2023年8月30日水曜日 0 コメント

薬剤における重水素置換の効果

薬剤の製造においては、
製造工程や精製工程を経て純度が高められており、
不純物や未反応の化学結合は除去される傾向があります。
従って、薬物の安定性を考える際に
1つの視点になるのは
一部の固体材料の表面にあるような
ダングリングボンドを対象とするのではなく、
「基」の置換などを考えることです。
薬物の物質構成において、
水素基が含まれるケースは圧倒的に多いとされています。
水素は有機化合物の主要な構成要素であり、
薬物分子も有機化合物である事が多いため、
水素基を持つ事が一般的です。
骨格形成やそれに伴う立体構造の決定において
水素基は重要な役割を担っています(4)。
水素結合は弱い結合ですが、
その安定性は立体構造を形成していますから
その周りの場の影響を受けて変わることが想定されますし、
置換するためには、その置換物質が
そのサイトに安定的に存在できる特性を持つ必要があります。
従って、少なくとも
薬剤として安定的に生成できているならば、
水素結合が弱くても、水素基が頻繁に他の分子、官能基と
置き換わるかどうかはその条件によると考えられます。
一方で、
薬物の代謝反応において一般的な変換の一つは酸化反応で
薬物の炭素原子と結合している水素が酸素と反応し
水酸基に置換されます。
この時に自動的に反応が推し進むのではなく、
その反応を促進するための酵素が必要です。
その代表的な物質が
Cytochrome P450 (CYP) familyとされています(1,2)。
このように酸化反応が生じると
反応性があがり、有害な代謝生成物が生じたり、
親水性が上がることで尿として排出されやすくなることで
薬剤としての安全性や機能が低下してしまいます。
上述したように
薬剤に水素基が含まれることは一般的ですから
水素基のCYP酵素を介した水酸基への酸化活性をどのように下げるか?
これについて考えることが重要になります。

Rita Maria Concetta Di Martino(敬称略)らが示す
Fig.1bでは水素と重水素の
ギブスの自由エネルギーが
炭素原子との原子核の距離に対して
どのように変化をするかを書いていますが(1)、
重水素はその距離が小さい場合において
その自由エネルギーが小さくなり安定状態となります。
従って、水素よりも切り離しにくいということです。
ゆえに、水素を重水素で置換する事は
周りの分子の種類と立体構造によるので
必ずしもそうはなりませんが、
反応速度定数の理論限界で
おおよそ最大で9倍遅くすることが可能です(3)。
その様な差を運動学的同位体効果と呼びますが、
その程度を一般的に予測する事は難しく、
おおよそ経験的に水酸基置換が
どのような代謝経路によって
その運動学的同位体効果が上がりやすいかが示されています。
(参考文献(1) Fig.1dより)

その薬剤の非特異的な反応性が低く、排出圧力も低ければ、
当然、循環器内を含めた体内での薬物の寿命は上がります。
従って、より少ない量で、より少ない頻度で
同じ濃度に相当する薬効を期待することができます(1)。
しかしながら、
水素と重水素を置き換えるという事は、
単にその結合間の安定性を変えるだけに留まらないケースがあります。
例えば、
カフェインのメチル基の水素を重水素に置き換えた場合、
重水素の配座での酸化反応は抑えられましたが、
それ以外の位置においての
代謝反応が顕著に変わったことが示されました(5,6)。
一方で、このような代謝スイッチが起こらないケースもあります。
去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として
承認されたアンドロゲン受容体抑制剤である
Enzalutamideにおいて
アミドNメチルグループを重水素化した場合
代謝スイッチは起こらず、
薬剤としての安定性は向上したとされています(1)。
このような重水素サイト以外の領域の薬物代謝が変わる可能性以外に
非小細胞性肺がんの薬剤である
Osimertinibにおいて重水素置換をした場合、
鍵となるキーサイト以外との結合活性が高まることで
薬剤の選択性が失われた事が示されています(7)。
従って、副作用が強く出る事もあります。

薬剤の安定性、薬効、毒性を体内で意図しない形で
変化させる要因は様々です。
主に酸化反応、加水分解反応ですが
その反応を推し進める体内に存在する酵素について
◎cytochromes
◎alcohol dehydrogenases(8)
◎aldehyde dehydrogenases(8)
◎monoamine oxidases(9,10)
◎lysyl oxidase(11)
◎vascular adhesion protein 1 (VAP1)(12)
◎aldehyde oxidase (AO)(13)
これらが挙げられています。
このような酵素による酸化反応、加水分解反応による
毒性によって臨床試験が中止になる事もあります。
その酸化反応や加水分解反応を緩和する事が期待できる
重水素化はそれによるデメリットよりも
メリットが上回る可能性があります。

薬剤の分子認識の分析能力の高まりは
対掌性(キラリティー)の薬効への重要性を浮き彫りにしました(14)。
同じ分子構成からなる薬剤であっても、
2次元構造(配置)、3次元構造(配座)において
異なる構造をとる事があります。
上述したようにC-H結合においては
異なるサイトでそれが生じる事によって
配置、配座が変わることがあります。
それらが変われば、薬効、毒性が変わる事から、
その中から薬効が高く、毒性が低いような
最適な配置、配座を持つ構造が存在します。
しかしながら、そのような最適な構造は
必ずしも物理化学的に安定ではなく、
すぐに異なる異性体に変化するような不安定性が生じます。
C-H結合を重水素に置換してC-D結合にすることで
特定の立体構造により安定化させる事が可能になります。
これを「Deuterium-enabled chiral switch(DECS)」と呼びます(1)。
少なくとも立体構造が確定しないという事は
薬剤としての特性ばらつきになるので、
水素を重水素置換する事で構造がより固定的になる事は
特性を揃える上でも重要な要因になると考えられます。

重水素は結合状態を変える機能を持ちます。
例えば、2量体化や脂質過酸化反応を誘発する事で
栄養となる媒体を薬剤として利用しようとしたときに
それが酸化ストレスなどに対して不安定な場合であったとしても
過酸化反応が生じていることで
そのストレスに対してより安定な構造とすることができます。
それによってより安定に脳などに
特定の栄養素を届けるようなことができます(1)。

◎自己免疫疾患(15,16)114,115
◎炎症性疾患(15,16)
◎ダウン症候群(17,18)
これらにおいて
JAK抑制剤の利用が検討されています。
しかしながら、その結合選択性の問題から
重篤な副作用が出る事が示されています。
◎感染症
◎心臓関連のイベント
◎悪性新生物
◎血管生成
また、狭い治療マージンであり、
用量の許容範囲が狭く、
管理が難しいことも挙げられています(1)。
しかし、重水素置換を行ったDeucravacitinibは
従来選択的結合が難しかった
JAKホモロジー2にアロステリック機序で
高く特異的に結合する特性を有している事から
IL-12, IL-23, IFN-γの信号を仲介するTYK2を
選択的に抑える事ができ
上述した自己免疫疾患、炎症性疾患の治療において
新たな展望を提供しています。
このDeucravacitinibは上述したようにTYK2に対して
高い選択性を有しています。
結合親和性では
TYK2: IC50 0.2nM
これに対して
他のキナーゼ:>10000nM以上です(19)。
従って、非常に高い特異性を有していますが、
唯一JAK1だけは選択性を有する事が難しい結果になっています(19)。
(JAK1: IC50 1nM)。
ただし、乾癬に対して行われた
Deucravacitinibに対する臨床研究では
JAK1-3抑制で生じるバイオマーカーに影響を与えず、
TYK2に対してより選択的に作用している事が想定されています(20)。
Ian M. Catlett(敬称略)らがFig.3に示すデータによると
IL-17、IL-22、IFNなど炎症性サイトカインを顕著に減少させ、
臨床症状としても乾癬による皮膚の炎症が抑えられたとされています(20)。
安全性に関しては健康なボランティアに対する
用量依存的な副作用の評価が行われています。
その結果、心電計では異常がなく、
生じた副作用には咽頭炎やリンパ節の腫れなどがありましたが
全体としては許容できると評価されています(21)。

薬剤のC-H結合の重水素置換は薬剤の安定性を高める場合があり、
それにより半減期を伸ばし、投与頻度を減らせる可能性があります。
従って、元々、有効な薬において半減期が短く、
頻繁に投与する必要があり、
患者が医師の指示通り、続けて飲むことに問題が生じる場合に
(低い服薬コンプライアンス(Low patient adherence))
その薬の重水素置換が有効な場合があります。
例えば、遺伝性血管浮腫(HAE)の治療薬として
Bradykinin B2受容体拮抗薬(Icatibant)があります。
これが半減期が短く、上述したような問題がありました(1)。
その重水素置換薬であるDeucrictibantはIcatibantに対して
作用が速く、長く薬効を示したとされています。
また安全性も許容範囲であったと報告されています(22)。

子どもの脳腫瘍を含め、神経芽細胞種、膠芽細胞種では
放射線治療が主な治療法です。
重水素は放射線感受性が水素に比べて高いため(1)、
重水素置換をした薬剤で治療をした際に
その治療薬が脳腫瘍を形成する癌細胞に送達されれば、
その位置で放射線感受性を高め、
放射線治療の効果が向上する事が期待されると理解しています。
DNA-PKc抑制剤であり重水素が使用されているVX-984において
ヒト細胞由来の同所性異種移植モデルで
膠芽細胞種に対して、
VX-984に基づく化学療法と放射線療法を組み合わせた場合、
それぞれ単独の場合と比べて
マウスのケースで生存期間が上昇したことが示されています(23)。
このVX-984による化学療法単独では
延命の効果はなかったとされています。
従って、放射線感受性向上の効果が大きく出ていると評価できます。

この薬剤の重水素置換の課題は
C-H結合を乖離して、C-D結合に置き換える効率が高くなく、
そのへき開、結合は段階的に生じることです(1)。
そのような課題の中、下記、いくつかの方法で
効果的な重水素置換が試みられています。
◎N-alkyl amine-based drug molecules(24)
◎Photocatalysis(25,26)
◎Electrochemistry(27)
◎Radical chemistry(28)
但し、合成の際には過剰な重水素置換を防ぐための
プロトコルを開発する必要があります。

重水素置換の薬剤のベネフィットは多面的ですが、
Rita Maria Concetta Di Martino(敬称略)らの
SWOT分析(Fig.4)に基づいて
その弱点、脅威について挙げます(1)。
◎基礎研究から臨床応用までの予測不透明性
まだ、そのパスを通った薬が少ないため、
どれだけの薬が承認された実績があるかのデータが不足しているので
製薬メーカーはその適用率に基づく経営判断ができない可能性があります。
◎重水素置換の不制御性
重水素置換はC-H結合を置き換えるものですが、
高分子である薬剤のそのサイトは一か所では当然ないため、
任意のサイトに制御した形で置き換える事が難しいです。
◎分析の難しさ
重水素置換が実際にどこで生じているか?
その正確な分析が難しいです。
◎高い製造コスト
特許使用料なども含めると重水素置換によって得られる利益が
それまでの投資を上まわる見込みに対する不透明性があります。
また、重水素化する媒体は一般的に高価です。
◎ガイドラインがない
◎特許権(知的財産権)の問題

重水素置換は参考文献(1)Fig.4のSWOT分析で挙げられているように
多面的な付加価値があると考えられます。
その中で、特に付加価値が高いと考えられるのが、
脳腫瘍に対する放射線感受性が高まるという事です。
上述したVX-984は化学療法としての
脳腫瘍の効果において生存延長はみられませんでした。
もし、化学療法としての効果だけではなく、
◎ウィルス(29,31)
◎ナノ粒子(30,32)
◎抗体薬物複合体(33)など
薬剤を送達できる送達媒体による標的性が高まれば、
薬剤の効果だけではなく
放射線の効果も高まることが期待できるので
多面的な治療ベネフィットが得られる可能性があります。
小児がんも含めて、脳腫瘍の治療の効果、
副作用を下げていく事を考える際に
放射線感受性を上げる重水素置換を
研究開発技術要素の重要な一つとして位置付ける事は
一考の余地があると想定できます。

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2023年8月14日月曜日 0 コメント

癌細胞における重要な癌抑制遺伝子治療とその留意点

世界の平均寿命が公衆衛生の改善も含めて高まっていくと
あるいは、
もし、人の寿命の最大が120歳を超えて150歳くらいまでに
これからの劇的な医療技術の改善で実現するとしたならば、
そこで必ず向き合わないといけない共通的な疾患は
間違いなく「癌」です。
実際に疫学的に日本の場合でいうと
平均寿命が上がった結果、死因の一位は癌になりました。
Nature関連誌でも
医学系の総括論文で古くから存在する雑誌で
臨床系(Nature reviews clinical oncology)
基礎医学系(Nature reviews cancer)が対象となっている
疾患は癌のみです。
また、癌と密接に関係のある細胞生物学も
総括論文と専門論文の両方が古くから存在しました。
これがあるのはその他、免疫系になります。
免疫系も近年、癌免疫治療が注目され
免疫系と癌の関連の報告が増えていると思います。
それくらい癌は医学界において扱いが大きいという事です。
医学系論文の種類は科学界の中で一番多く、
その中で最重要視されている分野は癌です。
ただ、脳神経科学もこれと並ぶくらい重要ですし、
癌と同様に神経変性疾患は高齢になると向き合う必要のある事です。

寿命の延長を目標としている人は世界に多くいると思います。
そこで障害としてたちはばかるのが
まちがいなく「癌」で
言い方を変えれば
もし、人が癌という病を制圧、
あるいは医療介入によってうまく付き合う、共存する事ができれば、
本当に今まで実現しなかった
120歳以上の寿命を獲得する一つの要素を手に入れることになります。
例えば、
それ以上の寿命を得ようとすると
細胞の分裂の切符とされるテロメアを伸長させる事を考えることは
根本的なテーマの一つです。
しかし、そのテロメアの短縮システムが壊れたのが癌であり、
そのテロメアを伸長させる事は癌ととなり合わせです。
もっと広い観点で細胞の老化について考えるときに
細胞の老化は癌の防止因子になっているという報告もあります(7)。
従って、細胞の老化を止めるということは
そこには癌のリスクを高める広範な要因が潜んでいる可能性があります。
アシーナ・アクティピス氏は
癌を進化学を含めて考えている研究者の一人ですが
癌治療において
癌の特徴を根本的に定義しない事には
癌治療を普遍的に成功させる事は難しいのではないか?
このような視点を持っています(6)。
その答えは「癌細胞は協力を裏切る事である」ということですが(6)、
より示唆的なことにおいては
そもそも単細胞生物から多細胞生物になった時点で
生物は癌になる運命を副産物として抱えてしまったということです。
子供から細胞はどんどん組織の成長に伴って増えていきますし、
大人になって安定期になっても細胞は入れ替わります。
そのような細胞の動的な状態は
常に癌化のリスクを含んでいます。
しかし、「細胞同士の協力」(6)によって
そのような癌化は通常は制御状態にあります。
癌の様々な多様性を含めて考えると
一括に定義することも難しく、
それよりもはるかに難しいことは
普遍的に治療を成功させる事です。
おそらく人が120歳の寿命に定められているのは
テロメアの短縮でも説明されますが、
臓器の成長、成熟のセットポイントが決まっているような感じではないか?
と現時点で私は仮説を立てています。
つまり、言い方を変えれば、
人の寿命を150歳などにすることは
人の心臓を15/12倍に大きくするようなものだ
ということです。
それを全身でするということです。
そう考えると120歳以上の長寿命化、不老不死の実現が
如何に難しい事か容易に想像することができます。

しかし、癌をできるだけ共通的に治療したいという目的があります。
それが長寿命化の第一歩でもあります。
p53という遺伝子は癌化した時にアポトーシスさせる遺伝子で
癌遺伝子として代表的なもので
これに変異が入っているケースが
多くの癌で多くの割合で見られます。
従って、このp53という遺伝子に着目することは
癌治療において重要なコンポーネントの一つであるという認識です。
それについて調査する必要性が高いということです(1-5)。

一方で、そういった遺伝子の変異に着目する事は
2000年以降、遺伝子検査技術が発達し、
遺伝子改変技術も多く生まれ、
遺伝子が生物の形質を決める設計図で根本的なものであることから
非常に世界では重要視されています。
従って、
p53についてもその変異を正常に戻すことができたら
癌の一つの共通的な治療になるかもしれない
という視点を持っています。
そうした場合、
遺伝子改変技術や
異常なp53生理経路の中で
その化学反応を推し進める酵素の働きを制御することが
薬剤開発の一つの視点となり、
後者の薬剤開発は
「Kinese drug discovery」と呼ばれ、
20年の開発の軌跡があります(8)。
しかし、p53遺伝子の場合は機能を再活性化する必要があり、
過剰なたんぱく質の発現を抑制する
このような方式は適用できないかもしれないとされていますが(1)、
KRAS(G12C)抑制剤と同じように
変異型のタンパク質を抑える事は
癌細胞の機能低下を導くかもしれません。
その様な中で
◎p53タンパク質の配座の安定化(57)
◎p53タンパク質の配座の正常化(62)
◎変異型p53タンパク質のp63,p73との凝集の抑制(63)
◎p53タンパク質の分解の抑制(64)
これらの観点で薬剤が開発されてきました(1)。
しかしながら、
p53タンパク質を利用した薬剤は
その機能が広範にわたり、
通常細胞でも重要な役割を担っていることから
ハイリスク、ハイリターンの治療になりそうだと考えられています。
そういった中で
p53タンパク質を標的とした治療において
全てのp53遺伝子の異常を持つ癌に対して
一元的に治療できる方式(on-p53-drug-fits-all)を
見つける事は今までの薬剤開発、その結果をトレースすると
難しいことが徐々にわかってきたとされています(1)。

他方で、別の方向性が考えられます。
新型コロナウィルスのワクチン開発で明らかになったように
特定の遺伝子に対して
DNA、mRNA、タンパク質
いずれにおいてもその精製が可能です。
p53、RASのように重要な癌抑制遺伝子であり、
その変異が病因の一つとなるならば、
「正常な」これらのがん抑制遺伝子の
DNA、mRNA、タンパク質を
癌細胞に送達させることが考えられます。
キナーゼ標的薬剤では調整の為のポケットを見出し
それに作用するための薬剤設計をする必要があります。
そのたんぱく質を生み出す遺伝子に新たな変異が生じると
その薬剤の効果が顕著に下がることがあります。
しかし、この技術は
最終的に癌細胞内でアポトーシスや免疫惹起など
癌抑制性に関与する経路を活性化させる一つの因子である
癌抑制遺伝子のタンパク質を生み出すことが可能です。
この場合、基本的に遺伝子な逃避は起こりにくいかもしれません。
また、p53の遺伝子変異の形式は1種類ではありません。
ミスセンスの中にも数種類あり、
機能低下、機能増強などタンパク質の量に関わる変異もあります。
従って、正常なp53タンパク質を届ける手法は
個別の遺伝子変異に対してアプローチする方式よりも
より広範に作用する可能性があります。
但し、p53のファミリーとしてp63、p73タンパク質もあります。
これらは「ネットワーク」を築いて(65)、
細胞内で癌抑制において重要な役割を果たしている可能性があります。
そうするとp53だけを大量に細胞に送達すると
p53, p63, p73からなるネットワークのバランスが崩れることが懸念されます。
従って、p53タンパク質を細胞内に送り届ける事を
DNA, mRNA, タンパク質で考える場合には
p63, p73の付随的な働きについて注意する必要があります。
しかしながら、p63, p73は人の癌において
p53ほどの変異頻度の高さはないとされています(65)。
ただし、そうではあっても
p63, p73に変異が入っていないかどうか
それについて確認する事は必要かもしれません。

但し、細胞内でタンパク質を生み出す際に
例えば、p53やRASのように変異した際に癌生成と
関わりの深い癌抑制遺伝子に対して(9,10)、
それらが正常に働くようなタンパク質を
3次立体構造を含めて再現するのは
その構造に影響を与えるいくつかの因子があるため
単純に遺伝子とリボソームのみで決まるものではありません。
例えば、タンパク質の折り畳み構造を決める
シャペロンや糖鎖やリン酸などがあり、
タンパク質の質を制御するユビキチン化酵素などもあります(11)。
また、送達について考える場合
それぞれの寿命も重要です。
一般的にDNA > mRNA > タンパク質の順になります。
従って、送達媒体としてナノ粒子を使う際にも
これらの寿命を勘案して投薬設計する必要があります。
また、
正常なp53遺伝子にコード化されたタンパク質が
癌細胞に送達されたとしても
それに変異が入った癌細胞において、
本当に癌抑制システムを駆動させるうえで
物質供給として十分条件を満たすか?という事です。
もっとシステム化された状態で
細胞死プログラムが故障している可能性もあります。
あるいは癌細胞の中には
すでに豊富な変異型p53タンパク質が含まれており、
もし、薬物送達技術によって
正常なp53が癌細胞に送達されたとしても
それらの干渉によってp53の機能を十分に引き出せない
可能性があります(1)。
例えば、変異型のp53はp63、p73といった
同じファミリーのタンパク質と凝集する特性を持っています(58,59)。
この事はKanaga Sabapathy(敬称略)らがFigure 2に示すように(5)
p53タンパク質の機能増強(GOF)が生じた状態で
生存率が機能低下(LOF)よりも低い事と関連しているかもしれません。
この事はミスセンス変異が入った状態での比較ですが、
通常の構造でも量が増えると悪影響があるか?
それについて注意喚起の必要がある臨床データです。
なぜなら、量が増える事でp63,p73と凝集して、
あるいは絶対量の比として、
相対的にそれらの機能を弱めてしまう可能性があるからです。
このファミリータンパク質と凝集する特性によって
送達された正常なp53タンパク質が
癌細胞内に豊富にある変異型p53タンパク質と複合体化して
そのたんぱく質の機能を失ってしまう可能性があります。

実際に
このようなp53やRASといったがん抑制遺伝子を働かせるアイデアは
すでに考えられています。
例えば、p53のプラスミドDNAを細胞内に送達することで
すでに癌抑制効果があるという事がマウスのケースで
確認されています(12)。
このプラスミドDNAは染色体とは独立したDNAで
主に細胞分裂に応じて細胞質で数を増やすことができます。
従って、遺伝子工学、バイオテクノロジーにおける
遺伝子導入において一般的に使われる環状のDNAです。
ただし、一般的にプラスミドDNAからの
タンパク質生成効率は通常の細胞核内にあるDNAよりも低いので
現在、その効率的な合成を促進する試みが行われています。
また、DNAの場合はmRNAに転写する際に
細胞核に輸送させる必要がありますが、
mRNAの場合は細胞質への送達で実現可能で、
p53のmRNAは細胞外で精製する事が可能であるし、
上述したようにすでにそれはmRNAワクチンで証明されています。
従って、実際にp53-mRNAをナノ粒子の中に入れて
癌の治療を試みた研究があります(13,14)。
それによると一定の抗癌効果がある事が確かめられています(13,14)。

このような特定の遺伝子を導入して
そこから生み出されるたんぱく質を利用して治療する方法は
ナノ粒子を使って行われるケースが報告されており(12-14)、
細胞種特異的にこれらのナノ粒子を送達する事ができれば、
その送達効率は高まるため、
より副作用が少ない形で効果的に治療する事ができる可能性があります。

また、p53遺伝子を使った治療の場合
オフターゲットも想定されます
p53遺伝子の変異の中にはp53タンパク質の構造が変わったり、
生成量が減少するものもありますが、
同じ構造であっても増加するものもあり、
それが様々な癌との関連が報告されています(15,16)。
p53タンパク質が他の通常細胞に大量にオフターゲットされると
このGain-of-functionと同様の事が人為的に生じてしまう
ということも想定されます(自発的に量が制御される可能性もあります)。
実際に過去のp53を標的とした薬剤の中で
p53タンパク質を分解する際に生じるユビキチン化を
抑える薬剤が開発されました(MDM2抑制剤)。
この薬はp53タンパク質の分解を抑えるわけですから
p53タンパク質の細胞内の量が増える事が想定されます。
それを高用量で標的化していない状態で投与した場合、
胃腸に強い副作用が出ました(60)。
また血小板が顕著に減少しました(61)。
おそらく血小板やその前駆細胞に送達され、
その細胞の細胞死が促されたからかもしれません。
血中の細胞の送達効率が高いこも関連しているかもしれません。
この事は通常細胞にp53タンパク質が異常に増えた場合の
弊害を示唆するものかもしれず、注意が必要です。
これに関連して、
乳がんなど過剰発現変異が原因となっているケースもありますが、
このような癌の特質の場合
p53タンパク質を送達させると逆効果になる可能性がありますが
注意すべきは
その過剰発現変異が構造的なミスセンスを含んでいるか?
それとも通常の構造で過剰発現になっているかを見分ける必要がある事です。
一般的に癌でp53の変異で多いのは
構造が変わるミスセンス変異か
発現しなくなる(量が少なくなる)機能喪失変異です(17)。
ミスセンス変異が70%と言われます(1)。
p53は重要な遺伝子であり、
特に成長期には精密に制御されていると言われています。
従って、p53に関連した癌治療は
根本的な景観を変える可能性はありますが、
非常に繊細な制御と事前の遺伝子的検査が必要な可能性があります。
考えられる一つの技術は
薬剤の標的性を高める事です。
また、準備段階として確認が必ず必要なのは
がん治療であれば、癌細胞そのものへの作用だけではなく
試験管レベルでもいいので
通常細胞に対して正常な癌抑制遺伝子たんぱく質を入れた時に
どのような副作用があるか調べる事です。

p53の治療を考える場合には
考える軸としては
p53の変異(ミスセンス、機能喪失、機能増強)と
p53の調整機構(主にユビキチン化、miRNAによる分解)があります。
特にミスセンス変異がある時には
構造の異なるp53タンパク質が生み出されます。
これが細胞内でどのような新たな影響を与えるか?
ということを考える必要性があります。
一般的には癌ではミスセンス、機能喪失のケースが多く
p53の基本的機能である
◎損傷時の細胞サイクル停止によるDNAの修復(28)
◎細胞周期の調節、老化による異常増殖の防止(31)
◎修復不可能で異常な時のプログラム細胞死
◎血管新生の調整(32)
◎多くの遺伝子の転写の制御によるメンテナンス
◎抗酸化物質の調整(29)
◎免疫応答の制御
◎タンパク質の調整、オートファジー(27)
◎代謝機能の調整(解糖)、リモデリング(25,26)
◎細胞の移動性の制御(30)
◎細胞の分化(33)
◎骨のリモデリング(34)
これらが癌を制御する上で重要であり(19-21)、
これらの機能が喪失していると想定されます。
従って、機能の一つとして免疫応答の制御がありますから、
免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に影響を与える場合もあります。
例えば、胃がんのケースでp53に変異がない場合は
顕著に免疫チェックポイント阻害薬の効果が
変異がある場合に比べて高くなります(24)。
癌は例外を除いて、異形成、異常に増殖する傾向がありますから
そのブレーキとなるp53の機能がなくなる、弱まる傾向にある
と考えられます。
だから、
ミスセンス変異と機能喪失変異のケースが多いということです。
おおよそTP53遺伝子の改変の70%を占めると言われています(1)。
(ただ、機能増強のケースもあります。)
これに対してはp53タンパク質を供給するという事は
基本的にバランスとしては過少な状態から増えるわけですから
治療効果は得やすいという事になります。
そうした場合、p53の治療を考える場合において
一方で重要となるのは、
p53が機能増強した時にどのような副作用があるか?
この事について考える事です。
現時点でわかっている限りにおいて
少なくとも年齢に関わらず、
神経系においてはp53が機能増強すると不全が生じます。
神経細胞は癌化するケースがほとんどないので、
むしろp53による制御をあまり必要としません。
それよりもp53による細胞死のリスクの方が大きくなるので
増強された時のリスクが大きくなります。
実際に神経細胞においては
p53が機能増強する事は神経幹細胞などを通じた
脳の発達においてリスク因子となります(21)。
また、アルツハイマー病でもp53の機能が増強する事によって
そのリスクが高まるとされています(22)。
むしろ神経細胞においてはp53の機能喪失状態によって
逆に神経が保護されたとも言われています(23)。
心臓の心筋細胞などもそうかもしれませんが、
基本的に神経細胞や心筋細胞など癌化のリスクが少ない細胞においては
p53の治療によって、過剰供給のリスクがある場合には
ベネフィットよりもリスクのほうが高くなる可能性があります。
例えば、
発達期にある子どもの場合も
組織を大きくしていく必要があります。
その際には癌化しないようなシステムも必要ですが、
一方で、簡単に細胞死する事もリスクになります。
従って、p53の調整を精緻に行う必要があります。
上述したユビキチン化やmiRNAによる
タンパク質分解機能も優れているかもしれません。
しかし、p53によって過剰にタンパク質を供給すると
制御することが難しくなり、成長を阻害してしまう可能性もあります。
特に、小児の脳腫瘍の治療において
p53の治療を検討する場合には注意が必要です。
なぜなら、癌化しにくい神経細胞の近くにあり、
かつ、成長著しい時期でもあるからです。
このような要因を考慮に入れると
p53治療は小児の脳腫瘍には向かない可能性があります。
いずれにしてもp53治療を行う際には
その核酸やタンパク質が脳に送達されないように
管理する必要があるかもしれません。
また、ゾウなどは人よりも顕著に体が大きいのに
癌化しにくいと言われています。
その一つの理由はp53が多型であるということです。
これをピートのパラドックスといいますが、
人のケースでもp53が多型であると
寿命が長い傾向にあると言われています(22)。
これをバイオテクノロジーによって
多型にすることは遺伝子導入によって可能なので
それをマウスのケースでしたときにどうか?
それを試す価値はあるかもしれません。
しかし、p53は重要な遺伝子であり、
人で生まれながらに多型が存在し、
疫学的に見て寿命が長いという事も確認されていますが、
同じようにアリルの異なるp53を設計し
その核酸、あるいはタンパク質を投与したとしても
その多型である機能は一時的である事が想定されるし、
副作用もある可能性があるので、慎重な判断が必要です。

p53たんぱく質の機能は、
生体内、癌細胞は複雑なので例外もあるかもしれないですが、
基本的には細胞核にあるDNAに結合する事によって
上述した細胞の状態に応じた適切な応答を実現します。
特定の遺伝子に働きかけるということです。
Jinwoo Ahn(敬称略)らが図で示している様に(35)、
p53タンパク質の一つの末端部であるC-terminusの
様々な残基、エピトープにそれぞれ番号が割り振られ、
その番号に対応したDNA遺伝子があります。
この結合部位は通常は不活性な状態になっていますが、
C-terminusの一部が欠損したり、
リン酸化、アセチル化などが生じることで
タンパク質構造が修正され、
個別の遺伝子の発現に影響を与えるように
遺伝子に結合することができるようになります(36)。
当然、予測される事なのですが、
p53タンパク質が正常に応答するためには
p53に働きかける入力信号も正常である必要があります。
果たして癌の治療を考える際に
仮にp53タンパク質を送達できたとしても
p53タンパク質に作用する多種多様な信号が
正常な細胞に対して崩れていないか?
このような視点があると思われます。
また、p53タンパク質の機能を低下させる
タンパク質が癌細胞で過剰に発現している事があります。
例えば、MDM2, MDMXです(37)。
入力信号も含めて考えると
p53タンパク質単独では癌細胞を
十分に消滅させる事ができない可能性がある
という事が想定されます。
しかしながら、これらのp53抑制物質は
p53に変異が入っていない癌細胞において
過剰に発現されている事が多いということです(37)。
p53は広範ながん抑制遺伝子ですから、
癌細胞が癌の形質を獲得するために
偶発的に手に入れた代替的な機能であるという解釈もできます。
但し、p53を調整する機能は細胞の中にあり、
小さなタンパク質であるARFは
上述したp53の機能を抑制するMDM2の機能を抑制し
間接的にp53の機能を保護していると考えられています(38)。
このp53は細胞の中でオンオフのスイッチがあり、
遺伝子毒性があって癌化のリスクがあるときに
癌抑制機能を発現するために活性化する事があります(38)。
通常の細胞の状態では
p53は不活性の状態にあるとされています。
p53タンパク質をDNA、mRNA、たんぱく質そのものを送達させる事で
癌治療を行う場合、通常細胞へのオフターゲットも想定する
必要があります。
そうした場合、通常細胞に通常よりも多くp53が存在した時
特に強いストレスがなく、活性化因子が弱い場合において
細胞のバランスとしてどのような悪影響があるか?
これについて考える必要性が出てきます。
また、ここからが重要なのですが、
例えば、細胞にストレスがあって、
アポトーシス経路をp53起因で発現させる場合、
外的因子と内的因子があって、
そのうち外的因子とは
細胞の表面の受容体を活性化させる事であるとされています(39)。
(参考文献(38) Box 1参照)
これが細胞種特異的輸送系統と関連します。
p53をコード化したDNA, mRNA, p53タンパク質
あるいはp53遺伝子を書き換える場合、
ナノ粒子を使ってそれらを送達する事が提案されています。
この時にオフターゲットを減らしたいわけですから
p53の活性化の需要が高い細胞に特異的に送達させたい
という需要があります。
上述したようにp53によってアポトーシス経路が活性化した時
その外的因子として、細胞表面の受容体が活性化します。
この受容体に対して結合性を持つ抗体やタンパク質を
ナノ粒子に架橋、複合体化させれば、
p53タンパク質の需要が高い細胞に
特異的に送達させる事ができる可能性があります。
これは癌細胞だけではなく、
癌細胞と通常細胞の間の少し問題のある癌の芽となるような細胞においても
その前駆状態ではp53活性の信号が細胞で高まっている事が
可能性として考えられるため、
その時に発現されている受容体をキャッチし、
そこに特異的にナノ粒子を送達させる事で
p53の機能をより確実に引き出せる可能性もあります。
その時にその受容体のリガンドをそのまま使うことができれば、
下述するアポトーシスに関わる受容体であれば、
その信号を誘発しつつ、かつp53タンパク質を
細胞内に送達させる事ができる可能性もゼロではありません。
そのままエンドサイトーシスしなくても、
少なくとも近くまでは輸送することができます。
但し、Douglas R Gree(敬称略)が
Fig.1に示すように細胞死受容体(Fas)のケースで言えば、
細胞外の構造の配座が変わっている可能性ももちろんありますが、
細胞内部の装飾のみが変わっていて、
信号伝達の有無が決まっている可能性もあります(38)。
もう一つの癌細胞特異的な送達効率を上げるモデルとして
癌の新抗原を標的とした送達があります。
Ori Hassin(敬称略)らがFig.4に示すように(1)
モノクローナル抗体に2つの特異性を持たせて、
エフェクターT細胞を活性化、引き寄せつつ、
TP53の新抗原を認識する抗体を
TP53遺伝子、DNA、mRNA、タンパク質を封入した
ナノ粒子に複合体化させ、送達効率を高めることが
現在の医療工学技術によって可能です。
この場合、免疫機能を同時に誘発することができます。
ケモカインなども同時輸送する事で
さらに広範に免疫細胞を引き寄せる事もできます。
p53は代謝とも関連があります。
細胞の糖レベルが下がると
細胞の寿命を短くしたり、増殖を抑えたりする機能があります(40)。
しかし、この機能がロスすると
栄養不足のまま増殖し、おそらく代謝機能が崩壊して
異常な成長を示す癌化につながってしまいます。
飢餓状態になるとp53は活性化される傾向にあり、
空腹状態の癌治療についても考えられていますので(41-44),
それと組み合わせて、
上述したp53を送達させる治療を行えば、
より効果的である可能性もあります。
癌治療は、癌細胞を細胞死させる事も重要ですが、
その周りにあるストレスを受けている癌になる前の細胞においても
一定のケアが必要です。
その際に、正常なp53の機能は重要ですから、
それが活性化しやすい間欠的空腹など低糖状態にしておいて、
その状態でp53に関連する核酸やタンパク質を含む
ナノ粒子を送達させる事で癌細胞だけではなく、
その周辺の細胞の適切な機能を確保する事ができる可能性があります。

基本的には癌のリスクは高齢になると上昇しますし、
命を落とすリスクの上位にくる疾患ですが、
癌に罹りやすいからといって、
一義的に寿命が短くなるというわけではなく
少なくともp53遺伝子の観点では複雑です。
p53遺伝子において生まれながら2つのアリル(遺伝子座)がある
人が一定割合います。
p53タンパク質のポジション72において
アルギニン(Arg)がプロリン(Pro)に置き換わっている
タイプのp53タンパク質がArgタイプと混在している
遺伝子多型の人がいます。
Proタイプはアポトーシス活性が落ちるために
癌に罹りやすいのですが、
一方で、寿命を延ばす効果があるようです(45)。
上述したようにゾウでは体が大きいにもかかわらず、
体全体の細胞数が大きいにもかかわらず、
癌に罹りにくいということはp53遺伝子の多型が関連している
という推測もありますが、
人のp53遺伝子の多型では
その活性がわずかに低下しているケースもあるようです(38)。
その結果、上述したように癌に罹りやすいということです。
確かにp53タンパク質の基本的機能の中に
◎細胞周期の調節、老化による異常増殖の防止(31)
これがあります。
しかしながら、p53遺伝子の機能が高まるからといって
老化が促進されるかどうかは定かではありません(38)。
酵母やマウスなどいくつかの有機体で
カロリー制限は寿命が長くなることが示されていますが、
考えられる一つの理由としては
神経細胞のp53活性の低下が挙げられています(46)。
p53の機能の一部は、
細胞死、癌化に関わっているわけですが、
基本的に神経細胞は癌化するケースがほとんどないので、
神経細胞に限っては細胞死が抑えられているほうが
延命のためにはよさそうだという事が
仮説の域はでませんが、想定されます。
実際にアルツハイマー病では神経細胞のロスによって
脳の萎縮が生じるとされています(47)。
神経系の自己免疫疾患でも脳の萎縮がみられるとされています。
その神経系の自己免疫疾患によって
自己抗体が自らの神経細胞を攻撃する事によって
その連結も含めて失われ、結果として組織的に萎縮する
ということであると考えられます(48)。
いずれにしても神経変性の疾患で広く見られる
脳の萎縮は神経細胞の減少と関連している可能性が高い
という事が言えそうです。
上述したアルツハイマー病ではp53遺伝子が改変され
その活性が高まっているケースがあるとされています(49,50)。
これらを総合して考えると
p53のような細胞死に関わるけど、癌を抑える遺伝子に関しては
神経細胞や心筋細胞など癌に罹りにくい細胞においては
少なくともその活性は高まらないほうがいいと言えそうです。
むしろ、少し抑制しているほうが
結果として神経保護によってメリットがあるかもしれません。
p53が非常に普遍的な遺伝子であるとするならば、
癌を抑えながら、細胞の寿命を延ばすという
両方を同時に得ることは難しいかもしれないという事です。
冒頭で述べた様に
例えば、人の寿命を150歳まで上げるという取り組みがなされる際には
テロメアなど細胞分裂の回数を決める染色体末端構造も
重要ですが、おそらく細胞死を制御しているp53遺伝子の働きに
焦点を当てる事も重要です。
すなわち、p53遺伝子の活性を抑える事で
細胞の延命を図る事は上述した事と関連して考えると
人の寿命を延ばすうえで基本的な要素となりそうです。
しかし、それをすると癌化のリスクが同時に高まるという事です。
そう考えると癌はやはり延命する際に隣り合わせとなる
疾患であるといえそうです。
ここからが非常に重要です。
おそらくp53遺伝子の活性は生涯経時的に様々な細胞種で
その役割に応じて変化しているのではないか?
このような仮説を立てました。
なぜなら、胎児、子どもの頃は成長させる必要がありますから
p53遺伝子の一部の機能は障害要因の一つとなるはずです。
そうであるとするならば、
少なくとも幹細胞など重要な細胞種において
p53遺伝子の活性が抑えられている可能性がある
と考える事もできるからです。
従って、
幹細胞とp53遺伝子の関連について調べる事は重要です(51)。
実際に、例えば、マウスのケースですが、
胚形成においてはp53タンパク質の量が劇的に減少している
ということが示されています(52)。
また、幹細胞でも想定通りp53は不活性になっている
という報告もあります(53,54)。
但し、必ずしもあてはまりません。
マウスのES細胞ではp53が豊富であったという報告もあります(55,56)。
p53は多能性を有している細胞の分化において
重要な役割を持っています(51)。
これは仮説ですが、
p53遺伝子から生み出されるたんぱく質は
細胞核にある遺伝子の特定の部位と結合して
その遺伝子の働きを制御する事で
細胞内の様々な機能と関連します。
そのp53タンパク質のDNAへの結合親和性は
末端構造のCターミナルの配座の変化によって変わります。
この配座の変化がいわばオンとオフのスイッチになっています。
従って、このオンとオフのスイッチによって
強いストレスが罹った時にはオンになって、
あるいは分化など必要な時にはオンになって、
通常は細胞死しないようにオフになっているということかもしれません。
つまり、p53は状況に応じて精緻に制御されているということです。
この観点で考えると
癌化を防ぎながら、細胞の延命を図るという両立は
p53の活性と不活性を決めるいわばスイッチの機能が
健全に働いているかどうかに一部依存する
可能性があるという仮説が成り立ちます。

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2023年8月10日木曜日 0 コメント

常圧室温超電導の現在の理解と方向性

Sukbae Lee(敬称略)らによって
常圧で400Kを超える常圧室温超電導が出来た可能性があるという事です。
ある方の評価ではもし証明されれば、
世界的な革命になるはずであると言われています。
実際に過去、界面の超電導というのは酸化物を中心に出ていて
その様な界面は
平板に層状にミルフィールのように重ねて
結晶成長させる事が通常なのですが、
今回は材料そのものに「シリンダー状」の層が縦方向にできて
縦方向に形成された内側と外側の界面付近で
2次元電子ガスが
電荷密度波を生むと予想されている
1次元の結晶のつながりを中心にして(?)生じる事で
超電導が実現された可能性があるということです。
鉛イオンを銅イオンに置換する事で強力な圧縮歪がかかり、
それによって電子系も圧縮されて
密度が強まって相互作用が高まった可能性があります。
電子密度を高めることは
基本的には高温でクーバー対をつくるうえで重要であると理解しています。
局所的に圧縮しているという事も本質的に重要です。
通常、2次元電子ガスというのは
密度を高める事が非常に難しいです。
それが局所置換によって可能になったということです。
今までの2次元電子ガスというのはおそらく3次方向の広がりもあって
高密度になっていなかったということもあるかもしれません。
しかし、今回は強力な圧縮歪によって電子系が強く界面に引き付けられる事と
そのベクトルも関係しているかもしれません。
つまり、中心に収束するように力が加わっている事が
層状の圧縮歪とはベクトルが異なるということです。
おそらく
one-dimensional(D) chains(Pb2−O 1/2 −Pb2 along the c-axis) 
の1次元の効果
と圧縮歪による2次元電子ガスの効果が
両方効いているということです(1)。
1次元の効果は電荷密度波に関わっているので、
電子ガスによる電子の閉じ込めだけではなく
その場の中での電子分布の揺らぎがある可能性が示唆されます。
このCDWの物理はこの超電導モデル、電子分布の上で重要なので
分析(4)によるそのエビデンスが欲しいです。
この2次元電子ガスの効果を
「超電導量子井戸」と呼んでいます(2)。
私が2022年に1月に提唱したのが、
クーバー対を量子井戸に閉じ込めればいいというものです。
青色LEDや半導体レーザーは室温で動作できるからです。
これはどういう構想かというと
エネルギー的に束縛した状態で
クーパー対をつくるというものです。
従って、クーパー対の条件とともに
近隣のエネルギー状態をよく考えて、
できるだけ急峻で、深いエネルギーポケットを作る事が重要です。
光によって材料中のイオンを動かすことによって
歪の量を変えられる可能性があります(9)。
材料中の銅イオンの位置を少し動かすことができたら
特性に影響を与える可能性があります。

この材料系はおそらく超電導が材料全体に生じるわけではないし、
界面付近だけですよね。
1次元に近い可能性もあります。
それがまた縦方向に切れ目なく
つながらないといけないわけですから、
少なくとも超電導現象が生じる部分は
材料のうち一部であるという解釈です。
従って、超電導の回路としては脆弱な可能性があります。
それが再現が難しい事と関連しているかもしれません。
材料としての結晶性も問われると思います。
例えば、結晶の中に格子欠陥があると回路が途切れてしまいます。
銅に置換するわけですから、すべての銅が入れ替わるかという
要因もあります。そうすると、どういう事が重要か?
銅と鉛の入れ替わり率を何らかの方法で評価する必要があります。
この知恵を持っている人は世界にいるはずです。
もともと結晶に入っている格子欠陥を
特にシリンダー付近の重要な位置において定量化する必要もあります。
結晶成長は私の一番の専門です。
上述したように良い結晶を作る事が基本にあります。
温度、形成速度、前駆物質、圧力、成長方式など
あらゆることを最適化する必要があります。
例えば、参考文献(2)で示されていますが、
合成する周りの物質(石英、銅)で特性が変わります。
また、X線評価など結晶性をフィードバックする事も非常に重要です。
また、2次元電子ガスができる界面のTEM評価などもできるでしょうか?
界面に対して垂直方向に加工する必要がありますが、
パルスレーザーで結晶にダメージを与えず加工できるかもしれません。
この辺は日本、ドイツの技術ならできる可能性があります。
そうして六角形状の断面の格子像を見て、界面の品質を評価します。
青色LEDでは量子井戸構造GaN/InGaNが活性層ですが、
発光効率の中で重要な要素の一つがGaNとInGaNの界面急峻性です。
その評価として高解像度のTEMで格子像を見る必要がある。
シリンダー状の界面においてどのような格子状態が理想か?
それは評価して、特性をみて判断していかないといけません。
今回の室温超電導の一つの重要な学問は界面物性物理ですから
界面の特性がおそらく生命線の一つであり、
そこをエビデンスに基づいて詳細に詰めていく必要があります。
後、見たいのはSIMSですね。
不純物の濃度も見ていく必要があります。
石英と銅で品質が変わるみたいなので、
その一つの原因は結晶中の不純物濃度だと思います。
SIMSは最小で10^16/cm3くらい。
つまりアボガドロ定数から7桁落ちくらいまでみれるので、
不純物の評価には一般的に使われます。
これは、私たちの専門では常識的なことです。
後、断面が綺麗に出れば、XPS測定もしたいですね。
表面の元素の種類、量、化学結合状態がみれます。
これは、私、実務経験がありますからね。
とにかく合成して、考えられる様々な解析をすることです。
下述するEPRやCDWの評価ももちろん重要です。
上述した多様な評価と関連付ける、紐づけます。
そのフィードバックを速く回して、議論して、考察して
世界中の様々な論文を調べて、読んで、
条件を考えて、作る。それの繰り返しです。
後は、統計的な評価も重要です。
数字のデータを多元的に評価することです。
今は人工知能など使えるかもしれないですね。私は経験ありません。
室温超電導はとにかく特性をかなりのレベルで上げないと
産業応用にはたどり着かないと思います。
実際に外部磁場、電流量が多くなると壊れますよね。
少なくともその土台となるのは結晶の品質です。
参考文献(1,2)で示された理論がありますが、
その理論通りとなるためには、設計も大事ですし、
その設計通りの品質も大事です。
その為には合成方法の最適化、評価(エビデンス)が大事です。
今よりももっと材料としての最適な組み合わせがあるかもしれません。
それも探索する必要があります。

全ては2次元電子ガスの密度、歪、
そして1次元の効果を
エネルギ分布、電子の分布、流れに対してどう見るか?
それによってこの技術を発展させていくことができるはずです。
またシリンダーの密度、方向を考える事で
全体としての超電導特性に影響を与えるはずです。

原子の置換によって
歪を導入できるわけですから、
もっと圧縮歪を与える事ができる組み合わせ、
原子もあるかもしれません。
それを探すのは重要なポイントです。
その時にSukbae Lee(敬称略)らが観ている様に
EPRの温度特性で2次元電子ガスをしっかり評価することです。

材料に光を当てるという事も考えられます(3)。
それによって超電導現象を強調させられる可能性も
あるかもしれません。
実際に超電導秩序パラメータと呼ばれる
クーパー対の位相と振幅を示す因子があります。
それを光によって間接的に増大させた報告があります(5)。
一般的にクーパー対の振幅を上げることができれば、
既存のクーパー対がその振幅増幅によって
他のクーパー対の形成の為の励起状態の形成を容易にする
と現時点では理解しています。
それによって超電導状態は安定化します。
上述したように「間接的に」としたのは
基本的にクーパー対の振幅を直接的に増大させる事が難しい
と考えられているからです。
例えば、半導体レーザーの場合は
エネルギーギャップに相応する光を共振させて
コヒーレントな光を干渉させることで、
ボースアインシュタイン凝縮を誘導することができると考えられてます。
しかし、クーパー対の場合は
レーザーと異なるのは光ではなく
電子の供給によっての相転換ですが
仮にレーザーの原理が当てはまるとして
光で励起しようとしたときには
クーパー対のエネルギーギャップが数meVなので
光の波長にすると約200μm(200000nm)となります。
このような狭いバンドギャップの状態で
レーザーと同じ原理で共鳴させ、誘導させる事は
原理的可能かどうかはわかりませんが
技術的には少なくとも難しいということかもしれません。
従って、Kazuki Isoyama(敬称略)らが示すように
間接的に電子-正孔(5)系を光で操作させる事で
超電導を誘発させるというプロセスが現実的である
という理解です。

もう1つ考えないといけないは
今回の超電導モデルが2次元系、1次元系の電子の振る舞いである
という可能性があることです。
2次元電子ガスのモデルと超電導のモデルを考えるときには
初めにウィグナー結晶のモデルが挙げられる事があります(6-8)。
これは2次元の電子系のクーロン引力が運動エネルギーに対して
非常に大きくなっている時に生じると言われています。
従って、通常はクーロン引力を上げるため
強い磁場をかけないと生じないとされています。
無秩序に動く能力を電子が獲得していると、
エントロピー増大の法則で位置が固定されない
という事があるからだと思っています。
超電導は非常に複雑なので一般的に述べる事はできない
とされていますが、
電子の位置の秩序が守られているほうが
クーパー対は生じやすい傾向にあると言われています。
その為には系の電子密度を上げて、
相対的にクーロン力を上げる事と、
電荷密度波のように周期的に電子の規則的な動きが
個別の電子、集団としての電子群で生じている事が
好ましい可能性があります。
格子振動相互作用でもあるように
電荷密度波においても、
電子間の距離が周期的に
遠くなったり、近くなったりしていると
その動きによるエネルギーと
最も接近した時の優位性によって
クーパー対の形成が促されるかもしれません。
しかし、超電導は非常に複雑であると考えられており、
一般的な傾向を示すのが難しいとされています。
従って、
繰り返しますがあくまでも可能性です。

Danijel Djurek(敬称略)が
Ag5Pb2O6/CuO Compositeで
138Kで超電導を示すという報告を挙げています(10)。
鉛、銅、酸素が関わっているという事で
今回の材料と類似性は一定見られます。
参考文献(10)の被引用件数は3件であまり注目はされていません。
Danijel Djurek(敬称略)は
Pb6-xAgx(CO)9という材料も合成しているようです。
しかし、少なくとも超電導の再現が得られていないとされています。
今回は銅の添加が一つのキーとなると思います。
それが結晶の圧縮歪に関わっているからです。
通常のドーピングでは
例えば、窒化ガリウム(GaN)のケースでは
p型半導体ではマグネシウムがドーピングされますが、
アボガドロ定数の2桁、3桁落ちくらいの
10^20/cm3くらいいれると
結晶性が著しく落ちる事が一般的に知られています。
従って、p型半導体を作るのは比較的難しいです。
この時、一部のガリウムに対して、マグネシウムが置換されます。
ここでの銅はドーピングレベルではなく
結晶の基本構成要素となっているので、
この銅が本当に意図した結晶サイトに入っているか?
つまり、鉛に対して置換されているか?
その上で、結晶性はどうなっているか?
同じ族なら比較的置換は楽です。
例えば、ガリウム、インジウム、アルミニウムの関係のようにです。
鉛と銅ではどうか?
論文中では多結晶という話もあり、
参考文献(1)Fig.2(b)に示される
X線回折のピークもドープ量が上げると顕著に下がっているので
結晶の基本的な品質でみると低いかもしれません。
但し、これが必ずしも特性を悪くするかはわかりません。
SIMSで銅の結晶中の濃度を見るにしても、
その濃度だけでは判断できません。
本当に参考文献(1)Fig.3(a)に示される結晶サイトに
Cuが入っている必要があります。
Cuが完全に置換されたときにどれくらい結晶が収縮するか?
この理論値がわかれば、
Fig.2(a)でAエレメントのX線のピークがシフトしているので
そのシフト量から計算される格子定数の変化を見る事で
どれくらいの割合の銅が入っているかの評価はできるかもしれません。
参考文献(1)Fig.3の結晶構造と基本的な化学式から
銅(Cu)を組成レベルで添加するときには
シリンダー構造の外側に排他的に銅が本当に置換してくれるか?
もし、内側に銅が入れば、シリンダーに対して
歪は伸張歪になってしまいます。
混在すれば、歪は打ち消しあいます。
従って、強い圧縮歪を入れるためには
外側のサイト「だけに」銅を置かないといけません。
評価として重要になるがX線のシフト量になります。
これが歪の量を示しているので、
これが大きければ、特性がいいか?
あるいは最適値があるか?それを確かめていくことになります。
半値幅、ピークなど結晶性も評価する必要があります。
選択的に置換するときには色々考える要素はあると思いますが、
基本的には置換するサイトの結合性、束縛が弱い場合には
当然、そのサイトは置換されやすいという事になります。
元々の絶縁体の鉛のアパタイトがシリンダー構造の外側の
サイトが内側に対して相対的に周囲の結合性が弱ければ、
鉛と銅は価数が同じなので、外側のサイトに入りやすくなる傾向にあります。
しかし、それは合成条件にも依ります。
化学反応を考える際、
合成前の初めのエネルギーがあって、エネルギーのバリア、山があって
最終的に生成物のエネルギー状態があります。
これらの関係は合成温度によっても変わると考えられます。
もちろん、前駆物質、圧力、触媒なども関係すると考えられます。
例えば、合成温度で言うと
窒化ガリウムの場合はそれよりも小さな元素であるアルミを
混晶として入れる場合、
窒化ガリウムの最適な合成温度よりも高い合成温度に最適点があります。
したがって、今回の銅を鉛のアパタイトに入れる合成も
銅は顕著に鉛よりも原子量が小さいですから、
925℃という比較的高い温度で合成されています。
熱力学的安定性は格子定数だけは定義できませんが、
窒化ガリウムのケースでいれば、
格子定数が大きな窒化インジウムの場合、
格子定数が小さい窒化アルミニウムの最適な合成温度にさらす
つまり、窒化インジウムの最適合成温度よりも顕著に高温に暴露すると
結晶化して、安定している状態でもインジウムは結晶中から脱離します。
参考文献(1)のFig.3(a)を見る限り、
外側の鉛のサイトの方が周りの元素との距離が大きくなっており、
内側の鉛サイトは密に凝縮している様に評価できます。
そうするとこの差から最適な成長温度、圧力を探して、
外側だけを効率的に入れ替える方法が存在するはずです。
組成からすると
Pb10-xCux(PO3)6Oにおいて
x=5、つまり鉛と銅の比率は1:1が良いと考えられます。
その状態でシリンダーの外側サイトだけ入れ替わるのが
中心収束的な圧縮歪をかける上では理論的には最大となるはずです。
また、圧縮歪という観点でいれば、
組成の数桁落ちのドーピングレベルでも改変する事が可能かもしれません。
基本的には3d軌道の電子量が多い銅を基材とすることが理想かもしれませんが、
それよりも原子量が小さないくつかの元素を選択することができます。
格子サイトだけではなく、格子間位置(interstitial sites)にリチウムなど
非常に原子量の小さな元素を入れる事が窒化ガリウムのケースでは可能です(11)。
基本的に圧縮歪を結晶中に掛けたい場合には
もちろんどのサイトに入るかによると思いますが、
基本的には原子量の小さな元素を選択する事が多いかもしれません(12)。
従って、リチウムは選択肢の一つになる可能性があります。

X10(PO3)6Oという基本構造は
10x+(-3)*6+(-2)=0なので
x=2で基本的にXは二価の陽イオンであれば
置換可能ということになります。
従って、上述したドーピングの話は価数が異なる元素をいれるので
鉛と銅は価数が一致しているので、
窒化ガリウムのケースで言うと
インジウム(InGaN)やアルミニウム(AlGaN)で3元混晶を作るようには
簡単にはいかないけど、
シリコンやマグネシウムをドーピングするよりも
高濃度で添加することができる
という結論になりそうです。
この物質は
最後の酸素の部分が水酸基であることもありますが、
調べてみるとXが鉛や銅の他にカルシウムもあります。
基本的に電子を最も収容できるのは3d軌道であり
電子が多いことで強相関が生まれやすいと言われています。
3d軌道は遷移金属などの元素で一般に見られ
鉄や銅を含みます。
今までの実績では
基本的に鉄系よりも銅系の方が超電導温度は高く
置換するとしたらやはり銅が最適となるのかもしれません。
いずれにしても鉛をもっと環境に優しい元素に変えたい
というのがあります。
それでかつ、超電導の特性が良いならなおさらいいという事になります。
鉛と周期表が近い物質で無害で豊富に含み2価のイオンを含む元素は
スズ(錫)ということになります。
但し、スズはS軌道が5s軌道であり、原子核からの距離が
鉛の6s軌道よりも短いので極性相互作用が弱くなります。
そうするとやはり鉛という事になります。
鉛に近くて無害で豊富に含む元素としてビスマスが挙げられますが、
これは陽イオンとしては3価です。
ビスマスは重金属の中では環境への影響が比較的少ないと言われています。
しかしながら、埋蔵量は鉛の方が多いです。
電線などに使う事を想定するのであれば、
埋蔵量が多いほうがいいわけですから
そういう点でも鉛ということになります。
また、価数の整合性から
ビスマスを無理に組む込もうとすると結晶構造が大きく崩れます。
より強い歪をいれるためには周期表で離れている方がいいでしょうし、
そういう観点でも銅に対して錫がある第五周期よりも
鉛がある第六周期の方がいいと考えられます。
細かい物理的な議論はあると思いますが、
より抽象的には、
歪を入れるためには周期表で離れていて
かつ同じ価数の元素が好ましく、
電子相関としては3d軌道に多く電子が含まれている元素が好ましい
という事になります。
3d軌道は遷移金属となるので第4周期からであり、
銅という比較的最適な元素が選択されています。
それに対して埋蔵量の多い第6周期の鉛が選択されています。
まだ、わかりませんが、
室温超電導がもし立証されたとしたら
その材料として鉛を使う事は避けられない可能性があります。
鉛は埋蔵している国が比較的分散しているので
そういう点でも好ましいと思います。
そうした場合、製造プロセスの管理、リサイクルなど
環境に配慮した形で鉛を使用する事が求められます。
代替の元素を見つけるよりもそちらが現実的かもしれません。
世界の産業を支える鉱物資源というのがあり、
その鉱物は
◎ベースメタル
◎貴金属
◎レアアース
◎その他レアメタル
これらにわかれています。
そのうちベースメタルが
鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉛
これらになっています。
今回の超電導はメタルの部分は
銅と鉛が使われているわけであり、
高価な銀、金、白金やレアメタルが使用されているわけではありません。
確かに鉛は環境への影響が懸念されますが、
超電導が出来た時の巨大なメリットだけではなく、
その他、様々なことを総合的に考えます。
Sukbae Lee(敬称略)らの超電導が証明されれば、
単に物理的な観点の偉業だけではなく、
産業応用を考えた時の材料選択としても革命的です。
リンも埋蔵量が多いと言われています。
今回、もし超電導が再現できないとなったとしても
引き続き詳しく研究、開発を続ける価値は十分にあります。
考えられる別の可能性として、超電導ではなく
今までの理論では説明できない非常に低抵抗な現象だった
としても材料としての魅力は残ります。

研究チームによれば2000回くらい条件だしを行ったとされています。
論文に合成方法は記載されていますが、
同程度の特性を得る事は難しい可能性があります。
過去Danijel Djurek(敬称略)の研究(10)でも同じですが、
本当に超電導を示すかどうかは
研究グループから示された結果を疑う事も大事ですが、
マテリアルとして本当に再現しているか?
そこを疑う事も大切です。
今回の材料であったり、参考文献(10)に関しても
しっかり材料の品質と設計を最適化していけば、
再現できるかもしれないし、さらに特性が上がる可能性があります。

超電導の際には相転移が生じる必要があります。
同じ量子状態を取ることができないフェルミ粒子である電子が
ボース粒子のように濃縮する事によって超電導相転移が起こっています。
クーパー対は抵抗がないという事は光のようなボース粒子
の特徴があると理解しています(17)。
そのように仮に想定すると、
これは、まるでLEDの再結合のようです。
なぜなら、発光ダイオードも
フェルミ粒子の電子と正孔が結合して、ボース粒子である光に変わるからです。
従って、発光ダイオードの再結合について考える事は
超電導のまだ不明な点が残る相転移の理解に近づくかもしれません。
少なくとも超電導は
自由電子同士の位置が近づいた状態で
かつ両者において引力が働いている事が重要であると考えました。
しかし、これだけでは不十分なようです。
LEDでは再結合を考える際、
横軸に波数、縦軸にエネルギーをとります。
これをE-k分散と呼びます。
このE-k分散において
再結合粒子である電子と正孔の横軸、つまり波数が一致している方が
一般的に再結合確率が高くなります。
しかし、これは絶対条件ではないと理解しています。
位置に関しても当然、近いほうがいいです。
従って、位置を近づけるために
数ナノ程度のエネルギーポケット(量子井戸)を作ります。
それによって電子と正孔はその空間内に束縛されます。
しかし、LEDの経験上、
このエネルギーポケットをさらに小さくした方がいいか?
というとそれも必ずしもそうではありません。
おおよそ2nm~3.5nm程度の幅がよさそうでした。
しかし、最適値は歪、結晶性、電流密度によって変わります。
従って、超電導においても
LEDの電子と正孔の再結合を参照にするのであれば、
電子同士の波数と位置が重要なはずです。
波数とは運動量なのでフェルミ粒子の場合、速度になります。
従って、隣り合う電子が近ければ近いほどよく、
それぞれが光学フォノンのように逆位相を持っていて
その速度が一致していると超電導の相転換は起こりやすいかもしれません。
ただ、電子と正孔の場合は有効質量が違いますから、
本質的には速度の一致ではなくて、波数、運動量が
一致していることだと考えられます。
一方、超電導の場合はLEDのように正負の電荷で
自動的に引き合う物理は働かず、
マイナスの電荷をもつ電子同士の重なりを考える必要があります。
そうした場合、引力を誘発する付加的な物理が必要です。
その引力の源泉となるのは
格子振動(フォノン)や軌道(14)やスピン(15)がもつ
「揺らぎ」が選択肢の一つではないか?
と想定されます。
上述したようにそうした揺らぎにおいて光学フォノンのように
その揺らぎに影響を受ける隣り合う電子同士逆位相を持っていて
それによって負の電荷による電子同士の反発を遮蔽するような働きがあり、
その揺らぎの周期、振動数が一致している事が大切かもしれません。
但し、ここの揺らぎの波は電子の波数と異なります。
電子が波数を持つとは飛び飛びの量子状態を持ち、
それは運動量が連続的に変わらないことを意味します。
現時点において超電導において量子井戸、量子準位を
対象となる自由電子が獲得しているという理論、デザインは
まだ一般的ではないと理解しています(16)。
従って、電子同士の
①絶対的な位置(の近さ)
②(量子状態を作った場合(16)の)波数、
(※電子同士の場合は有効質量が一緒だとすると速度の一致)
③格子振動(フォノン)や位置やスピンの揺らぎ(14,15)
これらを整理し、
②、③に関しては電子同士のコヒーレンシーについて考える
ということになると現時点では理解しています。
①と②においては量子井戸、量子細線、量子ドット、
それらのエネルギー窪み幅を極限までに小さくする
2次元電子ガス(面)、1次元電子ガス(線)、0次元電子ガス(点)にしたほうが、
電子同士を近づけやすく、かつ量子状態を作っているので
波数(運動量、速度)を一致させやすいという事はあるかもしれません。
量子井戸、量子細線、量子ドットという構造は
すでに半導体で長い時間かけて理論化、開発、応用されている技術です。
今は漠然としていますが、
今回のアパタイトの構造は六角形の対称性がある程度あります。
この六角形というのはGaNだけではなく
グラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイドなど
様々な材料の結晶構造と類似します。
ハチの巣状の六角形構造はイノベーションが隠れている気がする中で
元素の構成もすべて豊富で安価で希少金属がない事などメリットもあるので、
少なくとも今回再現できなくて、世界的に熱が冷めたとしても
私の関心が弱まることはないと言えます。
一方で、
電子は同じ量子状態を取ることができないという
パウリの排他則がありますが、
そのエネルギー準位が縮退している場合、
そのエネルギー準位に少なくとも2つの電子が入る事が許されます。
しかし、これはパウリの排他則をバイオレートするものではありません。
この時には2つの電子はスピンの回転の向きが異なる電子同士になります。
このスピンの回転の向きが異なる電子がもし結合したらどうなるでしょうか?
これは完全反磁性(マイスナー効果)と関連する可能性があります。
但し、これはLEDの電子と正孔の再結合の経験的な観点での考察であり、
LEDのフェルミ粒子の電子と正孔が再結合して
なぜボース粒子である光に変わるのか?
そもそも正孔の実体もわかっていません。
その不明瞭さの中で超電導の相転移について考察している限りにおいて
見当違いが生じる事は避けられない部分があります。

もう1つ、重要な事があります。
将来的に常圧室温超電導の材料が出来たとします。
しかし、その結晶構造が比較的複雑だとします。
そうすると様々な応用において製造上の問題が浮上します。
化学式として単純なGaN(窒化ガリウム)でも、
電線に使えるような規模、大きさの結晶を高品質で作るのが難しいです。
基板などを使わずに、自立成長させる必要があります。
窒化ガリウムの場合、Naフラックス法というのがあります(13)。
細かい議論はしませんが、液相成長に近い形の成長なので
気体からいきなり固体の結晶を得るような気相成長ではなく
液体からになるので化学ポテンシャルオン変化が小さくて
理論的にはよい結晶が得られやすいと理解しています。
これはGaNの大きな結晶を得るために利用される方法で、
窒化ガリウムはパワー半導体などの応用もあり、
高品質なGaNの基板が求められており、
GaNの大きな結晶、バルク結晶の高品質な物質の需要は大きいです。
銅系の超電導材料も高い超電導遷移温度を持つのですが、
それがリニアモーターカーなどで利用できない背景は
レールのような大きな材料を合成できないことにあります。
これは結晶構造が複雑で、
品質の良いという条件を満たしながら、
大きな結晶が得られないからです。
鉛、銅のアパタイトも、仮に超電導を示したとしても
電線やリニアモーターカーなどで利用しようと思ったら
どうやって大きな結晶を得るか?
そこの壁を突破する必要があります。
そうするとGaNのバルク結晶を得るような技術が非常に大切になります。
少なくとも液相から合成するような方法が好ましいかもしれません。

もう1つは、機械的特性です。
アパタイトは硬いけど、脆いという性質があり、
銅が入ると、歪が入るのでさらに脆くなる可能性があります。
従って、道路などで高温にさらされるなど
温度変化がある場合、材料として寿命が短くなる可能性があります。
従って、その脆さを補うようなシールド構造が必要です。
ペロブスカイト太陽電池でも懸念されるように
鉛を環境内で使うと、雨などにさらされることで
溶けて、地中に溶け込み、土壌や川を汚染する可能性があります。
人体にも悪影響があります。
従って、どちらにしろ電線で使うならば、
銅系で影響の受けやすい外部磁場の問題もあるし、
外側をシールドする必要があります。
従って、シールドする場合、好ましくは
◎機械的特性(脆さ)を補助する
◎外部磁場などの遮断する
◎鉛の溶けだしを防ぐ
これらを両立するような条件を探すことが重要になります。

もちろん、この技術というのは競争だとは思いますが、
本当に地球の持続可能性に関わる事です。
人工知能などの性能向上などリスクもありますが、
それよりもエネルギー問題の根幹にかかわる重要な発見です。
この技術に関しては
かなりスピード感を持って動かれている方もいるので
この技術、派生技術をできるだけ早くものにして、
産業化につなげる事が重要です。

このブログは「医療の部屋」であり、
物理単独の情報を載せるサイトではありません。
しかし、重粒子線やMRIなど医療にも関わる情報です。
また、常圧室温超電導に関しては
リニアモーターカーなど子供の夢につながるものです。
子どもは輸送機器が好きな傾向にあると思います。
小児医療に力を入れているサイトとしては
健康な子どもをより幸せにする可能性のある技術に関して
私が関与する事は全体的なビジョンとして矛盾しません。
健康な子ども世代、孫世代のありふれた日常の為には
環境問題も無視する事は出来ません。
今まで、決定的に重要なソリューションは見つけられないでいました。
以前、環境問題に取り組んだ時期もありました。
私は技術者出身です。テクノロジーで何とかしたいという思いがあります。
この韓国から出た常圧室温超電導(の可能性がある)技術は
まだ、再現性がある形で十分立証されていませんが、
もし、その立証が不十分であっても
これから有望な新規材料として積み上げていく価値は
少なくともあると考えられます。
難しい病気を持つお子さんを救う事も
私の知識、経験でできるなら様々な方々と協力して
助けをもらって成し遂げたいですが、
それよりもはるかに多い健康な子ども、孫世代、その次の
ありふれた日常を用意する事も大切な責務です。
再現が難しいのは上述したように品質の問題もあるかもしれません。
私よりももっと計算、理論に優れた方が
あるいは超電導に長く携わってきた方が関与すれば、
もっと良いフレームワークができるかもしれません。
常圧室温超電導は夢のある技術です。
私は企業の経験がほとんどです。
固体物理に関わる難しい業務もこなしてきました。
だから産業化のための様々な知恵を出せるでしょう。
実務として貢献するという事もできるでしょうし、
今のように書くだけであれば、
様々な事と両立する事ができます。
実務になると書くだけとはレベルが断然変わってくる
というのは当然です。

(参考文献)
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Sukbae Lee,  Jihoon Kim,  Hyun-Tak Kim,  Sungyeon Im,   SooMin An, and Keun Ho Auh
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Sukbae Lee , Ji-Hoon Kim , Young-Wan Kwon
The First Room-Temperature Ambient-Pressure Superconductor
arXiv:2307.12008
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Le Duc Anh, Masaki Kobayashi, Takahito Takeda, Kohsei Araki, Ryo Okano, Toshihide Sumi, Masafumi Horio, Kohei Yamamoto, Yuya Kubota, Shigeki Owada, Makina Yabashi, Iwao Matsuda, Masaaki Tanaka
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