新生児から3歳までの幼児は
授乳を通じて母親から母乳を与えられた時、
ほとんどが生きのこるだけではなく
潜在的な能力を最大限生かして成長する場合が
ほとんどである可能性がありそうです。
それは授乳における母親と子供の相互作用と
母乳の子どもが生きる上での特徴的な特性によります(2-4)。
授乳はお子さんの
〇健康的な脳の発達
〇低栄養状態の3重負担(肥満、低栄養、微量栄養素欠乏)の防止
〇感染症の防止
〇命を落とす事の防止
これらのその特定の時点の健康状態の改善だけではなく、
成長後、予後の肥満や慢性疾患を減らす事が
高所得国だけではなく、
中低所得国でも報告されています(2,5,6)。
女性は、連続した複数の出産を考えている場合には
最低、18カ月待つべきである強く推奨されています。
女性の身体が健康な子供を産むための準備が
少なくとも18カ月間整わないからです(7)。
このような妊娠の間隔は「Birth spacing」と呼ばれます。
授乳は、Birth spacingをサポートする
と言われています。
赤ちゃんが母乳を飲んだとき
母親の身体は子どもと肌と肌のコンタクトを取り
母乳を放出することで
排卵を防ぐホルモンを放出するからです。
授乳による無月経になります(2,8)。
授乳は子どもの健康維持に重要な役割を果たすだけではなく
それを与える母親の慢性疾患を予防する効果があります。
例えば、
〇乳がん、卵巣がん
〇Ⅱ型糖尿病
〇心臓血管疾患
これらの疾患を予防します(2,8)。
上で挙げた疾患の中で乳がんと卵巣がんは
エストロゲンによって成長が促されるといわれています(48,49)。
授乳をすると上述したように排卵が抑えられるホルモンが
放出され無月経となり、エストロゲンの総量が抑えられます。
それによって、乳がんや卵巣がんのリスクが下がると考えられていますが、
最大で36年にわたる大規模疫学調査では
確かに授乳によって乳がんのリスクは減少しましたが
その乳がんのタイプはエストロゲン受容体陽性ではなく
エストロゲン受容体陰性(ORR:0.83)でした(50)。
エストロゲンが必ずしもがんの成長において
エストロゲン受容体を必要とするかという問題においては複雑で
その受容体と独立的な機序もあるとされていますが(51)、
実際に疫学結果を正しく説明するための
基礎医学的な観点においては、
少なくとも私の場合では現時点では調査の余地が残されています。
一方、
授乳を子どもに早い段階から行う良好な効果は
そのお子さんにおいて長期間(ライフコース)維持されます(9)。
それは子どもだけではなく
母親、配偶者を含む家族、それを取り囲む幅広い社会。
様々な領域に対してベネフィットをもたらし、
それに伴う経済的な利益もあります。
母乳は不足する場合においても
根気よく赤ちゃんに吸ってもらい刺激してもらえば
少しずつ量が出るようになると言われています。
母親がしっかり栄養をとれば、
母乳は無料ですから、
その無料の産物によって
子どもだけではなく、母親の健康が
その時だけではなく、ライフコースで守られるのであれば、
パートナーである父親にもベネフィットがあり、
疫学的に疾患が減るのであれば、
社会経済的な利点も出てきます。
それによって、社会、医療はより難しい(希少)疾患
あるいは脅威となる感染症(公衆衛生)に対する対策に
リソースを割くことができるという事も考えられます。
--
実際に授乳に対する促進、サポートの不適切性に起因する
全世界の1年あたりの経済的な損失は
3413億ドルと見積もられています。
--
WHOは完全母乳育児(exclusively breastfeeding)を
最初の6か月間するように推奨しています。
最初の6か月間に完全母乳で育てられた赤ちゃんは、
〇下痢
〇胃腸炎
〇風邪、インフルエンザ
〇鵞口瘡
〇耳や胸の感染症
これらにかかる確率が低いとされています(11,12)。
補助食品は分娩後6か月から徐々に初めて
授乳は少なくとも生後2年間は続ける事が推奨されます(13)。
このような利点を考えると
是が非でも授乳をしたほうがいいという事になるのですが、
授乳を実現するための社会的な障壁は
様々な領域で存在するとされています(1)。
例えば
〇ジェンダー不平等性
〇幼児養育の有害な社会文化的な規範(14)
〇所得の伸び
〇都市化(15,16)
〇企業のマーケティング(16)
〇授乳促進を弱める政治的な活動
〇女性の生殖権、子育ての容認性が低い労働市場
〇授乳を弱体化させる不十分なヘルスケア(17)
これらが挙げられています(1)。
--
上述した中には社会的な問題が多く含まれますが、
医療として不十分である事によって
授乳が実現しないケースも世界であるとされています。
その中で、
Ten baby-friendly hospital initiative (BFHI) steps。
これがあります。
医療として適切な授乳を推進するための10の指針となります(18)。
それは、以下です。
1. Have a written breastfeeding policy that is routinely communicated
to all health care staff.
全ての医療スタッフと日常的に情報交換する
書面化された授乳指針を持つ。
--
2. Train all health care staff in the skills necessary to implement this policy.
この指針を実行するのに必要なスキルを
すべての医療スタッフに訓練する。
--
3. Inform all pregnant women about the benefits and management of
breastfeeding.
授乳の利点と運用(どう継続的に行うか?)について
全ての妊娠女性に情報提供する。
--
4. Help mothers initiate breastfeeding within a half-hour of birth.
生まれてから30分以内に授乳を母親が開始できるように
(医療スタッフは)手助けする。
WHOは新生児が命を落とす確率を減らすためには
生後、1時間以内の授乳を進めています。
また、それにより母親の母乳の産生が促されます。
さらに、初乳はゴールデンミルクといわれており、
新生児の栄養や免疫システムを強化する上で
非常に重要なリソースとなります。
--
5. Show mothers how to breastfeed and how to maintain lactation even
if they should be separated from their infants.
もし、(新生児、小児集中治療室など)何らかの理由で
赤ちゃんを隔離する必要があるときにおいても
授乳の仕方、乳の分泌をどのように維持するかを母親に示します。
--
6. Give newborn infants no food or drink other than breast milk, unless
medically indicated.
特に医療的な指示がなければ、母乳以外に
食べ物や飲み物を新生児に与えるべきではありません。
--
7. Practice rooming-in: allow mothers and infants to remain together
24 h a day.
母子同室の慣習。
母親と子どもは1日24時間一緒にいる事を可能にします。
--
8. Encourage breastfeeding on demand.
赤ちゃんの要求に応じて授乳を推奨する。
--
9. Give no artificial teats or pacifiers to breastfeeding infants.
授乳時期の新生児、幼児には人工の乳首、おしゃぶりを与えません。
--
10. Foster the establishment of breastfeeding support groups and refer
mothers to them on discharge from the hospital or clinic.
授乳支援グループの設立を発展させ、退院後も
(引き続き授乳する必要があるため)
それらの支援グループにアクセスできるようにします。
(Table.1より)
--
一方、社会的な側面としては
育児休暇が整わない場合、
当然、子どもと共有する時間が減るわけですから、
それによる授乳の機会が減る事になります。
2年続けるとなると女性が働いている場合
難しいケースも多いと考えられますが、
授乳を可能にする柔軟な労働スケジュール、
育児スペースや授乳室などの設置などが求められます(19,20)。
--
個人のレベルでは
母親と子どもの関係において
〇扱いにくい子どもの振るまい
〇母親自身が母乳が不足していると感じる事
self-reported insufficient milk (SRIM)
〇低い自己効力感
これらに対する不安などの心、精神的な問題は
適切な授乳の実現を難しくします。
しかし、これまで、
個人レベルで心の問題まで踏み込んだ
適切な授乳の実現については
あまり考えてこられませんでした(17,21,22)。
--
Prof R Pérez-Escamilla(敬称略)らは
生物学、医療、社会学など様々な観点で
授乳の重要性について総括されています。
この記事では生物学、医療についての部分を主に取り上げ
独自の調査、考察を加えて、
読者の方と情報共有したいと思います。
授乳は人類が特異的に持つ生物、心理、社会システムの一環です。
人類の進化の過程の中で、
母親と子どもの両方が生きのこり、
その中で健康が維持されるための
一つの重要な手段として授乳があると考えられます(23)。
現代のように感染症に対するワクチン接種システムが
昔はなかったわけですが、
多くの存在する感染症から身を守る必要があります。
子どもの未熟な免疫システムを考慮すると
授乳で補助的に母親から免疫を獲得する事は
ワクチンがなかった時代において
感染症などを含む疫病から子どもを救うための
1つの重要な要因であったと想定されます。
それだけではなく
母親の健康にも影響があると考えられます。
母親は妊娠前期から妊娠後期に至るまで
プロゲステロン、エストロゲンのホルモンの
血中濃度が徐々に上昇していきます。
プロゲステロンは
胎児に栄養を送るための食欲の維持、
胎児を守るための基礎体温の上昇など、
エストロゲンは
子宮などの生殖器官の発育、維持のために
必要だと考えられています。
胎児はどんどん大きくなっていきますから
それに伴って、これらの女性ホルモンを
血中で増やす必要性が出てきます。
従って、上述したホルモンの上昇があると考えられますが、
出産直後に、子どもを体内で育てる必要がなくなるので
一気に女性ホルモンの量が低下します。
そのホルモンの急激な変化で
女性は心の問題を初め、
特別な健康の管理が必要な時期になると考えれます。
しかし、
昔は今のような医療機関は当然ないわけですから、
出産直後の女性の健康を守る何らかのシステムが必要です。
授乳は子どもだけではなく、
それを乳首を通して子供に与える母親を守る事にもつながります。
赤ちゃんが母親の乳首を吸う事によって、
オキシトシンやプロラクチンが放出されると言われています。
また、母親と子どもの密接な関係性を強める
他の代謝生成物も放出されます。
従って、
赤ちゃんが母親の乳首を一生懸命吸う事によって
母親のお子さんに対する愛情が育まれると考えられます。
このような子どもに対する好感は、
ホルモンの急激な変化で心の問題が生じやすい時期において
心や精神の状態を安定化させる効果があるかもしれません。
実際に授乳によって母子のストレスが軽減した
という報告もあります(23)。
--
母乳の中のホルモンは
〇適切な子どもの食欲
〇適切な子どもの睡眠
これらを強化するといわれています。
また、授乳期間の母親の
ホルモンを初め生理学的、代謝的な変化は
上述した女性特有の乳がん、卵巣がん罹患率低下
循環器系の健康などを含めた様々な様式で
母親の生涯にわたる健康を支援します。
授乳の間、
母親と子どもは互いに免疫システムを交換します。
それは受動的な免疫システムだけではないとされています(25)。
つまり、例えば、
母親から子どもが抗体などを受け取るだけではなく、
授乳を通じて子どもが自分の体内で自発的に免疫能力を
高める可能性があるということです。
授乳を通じて、子どもに
母乳の中に含まれる微生物叢が輸送されます。
これらの微生物は善玉の腸内細菌として
子どもの腸に住み着き、
様々な病気と闘う能力を与えます。
前述した子どもが形成する自発的な免疫能力は
乳首と口腔の接触(?)、母乳によって形成された
腸内細菌によっても発達すると言われています(1)。
従って、
授乳の機会が奪われると、
免疫機能、腸内細菌の適切な発達が失われる可能性があります。
例えば、分娩においては、
経膣分娩と帝王切開で子どもの腸内細菌が変わり
例えば、帝王切開ではその発達が遅れる
という報告があります(25)。
しかし、
影響の大元となる時間は分娩時の短い期間です。
授乳はWHOの推奨によれば、
完全母乳では6か月、
その後、補助食品を加えながら2年続けられるとあります。
2年間、毎日、母親から母乳を受け取るわけですから
その2年間が仮に失われると
その影響は分娩の違いよりも大きいと考えるのが自然です。
--
また、母乳はボトル、カップ、スプーンではなくて
直接、乳児に乳首を吸わせて行う事が推奨されいます。
その理由は、
〇子どもの頭蓋顔面構造の発達
〇不正咬合(上下の歯が正常にかみ合わない)の防止
これらがあります(26)。
また、乳児が乳首を吸い母乳から受け取る栄養成分は
多くありますが、その送達は複雑です。
吸い始めの母乳(Foremilk)は
〇フェニルアラニン
〇スレオニン
〇グルタミン
〇セリン
これらの遊離アミノ酸が多いとされています(27)。
遊離アミノ酸は生命を維持するために重要です。
それらを含めアミノ酸は、
細胞のエネルギー、遺伝子の生成、細胞の恒常性の為に必要で
特に免疫細胞はアミノ酸のサポートが必要だと
考えられています(28)。
一方、
乳児が吸い終わる頃の残りの母乳(hindmilk)は
タンパク質が多いとされています(27)。
この違いが小児の健全な発達においてどの程度重要かは
まだ、研究の余地があるとされていますが、
何らかの意味がある可能性があるので注意が必要です。
また、乳児の口腔の微生物が母乳に逆流することもあるとされています。
この影響は未知ですが、口腔の微生物が母乳に逆流する事によって、それが母乳に混ざって腸に運ばれやすくなり、口腔と腸の微生物叢の相互作用が活発になるという可能性も考えられます。
一般的に、口腔と腸の微生物叢は相互作用する。
(The oral-gut microbiome axis)
これが知られています(47)。
さらに
乳首を通した母子の直接的な肌の触れ合いは
〇体温の制御
〇代謝の制御
〇昼夜のサイクルの調整
これらをサポートすると報告されています(29,30)。
--
直接的な授乳は
カップなどに事前に搾乳された母乳を与えた場合に対して
(expressed breastmilk)
〇ぜんそくの低下
〇善玉菌のビフィズス菌の増加
〇エネルギー取得の自己調整能力の向上
〇肥満の予防
これらのメリットが確認されました(31-33)。
--
母乳は子どもの成長に必要な栄養素だけではなく
ホルモン、抗体などの免疫因子、微生物などの
栄養素ではない生物活性因子を含みます。
これらは複雑に相互作用している事も想定されます。
また、抗体のクラスの含有量などを含め
母乳は授乳を始めた初期の頃とその後で
成分を変える動的な性質を持っています。
さらに、前述したように一回の授乳の中でも
出始めと終わりの頃で成分が異なります。
様々な可変因子があり、一定ではない中で、
その多様性の恩恵を受けて、
子どもは自然の様々な環境に適用できるように
成長すると想定する事も出来ます。
長い年月をかけて進化させてきた
授乳全体のシステムを人工的に完全に置き換える事は
不可能であるという事は
過去から現在の様々な証拠を参照すると明らかである
という結論です(1)。
--
母乳の中の成分の分子生物細胞学の観点において
1つは母乳の中に含まれる細胞外小胞があります。
母乳の細胞外小胞は
少なくとも633種類の
未確認のタンパク質が存在している事がわかり、
〇細胞成長の制御
〇炎症の制御
〇口腔の粘膜の完全性
これらに関わることが知られています(34,35)。
また、細胞外小胞に含まれる
遺伝子の発現を調整するmiroRNAは
制御性T細胞を活性化させることで
過剰な免疫反応を調整し、
〇アレルギーなどの自己免疫疾患
〇壊死性腸炎
これらを防ぐことが知られています(36,37)。
もう1つは
母乳には様々な型のオリゴ糖が含まれます。
それが
〇インフルエンザ
〇ロタウィルス
〇RSウィルス
〇HIVウィルス
〇ノロウィルス
これらなどと結合し、細胞感染を防ぐため
様々な感染症予防につながると考えられます。
(参考文献(38) Figure.3)
また、授乳期間に母親が感染症に罹患し、
あるいはワクチン接種して、
その感染症特異的な抗体を獲得した場合、
その抗体は授乳を通じて乳児に届けられます。
例えば、IgG抗体は
粘膜や血管内皮など様々なバリア機能を有する
上皮、内皮細胞内に豊富に発現する
胎児性Fc受容体(FcRn)に構造的に強化されます(39)。
消化器から受け取ったそのIgG抗体は
寿命が高められた状態で子どもの身体の中を循環する
と想定されます。
従って、母親の液性免疫の産物は
母乳を通じて子どもの体内に届けられると考えられます。
実際に母親のSARS-C0V-2のワクチン接種、感染により
母乳を通じて乳児に中和抗体が確認された
報告は多くあります(40-42)。
高所得国においてWHOが推奨する
適切な授乳がどれくらいの割合で行わているか
という調査結果はないとされています(1)。
一方で、中低所得国83か国の調査では
2019年の時点で50.7%と約半数になっています。
授乳が難しいケースもあるというのが
少なくとも実情として示されています。
上述したように社会的な側面もありますが、
潜在的に存在する育児の難しさもあります。
昔は子育ては祖母、祖父も含めて、
集団で行っていたケースが多く、
核家族化が進んでいる地域においては、
社会的な側面を除いたとしても、
授乳を含めた育児の難しさの問題はあると考えられます。
Prof R Pérez-Escamilla(敬称略)らが
総括している内容の一部を簡潔に紹介いたします(1)。
--
新生児、幼児は環境に適応する多くの感覚的な能力が
不足している状態ですから、
食欲、睡眠欲、不快感などが生じた場合
泣くことによってそれを知らせてきます。
しかし、大きな声で度々、毎日のように泣かれると
特にホルモンバランスが変化したばかりの
過渡期にある母親にとってはストレスになります。
さらに、授乳中に母乳を嘔吐したり(posseting)、
夜なかなか寝付かない、度々起きて泣くなど
様々なストレスがあります。
おむつを替える、
だっこして揺らす、動く、
言葉をかける
授乳をして肌と肌のコンタクトを取る
これらなど様々な方法がありますが、
父親、できれば祖母、祖父を含めたサポートが
必要な場合も多いです。
また、
self-reported insufficient milk (SRIM)。
これが母親が授乳を中断する最も共通的な理由です。
これは母親が
自分の母乳だけで子どもの空腹を満たすことができるか?
子どもの適正な成長のために十分であるか?
それに対して不十分であると感じることです(43)。
そのリスク因子としては
〇社会経済、心理的な要因
収入、出産年齢、配偶者の有無、出産経歴、教育
雇用の状態、自己効力感、授乳への自信、
BMI、妊娠期間の体重の変化
〇分娩の方法
帝王切開、無痛分娩、医療環境
〇授乳への壁
授乳の経験、授乳の意思、サポートの有無
看護の状態、母親としての自信、授乳の負の体験
〇子どもの振る舞い
泣く事、子どもが上手く吸わず乳頭痛やうっ血ができる
これらなどが挙げられています(44-46)。
//まとめ//
授乳は今までのエビデンスから
ほぼ間違いなく子どもの健康維持において重要ですが、
まだ、科学的にわかっていない事も多いと考えられます。
それは少なくとも認識しておく必要があると思います。
しかし、都市化、核家族化など
子育てのための環境が昔とは異なります。
祖母や祖父がいれば、
子育ての経験があるわけですから、
授乳を含めて様々なアドバイスが得られます。
また、女性の社会進出に伴い、
女性が働くことも多くなりました。
そうした中で、授乳を実現するための
社会的な問題も顕在化しています。
国際化が進み、感染症のリスクも高まっている事から
乳児期にあたる子どもの公衆衛生の重要性も高まっています。
ワクチンプログラムもありますが、
それだけでは不十分で、
免疫機能を多様な様式で高めると考えられる
授乳に関する科学的なエビデンスに基づいた
正しい情報が一般的にシェアされる重要性は
同様に高まっていると考えられます。
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細胞種特異的輸送系統実現のためのリソースと発展的視点、そのデータ
細胞種特異的輸送系統の最も重要な部分は
〇特定の細胞種、
〇特定の組織内の細胞種、
〇特定の発達状態(任意の年齢の子どもなど)の細胞種
〇特定の病変状態の細胞種
これらにおいて
体全体において、
理想的にはその細胞種「のみ」に発現している
表面タンパク質を見つけ、
それを薬剤送達の標的として定めることです。
そして、その標的に対して
結合親和性の高い装飾因子を
ナノ粒子、細胞外小胞表面に作製することです。
あるいは、遊離薬剤に結合性を持つ
タンパク質を結合させる事です。
--
Linda Berg Luecke(敬称略)ら医療グループの
献身的な調査によって、
数百もの従来のリソースにない
表面タンパク質が心筋細胞で見つかっていますが、
この方式
CellSurfer includes a microscale Cell Surface Capture (μCSC))
これで心臓の細胞を超えて、
全身のあらゆる細胞で表面タンパク質を調べたときには
同様に今まで見つかっていなかった
表面タンパク質が多数見つかる可能性があります。
従って、
この報告で、特異的であると認められた
表面タンパク質も全身で同じ方式で調べた時においては
同じ表面タンパク質がが
違う細胞種、組織の細胞種で見つかる可能性があります。
従って、
労力はかかるかもしれないですが
Linda Berg Luecke(敬称略)らには
表面タンパク質のリソースを心臓やB細胞だけではなく
全身のあらゆる細胞で行ってほしいと期待しています。
CellSurferによって今まで見つかっていない
表面タンパク質が数百見つかったことが一つの大きな価値ですが、
細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)の観点で言うと
心臓以外の身体全体の組織で見た時の
特定組織、細胞種の表面タンパク質の特異性はどうか?
という視点が重要になります。
単純な血液循環の組織図を参照すると
薬剤を静脈注射で投与した場合、
その毛細血管から心臓の右心房に輸送されます。
従って、その経路を考えると
血液の中にある成分や免疫細胞などの細胞種
血管の内壁の(表面)タンパク質と
どのように相互作用するか?
それをナノ粒子による標的化を考える際に
少なくとも重要になります。
言い換えれば、
CellSurferによって見つかった
心筋細胞特異的な表面タンパク質が、
同じ方式で血管内皮にも同種のものがあれば、
それに特異的に結合するタンパク質を
表面に装飾したとしても
静脈注射によって血中に循環させる中で
途中で捕獲されてしまいます。
Linda Berg Luecke(敬称略)らは
LSMEM2というたんぱく質に着目しています(1)。
これに対して、
Ruby10.1というモノクローナル抗体を作製して、
そのモノクローナル抗体が
本当にこの表面タンパク質を特異的に持つ
細胞だけに結合するかを調べています。
これは心筋細胞に見られますが、
少なくとも
〇線維芽細胞、
〇内皮細胞、
〇HeLa細胞
〇Jurkat T細胞(ヒト白血病T細胞由来)
〇U-2 OS(ヒト骨肉腫細胞株)
これらでは結合は確認されませんでした。
しかし、
多様な免疫細胞、血小板、赤血球、
血中のデブリ、細胞外小胞などを初め
最終的に薬剤送達ルートとして想定される
循環器に存在する(表面)たんぱく質に対して
結合性を持たないかどうかはわかりません。
より発展的な研究として
これらを調べる価値はあると想定されます。
一方、
Linda Berg Luecke(敬称略)らの報告(1)の
付加的価値はいくつかあります。
1つは、
組織特異的な観点を示したことです。
つまり、
心筋細胞は右心室、右心房、左心室、左心房などにありますが、
もし、右心室の心筋細胞に病変がある場合には
治療の需要としては右心室の心筋細胞に
薬剤を特異的に送達したいというのがあります。
細胞種特異的であっても、
その細胞種が複数の組織にあれば、
真の意味での標的治療は実現しません。
Linda Berg Luecke(敬称略)らは
それぞれの部位の細胞種に対して、
同じ細胞種でありながら、
組織特異的タンパク質がある事を示しています。
例えば、
左心室特異的な心筋細胞の表面タンパク質は
37種類あります。
左心房は少なく1種類となっています。
従って、これらの表面タンパク質を標的化すれば
それぞれの組織の心筋細胞に特異的に
薬剤が送達される可能性があります。
--
次に、
人由来多能性幹細胞の違いを示したことです。
病気のモデルとして考えられるわけですが、
未成熟になる事を含め、
人由来多能性幹細胞由来の心筋細胞には
体内に自然にある心筋細胞を再現するのに
いくつかの課題があります。
その中で、
人由来多能性幹細胞由来の心筋細胞にしかない
特異的な表面タンパク質が399種類あります。
従って、
人由来多能性幹細胞の心筋細胞を使って
病変モデルや薬剤送達の実験を行う場合、
表面タンパク質の相違依存的に
実情とは異なる結果が出る可能性があります。
これは、iPS細胞由来の心筋細胞でも
同じかもしれません。
分化する過程の条件が異なると
表面に実装されるたんぱく質の種類が変わる
という可能性はあるかもしれません。
この辺は、非常に複雑で難しい問題です。
例えば、応用において
iPS細胞由来の神経幹細胞の細胞外小胞を使って
実際の神経系へ細胞外小胞を特異的に送達させる事を考えた場合
体内に自然にある神経幹細胞と
多能性幹細胞を人工的に分化させた神経幹細胞の
表面タンパク質が異なる事に寄って
iPS細胞由来の神経幹細胞から精製した
細胞外小胞の表面タンパク質も影響を受け
神経系にうまく送達されないという事が起こるかもしれません。
ただ、
Linda Berg Luecke(敬称略)らの結果を見る限り
共通する表面タンパク質も多くあります。
従って、標的として想定する表面タンパク質は
体内に自然にある細胞と人工的に分化させた細胞の
表面タンパク質は全ては一致しない事を前提に考え、
両者を比較して、
共通に存在する表面タンパク質を選ぶ必要性があります。
選ぶというよりも、
一致しているものが標的性に関わる可能性があるという事です。
一方で、異なる部分の予想外の挙動についても
想定しておく必要があります。
--
3つ目は
病状による違いを示したことです。
心臓に不全がある場合とない場合で
心筋細胞の表面タンパク質の発現量が異なる
タンパク質種があります。
発現量が3桁~5桁ほど違うものがあります。
BST2のように病変で多く発現しているものは
それを標的にすることで
自然に病変部位に薬剤が特異的に送達させる事ができます。
薬剤送達だけではなく
蛍光物質などで機能化すれば、
病変部位に集まるのであれば、
それによって病変部位の生体内イメージングも可能になります。
逆に
病変部位の方が顕著に少ないSEMA4Dのような
タンパク質もあります。
これをどう使うか?
私が想起した観点は
それを使うというよりも、
このタンパク質に結合する面、表面タンパク質が
抗体やナノ粒子の表面たんぱく質にそれぞれあれば、
あるいはコロナとして結合した物質が結合性を持てば
病変部位に届けたい標的を施していたとしても
健康な通常の細胞に送達されてしまうという事です。
特にナノ粒子や細胞外小胞の場合は
コロナなどを含めて
結合エピトープは多数あるので
その数あるエピトープのうち
病変部位に少なく、健康な部位に多い表面タンパク質に
特異的に結合するエピトープがあると
期待される結果が相殺される可能性があります。
確かにこういった複雑性を考慮すると
Parisa Yousefpour(敬称略)らが指摘するように
関与する表面構造がより複雑な
細胞外小胞の臨床応用を考える際には
考慮しなければいけない要因が多く出てくる
可能性が高いです(2)。
複雑すぎて追いきれない場合には
ある程度、ヒューリスティック性を受け入れる、
つまり、細かい相互作用を無視して
結果から判断するという事が必要かもしれません。
もし、今の最先端の実験現場で
細胞外小胞を使った薬剤送達が思うような結果が得られない
という事であれば、
Linda Berg Luecke(敬称略)らが証明したような
非常に可変性に富む表面タンパク質の影響を受けている
可能性があります。
--
これらの結果から
特異的送達の為の標的を定める事は
想像よりもはるかに多元的に考える必要性があります。
例えば、
上述したこと以外でも
〇民族、性別、年齢、個人差
これらによって違うかもしれません。
年齢でいれば
子どもにおいて各組織が発達時期にあり過渡期ですから
年齢依存的な表面タンパク質の違いがあるかもしれません。
従って、
大人でエビデンスのある標的性を持ったナノ粒子薬剤で
子供に標的治療を行う場合、
顕著に違う結果が生じてしまう可能性もあります。
また、アメリカで結果が得られても、
日本では得られない
民族特異的な差異を持つ可能性もあります。
それを避けるためには
様々な可変因子を調査範囲に含めて
その中である程度、共通性のあり、かつ特異的である
標的を探す必要性があります。
どの表面タンパク質を選択するか?は
そのたんぱく質がどのような生理作用を持つか?
これも考慮の範囲になり、
非常に慎重な選択が必要になると考えられます。
--
一方、その事を踏まえて違った視点では
臨床前の実験段階で、
あるいは臨床試験で
特に細胞外小胞、
あるいはもっと精製がしやすいナノ粒子において
想定した結果が得られない状況に陥った時に
表面たんぱく質が
様々な可変因子を持っている事を認識していれば、
そこで思考停止に陥る事は少なくともありません。
ナノ粒子による薬剤送達が
なかなか実現しなかった理由の一つは
循環器で付着するコロナの影響があると言われていますが、
それ以外に上述した事も挙げられます。
そのようないくつかの想定される原因がわかっていれば、
何らかの合理的な対策が考えられます。
ナノ粒子による標的治療を
今までの不十分な実績で諦めるのはあまりにも惜しいです。
薬剤を病変部位に特異的に送達させる事は
治療のフレームワークとしては有望だと考えられます。
様々な困難がありますが、
Linda Berg Luecke(敬称略)らは
それを乗り越えるためのヒント、第一歩(The first steps)を示してくれました(1)。
//細胞種特異的輸送系統実現のための
病変部位細胞標的表面タンパク質の
対となるタンパク質の精製にについて//
--
モノクローナル抗体を作る過程は
B細胞の抗体産生の機序を巧みに利用しています。
無限に増殖する液性免疫を生じる抗原認識する細胞を利用して
細胞表面の任意のタンパク質を認識させて
それに結合性を持つ抗体を産生させます。
それがモノクローナル抗体となります。
従って、
抗体薬物複合体は抗体とのリンカーが普遍的であれば、
基本的にはどのような標的に対しても
薬剤としてデザインすることができます。
では、
細胞種特異的輸送系統で必要なバイオテクノロジーである
標的細胞表面の任意の表面タンパク質に結合する
対となるタンパク質、その遺伝情報を
どのように特定する事ができるでしょうか?
力技でスマートな方法ではないかもしれないですが、
その方法を考察しました。
例えば、
小児の脳腫瘍の癌細胞は100種類の表面タンパク質を持っていました。
それを1万か所の個別の隔離スペースに収納します。
ある程度、条件を絞ったうえで
1万種類のの遺伝情報が事前にわかっているタンパク質を
その隔離スペースにいれます。
その中で、100個のうち小児の脳腫瘍特異的な
表面タンパク質に高い親和性で結合する
タンパク質を見つけます。
結合性が維持されるのであれば、
すぐに冷凍保存し、低温電子顕微鏡で構造解析します。
そうして、遺伝情報との紐づけを完了し、
細胞外小胞などの細胞表面に
その遺伝子を形質導入する事で
小胞表面に装飾できないか検討します。
その遺伝情報が事前にわかっているタンパク質を
スクリーニングする際には
人工知能、機械学習によってある程度、
有望な候補を絞り込むという事はできるかもしれません。
//考えられるもう一つの意義//
Linda Berg Luecke(敬称略)らは、
心筋細胞を含めて、心臓の細胞の表面タンパク質を
包括的に調べられました。
今までにない特異的な表面タンパク質も見つかっています。
それがリソースとして提供されています。
この心臓の表面タンパク質は
循環器を通して、薬剤を脳や各臓器に送達させる上で
非常に重要な意味をもつかもしれません。
血液循環の図を見ると
静脈(毛細血管)⇒心臓⇒大動脈(頸動脈)⇒各臓器(脳)
このようなルートとなっています。
ナノ製剤を静脈注射で注入した場合、
このような血液循環のルートで
それぞれの組織に特異的に送達されると仮定すると
そのルートには必ず心臓が含まれます。
従って、
「心臓に送達させたくない場合」
心臓の細胞種の表面タンパク質と結合する
表面たんぱく質をナノ製剤の表面から除く必要があります。
従って、
心臓の表面タンパク質が包括的に調べられたことによって
避けるべき結合対の表面タンパク質が明らかになる事から、
仮に上述した血液循環の中で
薬剤が送達されるとするならば意義がある事です。
(参考文献)
(1)
Linda Berg Luecke, Matthew Waas, Jack Littrell, Melinda Wojtkiewicz, Chase Castro, Maria Burkovetskaya, Erin N. Schuette, Amanda Rae Buchberger, Jared M. Churko, Upendra Chalise, Michelle Waknitz, Shelby Konfrst, Roald Teuben, Justin Morrissette-McAlmon, Claudius Mahr, Daniel R. Anderson, Kenneth R. Boheler & Rebekah L. Gundry
Surfaceome mapping of primary human heart cells with CellSurfer uncovers cardiomyocyte surface protein LSMEM2 and proteome dynamics in failing hearts
Nature Cardiovascular Research volume 2, pages76–95 (2023)
(2)
Parisa Yousefpour, Kaiyuan Ni & Darrell J. Irvine
Targeted modulation of immune cells and tissues using engineered biomaterials
Nature Reviews Bioengineering (2023)

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