2021年11月21日日曜日 0 コメント

代謝、内分泌の観点から考える苦痛のない癌治療

感染症を含めた病気の治療という点で、
「進化(Evolution)」を考えるのは重要だと考えています。
例えば、デングウィルスは20年くらいの間で、
より異種性(遺伝子的な相違)が高まったという報告もあります(1)。
デングウィルスの場合は、
抗体量や親和性が十分でない場合に再感染した場合には
抗体依存性感染増強が起きるとされています(1)。
従って、コロナウィルスとは異なる特徴を持っています。

ウィルスというのはライフサイクルが非常に速く
増殖率も高いので、比較的短期間で進化して
その中で自然選択があると考えています。
コロナウィルスのワイルドタイプ⇒デルタ株のようにです。
一方、
人やゾウなどの動物の個体で見ると、
そのような進化は何千年という長い期間をかけて生じると考えられます。
従って、産業的な変化の大きなこの数十年で
人の何かが劇的に変わるというのは
進化的には考えにくいです。
一方、
人の身体の中のミクロな部分を見ると細胞の集まりです。
その細胞は数兆個あるとされています。
細胞のライフサイクルや増殖率は
ウィルスと同様に高いために進化する事が考えられます。
一般的には年を重ねることで老化します。
その中で細胞の老化に伴う様々な疾患が老年期で生じることになります。
そのような細胞の進化、遺伝子的な変化は
悪性の腫瘍である癌細胞でも生じると考えられます。
「Cancer evolution」という言葉は一般的に知られています(2)。
このような経時的に変化する事は、
癌の治療においての「治療耐性」に関わることです。
例えば、
比較的大きな腫瘍において、抗がん剤が効いて、
腫瘍が一定の大きさ如何に小さくなったとしても、
治療をやめた途端、再発する事があります。
いくつかの可能性が考えられますが、
1つは癌組織の中の細胞の中で薬剤に対して耐性を持つ癌細胞があって、
それが残り、そこから増殖した可能性が考えられます。

今は日本では紅葉のシーズンです。
ドローンで空から山々をカメラで撮影した時に
色鮮やかな景観を楽しむことができます。
赤、黄、緑、茶、、、
様々な色があって、その濃さもあります。
もし、癌細胞の遺伝子的な特徴をこのように色分けすると
癌組織の景観は今の日本の山々のようになっている事が考えらえます。
これを「intra-tumor heterogeneity」と呼びます。
1つの腫瘍内に異種性があることが
癌の治療の難しさを生んでいます。
例えば、
赤だけに効く薬剤を投与したとしても
残りの色の癌細胞が再び成長してしまう可能性があります。
従って、
より困難な(進行性の)癌治療のレベルを継続的に上げていくためには
---
①複数のルートで癌治療を行う
(これについては過去、細胞種特異的輸送系統で述べてきました。)
②癌が持つ共通の機序を標的にする
---
ということが求められます。
他にも考えられるかもしれませんが
現在私の頭の中を支配している癌治療の選択は
この2つの事に収斂しています。
これを私が継続的に取り組んでいく
「Cell-type-specific delivery system」で
どの様に実現するか?
またこの方式で生かせるメリットは何かということを
日々、熟考しています。

生きていくために必要なことはなにか?
生物が共通で必要なことはなにか?
ということを問うてみます。
そうした場合、真っ先に頭に浮かぶのが「摂餌」です。
つまり栄養の摂取です。
人は毎日、何かを食べないと生きていくことができません。
それが、癌治療における癌細胞も同様です。
癌細胞も栄養を摂取しない事には生きていく事ができません。
従って、栄養を絶つという事ができれば、
癌細胞を消滅させる事が当たり前ですができます。
それを日本では「兵糧攻め(ひょうろうぜめ)」と呼びます。
先ほど「景観」の話をしましたが、
「糖」という軸で大きな癌組織の景観を見ると
その色の分布は一色になると考えられます。
もちろん糖の代謝のために必要な遺伝子変異で見れば
そこには異種性がある可能性がありますが、
広く「糖」という軸でみれば、一色です。
癌は非常に細胞の活動が活発なので
嫌気性で糖を中心とした代謝経路になります。
これを「ワールブルク効果」と呼びます。

しかし、こうした「共通性の高い標的」は
他の通常の細胞も必要としていることがほとんどです。
仮に糖を劇的に抑える薬を開発して
それを治療に使うと、極端なエネルギー不足になります。
通常の細胞も必要だからです。
従って、ここで上述した
「Cell-type-specific delivery system」が
メリットを発揮します。
もし仮に癌細胞だけ、その近傍だけ
糖などの癌が必要とする栄養を抑えることができれば、
癌細胞だけを兵糧攻めにすることができます。
そうした体内分布の特異性、異種性を生み出せる可能性があることが
この細胞種特異的輸送系統のメリットです。
従って、
Cell-type-specific delivery systemを実現させるときには
「共通性の高い、根本的な機序を標的にする」
ことが癌細胞の進化の過程を考慮すると
メリットをより生かせる可能性があります。
従って、
"癌代謝治療"と"Cell-type-specific delivery system"の
"親和性(Affinity)"は高いと思います(3,4,15)。

そういったことは近日、私の頭を支配していましtが、
この記事を書くことを決定的にしたことが先ほど頭に浮かびました。
それは身体の監視役、飛び道具である
「免疫システム」です。
もし、仮に代謝経路を抑制する共通性の高い効果的な薬剤を
癌細胞だけに運ぶことができても、
「癌細胞内、近傍に存在する免疫システムに影響を与える」
ということです。
例えば、免疫システムは攻撃性が高まると
糖代謝がメインになるという報告があります。
つまり、癌細胞の代謝と「似てくる」のです(5)。
そうすると仮に糖の代謝経路を弱める機序を薬剤によって組み込んだら
同時に免疫機能が弱まることが予想されます。
ここが癌治療において非常に難しいところです。
特異的輸送を実現したうえで
免疫機能 >> 癌増殖機能
という不等号がなりたつような栄養状態、代謝系の
微小環境にできるか?ということが問われます。
従って、代謝系の複雑な生理経路の中で
「免疫機能にはなく癌細胞にだけあるような機序」
を見つける必要があります。

そのような事を考えているときに想起されるものがありました。
ずっと疑問だったことがあります。
「The New England Journal of Medicine誌」で
CAR-NK細胞の癌治療についての報告がありました。
これはオープンの報告なので
かなり注目に値する内容であると推測しています。
しかし、その副作用をみると
深刻な(グレード4)の好中球減少、リンパ球減少が副作用としてあります。
これが「なぜなのか?」
ずっと棘が刺さったように頭の中にあります。
その一つの原因は「免疫細胞の栄養不足」にあるのではないか?
と本日仮説を立てました。
NK細胞の代謝自体は好気性のOXPHOSと解糖経路の両方があります(7, Table1)。
しかし、NK細胞の攻撃性が癌や抗ウィルスなどで高まると
栄養を多く必要として、糖の摂取が増える事になります(8)。
そうした「免疫系の栄養バランスの変化」が
CAR-NK細胞の導入によって起こり、
結果として免疫バランスの不均衡が生じた可能性があると考えています。
しかしながら、好中球やリンパ球の減少は
血液検査での結果で「全身性」であり、
そこにこの仮説に対する一定の懐疑性を残します。
いずれにしても、京都大学の金子先生を中心とした研究グループが
iPS細胞を使って臨床試験をiCAR-NK細胞で始めましたが、
このリンパ球減少、好中球減少の深刻な副作用の結果は
少なくとも無視はできないと考えられます。
代謝的な観点も考慮に値すると考えます。

※免疫細胞(種ごと)の詳しい代謝機能については
まだ、あまり調べられていないので
今後、研究される事を期待しています。

もう一つ、今精力的に考えていることがあります。
それが成長ホルモン、インスリン様成長因子と癌の関係です。
癌のホルモン療法というのがあります。
癌治療には
外科、化学療法、放射線療法、免疫療法、代謝療法などがありますが、
もう一つとしてホルモン療法があります。

なぜ、私がこれに着目したか?
成長ホルモンというのは、
子供の時期に多くて、身体を大きくするためのホルモンです。
身体が大きくなるということは細胞の数が増えることを意味します。
こうした観点から、
癌細胞が組織として「異常に!」成長するためには
成長ホルモンが何らかの形で関わっているはずである
という仮説を立てました。
実際にそのような報告があり、
この成長ホルモンとインスリン様成長因子が密接に相互作用して
癌細胞の成長に関わっていると考えられています(9, Figure.3)。
ゆえに、特に高齢に方においては
老化によって成長ホルモンが下がっているのにもかかわらず、
悪性度の高い活性な癌組織の周辺では
少なくとも局所的にはこれらのホルモン量が高まっている可能性が考えられます。
実際に日本の研究で膵臓癌とインスリン様成長因子と正の関係があり
インスリン様成長因子が高いと膵臓癌死亡リスクが高まることが示されています(10)。
成長ホルモンとインスリン様成長因子は密接に関わっていますから、
成長ホルモンと癌の相関関係も見出せる可能性があります。

こうした成長ホルモンやインスリン様成長因子は
細胞の成長に関わるホルモンですから、
成長著しい癌細胞においては「ユニバーサル」である可能性があります。
従って、上述した
②癌が持つ共通の機序を標的にする
に関わりうる事です。
しかし、従来の薬剤で成功しなかった一つの理由は
「糖尿病の副作用がでること」が挙げられています。
従って、これを回避するためには
細胞種特異的輸送系統によって
癌細胞周辺だけこれらのホルモンを抑えるような処置が必要です。
しかし、この場合においても
「免疫システム」を考える必要があります。
成長ホルモンと免疫システムは密接に関わっているからです。

成長ホルモンやインスリン様成長因子の異常は
子供や若い人でも見られる骨肉腫などを含めた骨の癌との
関わりが深いとされています(13)。
骨の癌は内科的なアドジュバント療法を併用しながら
外科的に腫瘍部を取り除き、再建させる手法がとられるとされています(13)。
Ref.(13)のFigure.2を見ると
骨の癌が関節近くに癒着して成長している様子が図示されています。

ここから想起されたことがあります。
癌を内科的に小さくしていく過程で
物理的にどのような経路で小さくなっていくか?という疑問です。
もし、外側の基底部から弱体化させることができれば、
手術で行われるように、腫瘍組織を「組織から剥がす」事も
可能ではないか?と考えました。
そのような腫瘍組織の基底部を考えるときに
おそらく重要になるのが"Basement membrane"と呼ばれる
癌基底部に存在する被膜です。
この被膜は癌の成長に必要な血管や内皮に存在します(14,Figure.1)。
仮に腫瘍組織周辺で変化した"Basement membrane"が
変化しているならば、その変換因子に対して
細胞種特異的輸送系統で標的にして、作用させることで
腫瘍組織を基底部から手術のように「はがすこと」ができないか?
ということを考えました。
そうすると比較的大きな腫瘍も
すべて細胞死させることなしに分解させて血液中に流動させ、
排出させる事が出来ないか?と考えました。
一方、大きな組織は「堆積する、詰まる」可能性もありますし、
組織から間質、循環器に遊離する事で、上皮間葉転換や転移を
促進してしまう可能性があります。

また、代謝療法、ホルモン療法は
年齢によってリスクが異なることが考えられます。
成長期の子供や若い人に対して
成長ホルモンを抑えるような癌治療を行う場合には
デメリットが大きくなる可能性があります。
なぜなら、身体全体が成長ホルモンを必要としているからです。
逆に高齢の人は
成長ホルモンが低い方が「アンチエイジングにおいて!」
メリットがあるとされています。
もともと成長ホルモンを適正に下げたほうがいいですから
高まっているホルモンを下げる事は、
デメリットよりもメリットが上回る可能性が考えられます。
従って、
どちらかというと代謝やホルモン療法は
高齢の方に適合した治療方法であると考えられます。
しかし、現時点で
子供や若い人の「苦痛のない癌治療において」の可能性を
除外するものではありません。

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(参考文献)
(1)
Leah C. Katzelnick, Ana Coello Escoto et al.
Antigenic evolution of dengue viruses over 20 years
Science 374 , 999 – 1004 (2021)
(2)
Ashton A. Connor and Steven Gallinger
Pancreatic cancer evolution and heterogeneity: integrating omics and clinical data
Nature Reviews Cancer (2021)
(3)
Mark R. Sullivan, Alicia M. Darnell, Montana F. Reilly, Tenzin Kunchok, Lena Joesch-Cohen, Daniel Rosenberg, Ahmed Ali, Matthew G. Rees, Jennifer A. Roth, Caroline A. Lewis & Matthew G. Vander Heiden
Methionine synthase is essential for cancer cell proliferation in physiological folate environments
Nature Metabolism volume 3, pages1500–1511 (2021)
(4)
Jonathan M. Ghergurovich, Xincheng Xu, Joshua Z. Wang, Lifeng Yang, Rolf-Peter Ryseck, Lin Wang & Joshua D. Rabinowitz
Methionine synthase supports tumour tetrahydrofolate pools
Nature Metabolism volume 3, pages1512–1520 (2021)
(5)
Ashley V. Menk, Nicole E. Scharping et al.
Early TCR Signaling Induces Rapid Aerobic Glycolysis Enabling Distinct Acute T Cell Effector Functions
Cell Reports 22, 1509–1521, February 6, 2018
(6)
Enli Liu, M.D., David Marin, M.D., Pinaki Banerjee, Ph.D., Homer A. Macapinlac, M.D., Philip Thompson, M.B., B.S., Rafet Basar, M.D., Lucila Nassif Kerbauy, M.D., Bethany Overman, B.S.N., Peter Thall, Ph.D., Mecit Kaplan, M.S., Vandana Nandivada, M.S., Indresh Kaur, Ph.D., Ana Nunez Cortes, M.D., Kai Cao, M.D., May Daher, M.D., Chitra Hosing, M.D., Evan N. Cohen, Ph.D., Partow Kebriaei, M.D., Rohtesh Mehta, M.D., Sattva Neelapu, M.D., Yago Nieto, M.D., Ph.D., Michael Wang, M.D., William Wierda, M.D., Ph.D., Michael Keating, M.D., Richard Champlin, M.D., Elizabeth J. Shpall, M.D., and Katayoun Rezvani, M.D., Ph.D.
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(7)
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