なバリア機能を持つ細胞を通過する必要があります。
実際にFcRn受容体は
上皮細胞、内皮細胞などの
バリア機能を持つ細胞に発現されている事が知られています(6-11)。
母乳を通じて赤ちゃんの未熟な
免疫機能を強化するためには
IgG抗体を母親から受け取る必要があり、
それを十分機能させるためには
IgG抗体がFc受容体依存的にFcRnと結合し、
結晶安定性を高めて、
子どもの体内に十分に循環する必要があります。
従って、
FcRnの機能は生後間もない赤ちゃんの
免疫機能を母乳依存的に強化する上で
非常に重要な役割を担っていると想定されます。
実際に
母乳と赤ちゃんの体内にあるFcRnは
度々、子どもで問題となる
アレルギー寛容性にも関連すると言われています(3)。
複合体化したIgG抗体との結合を通じて
上述したアレルギー寛容性も含めて
自然、獲得免疫系と関連があるとされています(1)。
--
FcRnがどの細胞種のどこに分布しているか知ることは
FcRn受容体と結合する事によって
寿命を高めるIgG抗体の振る舞い、
それによる免疫制御を考える上で重要になります。
上述したバリア機能を持つ細胞以外に
主に骨髄系免疫細胞に発現されている事が知られています(10-13)。
--
FcRnは赤ちゃんが子宮にいる時から
(腸などに)あることが確認されています。
このFcRnは胎盤を通じてIgG抗体を
母親から子供に送達させる事に貢献し、
胎児、新生児の受動的な液性免疫に貢献すると言われています。
IgG抗体は胎盤を通じて赤ちゃんに移行する
特性を持った唯一の免疫グロブリンであり、
子宮にいる胎児の時から
上述したように母親から受け取ることができます。
出産後、授乳を開始し、
分娩からの日数を経るごとに
IgG抗体の母乳中の含量が増える為、
授乳を実現している母子においては
授乳期間が経過するにつれて
授乳を通じて子どもに送られるIgG抗体が多くなる
と考えられます。
実際に、授乳が難しいケースもあるわけですが、
その場合、お子さんのIgG抗体の量が
授乳がある場合に比べて、どのように変わるか?
そうした研究の意義も生まれます。
--
Michal Pyzik, Lisa K. Kozicky, Amit K. Gandhi & Richard S. Blumberg(敬称略)らは
FcRn-IgG免疫生物学の現在の知識のうち
機能的、病理的観点を中心に総括されています(1)。
まず、機能的な観点について説明します。
FcRnは細胞内のエンドソームに発現され、
そのエンドソームが形成過程でpHを変えることによって
FcRn受容体のIgG抗体への結合活性度が変わります。
pHが下がり、酸性になることで
FcRn受容体とIgG抗体の結合性が高まります。
FcRn受容体はIgG抗体に対して
一般的に2:1の割合で結合し、
IgG抗体を両側から挟みこむような形で固定します。
この時にはIgG抗体は逆Y字型になっていて、
Fabドメインは細胞膜とFcRn受容体の細胞外ドメインの間に位置します。
そのように強固に固定されることによって
様々なストレスに対して強くなり
結果としてIgG抗体の寿命延長に関わっていると想定されます。
--
このような生理的な機能は薬理的にも応用できる可能性があります。
例えば、
FcRnを細胞内に豊富に含む骨髄性の免疫細胞が
病変特異的な形質を獲得していたり、
あるいはエンジニアリングによって
人為的に特定の送達機能、生理機能を有している場合には
それに付随して送達されると考えられるIgG抗体も
同じように特異的な送達機能を有する事になります。
インフルエンザや新型コロナウィルスなどの
呼吸器感染症において
気道、肺などの細胞にウィルスが感染することが考えられる場合、
IgG抗体の分布において
それらの細胞の近くにウィルス特異的なIgG抗体を多く
分布させたいという需要があります。
そうした場合、
IgG抗体を輸送する性質を持つ
可動性に富んだ骨髄系免疫細胞を
気道や肺に集まるようにエンジニアリングする事は
骨髄系免疫細胞自身のそれらの組織に対する免疫機能を
得るだけではなく、付随して輸送された
IgG抗体の細胞内感染防止効果も
効率的に得られる可能性があります。
免疫細胞とIgG抗体を同時に標的化できる可能性です。
これは、IgG抗体を使う
抗体薬物複合体でも応用可能かもしれません。
免疫細胞とIgG抗体と抗体と結合した薬物を
同時に特定に組織に送達させる事です。
しかし、この場合、
免疫細胞内のエンドソームに存在する
FcRn受容体と結合したIgG抗体と薬剤の複合体が
IgG抗体単体と同様に安定的に存在できる必要があります。
このIgG抗体と複合体化させるアイデアは、
IgG抗体と複合化できるナノ粒子にも応用可能です。
合成ナノ粒子の場合は、
循環器内の寿命が問題となるケースもあり、
延命できる事は少なくとも一定の価値がありますが、
IgG抗体が延命されるようにはいかない可能性が高いです。
従って、抗体薬物複合体を含めて
その実現は難しいかもしれません。
エンドソームがリサイクリングされるときに
形成される細管への仕分けは
結合していないFcRn受容体、もしくは単量体のIgG抗体「のみ」である
という報告があります(15)。
IgGがオプソニン化抗原で複合体化されている場合は
リソソームに送達され、分解されるということです。
従って、
IgG抗体にナノ粒子を複合体化させ、
それをリサイクリングエンドソームを使って、
細胞外に放出させるというモデルは、
オートファジーによる分解の選択圧が高いという事が
生理的にある可能性がかなり高いです。
上述したように
リサイクリングエンドソームが細管を通じて生じ
エクソサイトーシスの経路となり、
そこから外れたエンドソーム内の材料は
リソソームによって分解されるということが
複数のエビデンスによって示されています(16-20)。
ナノ粒子はそもそも粒子径の問題で
その細管を通過できない可能性もあります。
但し、可能性はゼロではありません。
細胞外へ放出されるメカニズムは
細胞外へ放出される形質(細胞膜との融合形質)を持つ
(exocytic vesicle)と融合する事、
FcRn受容体が細胞膜へ拡散性を持つ事が
関連していると言われています。
この機序は、ナノ粒子を免疫細胞に隠し、
再び放出させる困難なシステムを実現させるうえで
鍵となる生理機序の一つかもしれません。
加えて、別の観点を説明します。
例えば、エンドソームの中には
ナノ粒子と同程度の大きさのエクソソームがあります。
そのエクソソームは確かにエンドソームから放出されます。
従って、それを(あるいはその機序を)巧みに利用する形で
ナノ粒子の免疫細胞からの放出が可能かもしれません。
エクソソームは多小胞体(Multivesicular body)で生成されます。
この多小胞体は特異的なエンドソーム呼ばれ、
コレステロールを多く含んでいるため、
細胞膜と融合しやすいかもしれないとされています(24,25)。
細胞膜の融合は
lipid stalk形成をする必要があります(21)。
コレステロールは負の内部曲率を持つため
融合プロセスに必要なlipid stalkの形成のための
エネルギーが小さくて済むと考えられています(22,23)。
それによってFcRn受容体のように細管などを形成しなくても
比較的大きなエクソサイトーシス通路径を生む
エンドソームと細胞膜の低い曲率同士での膜融合が可能になるか?
このような視点があります。
エクソサイトーシスに関わるリサイクリングエンドソームは
細胞膜と非常に近接していると言われています(28)。
つまり、少なくとも膜融合の際に、
長い細管を形成しないということです。
エクソソームはコレステロールが多いとされています(26)。
多小胞体でエクソソームが生成されるときに
膜が内側に陥入されることで形成されます(27)。
これは物理的には負の内部曲率を持つということですが、
この特性を持つのがコレステロールです。
従って、エクソソームは形成過程から考えると
コレステロールがそのエンベロープ膜に多いことは
生理的に合理性があります。
なぜなら、多小胞体でエクソソームは一つではなく
複数量、活発に生成される必要があるからです。
頻繁に負の内部曲性を得る必要があります。
そのため、
エクソソームの元になる特異的なエンドソームは
コレステロールが多い膜を持つものが選択されているか?
このような仮の想定もあります。
もしくは、
少なくとも多胞体になるときには
多胞体の膜はコレステロールを多く取り込んでいる
可能性があります。
従って、エクソソームはナノ粒子ほどの径でも
細胞外に放出されることになります。
ナノ粒子-IgG抗体複合体でFcRn受容体依存的に細胞内に隠し、
細管ではなく、エクソソームにより
低曲率の直接的な膜融合を通したエクソサイトーシス機序による
リソソーム分解から逃れる形で放出を実現するための
1つの重要因子として、今述べてきた流れが繋がってきます。
すなわち、ナノ粒子-IgG抗体複合体を細胞内に収める時の
エンドソームの膜質において、
多胞体の様にコレステロールが多くなるような条件を満たすように
エンドサイトーシスの条件を考えるという事です。
あるいは、エンドソームが多胞体になるまで
リソソーム輸送をできるだけ防ぐような
エンドソーム内寿命の高い条件を見つけるという事です。
免疫細胞を生かす形で治療を考える際には
免疫機能を明らかに改変する形で実現する事は好ましくありません。
例えば、特定の遺伝子をノックアウトして
機能を劇的に変えて、免疫細胞内への収納、細胞外への放出を
実現するようなシステムです。
その様な事はできるだけ避けたいという事があります。
身体が持つ自然なシステムを精緻な様式で利用する形で
免疫細胞内のナノ粒子の収納、放出を実現する事を考えます。
ナノ粒子そのものを免疫的に大きな影響のない形で
免疫細胞に侵入、放出させる事が
実験をした段階で生理的に不可能であるという
エビデンスが仮に生まれても、
合成ナノ粒子のエンベロープ膜の材料構成を
送達モデルに合うように最適化するという事も考えられます。
さらに、
輸送媒体を生体模倣ナノ粒子や細胞外小胞に変えて
同じような構想で出来るか考えるという道ももちろんあります
ナノ粒子が入るエンドソームの膜質を
コレステロールリッチに変える方法はいくつか考えられます。
例えば、
循環器にすでにあるエクソソームはすでに
そのエンベロープ膜はコレステロールリッチです。
そのエクソソームは細胞間コミュニケーション媒体として
一定数、免疫細胞に入ります。
免疫細胞内のエンドソームにエクソソームが多ければ、
エクソソームはコレステロールリッチのため、
その一部、エンドソームと膜融合するのではないか?
このように考えます。
膜融合すれば、エクソソームのコレステロールは
エンドソームの膜の一部となりますから、
膜融合するたびに、段階的に
エンドソームのエンベロープ膜の
コレステロール含有量が増える可能性があります。
その様に考えると、エクソソームが多いエンドソームを
選択する事で、そのエンドソームはコレステロールリッチになり
結果として、エクソサイトーシスされやすい
ということになるかもしれません。
(但し、エンドソームとエクソソームの直径の差から
エクソソームの融合による膜への影響は大きくない
可能性もあります。)
そうするとナノ粒子を免疫細胞に入れる事を考える際には
エクソソームが免疫細胞に入る条件と同じ条件を持たせる事が
結果として多くのエクソソームと混在する形で
ナノ粒子が免疫細胞のエンドソームに入る事になります。
このような生理的機序を持たせるために
免疫細胞特異的なエクソソームが持つ表面タンパク質に
結合性を持つ、表面リガンドを装飾させる事が考えられます。
これは結果として、
ナノ粒子がエクソソームと複合体化することで
エクソソームのエクソサイトーシスを
力学的に利用する機能を持ち合わせる事にもなります。
但し、この記事のメインのテーマである
FcRn受容体とIgG抗体の機序を生かして
ナノ粒子の延命を図る場合においては、
エンドソームのコレステロール量が増えた時に
その発現が確保されるか?という視点もあります。
例えば、エクソソームが入るようなエンドソームに
FcRn受容体が発現されているか?という視点が生まれます。
また、FcRnとナノ粒子と複合体化させたIgG抗体との結合性を利用しつつ、
どのようにエクソソームを有効に利用するか?
このような複合的な要因があります。
形成後、細胞質に長くとどまった
後期のエンドソーム(Late endosome)では
少なくともリソソームに引き付けられるために必要な
Rab7受容体、v-SNARE受容体を発現しています。
HOPSを介してエンドソームとリソソームはテザリングされ、
その後、v-SNARE/i-SNAREsによって
さらにエンドソームとリソソームの距離は近くなります。
その後、膜融合が起こり、
エンドソームはリソソームに取り込まれます。
そうして、エンドソーム内のタンパク質は
リソソームを経由して、オートファゴソームに取り込まれ
分解されるという過程をたどります(29)。
一方、
エンドソームの初期の仕分け過程では
狭い径の細管が形成されます(15)。
この細管を通ることができれば、
エンドソーム内の物質は細胞の外に出る事ができる
と考えられますが、
その経路を通ることができない場合、
エンドソーム内にその後も留まる事になります。
そうすると上述した後期のエンドソームの
リソソーム融合の選択圧によって分解される確率が高まる
という事が考えられるのではないか?と推定しています。
他方で
エンドソームは必ずしもリソソームと融合されず
リサイクリングエンドソームを通じて
内容物をエクソサイトーシスによって細胞外へ放出させる
経路選択もあります。
この仕分け機序を理解する事は非常に重要です。
この仕分け機序を理解する事によって
IgG抗体を薬剤やナノ粒子と複合体化した時にも
有効にエクソサイトーシスされるような条件を見つける事に
つながるかもしれないからです。
--
FcRn受容体を利用したナノ粒子輸送では
免疫細胞内に隠すことで、延命と免疫細胞が持つ走化性を
ナノ粒子が利用できるかもしれません。
IgG抗体では循環器内での長寿命化は可能です。
それは複数のエビデンスが示しており、
その科学的根拠に基づいて総括されています(1)。
しかし、それと複合体化したナノ粒子の場合は
同じように延命できるかは難しいかもしれません。
上述したように一つ一つ丁寧に紐解いていくと
結局、ナノ粒子は細胞外の循環器でも、細胞内でも
一定の分解圧があるということです。
細胞内に隠す事はより複雑な機能化が必要であり、
研究、応用を考える上での評価においても難しい事もあります。
その様な視点では
今まで通りシンプルに循環器で
免疫細胞から逃れるような装飾を考えるほうが
筋が良い可能性もあります。
免疫細胞から得られるかもしれない走化性も
必ずしも免疫細胞内である必要はなく
免疫細胞の表面のリガンドに結合させる事によっても可能です。
細胞内に隠すという構想が、
臨床応用までを考えた時に
その実現可能性を含めてメリットをもたらすか?
それについてはより慎重な判断が必要です。

IgG抗体の量は特に子どもにおいて
自己免疫疾患、小児がん、慢性の感染症、炎症などで
異常に高まることが一般的に知られています。
その際にはIgG抗体の量を減らす治療も考えられます。
そのような治療のため、
IgG抗体のFcドメイン領域の構造を遺伝子的に変え、
FcRn-IgG相互作用を抑える事でIgG抗体の寿命を下げ、
全体としてのIgG抗体の量を抑える治療方法(Abdeg)が
マウスのケースで提案されています(12)。
IgG抗体の量はFcRn受容体との結合性に強く依存している
事が考えられることから、FcRn受容体ブロッカーを使用したり、
FcRn受容体の発現量を下げたり、
IgG抗体のFcドメインの構造を変えたりすることで
その結合性を弱め、IgG抗体の量を下げる事が可能になる
かもしれないということです。
それにより、異常に増えたIgG抗体を減らすということです。
例えば、小児がんの場合、
腫瘍部付近のIgG抗体量が高まっている
ということがあるかもしれません。
そうした場合、結合性を改変させる物質の
特異的送達を考える余地が生まれてきます。
一方、
FcRn受容体は能動免疫、受容免疫性を持つ事から
抗体と結合させたタンパク質、抗原を使うことで
〇ぜんそく(30,31)
〇Ⅰ型糖尿病(32)
〇血友病(33)
〇食物アレルギー(34)。
これらの疾患の対して免疫寛容性、免疫的保護機能を誘発しました。
これは、FcRn依存的な制御性T細胞の誘発に依るとされています(1)。
この事は、抗体とタンパク質、抗原の複合体が
確かに間接的に制御型T細胞を誘発する(かもしれない)
骨髄系免疫細胞に取り込まれ、
FcRn受容体を介して抗原特異的な形質を獲得した
ということかもしれません。
なぜなら、T細胞自身はFcRn受容体は発現されていない
というデータがあるからです。
FcRn受容体の発現が確認されている骨髄系免疫細胞が
制御型免疫機能の獲得に貢献している可能性があります。

FcRn受容体がどのように体に影響を及ぼすか?
あるいはそれを制御、利用した治療を考える場合においては
FcRn受容体そのものが免疫機能に自発的に影響を与えるかどうか?
あるいは、それと結合性を持つ
IgG抗体、IgG抗体を含む複合体が同じようにどうか?
それについて明らかにする必要があります。
例えば、サイトカインや血液の凝固に関わる組織因子に
自発的に影響を与えるのであれば、
その異常における疾患の病理についての理解にもつながりますし、
それを制御する事で治療にもつながるからです。
あるいは、
上述したようにFcRn受容体を使った薬剤送達を考える場合
そのように免疫機能に影響を与えるのであれば、
それが薬理作用にも利用できうるし、
逆に副作用にもなります。
従って、上述したFcRn受容体、IgG抗体に関わる
自発的な免疫活性について理解する事は重要です。
--
FcRn受容体とIgG抗体を考える場合、
1つの主役となるのはIgG抗体です。
この抗体は体内で様々な抗原と相互作用をすることが知られています。
新型コロナウィルスなどでは
ウィルスのエンベロープ膜のスパイクタンパク質に
IgG抗体が結合し、
それでACE2受容体との結合親和性を下げ、
細胞内感染を防ぐ役割があります。
つまり、抗体は進化の過程で得た
特定の抗原と結合するために作られるものです。
ゆえに
抗体が抗原と強く相互作用するのは当たり前です。
しかし、
この抗体が複数の抗原と結合することもあるし、
一種類の抗原に絞ってみても、
抗体と抗原が必ずしも1:1で結合するわけではありません。
抗体のFabドメイン同士を抗原が架橋して、
複合体を作る事も考えられます(1)。
これをIgG-ICs(immune complexs)と呼びます。
--
このようにIgGが遊離した状態で抗原と複合体化する事は
IgG抗体を介したFcR受容体や他の受容体との
生理作用をより複雑にすると考えられます。
例えば、
IgG抗体はFcRn受容体の関与によって
サイトカインを発出することが知られています(35)。
これは、IgG抗体が単体で、かつ
FcRn受容体に1:2の割合で挟まれた状態でも起こるのか?
あるいは、
IgG抗体が複合体化した状態で起こるのか?
それを考える重要性が浮かび上がります。
--
ワクチンは基本的には抹消部を含めたリンパ節で
樹状細胞、塊として存在する濾胞性B細胞、
CD4+T細胞、形質細胞などを通じて胚中心で連携し、
最終的には抗原特異的な抗体が作られる事を利用して、
感染症予防や癌の治療に生かすものです。
従って、ワクチンをより有効に働かせるためには
前提としてリンパ節をどのように有効に使うか?
それを考える必要性があります(36)。
しかし、
ワクチンはそのような液性免疫だけではなく
細胞性免疫にも効果があることが知られています(37)。
この一つの機序は、
IgG抗体が抗原と複合体化して
それぞれがリソソーム内での分解から逃れる事によって
細胞性免疫の抗原提示を促すということです(38)。
しかし、その機序は少し複雑で
ワクチンで高められるCD8+T細胞、CD4+T細胞の
抗原特異的な細胞性免疫(37)においては、
T細胞自身はFcRn受容体の発現がないため、
他のFcRn受容体の発現がある細胞の関与を受ける必要があります。
その仲介役となる細胞として樹状細胞が関わっている
ということです。

体内には特に人為的にワクチンを接種しなくても
外的な環境で生活している以上、
微生物、ウィルスなど様々な外敵に対峙し、
その中で免疫機能を通じて
多種多様な特異性を持つIgG抗体を血中に有しています。
そのようなIgG抗体は、
液性免疫が記憶性があることから、
柔軟に体の健康を守ってくれる機能もあります。
前述したように
FcRn受容体は母親の子宮内にいる胎児の時から
様々なバリア機能を持つ組織、細胞に発現していて、
母親からのIgG抗体の供給を受け取り、
それを身体全身に伝搬させる働きを持っています。
また、分娩後も母乳を通じて、
多種多様なIgG抗体を乳児は母親から受け取ります。
このとき母乳は当然、消化器から吸収されますから、
IgG抗体が体内に広がって、循環器で
免疫機能に貢献するのであれば、
腸の粘膜を横断して、循環器に滲出する必要があります。
このトランスサイトーシス機能において
FcRn受容体は貢献しているということです(1)。
この事は、病理にもつながります。
腸の粘膜には多種多様な細菌、ウィルスなど
微生物が生息しています。
それぞれ特異的な抗原となるタンパク質があるわけですが、
その抗原が腸のバリア機能を通過する事ができる
IgG抗体と複合体化するために、
腸の粘膜に留まらず、循環器で免疫作用を引き出すと考えられます。
これは、それぞれの微生物に対する
特異的な免疫を獲得する事に繋がります。
FcRn受容体によるIgG抗体の輸送は
悪性微生物のコロニー形成を抑制し、
それによって疾患に繋がる事を抑止するといわれています(39)。
従って、宿主が細菌に対する免疫的な制御性を高め
身体の健康を維持するためには
FcRn受容体は重要であるという事です(40)。
このようにIgG抗体がバリア機能を超えられる事は
様々な病原体に対して適性な免疫機能を獲得する上で
非常に重要です。
母親から胎児に感染すると言われるジカウィルス(41)や
HIV(42)、HSV(43)。
これらにおいてもFcRn受容体を通じた
ウィルス特異的なIgG抗体の生成、分布、作用において
重要な役割を果たしている可能性があるとされています(1)。
さらに、
抗体は必ずしも細胞外で働くわけではなく
細胞内で機能を発揮する場合があります。
インフルエンザなどで報告されています(44)。
インフルエンザなどのウィルスは
細胞内で複製するために膜の中にあるRNAを
細胞内で重合化させるために放出、作用させる必要があります。
細胞内に取り込まれたときに
膜融合させて、内容物であるRNAを
ポリメラーゼがある細胞質に放出する必要がありますが、
抗体が細胞内でそのような経路を防ぐ働きがある場合があります(44)。
その様な場合、抗体がエンドソーム内でFcRn受容体を通じて
安定的に存在できる事に
抗ウィルス性において生理的な意味が生じます。

FcRn受容体はIgG抗体とアルブミンを異なる結合サイトで
同時に結合させることができます。
従って、FcRn受容体はIgG抗体に影響を与えるだけではなく
アルブミンに対しても同様です。
このアルブミンは
〇浸透圧の保持
〇物質の保持・運搬
〇pH緩衝作用
〇各組織へのアミノ酸供給
〇抗酸化作用
これらの機能を持っています。
栄養素を運ぶ働きがあるためアルブミンの濃度が下がると
身体の栄養状態がよくない事を示します。
このアルブミンは血中をろ過する働きがある
腎臓の糸球体の働きが低下すると
尿中に滲出し、低下する傾向があります。
いずれにしても
アルブミンは細胞に栄養を運ぶ送達媒体となる
タンパク質です。
癌細胞は、少なくとも活性な場合には
多くの栄養を必要としますから、
アルブミンが蓄積される傾向にあります(45)。
このアルブミンの血中濃度と関わるFcRn受容体も同様に
癌細胞で通常細胞よりも活性に発現されている
事が確認されます(45)。
しかし、一方でFcRn受容体は
癌細胞ではほとんど検出されなかったという報告もあります(48)。
従って、癌細胞はアルブミンを細胞内に取り込む
別の機序が存在する可能性があります(1)。
このFcRn受容体は
癌の病態においては樹状細胞などで
その働きの活性度が高い時には
マウスのケースですが予後は生存期間は長くなると
報告されています(1)。
このFcRn受容体は樹状細胞など
骨髄系免疫細胞に発現されていますが、
NK細胞やT細胞などのリンパ球に対しても
腫瘍組織があるときにその抗癌性に影響を与えるとされています(46,47)。

自己免疫疾患は
自分の体内にある正常、かつ恒常的にある物質に対して
抗体を作り、過剰な免疫反応を引きおこし、
それによって異常をきたす疾患です。
その抗体の主要なクラスはIgMといわれていますが(49)
IgG抗体も関わっていると言われています(1)。
それがどのように自己免疫疾患に関わる病理と関わるかは
直接的な経路と間接的な経路があるとされています(49)。
直接的には自己抗体が
標的となるサイトに直接的に結合し、損傷させる
というモデルです。
一方、間接的には
細胞表面のタンパク質などと複合体化し
これらが上述したように
Fcγ受容体やトール様受容体などの活性を高め、
タイプⅠインターフェロンの亢進など
系統的な免疫機能を惹起させます(49)。
このような自己免疫疾患は
皮膚、関節、脳、腎臓など全身の組織、臓器に影響を与えます。
従って、
自己免疫疾患を呈している場合には
この異常に高まった病理性があるIgGを含む抗体を
どのように制御するかという事が考えられます。
このIgG抗体の量を決定する一つの因子が
上述したようにFcRn受容体なので
FcRn受容体の活性をどのようにコントロールするか?
そこが課題となります。
特に、自己免疫疾患に対する治療として
FcRn受容体をブロックする事でIgG抗体量を下げ、
その疾患を改善させようとする臨床研究、治験は
今まで活発に行われ、
IgG抗体の量の低下が狙いどおり認められる形で
寛容性があり、病状の改善がみられたと言われています(1)。
重症筋無力症に対して子ども、
あるいは妊娠女性や胎児に対しても
自己免疫性の疾患が診断されている場合には
FcRn受容体をブロックする事により
過剰に高まったIgG抗体を適正量に減らすための
治験が現在行われています。
--
免疫機能というのは天秤に例えられることがあります。
それが低下しても、過剰になっても異常をきたすということです。
従って、過剰になった場合には
コルチコステロイドが使われることもあります。
実際に重症の肺炎のケースで死亡のリスクを減らしたという
臨床報告もあります(50)。
コルチコステロイドの炎症抑制の作用は
免疫制御的な働きも関わっている可能性があります。
しかし、
免疫機能を調整するそのほかの手段としては
免疫グロブリンを投入したり、血漿交換を行うなど
ドナーが必要な治療方式で
コストや資源の不足が課題となっています(1)。
従って、
従来から広範に使われている
コルチコステロイドやトシリズマブの他の
アプローチの免疫制御的な治療が望まれています。
そこで注目されているのが、
この記事で取り上げたFcRn受容体の活性を利用した
IgG抗体、その複合体依存的な免疫制御システムです。
上述したようにIgG抗体は
抗体そのものの直接的な効果だけではなく
間接的な効果によって系統的な免疫機能に影響を及ぼすため
免疫機能全体へ与える影響は
決して少なくはないと考えられます。
但し、現時点で
臨床試験で適用され、結果が出ているものは
抗体依存性の強い免疫疾患です。
従って、免疫制御のために一般的に使用できるかどうか
というのは現時点では少なくとも
慎重な見方が必要であると考えられます。

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Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia
The New England Journal of Medicine March 21, 2023

2023年3月19日日曜日 0 コメント

免疫細胞への標的化とそれの薬剤送達媒体利用

感染症、癌、自己免疫疾患などに加えて
局所的に言えば、組織の炎症などによっても
免疫系は乱されます。
免疫系の偏りを正したり、
免疫系が正常に働くように修正したり、
免疫機能を高めたりするように
免疫系に作用させる場合においては、
「具体的に何を変えるか」という事を明確にする必要があります。
また、免疫系は主に血液系、リンパ系の抹消部を含めて
全身に分布しているため、
「どの領域に作用させるか?」という
場所特異性を考える事も非常に重要になります。
例えば、
癌の場合は、血液性の癌の場合と
組織常在型の固形癌の場合において
免疫治療を行う際に
どの領域のどの細胞を標的にするか?
という事が異なります。
Parisa Yousefpour, Kaiyuan Ni & Darrell J. Irvine(敬称略)らが
総括の中で述べているように(1)、
もし、場所と(組織、細胞種)において特異性を持たせ
さらにタイミングまで考慮すれば、
免疫治療で懸念される副作用、毒性を少なくしつつ
任意の疾患に対する免疫治療効果を十分に得る事ができる
可能性があります。
例えば、
ワクチンの例を考えます。
新型コロナウィルスのmRNAワクチンは
樹状細胞に取り込まれ、タンパク質を生成し
そこからB細胞などを通じて液性免疫の機序で
抗体がつくられます。
リンパ節の中の胚中心で
ヘルパーT細胞、B細胞、形質細胞などを得て抗体がつくられますが、
mRNAが入った脂質ナノ粒子が
リンパ節近くに局在化するように標的化された状態で
かつ、サイトカイン、ケモカインを同封し
それによって免疫細胞を引き付ければ、
抗体の産生やそれによる細胞性免疫の活性化を
効率的に行うことができるかもしれません。
そうすると、
少ない注入量で必要な抗体価、中和能、
あるいはウィルス特異的T細胞活性が得られ、
ワクチンによる副反応を減らす事ができる可能性があります。
あるいは、免疫的に機能が低下している患者さんに対して
今までよりも有効に抗体を生み出すことができるかもしれません。
場所を制御する事ができれば、
免疫不全のある患者さんにおいても、
仮にその免疫不全が全身でなければ、
免疫不全の程度が少ない部位にあるリンパ節を
特異的に利用する事で、
より有効にワクチンの効果が得られる可能性もあります。
あるいは、
鼻腔にある咽頭扁桃は
新型コロナウィルスにおいて
交差性の高い抗体が生み出された事が証明されています(2)が、
生ワクチンでないといけない(2,3)など
条件はあるかもしれないですが、
鼻腔への噴霧の際に、
より有効に咽頭扁桃のリンパ節にワクチンの成分が
届くようにエンジニアリングする余地が生まれます。
今述べた様に
標的のサイトとしては
〇免疫細胞が集まるリンパ節
〇循環しているリンパ球、
〇骨髄系免疫細胞、
〇組織常在型免疫細胞、
〇病変部位に浸潤、その近くに存在する免疫細胞
これらが考えられます(1)。
つまり、免疫系を標的治療として考える際には
循環器を移動するT細胞、NK細胞のようなリンパ球と
好中球、樹状細胞、マクロファージのような骨髄系免疫細胞、
これらを有効に使う事を考えます。
また、それぞれの組織には
固定的に常在している免疫細胞もあります。
それを周辺組織と同様に標的対象として選択することもできます。
免疫機能を発達させるリンパ節も
抹消部も含めた全身に存在します。
それぞれのリンパ節も標的対象となります。
上述した病変部位とは炎症部や腫瘍組織などが挙げられます。
--
リンパ節に特異的にワクチンや薬剤を送達させるためには
リンパ節の組織学を理解する必要があります。
身体の様々な末梢部位に存在する
流入領域リンパ節(draining lymph nodes)、
外周部を取り囲む辺縁洞
柔組織の中にある皮質や副皮質などです。
流入領域リンパ節は流入径がありますから
例えば、ナノ粒子によって
そこから有効に進入させるためには
それに合わせた最適な径が存在します。
上述したように
ワクチンなどにおいて特定のリンパ節に抗原を送達させ
そこで免疫機能を発揮させたいという需要があります。
あるいは、作用させるリンパ節を
より全身に分散させたいという需要もあるかもしれません。
その際にはワクチン成分を送達させる媒体に
特定のリガンドを装飾させ
特異的に輸送させる能力を持たせる事が可能かもしれません。
また、ワクチンにより免疫機能を有効に引き出すためには
従来から知られているように
アドジュバントを使って
どの様な機序で免疫機能を高めるか?
それについて考える必要があります(4)。
また、ワクチンにおいて特定の感染症に対する
免疫機能を高める事を実現しても、
その裏側にある副反応の懸念もあります。
癌免疫治療や自己免疫疾患治療などでも同様ですが、
過剰に免疫機能が高まって、
副作用が強く出ている場合には
一般的にはコルチコステロイドなどによって
免疫機能が調整されることがありますが、
ナノ粒子によって有効に制御型免疫機能が高められれば(5)
免疫治療の際の調整がよりきめ細やかにできる可能性があります。
ナノ粒子はその特性から循環器に放出されたときには
肝臓や脾臓に蓄積されやすい性質を持っています。
これらの臓器は制御型免疫機能を発現に関わるので、
制御型の免疫機能を有効に引き出すために
ナノ粒子を使う事は少なくとも一定の合理性があります。
--
循環性のT細胞やNK細胞などのリンパ球
あるいは好中球、樹状細胞、マクロファージなどの
骨髄系免疫細胞を標的治療として利用する場合には
作用させたい薬剤を
それぞれの細胞内か、表面に結合させるが考えられます。
一般的には表面にある受容体を利用して
その受容体と薬剤を結合させて
それぞれの免疫細胞が持つ標的性、循環性を活用します。
その免疫細胞がどれだけ病変に対して
標的性を持っているかが
その免疫細胞と複合体化させた薬剤の標的性に影響を与えます。
従って、癌などに対して
ウィルスベクターなどを通じて、
一般的に体外で標的化のためエンジニアリングする
CAR-T細胞に薬剤を一緒に運んでもらう戦略が考えられます(6)。
可動性の高いリンパ球や骨髄系免疫細胞に対して
生体外で薬剤を複合体化、
あるいは生体内で薬剤を標的化する場合、
元来、免疫細胞が持つ走化性のモデルを再確認する事が大切です。
化学誘引物質であるケモカインの濃度分布が
免疫細胞の走化性、極性を決める一つの要因である
と言われています(7)。
従って、ケモカインの振る舞いについて考える事は
免疫細胞を薬剤の運び屋として利用する場合には重要です。
しかしながら、
当然、循環性の免疫細胞を薬剤の運び屋として利用する場合
結合させる際、あるいは標的迄の経路の間において
細胞内に取り込まれる事がないようにする必要があります。
特に生体内で薬剤を免疫細胞表面に結合させる事を
試みる場合には
エンドサイトーシス、マクロピノサイトーシス
ファーゴサイトーシス。
これらの機序(8)について注意を払う必要があります。
--
組織常在型の免疫細胞は
それぞれの組織に対して
特異的な形質を持っている可能性があります(9-11)。
従って、その特異的な形質をうまく標的として利用できれば、
薬剤の特異的送達が実現する可能性があります。
しかし、組織常在型免疫細胞の標的化には
上皮、内皮、粘膜(1)など
身体の区画、障壁を形成する細胞、組織を
トランスサイトーシスさせる事が必要な場合があります。
エンドソームを介した細胞内の
トランスサイトーシス経路や細胞間の隙間など
細胞生物学、組織学的な観点で
薬剤の送達経路を想定する必要があります。
--
腫瘍組織などに対して免疫治療、
腫瘍組織浸潤、常在型免疫細胞を標的化した薬剤治療、
循環型免疫細胞を標的化した薬剤治療。
これらを行う際には、
基本的な骨子としては
継続的な抗がん作用が見込める活性な免疫細胞を
腫瘍組織に置く、届けるという事があります。
この観点で考えると、
薬剤によって疲弊化した免疫細胞を再活性化させる
といった治療戦略も生まれます。
その活性化は薬剤であっても
アドジュバントなどを含むワクチンでも可能です。
また、免疫細胞によって有効に届けられた薬剤自体も
抗癌作用を持ち、免疫療法と化学療法の両立が
実現できるようにも考えます。
現状では癌に対する化学療法と免疫療法の組み合わせが
臨床で適用される際には、
それぞれの薬剤の送達効率については
まだ十分に最適化はされていない状況です。
その標的化のためには
ナノ粒子に薬剤、癌抗原、アドジュバントを入れて
化学療法と免疫療法を両立する方法も考えられますが、
免疫細胞自体を腫瘍組織に対して標的化し
それに薬剤を複合体化させる形でも実現できるかもしれません。
抗癌性が高く、一方で毒性の強い化学療法と
記憶性があり、周辺を含めた小さな癌組織の監視(13)や
長期間の再発予防にも効果があるかもしれない(12)
免疫療法の両方を組み合わせ、
かつ、局所性、極性、標的性を持たせる事ができたら
癌治療の臨床効果は一段変わる可能性があります。
従って、今はまだ基礎研究の段階でも報告例は少ないですが、
CAR-T細胞と抗がん剤を複合体化させて
癌組織まで輸送する事ができるか?
このような視点が一つとしてあります。
このような治療戦略は炎症性の疾患でも基本的には同じです。
炎症性の場合には、
癌治療と同じように免疫機能を高めて、
それによる組織の修復機能を手助けしたり、
薬剤自身が創傷治癒の効果があるものを選択します。
炎症組織の周りには
好中球、単球などが接近する傾向のあるため
これらの細胞を運び屋として利用する事が挙げられます。

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Parisa Yousefpour, Kaiyuan Ni & Darrell J. Irvine
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