//横隔膜ヘルニア//
横隔膜ヘルニアは先天性欠損症の中では比較的共通的です。
アメリカ合衆国で1114人のお子さんが毎年影響を受けています(888)。
平均で一命をとりとめるお子さんは60%であり、
早産のお子さんに限れば、在胎期間が短くなればなるほど
命を落とすリスクがより高くなります(889)。
横隔膜ヘルニアは横隔膜の異形成によって
横隔膜の筋組織に穴が生じ、
腹腔にある肝臓、胃、大腸、小腸が胸腔に滲出する事で
臓器の配置の異常やそれによる肺組織の成長阻害が生じます。
横隔膜は肺呼吸に関わる筋肉の一つで
横隔膜を上下させながら肺を動かすことで肺呼吸が可能になっています。
従って、横隔膜は肺と隣接しており、
横隔膜の位置が変わる事はダイレクトに肺の組織に影響を与えます。
実際に胎児鏡下気管閉塞術(FETO)など治療を施したとしても
気管支異形成や肺高血圧など
肺に関わる呼吸器に後遺症が残るケースは
非常に高くなっています(890,891)。
肺高血圧症に関しては軽度であっても、
治療を施しても70%を超える値となっています。
横隔膜ヘルニアで重要なのは
筋組織に穴が開いたところを通じて
腹腔にある肝臓、胃、小腸、大腸が胸腔に浸入することです。
これが実際に胎児の時点で生じるのか?
それとも分娩後、新生児、乳児、小児で生じやすいのか?
そこを整理する事です。
私はまず、子宮内にいる胎児と
外界に出た新生児移行の横隔膜の動きの違いに着目します。
胎児では横隔膜は比較的高い位置にあり、
胸腔内に空気はほとんど入ってこないとあります。
胎児の時点では横隔膜は呼吸にはほとんど関与しないということです。
おそらく、重力に逆らって、
腹腔内の肝臓、胃、大腸、小腸が上側に存在する胸腔内に
穴から滲出するためにはそれを可能にする力学的なエネルギーが必要です。
そのエネルギー源の一つは圧力変化にあると推定しています。
胸腔の空間は呼吸によって体積が変わります。
腹腔と胸腔の分圧差、
その差において胸腔が腹腔に対して陰圧であれば、
当然、腹腔から胸腔へ動く力が生まれます。
それによって肝臓、小腸、胃、大腸が胸腔へ引っ張られる原因となりえます。
上述したように胎児と分娩後の新生児以降の
横隔膜の動きに着目したのは
その動きがこのような力のバランスに影響を与えうると考えたからです。
観点を少し変えて説明すると
もし、胎児の時点で横隔膜の動きが
分娩後に比べて小さいのであれば、
その時点で先天的に横隔膜を形成する筋組織に欠損、穴があったとしても
肝臓や小腸が肺の成長を妨げる
胸腔への進出が分娩後に比べて起こりにくいかもしれない
と考える事もできます。
もし、そうであるとするならば、
横隔膜ヘルニアの治療においては
将来的な有効な薬剤による投薬も含めて、
分娩前の子宮内にいる胎児に対して行いたいという需要が生まれます。
おそらく、横隔膜ヘルニアの有効な治療を考える際には
外科的な治療ももちろん大切ですが、
それを補完する内科的な観点では、
胎児に対してどうやって有効に投薬するか?
そのメソッド、プロトコルを考える必要があります。
その際にはできれば、標的性を上げるため、
薬物送達学の観点も方法、手続きに含めたいというのがあります。
その為には母体から薬物を注入する際においては
螺旋動脈や絨毛組織の浸透性など
臍帯を通じて薬物が胎児に送達されやすいシステムを考えることも
一つとして重要になります。
下述する事も含めてここで
現在まで取得した情報に基づいた細胞生物学的な観点で申し上げると
横隔膜の異形成、穴は
筋細胞の不連続性にあると言い換えることができるので
通常の細胞における密着接合について考える事が重要になると
推定されます。
しかしながら、筋細胞は多核性で特殊な細胞であり、
骨格筋においては細胞同士の密着接合は持たないとされています(904)。
従って、カドヘリンなどの密着接合が
筋組織の完全性においては影響を与えていないという事が
ここから読み取る事が出来ます。
そうであっても、やはり
横隔膜の穴、不連続性を細胞生物学的に考えるには
横隔膜の筋組織の接合性を理解する必要性がありますが、
それがまだ未知であれば、
横隔膜は骨格筋に属するので
骨格筋の一般的な分子的な構造、機能について
包括的に理解する事(905)病理の一つの重要なピースになります。
この章ではその総括論文について
精査する事を予定しています(905)。
なぜなら、下述するように
横隔膜の筋形成の遺伝子的な事を含めた発達経路は
同じ骨格筋である胴体や四肢の筋肉の発展と類似するからです。
その一つ一つを細かく見ていくことで
それを制御するPleuroperitoneal foldsにおいて
どのような分子的機序に不全が出ていそうか?
それによって多核性の筋細胞の
どのようなたんぱく質を含めた物質に不全が出ているか?
その不全は薬剤によって治療する事が可能か?
その様な事を探っていける可能性があります。
また、そのタイミングは子宮内にいる胎児の時の方がいいか?
それは横隔膜の子宮内と外界での機能の違いを
もう少し詳しく調べていく事で明らかになる可能性があります。
様々な基礎的な知識が
横隔膜ヘルニアの治療、緩和、予防、管理のために必要ですが、
その重要な要素の一つとして、
Allyson J. Merrell(敬称略)らが
横隔膜の発達について総括されているので(892)、
その内容について精査し、
独自の調査、考察を加えて情報共有します。
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<<横隔膜の発達>>
哺乳類の横隔膜筋は呼吸において重要であり、
人の身体において最も重要な骨格筋の一つです。
横隔膜の発達の異常は先天性横隔膜ヘルニアにつながります。
この先天性の異常は子どもの中で4000人に1人と
決して少ない数ではないため、
その組織学的な形成の機序について理解する事は非常に重要です。
横隔膜は胸腔と腹腔を隔てる
ドーム型の筋肉を持ちます。
横隔膜は上述したように筋組織であり、
胸腔をリズミカルに圧迫するこで肺を動かすことに貢献します。
肋骨の左右両方にドーム状の筋組織を形成します(893)。
これらの筋組織は放射状に並んだ筋線維を持ちます。
この放射状とは下側、上側から見た時に
背骨から体の外側に向かって
筋線維が延びていることを示します。
(参考文献(892) Fig.1)
横隔膜はドームを形成し、
中心の組織がより胸腔に近い形になっています。
その中心部の頂点にあたる部分に
腱(central tendon)が存在します。
腱は接合性の組織シートで
細胞外マトリックスと腱細胞からなります。
横隔膜の運動制御は横隔神経によって生じます(894)。
横隔膜は呼吸機能だけではなく
胸腔と腹腔を分ける障壁機能として働きます。
人の臓器は重力によって力を受けます。
従って、それぞれの臓器の位置安定性を
「区画」によって確保する必要があります。
肺と心臓は胸腔に位置し、
胃、腸、肝臓、腎臓は腹腔に位置します。
それぞれの臓器の位置を確保する事は
特に発達期にある子どもの健全な臓器発達において
重要であると想定されます。
この横隔膜の機能が弱かったり、不完全であると
胸腔、腹腔にある臓器の発達に影響を与える可能性があります。
特にその動きの密接に関わりのある肺は顕著です。
では、その横隔膜の組織学的な不全はなぜ生じるのでしょうか?
そのためにはその形態学について知る必要があります。
横隔膜のドーム状の筋組織、それを支える腱は
◎Septum transversum(横中隔)
◎Pleuroperitoneal folds
◎Somites(中胚葉節)
これらから発達します(892)。
横中隔はAllyson J. Merrell(敬称略)らがFig.2に示すように
胸腔と腹腔を隔てるために最初に大きく発達する組織です。
中胚葉は筋肉の原型となる前駆細胞群ですが、
それがリンパ節のように「節」を形成し(Somite)、
筋原性の前駆細胞PAX3+前駆細胞を放出します(895)。
この時には横隔神経も関与します。
横隔膜の筋形成には
Pax3とc-Metの遺伝子が密接に関わっており、
これらの遺伝子が不活性になると
横隔膜の筋組織が形成しないことが
マウスのケースで確認されています(896-898)。
通常これらの遺伝子は中胚葉節で強く発現されています。
このc-Metは組織形成において普遍性の高い遺伝子で
胚発生、器官形成、創傷治癒に必須であり、
また、癌などの組織形成にも関わります。
もし、c-Metに先天的に異常があって
横隔膜異形成が生じているとするならば、
他の臓器も異形成が生じて自然なので、
その点に着目しながら、
この遺伝子との関わりについて一定の注意を払います。
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横隔膜は頂点から外下側の腰の部分、
尾部に向かって成長していきます。
その成長には細胞だけではなく
神経系も追随して伸長されていきます。
Pleuroperitoneal foldsは間葉のプレートですが、
神経系や筋原性の細胞の成長のシグナルの
重要な供給源となっています。
この信号に応じて、
おそらく多様な細胞接着分子が組織の健全な成長に関わっている
と想定されますが、その信号の分子的な特徴はわかっていません。
少なくとも多様な神経系の細胞接着分子の
離脱可能な低い親和性を持つ成長因子受容体が
神経管からPleuroperitoneal foldsに延びていて
横隔神経の成長を誘導するかもしれません。
組織の成長に関わる
肝細胞増殖因子やMet受容体は
筋肉の前駆細胞や神経系両方の移動経路に沿って発現されています(899)。
Pleuroperitoneal foldsは信号を送る事によって
横隔膜の筋組織の前駆細胞の
筋生成や形態形成に必要な遺伝子的な活性を調整しているかもしれません。
筋組織の形成機序は胴体や四肢の筋肉形成と類似します。
Pax3、Pax7を最初に発現し、
Myf5、MyoDの発現を経由して
Myogenin +単球に分化し、多核の筋線維を形成します(900,901)。
ここで一つ考えられるのは
横隔膜ヘルニアを呈した子どもが
胴体や四肢の筋肉形成でも同じように欠損が生じているか?
ということです。
もし、そうではなく横隔膜に限定されるなら、
その信号の源泉となっている
Pleuroperitoneal foldsに異常がある可能性があります。
例えば、Pleuroperitoneal foldsの形成初期には
GATA4, COUP-TF2, and FOG2
これらが発現されているとあります(902)。
実際にPleuroperitoneal foldsの異常は
先天性横隔膜ヘルニアに関わると報告されています(903)。
病因はそれだけではない可能性がありますが、
現時点の情報において
Pleuroperitoneal foldsはおそらく横隔膜の形成不全に
深くかかわっているので、そうであれば、
遺伝子的な影響を調べるとともに、
実際にどのような信号異常があるか?
それによって筋原性の細胞、神経細胞の
どのような機能に異常が出ているか?
その上流から下流までの機序を推定していくためには
現時点で世界で用意されている情報では
おそらく十分ではない可能性が高いので
上述した類似する骨格筋の発達の情報を参考にしながら、
今後の研究の為の「当たり」を付けていく必要があります。
つまり、
「このような機序が重要で、不全が出ているのではないか?」
ということがある程度、頭にある中で
研究を進めていくということです。
上流から下流までの機序が明らかになれば、
現在用意されているFETOなどの外科的な医療介入に加えて、
組織の発達を薬物によって促す内科的な治療の道筋も見えるはずです。
-
pleuroperitoneal foldsより信号を受けた
筋肉の前駆細胞は筋芽細胞に分化します。
筋芽細胞は通常は一つの細胞核を持ちますが、
それが筋線維に融合することで取り込まれます。
従って、筋線維は筋芽細胞の細胞核も取り込むため
筋線維は長い繊維状の区画の中に
多数の細胞核が存在する多核性の組織となります(906)。
(参考文献(906) FIGURE 1)
これら筋線維がワイヤー上に束となり、
その束の周り、それを縛るようなタンパク質が存在しますが、
それについての詳細は後述します。
横隔膜の筋肉の結合組織や上部に存在する腱の形態生成
その形態生成における横中隔とpleuroperitoneal foldsの関連性については
まだ、未知の領域が多く存在します(892)。
横隔膜の形成の健全性や異常(穴)が生じる物理を考えるときには
その筋肉の元となる細胞種、その融合体である筋線維がある事と
その筋線維を高い秩序で結びつける結合組織が必要です。
また、その成長、形状を管理する神経系、免疫系を含めたシステムが必要です。
例えば、形態生成において重要なMetを欠損させると
結合組織が残ったまま、筋線維の形成が欠如しました(907)。
この事はそれぞれの要因が、
別の遺伝子によって制御されていることを示唆するものです。
また、横隔膜の異形成は左側が多く
おおよそ85%であるとされています(890,908,909)
この疫学的情報は病理、病因を理解する上で非常に重要です。
Allyson J. Merrell(敬称略)らがFi.2示すように(892)
横隔膜形成初期の細胞の分泌、信号因子などの器官の左右対称性は
比較的高いと想定されます。
人の身体の構成において左側には心臓があるため
横隔膜の位置が左側と右側で対象ではありません。
心臓がない右側の横隔膜は高い位置に形成されます。
(参考文献(910)より)
これが異形成と関係している可能性があります。
例えば、心臓の拍動、質量によって
常に左側は右側よりも強い機械的ストレスにさらされるため、
それによってより強固な形態形成の機序が
正常な組織発達の為に必要であるという事はあるかもしれません。
なぜなら、そのストレスによって
筋線維がちぎれたり、結合組織が破壊され
穴が開くことが考えられるからです。
もし、そうであるとするならば、
本質的な組織形成の欠陥ではなく、
筋組織の形成が少し脆弱であるという可能性が浮かび上がってきます。
なぜなら、右側には穴が形成されないからです。
そうであれば、子どもが成長しても共に変わっていける
体の中にある自然な結合組織によって
筋線維を補強するようなことが薬剤でできれば、
何割かの横隔膜ヘルニアを防ぐことができるかもしれません。
他方ですでに筋肉の再生については
スポーツ科学を中心に考えられています(911)。
そのような再生を促す処置ができれば、
横隔膜の筋組織の恒常性の中で
よりリスクが少ない状態にできる可能性もあります。
筋肉の再生についても
横隔膜ヘルニアにおいて重要な可能性があるので
後に内容を精査することになります(911)。
今述べた様に
筋組織は再生する事も考えられるため
小さな穴で止める事ができたら、
その穴は自然な再生機序によって閉塞し、
その後、組織は正常化する可能性もあります。
外科的にはiPS細胞で作った心筋シートを
心臓に貼って回復させたように
お子さんの横隔膜に
横隔膜筋シートを貼るような事も考えられます。
内科的には組織をお子さんの自然な機序を利用しながら
薬物によって補完し、強化する事ができるか?
それをまだ横隔膜の運動性が低いと考えられる
胎児の時点でできるか?
そのような展望が現時点であります。
これは現時点での仮説による論述であります。
一方で、そうではなく
神経系や免疫系の信号の非対称性などの
可能性も現時点では否定はできません。
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ここからはPraveen Kumar Chandrasekharan(敬称略)らが示す
先天性横隔膜ヘルニアに特化した総括(918)を参照し
上述したことも含めて付加的な考察を含めながら詳述します。
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<<要約、背景>>
横隔膜ヘルニアは横隔膜の筋肉の発達において不全が生じ、
特に左側において多く穴が生じます。
Praveen Kumar Chandrasekharan(敬称略)らがFig.2に示すように(918)
その穴は小さなものから全体が欠損するような大きなものもあります。
(Fig.2 A,B,C,D参照)
この先天性横隔膜ヘルニアによって
上述したように肺(肺高血圧)、心臓の不全につながります。
肺高血圧症は肺水腫に伴い生じることがありますが、
全てではないにしろ高血圧の一つの考えられる原因は
特に左心房に繋がる肺静脈管壁の中膜にある平滑筋の機能が
低下する事です。
横隔膜ヘルニアで肺高血圧とリンクする原因は
単に肺と横隔膜の圧力的な関係を考える
「Lung diaphragm model」だけで説明はできない可能性もあります。
なぜなら、胸腔への腹腔組織、臓器の滲出も
関係している可能性があるからです。
しかしながら、横隔膜ヘルニアを呈する子供が
先天的に横隔膜筋の機能が弱いとすると、
それによって生きるために必要な空気量を
肺の収縮、伸張で獲得するためには
それに関する筋肉の過負荷(Overload)が生じる可能性があります(944)。
それによって呼吸に関わる筋組織の中の
並列に、棒状に繋がっている
「Sarcomeric cytosleleton」(参考文献(945) Fig.5)。
これに多くに負荷がかかります。
ここで整理して考える必要があるのが、
少なくとも
〇横隔膜筋
〇呼吸筋(Expiratory muscles)(参考文献(946) Fig.1)
〇肺静脈の平滑筋
〇心筋
これらの連携です。
これらは人が呼吸する際に正常に働く必要がある筋組織です。
例えば、横隔膜ヘルニアで先天的に横隔膜筋に異常がある
その機能が弱いとします。
それはCaイオンの取り込み、感受性が悪いかもしれないし、
筋組織の中の細胞骨格の形成、構造に異常があるかもしれません。
いずれにしても横隔膜筋に異常があると
それ以外の呼吸筋、肺静脈の平滑筋、心筋に過剰な負荷がかかります。
それを補うために過剰に活動する必要があるからです。
そうして、肺高血圧症になると
今度は肺静脈の平滑筋が肥大、硬化して
肺静脈の平滑筋の機能も低下してしまう可能性があります。
そうすると横隔膜筋、肺静脈の平滑筋、両方が低下し、
さらに呼吸筋、心筋に負荷がかかります。
そうすると特に心臓の肥大につながる可能性があります。
実際に共に「先天性」とされていますが、
横隔膜ヘルニアと心疾患が併存するお子さんは
全体のおおよそ15%になると言われています(947)。
さらに先天性横隔膜ヘルニアを呈する子供のおおよそ
0.3%は心臓疾患に対する手術が必要であると推計されています(948)。
また、横隔膜ヘルニアの子どもにおいては
「Barrel-shaped chest(※)」と呼ばれる
胸が相対的に大きくなる臨床症状を呈することがあります(950)。
(参考文献(950) 図参照)
これは、横隔膜筋、肺高血圧症など
呼吸機能全体に関わる力が弱い状態にあることによって
生じる補償的な身体の反応と言えます。
つまり、胸の筋肉を肥大させないと
通常の酸素を中心とした体の空気需要を満たせないということです。
下にリハビリテーションについて述べます。
これは主に横隔膜や肺の呼吸筋の機能向上を目的として行う事が
患者さんにとってメリットがあるかどうかを考察するものですが、
すでに「Barrel-shaped chest」
つまり胸の筋肉の肥大が生じている事は、
リハビリテーションの効果がある程度制限的になる
ということを示すものかもしれません。
横隔膜ヘルニアに追随して生じる呼吸機能の低下に対する
医療的介入を考える場合には
下述するようなリハビリだけではなく、
心臓、肺(平滑筋を含む)、呼吸筋(横隔膜筋を含む)、
加えては循環器の液性の機能(免疫機能を含む)を
総合的に掌握し、全体的に分散した治療を行う事が
一つの終着点として考えられるかもしれません。
従って、横隔膜ヘルニアの子どもに対しての治療を考える際には
〇(一般的な)肺高血圧症
〇(一般的な心肥大を含む)心疾患
〇動脈硬化
これらなどの治療が役に立つ可能性があります。
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治療としては上述した筋肉を効率よく使う
リハビリテーションが考えられます。
例えば、呼吸筋をリハビリテーションによって鍛える事で
横隔膜筋、肺静脈の平滑筋、心筋にかかる
負担を減らす事ができるかもしれません。
どの筋肉を鍛えるのがいいかというのは
その筋肉の肥大しても問題のない筋肉である必要があります。
上述したように心臓の筋肉が肥大すると問題になります。
しかし、例えば、四肢の筋肉が肥大しても
健康上、問題になる事はあまりありません。
もし、肺の周りにある呼吸筋の肥大が
呼吸に関わる他の筋肉の肥大に比べて問題が少なければ、
そこの能力を呼吸に問題のある子どもの無理がない範囲で
理学療法士の指導の下、行う事は重要かもしれません。
その筋肉が元々問題のあった横隔膜筋にも
正の影響を与える可能性もあるからです。
但し、先天性横隔膜ヘルニアに罹患している子どもに対して
強度を最適化した形で一般的な肺のリハビリを行う事が
患者さんにとってメリットがあるかどうかに関しては
現時点でエビデンスはありません。
ただ、先天性横隔膜ヘルニアを呈した患者さんに併発する
肺高血圧症と肺のトレーニングにおける総括は存在します(949)。
その内容についてここで時間をとって精査します。
気を付ける必要があるのが、
肺動脈高血圧症(肺静脈高血圧ではない)の患者さんに対して
運動による介入を行うことは
患者さんに対して弊害をもたらす可能性があるということです(949)。
それをまずは前提として、
肺動脈、肺静脈の高血圧症、
それを多くの場合併存する横隔膜ヘルニアにおいて
リハビリについて考えます。
但し、運動には
種類(動かす場所)、強度、頻度など
かなり異種性があり、専門性が必要であります。
ここで思考実験、分野横断的な調査の出発点として
焦点を当てて考えたい事は
上述したように肺の周りにある呼吸筋の機能を
どうやって選択的に上げることができるか?です。
それによって他の呼吸に関わる筋肉の負担が減るか?
そうするとおそらく横隔膜ヘルニアの
お子さんで生じていると現時点で推定している
横隔膜筋の低下⇒肺静脈、肺動脈平滑筋肥大、硬化
⇒心筋細胞の肥大、硬化。
それに伴う横隔膜、肺、心臓の機能の低下。
この負のスパイラルを肺の呼吸筋の機能向上によって
正のスパイラルに転換することができるか?
現時点では肥大した時にリスクが少ないと想定されるおが
呼吸筋であると考えられるからです。
筋肉も種類が多く大きいという事も挙げられます。
実際には横隔膜筋も呼吸筋の一つとして挙げられるので
全体的に呼吸筋の機能に介入する事は
元々の病因であった先天性の横隔膜筋形成不全にも影響を与えます。
但し、この事はもともとそこに不全があるわけですから、
人為的に介入する事が悪影響を及ぼす可能性もあります。
そうした可能性にも配慮しながら考えていきます。
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リハビリテーションが個別化された形で安全に行われるかどうかは
私が推定するに、運動を行った際の患者さんの反応にあります。
理学療法士間で偏差のない運動的介入を行う際において、
リハビリテーションを中断する評価基準は必要です、
例えば、横隔膜ヘルニアの子どもの臨床症状を調べると
〇呼吸(呼吸が早くなる)
〇胸の形の異常(Barrel-shaped chest)
〇皮膚(※1)
(※)チアノーゼ:青紫色に変色(酸素不足による変色)
〇呼吸機能の異常(うまく息ができない)
〇高血圧
〇腹部が凹む(Scaphoid abdomen)(※2)
(参考文献(951) 1 Abdominal Contour参照)
(※2)これは胸腔の臓器や組織が胸腔に滲出している事を示す
ものかもしれません。
〇心音の異常
従って、身体の全体的な形の異常の観察や
呼吸機能、皮膚、血圧、酸素飽和度などを管理しながら
リハビリテーションを行う必要があります。
先天性横隔膜ヘルニアに罹患する患者さんは子どもですから
救命を実現した子どもは、その後、長く日常生活を送ることになります。
どのような管理の元、日常生活を送るかを含めて
いずれにしても今後考えていく必要があるので、
リハビリテーションは一つ重要な医療介入であると言えます。
まだ、先天性横隔膜ヘルニアの予後における
リハビリテーションのガイドラインを示されていませんが、
上述した典型的に患者さんが呈す臨床症状は
ガイドラインにおそらく含められることです。
例えば、1分間の呼吸の回数や血圧などは
数字で管理されるようになると思います。
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一方で意外な観点としては心の状態との関連を考える必要があります。
肺の高血圧症による運動機能の低下は
うつや不安と関連があるという報告もあります(952)。
呼吸はずっと生活の中に共存するものなので、
先天性横隔膜ヘルニアに限らず、呼吸機能にハンディキャップがある
患者さんに対して、医療福祉機関が
継続的に心のケアの機会を用意する事は大切です。
まずは、その環境づくりが一つの基礎となります。
もう一つ、見逃せない観点としては
睡眠、食事などの日常生活習慣です。
患者さんに対する診察で、睡眠や食事に焦点を当てた時に
どういったときに不安を感じやすいか診察で掌握するという手段もあります。
例えば、昼過ぎの13時、14時くらいに不安を感じやすいとします。
それは太陽の条件、ホルモンバランスなど時間的なものもありますが、
その前の食事の条件もあるかもしれません。
不安に感じやすい前後の食事のタイミングを考える事で
日常生活の中の患者さんの心の問題にアプローチできる可能性があります。
そういった食事のタイミングは
この一連の段落で詳述している
リハビリテーションのタイミングとも関連があります。
生きていくためにはカロリーを取る必要がありますが、
できるだけ運動の前に必要なカロリーを取って、
それで人(理学療法士など)との関わりの中でリハビリをする。
そういったタイミングを意識した生活習慣を
個別化された形で最適化することで
呼吸機能に不全がある人の一定の割合の人に伴う
うつや不安などの心の問題の軽減に貢献するかもしれません。
リハビリテーションはストレスや疲れを伴ないます。
一定の運動に対して患者さんが感じるそれらは
その時のコンディションによってある程度は変動します。
これらのストレスや疲れは
精神状態や睡眠、食事(タイミング、メニュー、量)によっても
一定の傾向を示して変わる可能性もあります。
患者がより楽にリハビリテーションを行うために
患者さんの自由を奪わない形でとなると
限界はあるものの、改善の余地は多元的に存在すると想定されます。
ただ、注意する必要があります。
これは早産児の健康の為の記事なので省略する事が出来ない事です。
成長期の子供には食事の提案するにあたって
少なくとも過度なカロリー制限は適さない可能性があります。
食事と精神のバランスを取っていくにあたって、
カロリー制限は行わずにタイミングを考えるという事も
頭に入れておく必要があります。
Sonu Sahni(敬称略)らの総括の中で(949)、
Table 2にそのリハビリのメニューが挙げられています。
ペダルによる運動、ストレッチ、マシンによる歩行運動など
様々な運動がそれぞれの頻度、時間で示されています。
他の医療従事者(とりわけ医師、理学療法士)と
議論する必要はあるかもしれないですが、
私の現時点の考えは、リハビリに関しては
「中断の条件を正確に押さえる」ということです。
まず、前提として安全にリハビリを行う事があります。
横隔膜ヘルニアに罹患した子どもに対してリハビリを行う際には
子どもは自分の状態を正確に話すことができないケースもあります。
そうした場合、多元的な評価基準を持って、
リハビリに対する安全性を確保する必要があります。
その評価基準に含める必要があるのが、
その疾患に典型的に見られる臨床症状です。
但し、それだけでは不十分である可能性があります。
それを定めた時、そのような基準を超えて
安全性に問題が出る運動のレベルはおそらく個人差があるので、
どういったメニューが共通的にいいかというのを
なかなかガイドラインで示すのは難しいのではないか?
このように推定しています。
一方で、横隔膜ヘルニアの場合には呼吸機能に影響がでますから
主に呼吸機能に関わる主要な筋肉を優先して鍛えるという観点もあります。
その観点に立てば、適した運動メニューが存在しうる
という考えも生まれてきます。
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その横隔膜ヘルニアの病態の評価するため、
肺と頭の大きさの比、肝臓の位置を超音波によって調べます。
この肺の大きさが頭に対して25%を下回る場合には
重篤な肺の形成不全と評価されます(890)。
Jan A. Deprest(敬称略)らによって行われた
胎児鏡下気管閉塞術(FETO)において重篤なケースでは
その平均値は21%でした。
(参考文献(890) Table 1)
胎児の時点で横隔膜ヘルニアが明らかになっても
分娩は満期の近くで行われることが推奨されます(918)。
生まれてからすぐの新生児に対する医療的なマネイジメントとして
腹部の減圧を行います。
これは穴から組織が横隔膜の上側に滲出している可能性があるため
力を下側に向ける為、横隔膜の下の領域を相対的に陰圧にさせること。
これを目的としていると考えられます。
マスクによる換気は避け、
必要に応じて気管内チューブを挿入します。
マスク換気を避ける理由は
横隔膜ヘルニアに罹患している子どもは
肺の発達が遅れていることがあるため
過剰な負荷がかかることを避けるためであるとされています。
正確な換気圧力の制御が必要という事です。
また、胃の膨満のリスクがあるため、
横隔膜の下側が陽圧になる可能性もあります。
それは横隔膜上部への穴を通じた
組織の滲出を促す結果にもつながるため
避ける必要があるということです。
吸入式一酸化窒素供給は先天性横隔膜ヘルニアにおって生じた
新生児の継続する肺高血圧の治療のために利用する事は
FDAによって承認されていませんが、一般的に使用されます。
一酸化窒素は血管の周りにある平滑筋を弛緩させるため
血管径が広がります。
通常は平滑筋は収縮していますが、
弛緩によって平滑筋の表面積が大きくなるため
それと連結している血管の径が自動的に大きくなるということです。
それによって血圧が下がるというメカニズムです。
しかし、FDAによって承認されていない一つの理由は、
この一酸化窒素が誤って高濃度になった時に
気道刺激、低酸素血症などいくつかのリスクがあるからです。
従って、利用される場合には医師、看護師など
医療スタッフによる特別な管理が必要です。
人工肺とポンプを用いた体外循環による治療であるECMOは
従来の医療マネイジメントでも病態が改善しなかった場合に
典型的に検討される医療介入です。
但し、対象は
〇34週以上の在胎期間を持つ子供、
〇体重が2kg以上かつ関連する命に関わる異常がない事
これらのいずれかを満たすとなっています(918)。
◎早産
◎関連する異常
◎肺高血圧症の重篤度
◎回復のタイプ
◎ECMOの必要性
これらは先天性横隔膜ヘルニアを持つ子どもの生存に関わります。
先天性横隔膜ヘルニアの維持管理の改善によって
お子さんの生存率は上昇しています。
エクモが必要でない場合70-90%の間であり、
エクモを経験した子どもでは50%程度となっています。
--
ここで考察が必要なのが横隔膜ヘルニアが
胎児のときに超音波検査で確認されたときに
特に母子に他の問題がなければ、
満期まで子宮内に胎児を待機させ
満期近くで分娩を行うということです。
これは上述したように在胎期間が短く、
かつ出生体重が小さい早産の子どもは
この早産児健康促進の為の包括的情報の記事で詳述したように
身体全体の様々なリスクがあるだけではなく、
横隔膜ヘルニアの呼吸不全時の最後の砦として利用される
ECMOが対象外になるからであると考えられます。
さらに、子宮内では
母親の体と連携して酸素と栄養を供給してもらうため、
酸素吸入に伴う呼吸の負荷が一般的には低いと考えられます。
従って、横隔膜筋への機械的負荷が小さい中で
横隔膜筋の成長を促す事にもつながるし、
横隔膜の振動数、振幅が小さいのであれば、
胸腔への組織進出のリスクが小さい状態で
それ以外の臓器、呼吸に関わる肺の成長を促すこともできます。
また、出生前に子宮内で適切なケアと監視が行われる場合、
医療チームは患児の容態に合わせて、
分娩後、どのような処置を行うか?
ということを決定するための時間的猶予が生まれます。
ただし、胎児の呼吸(Intrauterine respiration)については
上述したように負担が少ないと明記しましたが、
実際には未知の領域が多く存在します(919)。
子宮内にある羊水を吸ったり、はき出したりする際に
横隔膜筋や呼吸器の血管の平滑筋が動くことが想定されます(919)。
しかしながら、胎児の呼吸の動きは連続的ではなく、
頻繁に動くときと、止まる時のサイクルがあるとされています(919)。
ここについて詳述している理由は以下です。
横隔膜筋の動性が高い状態だと胸腔と腹腔の圧力が
同様にダイナミックに変わるため、
その圧力差によって穴がある場合に
腹腔の臓器、組織が胸腔に進出してしまうリスクがあがります。
胎児の状態では組織の成長が逐次生じていますから、
できるだけ負担のない状態で
横隔膜筋を含めた組織の成長を促したいというのがあります。
その負担が子宮内で特に呼吸器において少ないかどうか?
また、実際に横隔膜の動きが
胎内と胎外でどのように異なるか?
それについて考える重要性が浮かび上がってきます。
上の生存率に関する疫学では
お子さんがECMOを必要とするかどうかで大きく変化します。
これは呼吸機能の不全の重篤度を反映するものです。
ECMOは呼吸機能を外部の装置に委ねる処置であり、
その負担が少ない中で呼吸器の回復を試みるものです。
横隔膜ヘルニアでは
横隔膜は呼吸に関わる筋肉で
酸素の取り込みはその横隔膜の動きに応じて
肺、その中の肺胞、サーファクタントなどの貢献によって生じます。
従って、横隔膜筋に穴があったり、
肺の成長が遅れている、不全がある事は、
呼吸機能において重複する障害であると考えられます。
従って、できれば、子宮内で
①肺の健全な成長
②横隔膜筋の健全な成長
これらの2つを完璧には難しいかもしれないですが、
両方をできるだけ健康な状態に漸近させたいというのがあります。
その為の重要なポイントは
妊娠女性、胎児の健康管理をしっかり行い
満期分娩を実現させるということです。
また、胎児の時点で医療介入する
胎児鏡下気管閉塞術(FETO)も非常に重要です(890,891)。
--
<病因>
先天性横隔膜ヘルニアの病因は不明です。
現在の認識では病因は複数の要因が絡み合っているとされています。
先天性横隔膜ヘルニアは
肺の形成不全だけではなく、
心臓、胃腸、尿生殖器の異常、
またはトリソミーなど染色体に異常があることがあります(918)。
遺伝子、環境、栄養など複数の要因が
先天性横隔膜ヘルニアの想定される病因です(920-922)。
栄養の観点では
ビタミンAの運搬に関わるタンパク質
レチノールタンパク質、レチノール結合タンパク質のレベルが
臍帯血で少ないことが関連している可能性があります(920,923)。
このビタミンAは組織の成長に欠かせないものです。
レチノール結合タンパク質は脂溶性のビタミンAを運ぶ役割があるので(924)、
妊娠女性の血液検査において
このタンパク質の量が明らかに不足している場合には
このタンパク質量を適正に戻すという事は重要かもしれません。
ビタミンAは成長に不可欠な栄養素だからです。
このビタミンAは目の健康と関連が深いですが、
先天性横隔膜ヘルニアと妊娠女性の盲目について
関連性を指摘する報告は見当たりませんでした。
--
<病理>(918)
横隔膜の成長は在胎期間4週から始まり、12週で
おおよそ完全な形となります(970)。
横隔膜筋の形成不全は部分的に小さな穴が生じる軽度なものから
横隔膜筋が完全に欠損する重度なものまで存在します。
横隔膜ヘルニアの胚形成の時点の病理は
完全には理解されておらず議論の余地があります。
上述したAllyson J. Merrell(敬称略)らがFig.2に示す(892)
横隔膜筋形成に関わるpleuroperitoneal foldの異常が
一つの病因であると考えられています(971)。
また、肺の低形成は先天性横隔膜ヘルニアの
原因となる要素かもしれないと報告されています(972)。
肺芽の形成と
横隔膜の形成過程の一時的構造で健全な形成に重要な役割を担う
The posthepatic mesenchymal plate (PHMP)の形成が関連しています。
従って、肺の低形成による原基の肺芽の形成不全が生じると
同じように横隔膜筋の原基であるPHMPにも同様に
形成不全が生じると考えられます(972)。
このPHMPの発達が遅れると横隔膜筋に不全が生じます。
肺芽と横隔膜の形成の元になるpleuroperitoneal foldが
関わっている事は指摘されています。
I Iritani(敬称略)は要約の中で
「The PHMP appears dorsal to the liver or on the ventral aspect
of the pleuroperitoneal canal when the lung bud enters
the pleuroperitoneal canal. Later, the PHMP grows to join
the costal mesenchymal tissue via the pleuroperitoneal fold,
thereby forming the primitive diaphragm.」
これらの文章を上梓されています(972)。
この文章について詳細に考えていきます。
PHMPはThe posthepatic mesenchymal plateであり
間葉系細胞の組織です。
間葉系細胞は組織系における重要な細胞なので
横隔膜の成長に欠かせない様々な組織を形成する元になるものである
と考えられます。
それが、肝臓への背部(背中側に)現れるとあります。
ここで肝臓と横隔膜の位置関係について学習します。
横隔膜は肝臓のすぐ上の位置にあります。
(参考文献(973) FIGURE 54-1)
この文章では胚形成(embryogenesis)。
つまり組織の発生時期、形成初期について問題にしています。
形成初期の肝臓と横隔膜の位置関係はFIGURE54-2に示されます。
背面側にはすぐしたに未成熟の胃が存在します。
pleuroperitoneal canalは参考文献(974)で
成長した横隔膜筋の横方向の断面図でみると
水色が背骨だとするとほぼ身体の中央に位置すると考えられます。
その腹部側面とありますので、
pleuroperitoneal canalの身体の前側という風に捉えられます。
つまり、PHMPと命名される組織発達に関わる間葉系組織が
横隔膜の元となる組織形成の段階で
前側、後ろ側両方に現れるということです。
これは、肺芽がpleuroperitoneal canalに入った時に生じる
とされています。
肺芽と横隔膜の原基の関係の情報は限定的ですが、
参考文献(975)の24ページのFigure(5)に示されています。
この時に偶然タイミングとしてそうなっているのか
そうではなくて肺芽(Lung bud)が何か
横隔膜形成に作用しているのか?
それについてははっきりとはわかりませんが、
上述したように肺芽の形成不全は横隔膜の形成不全と関連します。
文章からするとPHMPの成長を促すとも解釈できるので
肺芽の間葉系細胞自身が横隔膜筋の構成細胞に分化する
という可能性よりも、PHMPの成長を促す
なにか傍分泌様の物質を出すという方が可能性として高いか?
いずれにしても現時点では仮説の域を出ません。
--
横隔膜ヘルニアによって生じる横隔膜内臓脱出症は
ケースとしては左側よりも確率が低い
右側に生じた時がより共通的です。
しかし、この場合、重度の肺の形成不全(低形成)を
伴なわないことが多いとされています(918)。
横隔膜内臓脱出症はどれくらいの範囲の
横隔膜に異常が出るかにもよると考えられますが、
腹腔から胸腔に脱出した臓器が
途切れることなく呼吸で生じる肺の動きに影響を与えると
そのお子さんの肺の成長、成熟を阻害する可能性があります。
肺は、一般的にそうした伸張、収縮といった
動きの中で成長、成熟することが知られています。
(stretch-induced lung matuation)
〇免疫反応による肺の成熟(992)
〇血管内皮成長因子による血管生成(993)
〇サーファクタントの成熟(994)
〇セロトニンの放出(995)
これら、呼吸運動に誘導された
肺の成長、成熟が確認されています。
従って、特に成長期における肺高血圧症の治療、
あるいは肺のより健全な成長を促すためには
お子さんの横隔膜、胸筋を使って、
自立的に肺を運動させ、呼吸する事が大切です。
無理はできませんが、肺を運動させること自体が
肺の健全性に貢献するということです。
--
横隔膜ヘルニアの病態で主なものは
肺の成熟不全と形成不全の組み合わせです。
新生児遷延性肺高血圧症
(persistent pulmonary hypertension of newborn: PPHN)。
これを引き起こす原因となります。
上述した肺の成長、成熟不全の中には
肺に存在する血管や肺と心臓を繋ぐ、
肺動脈、肺静脈という主要な血管があります。
上述したように肺のストレッチは
血管内皮成長因子による血管生成を促します。
胸腔が狭窄している、かつ/あるいは、
横隔膜、胸筋、平滑筋、心筋などの機能も低く、
肺の動きが悪いと
肺のVEGF依存的な血管生成が不十分になり、
結果として持続的な肺高血圧症(PPHN)に繋がる可能性があります。
実際に横隔膜ヘルニアでPPHNの罹患する原因は
肺の血管生成の不全、未成熟にあると指摘されています(996)。
肺から血管を送る能力が低下すると
左心室が低形成となり、右心室が肥大する
とされています(997-1000)。
--
一般的に肺の形成不全は横隔膜ヘルニアが生じた
身体の同側に生じるとされています。
但し、Praveen Kumar Chandrasekharan(敬称略)らが
Fig.3に示すように(918)
異なる側の肺組織や血管径に影響を与えるかもしれません。
具体的には異なる側の肺機能に依存するようになるので
負担が増加しているサイドの肺に繋がる
肺動脈、肺静脈が通常よりも太くなる可能性です。
--
横隔膜ヘルニアはFETOによる治療を行ったとしても
高い割合で肺高血圧症が残存するので(890.891)、
血管形成の異常について考える事は重要です。
ただ、基本的には臓器侵出によって
肺成長の空間が制限されることは
ほぼ絶対的なリスク因子なので、
横隔膜の異形成、腹腔内の臓器の胸腔への侵出を
外科的な処置を含めて早い段階で解消して、
その後、できるだけ早くリカバリーステージに
誘導する事が重要であると考えられます。
先天性横隔膜ヘルニアではどのように血管の組織に影響を与えるか?
というのがまだはっきりとはわかっていません(1001)。
しかし、Nitrofenモデルという内皮細胞の機能不全のモデルが
提唱されています(参考文献(1001) Fig.3)。
このモデルでは
VEGF、BMP、Endoglin、FGF機能が抑制され、
PDGF、ICAM、VCAM機能が亢進しています。
ー
VEGF(血管内皮増殖因子)
BMP(骨の形成に関わる機能)
Endoglin(血管生成に関わる機能)
ー
PDGF(血管平滑筋細胞、繊維芽細胞増殖因子)
ICAM(細胞間接着分子)
VCAM(血管細胞接着分子)
ー
従って、血管の中膜にある平滑筋や線維芽細胞、
細胞間の接着分子が過剰に働いていると考えられます。
これは血管の中膜が過形成される事を意味します。
一方で、内皮増殖因子や血管生成が弱くなっています。
PDGF、ICAMは一般的に動脈硬化を促進する働きがあります(1002)。
従って、肺動脈や肺静脈など中枢となる
重要な血管の柔軟性が損なわれる可能性があります。
--
(肺高血圧症の治療)
肺の機能を維持、回復させるための戦略は以下です。
但し、人への治療において確立されてないものも含まれます。
一方で、(将来的に検討されるものも含めて)
治療は最も重要なところです。
以前の記事では説明が不十分なので
一つ一つ詳しく調べて、情報提供したいと思います。
内容を精査していただき、活用していただければ幸いです。
-
①気道圧解放換気
(Airway pressure release ventilation:APRV)
間欠的、周期的に比較的低い陽圧状態で
持続的に通気を圧力を精密に制御して行う手法です(1003)。
以下、追記です。
Ehab G. Daoud(敬称略)がAPRVについて詳しく報告しています(1012)。
この報告を参照しますが、
一点、申し上げる必要があります。
それは、これは一般的なAPRVの情報であるという事です。
つまり、横隔膜ヘルニアを呈する新生児、小児に対して
特化したAPRVの情報ではないということです。
それを踏まえた上で詳述していきます。
--
少し背景的なところから考えていきます。
横隔膜ヘルニアでは片方の肺の大きさが著しく小さくなる
(低形成する)事が示されています。
肺胞の大きさ、能力はある程度決まっているので
肺全体の大きさが小さいという事は
肺胞の数が少ないという事です。
一つの肺胞で一回の呼吸で通気出来る量が
ある程度の範囲で決まっているとします。
また、横隔膜ヘルニアに罹患しているお子さん、
同じ年齢の健康なお子さんの
身体全体の酸素需要があまり変わらないとします。
そうすると1回の呼吸で取り込める量は
肺胞が少ないほうが明らかに少ないわけですから、
横隔膜ヘルニアに罹患している患児は
浅い呼吸を何度も繰り返しする必要があります。
そうすると呼吸をするたびに肺胞の上皮組織など
バリア組織は伸張、圧縮の機械的ストレスを受けることになります。
こうしたストレスが組織の健全性を悪化させます。
すでに肺の成長に異常が出ており、
さらに血管の筋肉などが硬くなっている可能性もあることから
こうした高頻度、高い周波数の運動は
患者さんにとってリスクが高いと考えられます。
この機械的ストレスに関しては
動物モデルで1回換気量が多い場合には
上述した組織の破壊のリスクは高いことが報告されています(1062)。
健康な人でも運動した時には
酸素需要が高くなり、自然と呼吸が速くなります。
これは神経系が関わっている可能性もあります(1071)。
その酸素需要に従って、異形成が生じている肺で
吸気をしたときには、気管支がどのように伸びているかに依りますが、
その分圧が均一になるかどうかはわかりません。
例えば、腹腔の臓器の胸腔への侵出で
左の肺が著しく小さくなっている場合、
好ましくは右の肺に多くの酸素が届いてほしいというのがあります。
なぜなら、同じ分圧で左と右に分かれると
左の肺の肺胞が少ないことから
1つの肺胞当たりの分圧が高まってしまいます。
それがHIPを上まわっていれば、
動物モデルで確認されたように肺の損傷に繋がる可能性があります。
いずれにしてもすでにある肺胞を有効活用したいという点で考えれば、
Continuous positive airway pressure(CPAP)も
選択の候補の一つになるかもしれません。
なぜなら、陽圧にすることで末梢の気道が開き、
それによって末梢の気道の閉栓が少なくなり、
結果として多くの肺胞に空気を届けられるようになるからで。
では、APRVのメリットは何なのか?
小谷透先生のレターを参照しながら考えます。
APRVの一つの違いは陽圧にする換気において
圧を開放するP lowを設けることにあります。
圧力を下げるときには物理的には空気が抜けるので
組織が圧縮されるようなイメージでとらえてます。
その範囲をできるだけ組織がそれに応じてストレッチする範囲
つまり、肺胞のボリュームが線形に変わる領域で
圧力を変化させる事にしています。
これがどのような意義があるのか?
ということです。
空気を入れ替えるという目的はあるかもしれません。
特に圧力を下げなくても
炭素、二酸化炭素の量はモニターすることで
調整することができるはずなので、
二酸化炭素を出すというよりも
閉じた系の中で空気に体内から様々な物質が漂う可能性があるので
それを一旦リフレッシュするという効果はあるかもしれません。
しかし、その場合、P lowにしたときに
外にそれが出なければいけません。
他には肺胞がストレッチすることで肺が収縮、伸張するので
その動きが肺にとってメリットがあるかもしれません。
肺が動くことで
セロトニン、血管生成因子を放出し、
健全な成長を促すとされているからです。
もう1つは自発呼吸がどのように医療的な意義を生むか?
これについてです。
APRVは呼吸をサポートするような圧力調整は行わないので
陽圧の状態で自発呼吸をすることになります。
その自発呼吸は横隔膜筋、胸筋などの運動に同期した形で
当然、実現されます。
横隔膜ヘルニアのお子さんにおいて
これがどのようなメリット生むか?です。
あるいは一般の肺に疾患を持つ患者さんに対してはどうか?
筋力と神経連携を維持するという意義はあるかもしれません。
また、肺が動くことで
セロトニン、血管生成因子を放出し、
健全な成長を促すとされています。
筋肉、神経系と自然な連携のもとに生じれば、
子どもの肺の成長にとって重要かもしれません。
基本的に自発呼吸が前提となっているので
浅い鎮静の状態で行う必要があります。
他方で
通常の人工呼吸器に比べて、
酸素供給量が目標の血中酸素飽和度と整合するかを示す
ventilation/ perfusion (V/ Q) matchingが高く、
またデッドスペースも小さくて済むと考えられています(1013-1017)。
デッドスペースが小さいことは
呼吸器系の流れが層流であり、
流体抵抗が少なく、
肺胞の酸素、二酸化炭素濃度を
機械によって調整しやすいことも示すと考えられるので
このV/Q整合度とデッドスペースは因子としては
絡んでいる、交絡していると推定します。
酸素に関する要因には従来の方法と差がなかった
という報告もありますが、
それでも従来の人工呼吸に比べて、
人工呼吸器に伴う有害事象は顕著に少なかったとされています(1018-1021)。
-
(血行動態への効果)(1012)
自発呼吸の間、胸腔内圧が減少しました。
結果、右心房内圧が減少しました。
静脈灌流が上昇し、
心臓の充満量を示すプリロード(preload)が改善しました。
結果、心拍出量が向上しました(1048)。
-
APRVとPCV(従圧式強制換気)を比較しました(1049)。
〇心係数(Cardiac index)(CI l/min/m 2 )
〇酸素運搬(Oxygen delivery)(DO2ml/min)
〇静脈酸素飽和度(Mixed venous oxygen saturation)(SVO2%)
〇尿排出量(Urine output)(ml/kg/h)
APRVはPCVに比べて、これらが顕著に高いことが示されました。
〇昇圧剤、循環作動薬の使用
〇乳酸濃度(mmol/L)
〇中心静脈圧(CVP)(mmHg)
APRVはPCVに比べて、これらが顕著に低い事が示されました。
-
(領域毎の血流と臓器灌流)(1012)
急性肺障害(ALI)を持つ動物に対して
APRVは呼吸筋血液量はAPRVで改善しました(1050)。
人のケースでもAPRVはPCVに対して
尿排出量を増加させ、GFRを改善しました(1049)。
従って、腎機能にも影響があります。
-
(鎮静剤、神経筋遮断薬使用)(1012)
CMV(Continuous Mandatory Ventilation)に対して
APRVはより浅い鎮静で処置を行う事が出来きます。
(APRV:Ramsay score 2~3 for CMV:Ramsay score 4~5)
従来の人工呼吸方式に比べて、
APRVは70%神経筋遮断薬使用を減らす事ができ、
鎮静剤を40%減らす事ができます(1049,1051-1054)。
これらの結果は人工呼吸の期間や
ICUで治療を受ける期間を減らす事に繋がるかもしれません(1051,1055)。
-
(望ましいケース)(1012)
臨床、実験データに基づけば、
APRVは外科手術を受けた後のALI、ARDS、血管拡張不全。
これらを持つ患者さん対して望ましいとされています
(1049,1050,1056-1059)。
-
(禁忌)(1012)
APRVは自発呼吸を可能にするため低い鎮静レベルを必要とするため
患者さんが罹患している疾患の維持管理、治療、マネイジメントのために
「深い鎮静が必要な場合」には使用すべきではないとされています。
例えば、その疾患とは
頭蓋内圧の高まりを伴なう脳浮腫や
てんかん重積症(status epilepticus)などです。
閉塞性肺疾患(気管支喘息の悪化や慢性閉塞性肺疾患)の
患者におけるAPRVの使用に関するデータは現時点ではありません。
原理的に、短い開放時間は
(血管抵抗が高く)長い呼吸時間を必要とする
患者さんに対しては有益ではないとされています。
同じように
神経筋疾患の患者に対しても調べられていません、
-
(APRVの圧力、換気量の調整)(1012)
終末呼気圧を大気圧に対して陽圧にする
人工呼吸方法と一回換気量を6 ml/kg (※)と低く設定することは
肺に対しての呼吸時の単位時間当たりの
圧力変動を小さくすることができるため、
患者さんの一つ一つの肺胞を守ることにつながります。
実際に動物モデルでは一回換気量が高い場合では
(A)上皮、内皮組織の損傷、
(B)肺の炎症、
(C)肺拡張不全、
(D)低酸素血症
(E)炎症性物質の放出
これらを導いたことが報告されています(1062,1065-1070)。
一回換気量を従来の半分程度に下げる方式は、
ARDSを持つ患者さんの生存率、退院率を向上させる
ことにつながりました(1061,1062)。
(年齢の中央値は50歳程度です(1062)。)
(※)成人の安静時の一回換気量は6mL/kgが目安です。
正常値は7〜9mL/kg(約500mL)です(1060)。
それに対して、従来の人工呼吸では
一回換気量は10-15mL/kgでした(1062)。
-
圧力の設定値はEhab G. Daoud(敬称略)らが
Figure 2に示すように(1012)、
P highをHIP以下にP lowをLIP以上にします。
HIP:high inflection point (HIP)
LIP:low inflection point (LIP)
このグラフを見るとわかるように
肺胞の容量(volume)と圧力の変化の割合が
HIP、LIPでおおよそ変曲点を迎えます。
つまりHIP以上の圧力では
それ以上に圧力を上げても肺胞は大きくなりません。
これは肺胞にある細胞がそれ以上弾性を持たない事を示し、
細胞への損傷のリスクが高まる事を示します。
同様にLIPでもそれ以下であれば、
肺胞はそれ以上に小さくなりません。
従って、肺胞が圧力に対してより無理なく敏感に容量を
変えられる範囲で、P high、P lowを設定し、
換気を行うということです。
--
(A)患者さん酸素飽和度が改善しないとき
(A-1)P high T high もしくは両方を上昇します。
但し、組織の破壊のリスクがあるため慎重な調整が必要である
と考えられます。
(A-2)
患者のポジションを腹臥位(うつ伏せに変える)(1048)
-
(B)換気が不十分な時
(B-1)P high(圧力)を上げ、T high(時間)を下げます。
分時換気量を上昇させます。
平均の気道圧を安定させます。
(B-2)T lowを0.05-0.1秒増加させます。
(B-3)鎮静を下げ、患者さんの自発呼吸による
分時換気量への貢献を上昇させます(1048)。
--
(結論)(1012)
APRVは単純、安全、効果的な通気方法です。
しかしながら、他の通気方法に対して
優れているという信頼できる証拠はまだありません。
従って、その信頼性を上げるために
APRVと他の通気方法と比較するための
大規模な臨床試験が必要であるとされています。
現在ではALI、ARDSを持つ全ての患者さんに対して
APRVは推奨されていません。
APRVを選択する場合は、
注意深く患者さんの状態を見極め、
専門家、呼吸療法士と相談することが必要かもしれません。
また、ここからが重要です。
APRVは新生児や小児のARDSの治療に有効な戦略ですが、
APRVを小児のARDSの第一選択の換気戦略として使用すると
死亡率が高くなるという報告があります(1063)。
但し、マルチセンターで大規模で行わないと
本当にAPRVが新生児や小児のARDSに呼吸サポートを行う場合
不適であるか、適しているかの正確な判断は
できないと論説されています(1064)。
-
②神経調節補助換気(Neurally adjusted ventilatory assist)
(要約、背景)(1087,1092)
神経調節補助換気(NAVA)は、横隔膜電気的活動を利用し、
呼吸補助のタイミングや呼吸圧、換気量を調整する人工呼吸器モードです。
Monika Gupta(敬称略)らがFig.1に示すように
子どもを含めた人の横隔膜は神経支配(Innervation)を受けています(1088)。
横隔膜筋に限らず、骨格筋は神経支配を受けています。
神経細胞が持久力が高い赤筋線維と瞬発力が高い白筋線維に
それぞれ別の神経細胞が繋がっています。
若い時にはその神経のつながりが密であり、
持久力と瞬発力を生む筋肉同士の神経連携もあります。
こうした神経連携、神経連結は高齢になると失われます。
年齢に応じて逆らう事のできない機能喪失がありますが、
若い人でもその筋肉を使わない事によって運動機能が低下します。
逆にいえば、定期的に適度に筋肉を使う、運動する事は
筋力だけではなく、それを制御して動かす神経系の強化
にもつながると考えられます。
(参考文献(1089) Figure 1参照)
例えば、ECMOなどを装着して長期入院していると
回復直後は食事すら自分でできなくなることもあります。
この事は、その筋肉を定期的に使う事の重要性を示しています。
一方で、使い過ぎは神経を過剰に活性化させ、
けいれんなどにつながる可能性もあるかもしれません。
子どもにおいて横隔膜ヘルニアが生じ、
人工呼吸を行う場合、横隔膜筋を使わない事による
筋力低下だけではなく、神経連携の低下も懸念されます。
子どもの横隔膜ヘルニアや肺高血圧症の治療においては
呼吸能力が衰えている場合には、挿管が必要になると考えられますが、
できるだけその期間は短くし、
お子さんの自律的な呼吸を支援し、自発的に出来るように促したい
という確固たる需要があります。
呼吸は必須の運動である事は自明ですが、
それに関わる筋肉と神経の連携を適切に発達させる、
維持させる事は特に発達期においては非常に重要である
という理解をしています。
このNAVAは横隔膜筋に電極を装着し、電気信号を計測する事で
そのお子さんが自然に呼吸するリズムを把握します。
人工呼吸器はそのリズムに合わせて呼吸補助をします。
つまり、患児の身体、脳の自然な呼吸のリズムと
機械である人工呼吸器の同期を改善するということです。
上で説明した入院に伴い筋力が低下する事は
「廃用性」という定義の一部になります。
この廃用性症候群は筋肉だけではなく、骨の密度も低下し
運動機能が著しく低下することです(1090)。
このような廃用性症候群は横隔膜筋に対しても生じます。
NAVAはその低下を予防することも目的としています。
人工呼吸器管理に関連する肺損傷を軽減し、
人工呼吸管理期間が短縮できる可能性があるとされています。
このNAVAのコンセプトは1999年に
Christer Sinderby(敬称略)らによって発表されています(1091)
この背景には自然の呼吸サイクルが機械と同期していないと
不快感だけではなく、肺胞でのガス交換効率が低下すること。
あるいは心臓血管の機能不全にもつながるとされているからです(1091,1093)。
FDAはNAVAの使用は500gの低体重の赤ちゃんを含めて
全ての患者さんに対する使用を承認しています(1092)。
日本においても2012年11月7日の時点で
小児・新生児から成人まで幅広く使用できる
人工呼吸器モードとして承認されています。
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(内容抜粋、追記)(1087)
人工呼吸は集中治療を必要とする患者の約1/3に対して
施工されています。
速やかにガス交換を改善し、呼吸筋の疲労を軽減する事ができる
救命処置であるとされています。
人工呼吸器を必要とする患者は呼吸機能が当然低下しています。
CTで見た時に肺の多くの部分が白色化している状態で
その治療として利用されることがあります。
白色化とは組織の硬化ですから、
肺の構造単位である葉、葉の中に複数存在する肺胞の多くが
その組織の柔軟性を失っているということです。
これにより1回換気でのガス交換量が低下すると考えられます。
一方で、身体の方は必要な酸素飽和度を維持するため、
補助的な対策を自然にとろうとします。
その結果、呼吸が浅くなり、回数が増え、
それによって呼吸筋を動かす機会が増えます。
それが結果として呼吸筋の疲労につながると考えられます。
人工呼吸を行う場合、自発呼吸との同期と呼吸努力について
考慮する必要があるとされています。
上述したように非同期の状態であると
不快感から患者さんの心の状態(不安など)に関わる可能性があります。
非同期は実際に
(1)離脱遅延(1125)
(2)人工呼吸中の睡眠障害(1126)
(3)気管切開率の増加(1127)
これらとの関連が報告されています。
さらに、
呼吸の基本的な目的である換気と心臓血管の機能にも
影響を与える可能性があります(1091,1093)。
また、呼吸努力を除外すると
廃用性呼吸筋症候群にかかるリスクも増える為
適度に患者の呼吸努力を残す必要もあると考えられます。
これらを考慮するにあたり、ポイントがあります。
(1)自発吸気と強制換気のタイミング
(2)人工呼吸器の1回換気量(供給量)と患者の呼吸努力の関係
(3)呼気相での肺虚脱を防止するための圧、つまり終末呼気陽圧の必要性。
肺虚脱とは肺胞の圧変化の機能が失われることであります。
終末呼気陽圧にすることで抹消気道を含めて
呼吸器を開放することができることと
弱った組織の急激な圧変化による損傷を減らす事ができると考えられます。
ここで①気道圧解放換気の節で述べたことを再度記載します。
圧力の設定値はEhab G. Daoud(敬称略)らが
Figure 2に示すように(1012)、
P highをHIP以下にP lowをLIP以上にします。
HIP:high inflection point (HIP)
LIP:low inflection point (LIP)
このグラフを見るとわかるように
肺胞の容量(volume)と圧力の変化の割合が
HIP、LIPでおおよそ変曲点を迎えます。
つまり、適切な圧力範囲にして、
有効に肺胞容量を変化させる必要があります。
一方で、
人工呼吸器による肺胞の機能障害の一つである無気肺に加えて
術後には低酸素血症や肺炎(1095)など合併症が起こることもあります(1094)。
従って、できるだけ補助する割合を小さくして、
気管挿管の時間をできるだけ短くしたいというのが
集中治療の医療スタッフにはあると拝察します。
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この神経信号と同期させる神経調節補助換気は
カナダのChrister Sinderby(敬称略)らによって
1999年に発表されています(1091)。
前述したようにその背景にあったのが「不快感」です。
実際に人工呼吸が行われている約25%の患者が
呼気トリガーや呼気終了の非同期発生、
過剰な補助圧や不適切な呼気時間に苦痛を感じている
といわれています(1096)。
このような非同期は不快感以外には不安、疲労感にも
つながるといわれています
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圧変化の感知(圧トリガー)を用いて患者自身の
呼吸を感知するシステムを利用した人工呼吸器では
呼吸動力を正しく把握し定量化する事は出来ないとされています。
これが
(1)高すぎる呼吸器設定
(2)過度の鎮静
これらを導き、廃用性(呼吸筋)症候群のリスクが上がります。
(1)高すぎる呼吸器の設定、呼気末期陽圧は
胸腔内圧が上昇するため、全身から心臓に戻る
静脈還流が圧力に押されて駆動されにくいため減少します。
それにより右心室の血液量が減少するので
血圧低下のリスクも高まります。
(2)過度な鎮静は自発的な呼吸を妨げる可能性があります。
上述したように正常な肺胞の数が少なく、
浅い呼吸を繰り返さないといけない場合は
呼吸筋の疲労、肥大の懸念がありますが、
過度に人工呼吸器に依存すると今度は萎縮の懸念が生じます。
Sanford Levine(敬称略)らの組織学的な事も含めた臨床研究では
最小で18時間の横隔膜の不活性(complete diaphragm inactivity)は
横隔膜の筋線維の萎縮が生じた事が示されています。
(参考文献(1098) Figure 1)
人工呼吸中に横隔膜活動性があって、自発呼吸が生じている場合
人工呼吸器管理短縮(4.5日 vs 6日)と関連があります(1121)。
人工呼吸器患者に合併する廃用性横隔膜機能低下
(ventilator-induced diaphragm dysfunction:VIDD)。
これを予防する観点でも、期間短縮は大きな意義があります(1122)。
疾患の特異性や重症度によって
実際に気道を通過する換気量と本来神経学的に
横隔膜の運動を通じて調整された換気量が一致しない場合があります。
このような事が存在するので
その差分をNAVAによって埋める余地があるとも考えられます。
このNAVAのメリットの一つは電気信号を計測するので、
横隔膜電気的活動の有無を確認できます。
それによって鎮静を深度、換気量を調整することができます。
一般的に鎮静は脳に作用するので
鎮静と横隔膜電気的活動は連動すると考えられます(1123)。
従って、横隔膜電気的活動が弱ければ、
鎮静の深度を少し下げて調整するなどが行われるとされています。
実際にそうした変更が適切であるかを
変更後の電気信号から判断する事も可能です(1124)。
人工呼吸を受けている重症患者に対しての
適正なNAVAレベルの設定方法として
タイトレーション(Titration)の有用性が報告されています(1128)。
これは適切な設定まで急激に空気圧と1回換気量を上げるのではなく、
徐々にそれらの設定値を上げていく方法です。
同様にNAVAレベルを横隔膜の電気的活動(の60%)に合わせて、
漸減させると、呼吸機能や血液ガスの変化することなく
抜管することができたと報告されています(1129)。
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上述したようにNAVAは小児、新生児にも適用可能です。
1500g未満の早産児において
NAVAによる換気は一般的な人工呼吸器モードと比較して
必要な酸素濃度や供給圧が有意に低値でした。
また、血液のガス調整も改善されました(1130)。
しかしながら、2023年に発表された
子どもに対するNAVA適用の総括によると(1131)、
横隔膜の電気信号が弱く、読み取りの正確性に問題が出る事と
(insufficient triggering of electrical
activity of the diaphragm(EAdi))
無呼吸が頻繁に生じると言われています。
これを防ぐためには電気信号の読み取りの正確性や
頻繁に読み取り、それを含めて呼吸を確認し、
適切にNAVAレベルを調整する必要があるとされています(1131)。
実際にNAVA使用上の注意点(1087)でも
横隔膜の電気的活動を得る事が必須であると明記されています。
その背景には電気信号を正確に検出する重要性があります。
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(①と②の比較、考察)監修要
ここまで①気道圧解放換気と②神経調節補助換気について
学習、調査、考察してきました。
横隔膜ヘルニアを呈する新生児を含む子どもに対して
どちらの換気方法を選択するか?
これらの換気方法を列挙するだけではなくて
それぞれの特徴を掴み、総合的に考え、
どういう状況においてどちらが好ましいか?
という事を考える必要があります。
ここの考えを示さないとこの記事の価値は上がっていかない
という側面もあります。
①気道圧解放換気は上述したように
浅い鎮静(Ramsay score 2~3)で行う必要があります。
なぜなら、自発呼吸が必須となっているからです。
その自発呼吸は神経系と連動した自然な呼吸と言えます。
また陽圧にすることで肺を有効に利用することもできるし、
圧を定期的に開放する事で組織を制御しながら
動性に富んだ様式で動かし、細胞を刺激することもできます。
それは肺の成長を促す可能性もあります。
それに対して
②神経調節補助換気は人工呼吸器でパルスで
1回換気量を定めて神経のリズムに合わせて
呼吸器の通気周期を調整する必要があります。
おそらく鎮静レベルは従来の通気と同じで
①気道圧解放換気よりも低いレベルで行われます。
従って、判断する基準としては
お子さんに対してどのような鎮静レベルで
通気を行うのがいいか?というのが一つあると考えました。
脳に障害がある場合には鎮静レベルを下げる必要もあり
その場合は①は適さないと考えられます。
但し、過剰な鎮静を避けるという点では
①気道圧解放換気と②神経調節補助換気の
コンセプトは一致します。
一方で、②は消化器にもチューブを通すため
(参考文献(1087) Fig.2)
呼吸器、消化器共に管が入っている状態なので
患者さんへの負担は大きい状況です。
子どもの場合はどれくらいの圧力レンジにするのがいいか?
組織が小さいために許容範囲が狭く難しい可能性があります。
基本的に肺を最大限生かすという意味では
陽圧で多くの肺胞を開いて自発呼吸を促す換気が好ましい
というような視点があります。
ただ、肺胞はAzza Sajid Alkinany(敬称略)が
P.192-Figure(9.7)に示すように(1099)
肺胞の容積変化があるときにガス交換が行われます。
従って、陽圧で一定にしていると
肺胞自体は開きますが、容積が一定なので
ガスを交換するための駆動力は生じません。
従って、お子さん自身が自発的に呼吸を駆動する必要があります。
この時、肺の状態が著しく悪ければ、
陽圧にして開くときに線維化していて弾性が低く、
組織が壊れる可能性もあります。
また、呼吸の能力も低下しているため
①気道圧解放換気は患者さんへの負担が大きい可能性もあります。
そうした場合は、
ある程度、容積変化を促す従来の換気で
かつ、神経信号と同期している②神経調節補助換気が
好ましいかもしれません。
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③肺動脈血管拡張剤
血管拡張剤は肺高血圧症の患者さんに広く使われます。
6分間歩行テストにおいても改善が見られ、
身体活動に対する心肺機能の改善など
周辺的な効果も期待できるかもしれません(1139)。
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(1)Cinaciguat
Nitric oxide-independent soluble guanylate cyclase (sGC) activator
糸球体ろ過量を維持しながら血管拡張を行います(1132)。
組織の異常肥大や線維化を防ぎます(1132)。
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(2)Intravenous bosentan,
Dual endothelin receptor antagonist。
肺高血圧症の治療に使われます(class III to IV)(1133)。
抗線維化の特性があります(1133)。
上述したエンドセリン受容体は血管収縮、拡張に関与しています(1134)。
また、平滑筋細胞の増殖を刺激します。
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(3)Rho-kinase inhibitors,
Rho-kinaseは血管の平滑筋細胞の過剰な収縮、
血管のリモデリングを引き起こします。
ミオシンの脱リン酸化を抑制することで生じます。
また、細胞骨格の形成、細胞の接着、移動、細胞質分裂。
これらに関わり、慢性的な酸欠状態になります(1135)。
この酵素を抑制する事で肺高血圧症を治療します。
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(4)Peroxisome proliferator-activated receptor-γ (PPAR)agonists
PPAR-γの活性化はインスリン感受性を上げ、
グルコース代謝を強化します(1136)。
この亢進薬は抗炎症性、アポトーシス活性を高め、
肺高血圧症の進行を抑える可能性があります(1137)。
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(5)プロスタサイクリン経路
プロスタサイクリンの受容体であるDP1、EP2、EP4、IPは
血管収縮や細胞外マトリックス、血管のリモデリングなどを通じて
肺高血圧症の症状を改善させる可能性があります。
(参考文献(1138) Fig.3)
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④血行力学的補助(hemodynamic support)
(1)アルギニン(Arginine)
アルギニンは多数の生物学的プロセスに関与するアミノ酸です。
その機能は
タンパク質の合成・宿主免疫反応誘導
尿素サイクル・NO産生
これらです(1140)。
NO産生の機序は血圧の調整と関わり、
肺高血圧症の治療と関連する部分であると考えられます(1141)。
実際に肺高血圧症の患者さんでは
アルギナーゼ活性が上昇した後の
アルギニン利用効率が低いことが示されています。
それが上述する血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)の
産生を欠乏させます(1141)。
但し、アルギニンを肺高血圧症の人に投与する効果は
人では少なくとも十分には確認されていません(1142-1144)。
また、必ずしも良好な結果は得られてません(1143)。
-
(2)バソプレッシン(vasopressin)
バソプレッシンは血液の細胞の水分量の指標である
tonicityを調整する働きがあるため(1149)、
血液の基本的な特性を正常化させる働きがあると考えられます。
血圧が高い状態では血液の水分に対する
細胞、タンパク質、脂質などの溶質が高まっていて、
腎臓から溶質フリーの水が多く血中に戻るように
バソプレッシンで調整されるため、
血液の溶質と溶媒(水)のバランスが正常化されます。
このバソプレッシンは肺動脈圧よりも収縮期血圧を上昇させ
冠動脈の灌流を維持する働きがあります(1145-1147)。
肺高血圧のマウスでバソプレッシンは
血行力学的補助剤として良い結果が得られ、
血管の回復が促されました(1148)。臨床報告は見当たりません。
-
⑤一酸化窒素形成不足を補う
特に肺に異常があり低酸素状態になるとNO(一酸化窒素)
の生成が抑制されます(1004)。
この一酸化窒素は血管を柔らかくするのに必要な物質です。
従って、これが不足する事によって血管組織が硬化して
高血圧を助長してしまう可能性があります。
従って、これを形成するための上流の機序として
必要な物質であるL-citrullineを投与します。
また吸入式の直接呼吸器に一酸化窒素を届ける方式において
数十人の新生児に対して医療介入を行ったところ
血中の酸素濃度が顕著に増加したことが示されています
(参考文献(1005) Figure.1)
-
⑥エンドセリン受容体上昇を抑えるaAA
この受容体上昇は
先天性横隔膜ヘルニアで高まる事が知られています(1006)。
このエンドセリン受容体は
血管の組織の一部で血液を送り出すために必要な
伸張作用を担う平滑筋の成長を阻害する働きがあります。
従って、この受容体を抑制するための遮断薬が
治療の候補の一つとなります。
-
⑦Rho-kinase(ROCK)を抑える
筋肉の緊張状態や反応性に関わる生理機序です。
これが高血圧の原因となることがあります(1007-1011)。
従って、この機序を抑える働きのある薬を投与します。
例えば、②で示したPPARγアゴニストはこの働きを弱めることが
知られています(1004)。
-
⑧cGMP生成を促す
血管の平滑筋の伸張の為にはcGMP信号が必要です。
上述した②の血管拡張剤ままであるCinaciguatは
このcGMP生成を促すことが知られています。
//CDHの肺高血圧症圧//
肺の異型性はその領域における血管数が減少しやすいことが
原因です。障害を受けたないひ細胞依存、また血管亜拡張、
血管収縮、この機能は横隔膜ヘルニアの重篤を決める原因です。
肺の血管が一部欠失している場合、重篤かしやすいとされています。a
(参考文献リンク)

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