<一般的な敗血症、敗血性ショック>(1)
(背景、要約)
20年以上の間、敗血症は細菌感染症として定義されてきました。
その細菌感染により、
発熱、頻脈、多呼吸、血中白血球濃度の変化を伴うと考えられてきました。
その敗血症は、現在では細菌やウィルスの循環器の侵入による
制御不能な全身性の炎症、免疫反応であると考えられています。
従って、細菌やウィルス感染が病因である事には変わりありませんが、
それに付随して生じる免疫系の異常であるという事が
定義、概念として現在、付加されているということです。
循環器は緻密に臓器と連結しているため
循環器に存在する多様な免疫細胞の異常は
結果として臓器の損傷を引き起こします。
死亡率は敗血症の特徴の理解、治療管理の改善によって
15-25%に低下していますが、
最大で4人に1人はなくなり、
乳幼児の集中治療室(NICU, PICU)に入る主要な原因の一つです。
従って、特に低中所得国を中心に
子ども全体の健康について考える学域である
子どもの公衆衛生(The public health of Children)において
多くの子どもが結果として命を落としている現状があるので、
感染症と敗血症を如何に予防するか、
罹患したとしても軽症で抑えるか、
全員が早期に適切な医療を受けられるか、
集中治療が必要でも早期に適切な対応をするか、
その集中治療の質を世界全体でどうやって高めるか、
回復後、如何に予後を改善するか、
こうした重要な課題があります。
また、違う時代的な観点とすれば、
中低所得国に焦点を当てれば、
不適格な都市化によって衛生状況に懸念があるという課題もあります。
従って、Nature Publishing Groupは
そうした背景だけではないと思いますが、
Nature Citiesという姉妹誌の2024年からの刊行を2023年に決断されました。
一方で、世界の医療の最先端を行く
マサチューセッツに本部を置く
臨床医学雑誌のThe New England Journal of Medicine誌は
多様な疾患を臨床医学の視点で包括的に取り扱うという
今までの歴史的な取り組みには変わりありませんが、
新型コロナウィルスの世界的な流行以降、
気候変動や大気汚染など環境因子が
臨床医学に重篤な影響を与えうるという事を(おそらく)懸念され、
シリーズ「Fossl Fuel Pollusion and Climate Change」として
気候変動が感染症に与える影響を
格式の高い総括論文で複数取り扱われています(2,3)。
歴史的に観て、世界保健機関(WHO)による報告などを含め
中低所得国を含め、最も世界の公衆衛生の現状の
世界的共通認識に貢献されている
オランダに本部を置くランセットグループは
2024年5月18号で全世界の健康、病気の状況を特異的に扱われています。
姉妹紙の中にはThe Lancet Child & Adolescnet Health誌
The Lancet Public Health誌があり、
その重要なテーマの一つの中に
当然、子どもの公衆衛生があり、
その中に現状としてまだ多くの致死率に達する
感染症に起因した敗血症があります(4)。
気候変動による人と人以外の生物の生活環境の変化や
温度、湿度などの特性変化、
異常気象による災害の甚大化、
産業のグローバル化による人、生物、物資の国際的移動、
産業化、都市化による汚染など
様々な因子が感染症へのリスクを高めます。
その感染症のリスクが高まれば、
特に免疫機能が未発達である年少の子どもを中心に
感染症に起因した全身の免疫系の異常である敗血症、
さらには敗血症ショックのリスクが高まります。
発症から72時間以内の迅速かつ適切な治療が必要であり、
中低所得国はもちろん、
発症後、速やかにに適切な治療が受けられる環境にあるか?
という重要な課題があります。
一般的に特に年少の子どもに対する
医療環境が実績から世界トップレベルである日本であっても
近年、医療従事者の不足や救急車の不足の課題があります。
高齢化に伴って、救急車が不足している事や
人口減少に伴う過疎化、東京への人口集中などによって
地方の医療環境が整わない課題もあります。
アメリカのようにPICUがまだ普及していないという現状もあり、
敗血症に罹患した時に
北は北海道北部、東部から南は沖縄の石垣島まで
全国に渡り、敗血症を呈した子どもを含めた患者さんが
迅速に救急搬送を受けて、
適切な治療を完了させることができる医療機関にアクセスできるか?
それはおそらく「イエス(Yes)」ではないです。
乳幼児の致死率や
今後生じるかもしれない敗血症につながるパンデミックを想定すると
乳幼児の健康管理が世界トップレベルである日本でさえも
多くのリスク因子があるという現状です。
子どもの公衆衛生は
子どものウェルビーイング(持続的幸福)を考えるにあたり、
除外する事のできない重要なテーマの一つです。
上述した私が意識的にリスクをとって取捨選択し
包括的に知的資源を世界にこのブログを通じて無料で提供している
生命科学全般、薬学、医学、医療だけではなく、
政治的、行政的、社会的な事も関連する
感染症、それで最も懸念される敗血症(ショック)は
公衆衛生の中でも最も重要な病気という事になります。
従って、私のブログの小児に対する公衆衛生のシリーズの中で
敗血症(ショック)は呼吸器の疾患である肺炎などと並ぶ
最重要のテーマであり、ここに独立して記事を立ち上げることにしました。
最も重篤な敗血症の分類に当たる、敗血性ショックは
異常な乳酸値の高まり(hyperlactataemia)、
それと同時に起こる低血圧を呈します。
低血圧なので血管を収縮させる昇圧剤による治療が必要ですが、
病院内の死亡率は30-50%に当たります。
早くに診断がつき、適切な治療を受ければ
今や敗血症もすぐに命を脅かすような疾患ではなくなっていますが、
救命が実現されても、長期的な身体への悪影響は免れないとされています。
持続する炎症、免疫抑制、臓器損傷、組織の衰弱など
多岐にわたる体への悪影響が考えられます。
その様な長期的な影響は体細胞からなる身体だけではなく
脳、それに伴う認知機能にも影響を与えます。
身体と脳の連携に関わる実行機能障害も生じることがあります。
腎臓、心臓などと同様に
循環器の支援を脳は最も必要とする部位の一つだからです。
敗血症は広義に言い換えれば、
全身の循環器の異常に変わりないですから、
当然、腎臓や心臓だけではなく、
脳の健康(不全)にも密接に関わります。
上述したように現在示されている最適な治療を受ければ、
病院内での急性期の死亡確率を下げることができますが、
免疫調整を行う薬物による結果は今のところ良好ではありません。
例えば、同じく免疫系の暴走の臨床症状を呈する
自己免疫疾患がありますが、
その免疫系の調整も少なくとも一定の困難を伴います。
敗血症は急性の全身性の免疫異常であり、
それをステロイドなどの免疫調整薬だけで管理する事は
今のところ難しいということであると想定されます。
医療的な進化が目覚ましい現在においても
敗血症の予期や臨床結果を予測する
効果的なバイオマーカーは見つかっていません。
敗血症は下述するように段階的な進行を伴ない
最も重篤な段階として敗血症ショックがあります。
従って、初期の段階でその重篤度を予測できれば、
早期に段階に応じた適切な治療を患者に提供できるという事があります。
そうした観点から
事前に予測するためのバイオマーカーなどの
評価因子に対する需要があるという事です。
一方、敗血症に対する治療は単純ではないため、
臨床効果の改善は徐々に起こる可能性はあるが、
急激に改善する可能性は低いかもしれないとされています。
アメリカ、ドイツ、ベルギーの
Richard S. Hotchkissら医学博士は
おそらく生命科学、薬学、医学、医療の観点で
急激な改善は難しいという現実を述べられています(1)。
しかし、おそらく敗血症に対するリスクは
今は顕在化していませんが、水面下では高まっている可能性があるため、
社会的には改善が求められています。
上述したように敗血症の治療は医療的な事だけではありません。
地域間のアクセス性の差異をなくすことも重要です。
あるいは敗血症が細菌、ウィルスによる感染症が原因で有れば、
微生物学、ウィルス学、ワクチンなども重要になります。
また、世界の衛生管理の重要性もあります。
空港による検疫も要因としてあります。
アメリカのCDCなどの組織化も重要です。
敗血症の治療の劇的な改善が難しいのであれば、
上述したことを含めた多くの関連因子の質を高める事が
リスクを低減する上で必要となります。
<小児の敗血症>(6,7)
前述したように敗血症には重篤度に応じた分類があります。
敗血症の分類の中で敗血性ショックの前段階にあたる
重篤な敗血症(Severe sepsis)は
小児に限らず一般的な定義としては
臓器損傷、収縮期血圧90以下、乳酸4mmol以上と定義されます。
これが継続すれば、敗血症ショックとなります(8)。
PICU(小児集中治療室)に入る疾患の原因は
〇呼吸器ウイルス(呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザ、アデノウイルス、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモウイルス)
〇重度の呼吸困難を伴う喘息
〇重篤な感染症
〇糖尿病の合併症
〇自動車事故などによる重傷
〇ガンマグロブリン不応性川崎病
〇髄膜炎
〇肺炎
これらとされており、ほとんどがウィルスや細菌による疾患で
その中でも呼吸器に関わるものが多いです。
従って、肺炎、細菌性(脳)髄膜炎、(この章で述べる)敗血症は
子どもの特に急性期の命のかかわる重大な疾患であり、
それらの疾患の最新の情報にアクセスし、
様々な専門性を持つ専門家、医療スタッフが集まり、
引き継がれてきたエビデンス、最新のエビデンス、
仮説に基づいた考察などの多岐にわたる内容について
議論、情報共有するという事は基礎の一つです。
PICUで労働されている方々が
最も目にすると考えられる症状が感染性の疾患に関するものであり
PICUの8%の子どもは重篤な敗血症を持つといわれています。
世界で1年間で450万人の子どもが亡くなっていると
推計されています(9-11)。
上の一般的な敗血症の免疫学的な不全に加えて、
重要な事実は、死亡した子どもの1/3は
発症してから72時間以内であるとされています。
死因を支配するものは呼吸器、神経の疾患です(12)。
例えば、日本での死因の一位である
がんは確かに脅威となる疾患であり、
細胞が運命的に抱えた異常なので、
全身で生じる事のある根絶が難しい難病です。
しかし、呼吸器の不全のように
数分、数時間で命を落とすものではありません。
呼吸器が不全となり、脳への酸素供給が滞れば、
瞬時に神経細胞は死滅します。
従って、敗血症に伴う即座の死亡の原因は
呼吸器と脳に収斂するということです。
肺炎は肺の炎症であり、
呼吸器に関連する感染症だけではなく
一般的な感染症による免疫異常によっても生じる可能性がります。
従って、敗血症と密接に関連します。
脳神経に細菌が侵入すると
細菌性(脳)髄膜炎を呈するリスクが高まります。
それが敗血症と双方向に関連する可能性があります。
これらの連携を包括的に述べた報告はまだ多くはありませんが、
実際に「Pneumonia-associatted spetic shock」
これについての報告もあります(13)。
上述した呼吸器や脳神経系の保護、治療についての重要性だけではなく、
72時間以内に死亡するケースが33%あるとされているので、
早く診断をつけて、適切な治療を施す必要があります(7)。
子どもの敗血症の治療に関しては2020年に定められた
Surviving Sepsis Campaign International Guidelines for the Management of Septic Shock and Sepsis-Associated Organ Dysfunction in Children.
このように命名されたガイドラインが存在します(14,15)。
ここで示される重要な事は
敗血症は段階があり、
上で述べたような低血圧、高乳酸濃度、多臓器不全などの
代表的な症状があり、それを示すと重症に分類され、
これが続くと敗血性ショックであるとされています。
そのスクリーニング、選別を早期に実現し、
できればそれが判別された15分以内に
蘇生のためのプランを作成し、
蘇生処置(Resuscitation)を実施するということです(7)。
この小児に行われる蘇生処置として
検討される処置としては主に3つです(16,17)。
--
①静脈内輸液(Intravenous fluids)
静脈内輸液蘇生は
敗血症(特に敗血症ショックや敗血症誘発の低血圧)
を伴なう患者さんに対する
初期の蘇生処置として共通的に使用されます。
血管内に投入する液体として晶質液(crystalloid fluid)を
一つの投与量として初期3時間以内に30 mL/kg投与することがあります。
晶質液(crystalloid fluid)とは、
細胞外液として世界中で広く用いられている液体です
生理食塩水、乳酸加リンゲル液、乳酸加酢酸リンゲル液、
Plasma-Lyteなどがあります。
輸液療法の目的は血管内容積が
敗血症に伴って減少したものを
液体を入れる事で血管拡張させる事です。
このアプローチは
太い動脈と細い動脈ともに灌流を高める事ができます。
太い動脈では心臓からの1回拍出量を増加できます。
また、細い血管に対しては
毛細血管の血流を活性化させる事ができます。
これにより臓器に対して
低血圧によって血液の環流が低下したものを
通常量まで高めることができます。
しかしながら、課題はあります。
Dilutional coagulopathy、
つまり、輸液により血管が薄まる事によって
血液凝固に異常が生じてしまう事や
輸液の量が過多になる事、
主に肺や各臓器に浮腫ができる事が等が挙げられます(31)。
数十年の間、臨床医は
静脈内輸液と血管活性薬による治療を組み合わせて
敗血症によって生じたと考えられる灌流の不足が
診られる患者に対して対症療法として提供してきました。
しかしながら、
低血圧を伴なう敗血症を呈した患者さんに対する
初期治療として
具体的にどのような程度、タイミングで
静脈内輸液と下述する血管活性薬を投与、投薬するかの
指針に貢献するデータは不足しています(31)。
確かに敗血症ショックや低血圧状態にある患者を
早期に診断して、上述した治療を提供すると
患者さんの病状は改善する傾向にありますが、
共通的な慣例として敗血症ショックの管理における
輸液投与では処方量の指針が定められておらず、
自由裁量で多くの量の輸液を投与する傾向にありました。
こうした治療に対するエビデンスの質は低いレベルです(31)。
下述する血管拡張に貢献するノルエピネフリンの早期診断に基づく
早期投与は心臓の機能回復改善に貢献する
可能性も示唆されています(32)。
従って、この血管拡張薬の投与を早期に行い、
凝固不全や浮腫のリスクがある静脈内輸液の量を低く抑える
Restrictive fluid strategyが
従来から一般的管理方法である
自由裁量での輸液管理(Liberal Fluid Management)に対して、
低血圧を伴なう敗血症を持つ患者に対する救命率向上に貢献するか?
それについて、アメリカの
The National Heart, Lung, and Blood Institute Prevention and Early Treatment
of Acute Lung Injury Clinical Trials Network。
これらの組織に属するメンバーが報告されています(31)。
プロトコルの違いは
どちらの療法を優先するかにあります。
低血圧を呈する患者に対して
血管拡張薬であるノルエピネルフィンを優先的に使用し、
その結果を分析して、輸液投与を行う手順である
今回新たに検討された
できるだけ輸液量を制限する
Restrictive fluid strategyである、
それとも輸液投与を優先して
患者の状態を見て血管拡張薬を加える
というLiberal Fluid Managementである
といことです。
それらの手順の違いにおいて
約800人規模でグループ分けして
年齢、性別、人種、病院の場所、既往歴(心臓、腎臓、高血圧、肺炎)
ベースとなる収縮期血圧、SOFA scoreなど
様々な基準で層化して
従来の輸液を優先させる方法に対して
血管拡張薬を優先使用し、輸液量をできるだけ抑える
今回、新たに導入された方法が
低血圧を伴なう敗血症を呈する患者さんの救命率向上に貢献するか?
腎臓のケースを除いて、
ほぼすべての層化において
輸液を制限する方法は従来の方法に対して
顕著な救命率向上に貢献しませんでした(31)。
従って、静脈内輸液や血管活性薬は
特に低血圧を呈する患者さんにおいて
一般的には不足した液体量の補充や血管拡張の効果があるため
灌流が改善すると考えられますが、
どちらを優先して使うのがいいか?
それについては少なくとも臨床結果からは
議論の余地が残るということです。
それらの使用においてそれぞれいくつかのリスクも伴います。
--
②血管活性薬(Vasoactive agents)
静脈内輸液と血管活性薬は敗血症を伴なう患者さんに対する
初期の蘇生処置として共通的に使用されます。
血管活性薬は、ショックや敗血症の治療に使用されます。
ショックでは、血管収縮、心筋抑制、全身血行動態の改善を
目的として使用されます。敗血症の初期段階では、
ドーパミンとノルエピネフリンなどの血管収縮薬が
最も一般的に使用されます(19)。
血管活性薬のリスクは
血管収縮により組織虚血が生じる事、
心臓の負担が過剰に高まる事、
不整脈が生じる事などが挙げられます(31)。
--
③抗生物質(Antibiotics)
子どもがヘルスアシスタント(健康管理の為の医療的補助)を
必要としてから1時間以内に投与を検討します。
抗生物質による治療は重要です(18)。
--
※
これらの以外の一般的な管理として
呼吸数、血圧、体温などのバイタルサインの安定化があります。
--
子どもの敗血症を見つけるのは難しいとされています。
熱性の感染症は子どもに共通してみられます。
また敗血症特異的な臨床症状の特定が難しいです。
子どもは重症となるショックまで
敗血症に耐える身体の容量を持っています。
従って、重症になって初めて見つかる事も多くあります(6)。
敗血症の臨床結果は
どれくらい早く診断し、治療を開始するかの
タイムラインに強く依存します。
従って、すぐに結果が出る方法、手順で
精度の高い進行を予測するバイオマーカーと
その簡便な方法が求められます。
上述した①静脈内輸液、②血管活性薬、③抗生物質の治療で
できるだけ早期に見つけ、処置する必要があります。
現状として、医療設備の整った高所得国でも
敗血症による死亡例の減少は見られません(30)。
この事は最先端の知識、知恵、経験や
医療技術を駆使したとしても
特に死亡に直結しやすい重篤度の高い敗血症は
癌などとは異なり、治療の猶予がほとんどないため、
治癒させる事が難しいことを示唆します。
--
(敗血症の定義)(137)
子どもの敗血症の定義は2005年の会議によって制定された
the 2005 International Pediatric Sepsis
Consensus Conferenceに基づきます。
(参考文献(137) Table 1参照)
大人に対しては2016年に新しい定義がされましたが、
それを子どもに適用できるかは議論の余地があります。
定義の分類としては
重篤な感染症という軸は変わりませんが、
それによって影響を受ける組織、臓器が
心臓血管系か、それ以外かで分類されます。
--
(敗血症の分別、診断、体調維持)(6)
小児の敗血症の早期の診断、それによる適時の治療を
実現するためには高いレベルの注意、気づきが必要です。
国際的なガイドラインで示された
スクリーニング、診断、全身マネイジメントの中に
乳酸塩の血中濃度があります。
通常は高くても1.5 mmol/l(hyperlactatemia)程度に
しかなりませんが、
敗血症の場合は2 mmol/L 以上になります(21)。
この乳酸塩はEnterococciなど組織や免疫機能に影響を与える
細菌が糖などの代謝生成物として生成するものです。
従って、乳酸塩の上昇は
こうしたDysbiosisを示す細菌叢から
血中に放出されたものも含まれると疑う余地があります(22)。
敗血症の原因となる有毒な抗原の侵入ルートは
傷口などから血液に直接侵入する事も含まれますが、
呼吸器や消化器など環境暴露性の高いルートも含まれます。
医療資源が劇的に脅かされるパンデミックでは
こうしたルートによるものになります。
こうした暴露性の高い器官は
血液への侵入を防ぐため、粘膜系を最初の関門として
組織学的に多段的な防御機能があります。
粘膜の中には腸に限らず、気管、皮膚、肺などにも
細菌叢が存在します。
こうした細菌叢は人と共生し、
外界から受け取った物質を代謝し、
その一部は血中に供給されます。
その細菌叢に異常があると、敗血症で濃度が高まる
乳酸塩への代謝の過多が生じることもあります。
従って、敗血症の病因を考えるにあたり、
こうした消化器や呼吸器の細菌叢の働きを除外する事はできません。
一方で、敗血症の病理を考えるにあたり、
細菌叢を含めた乳酸塩の過剰な放出が重要である
ということを示唆するものです。
乳酸塩は数あるバイオマーカーのうち
すでにガイドラインに含められているものであるからです。
ここからは考察を含む調査になります。
小児の敗血症の診断が難しいのは
医師が臨床症状を確認するにあたり、
敗血症特有のそれがなく、多様であり、
初期の頃には明確な信号が現れにくいケースがあるからです。
しかし、敗血症は細菌、ウィルスの血管内の侵入によって
生じると考えられることから、
それらが放出する分泌物質や
それらに反応する免疫系のバイオマーカーを探すことが
重要になる可能性があります。
細菌、ウィルスの特定そのものは
一種類に限定されない事から難しい可能性がありますが、
上述した乳酸塩などある程度、
血管系に悪影響を高い確率で引き起こす共通的な
バイオマーカーを多角的に調べる事で
初期の診断に役立つ可能性はあります。
例えば、
C-reactive protein (CRP)
Procalcitonin (PCT)
IL-18
CD64
sFAS
sVCAM-1
PERSEVERE
これらが挙げられています(23,24)。
これらの他に、
full blood count
procalcitonin
platelet count
clotting screen
renal and liver function tests,
blood culture
これらなどが挙げられています(25,26)。
-
初期の体調維持、マネイジメントとしては
酸素補充を含めた呼吸の安定化が挙げられます。
その他、体温、心拍、血圧などもモニターされるかもしれません。
等張液を投与して血管内の液体量を補う
輸液療法などが検討されることもあります(27)。
また、候補となるバイオマーカーも上述したように多岐にわたり、
それらの数字データと敗血症の確率を分析するにあたり
AI(人工知能)による診断も検討余地があります(28)。
-
(後により正確な情報提供に努めますが)
ここから少し基本的な事も含めて考察します。
アメリカのピッツバーグ大学が中心となり、
1990年から2017年を対象とした世界の敗血症の発症と死亡の分析結果があります。
これがLancet誌で2020年に発表されています(29)。
この期間内で敗血症の発症は30%程度減少していますが、
世界的に発症率と死亡率の地域差が大きいです。
発症率、死亡率も高い地域は
アフリカ、南アジア、東南アジア、南米が挙げられます。
一方、発症率に対して死亡率がやや低い地域があります。
例えば、アメリカ、中国です。
発症率も死亡率も低い地域は
ヨーロッパ、韓国、日本、カナダ、オーストラリアです。
一方で、
2017年時点での発症の原因の上位は
①下痢(消化器)
②下部呼吸器(気管、気管支、肺胞)
③妊娠女性の母体の異常
④新生児の罹患
⑤マラリア
これらが挙げられています。
死亡の原因の上位は
①下部呼吸器(気管、気管支、肺胞)
②下痢(消化器)
③新生児の罹患
④脳卒中
⑤肝硬変
これらです。
これらから、なぜ地域差があるかはある程度、類推できます。
マラリアは熱帯性の蚊を媒体とする伝染病で
低中所得国で問題となるケースが多いです。
これらは高所得国ではガードされている疾患です。
また、下痢は一つの主な原因は水質です。
上水、下水処理の設備が整っているか?
また、水資源が豊富にあるかなどが関係します。
妊娠女性の母体の異常は
妊娠時の管理の質によって
その臨床結果が大きく変わります。
日本では母子管理手帳の普及により、
妊娠女性の治療の質が大きく改善しています。
こうした要因は敗血症の地域差に関係していると推定できます。
下部呼吸器は呼吸器の感染症と密接に関わります。
実際に新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の
重症の症状は敗血症と類似していると考えられています(30)。
例えば、川崎病は冠動脈に異常が出る事が多く、
その病理における微生物、ウィルスは
まだ特定できていませんし、
一つに収斂するものではおそらくないですが、
関係しない微生物、ウィルスも多くあると思います。
しかしながら、敗血症は
それよりも多くの病原性のある
微生物やウィルスに惹起された臨床症状の延長線上にあるという観点は
一定の合理性を持つかもしれません。
なぜなら、肺炎や腸炎など組織に炎症が起こると
免疫系や血中に対して病原性のある細菌、ウィルスの
直接的な影響を高めてしまうからです。
それは敗血症へのリスクを高めます。
言い換えれば、延長線上にあるということは
肥満状態、栄養状態など一般的な事も含めて
健康状態がよければ、
敗血症の原因となるような病原性の抗原の暴露があったとしても
それに至る極初期で体の防御反応が働くことも考えられます。
このことは敗血症の初期の予測や診断が難しい事とも関連します。
つまり、延長線上にあり、川崎病のように特異性がないので、
原理的に初期の段階で進行するかどうかがわからないということです。
子どもは特に急激に進行することがあることから、
敗血症の管理が難しいという事が考えられます。
例えば、平均寿命は乳幼児死亡率と密接な関わりがあります。
日本、スイス、韓国は平均寿命が高いです。
日本、韓国、スイスは確かに長く生きる人が多い
という事も要因として挙げられますが、
それ以上に平均寿命を一気に押し下げる
乳幼児死亡率が低いことも挙げられます。
世界の敗血症による死亡者数の半分は5歳以下とされています。
これは乳幼児の組織、免疫機能の未熟さとも関連している可能性があります。
冒頭で述べた様に近年の敗血症の定義は
感染症に惹起された免疫系の異常であるからです。
乳幼児の一般的な健康状態は
水質などを含め衛生状態など環境的な要因を含めて
敗血症の発症と死亡率を低下させる上で
非常に重要であるということです。
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